石砕きの刃と共に 8
「やったぜ!」
「ああっ」
ポリシャとランゾが拳を突き合わせる。
なんかいいわね。やっぱり仲間は良いものよ。
「やったじゃない、二人共!」
「ああ。キュールも風魔法、サンキュー。おかげで助かった」
「本当、今度はちゃんと気を付けてよね!」
「わかってるよ!」
「ところでポリシャ、あのパリィというのは、新技か?」
「ああ。相手の攻撃を弾く専用の剣技だ!」
「つまり、これでスタンプホースとも安心して戦えるってことね」
「二度も同じ相手にやられる俺じゃないってことだ!」
喜んでいる三人に、近づく。
「おめでとう。あなた達」
「二リハさん、どうでしたか!」
「皆、まだ元気そうね。これなら、この前言った話は合格よ」
「やったー!」
「えへへ!」
「よしっ」
「ひとまず、スタンプホースを手早く解体しましょう。そしてその前に、ポリシャは一度回復ね」
「え、別にいですよ。これくらい」
「せっかくシャインがいるんだから、今の内に治してしまいましょう。シャイン、お願い」
「キュー!」
(はい。回復魔法!)
これで、ポリシャも全快しただろう。
「あ、ありがとうございます、二リハさん!」
「お礼はシャインにも言って」
「は、はい。ありがとう、シャイン」
「キュー」
(後で新鮮な野菜をくれたら素直に感謝されてやってもいいですよ)
「この子、野菜が食べたいって」
「あ、はい」
「ふふふ、きっと冗談よ。それより、これからも、なにかあった時は言ってね。せっかくシャインがいてくれるんだもの。何時だって体を万全にしておかなきゃ」
「はい。それじゃあ俺も、スタンプホースをさばいてきます!」
「ええ、私も手伝うわ」
「いいえ、二リハさんは見ていてください」
なんだか、前も断られたわね。
まあいいや。私はモエル達といっしょに周囲を警戒していよう。
そしてキュール達は、素早くスタンプホースを解体し終えた。
「皆、まだ余力はあるわね?」
「はい!」
「じゃあ、次クラウドマンが2体出るようなことがあったら、一体ひきつけておいて。もちろん、倒そうとまではしなくていいからね」
「はい。わかってますよ!」
「俺達はまだ、スタンプホース程度で必死ですからね」
「今度こそ役目をこなしてみせます!」
ポリシャ、ランゾ、キュールはやる気だ。
まあ、一度戦ってクラウドマンの強さ、厄介さもわかっているはずだし、きっと大丈夫だろう。その時がきたら、また私達が全力で一体倒してみせればいいんだし。
そう思って今日も霧の森に入ったけど、今回はクラウドマンが二体出るようなことはなかった。
やはり、そうそう二体以上で現れることはないらしい。
こちらとしては、ホッとした。あくまでクラウドマンがターゲットなのは、私達なんだしね。
まあ、この先キュール達が4ランクに上がって、クラウドマンを倒しに行くようになるかもしれない。
その時は、素直にその強さを称賛しよう。
強くなるということは、言葉で言うよりもはるかに難しいことなんだから。
それから数日が過ぎた、ある日のこと。
「ん?」
私は不意に見た依頼書に目を留めた。
ランク3。つづらたぬきの討伐。報酬。800シクル、加えてつづらたぬきの持ち物。
つづらたぬき?
報酬は、金額だけは普通だけど、持ち物も報酬なの?
ちょっと気になる。知らないモンスターだし、少し調べてみよう。
「ねえ、三人とも。依頼に、変わったものがあったんだけど」
「へえ、なんですか?」
「つづらたぬきっていう、3ランクのモンスターらしいんだけど、クラウドマンの近くに貼ってあって」
「ああ、それ、噂になってましたね」
ランゾがそう言う。う、噂?
そんなの、全然気にしてなかったけど。
「あ、俺も聞いたことある」
「どういう噂?」
「なんでも、冒険者の武器を盗んで逃げるらしいですよ。もう何人もやられてるらしいです」
「ああ、それこの話だったのね」
キュールまで知っていたなんて。
もっと、私も情報集めとかした方が良いのかしら?
「盗んで逃げるって、戦わないの?」
「そうみたいですね。なんでも、背中にせおっている箱の中に吸い寄せるらしいです。きっと見たらわかりますよ」
箱をせおっている。か。
ひとまず、ポリシャはつづらたぬきのことを知っているらしい。
じゃあ、いいか。
「知らないモンスターだったから、今日はそれを調べてから依頼に行こうかとも思ったけど。ほら、事前知識があればいざ遭遇した時焦らないし」
「ああ、たしかにそうですね」
「でも、ポリシャ達が知ってるなら、まあいいか。予定通り、今日も行きましょう」
「はい!」
今日も同じルート、同じ場所でクラウドマンを狩る。クラウドマンもよくまたこのポイントまで毎日来てくれる。おかげで依頼が捗って助かる。
けど、今日はクラウドマン2体と鉢合わせた。
事前に示し合わせた通り、一体はキュール達にひきつけてもらう。
「げっ、こいつパリィ効かねえ!」
「バカっ、捕まるなポリシャ!」
今回もポリシャとランゾがクラウドマンに捕まったけど、なんとか無事に倒し切る。
やっぱり三人に4ランクの相手はまだ早いのかしらね。
「つ、次こそは完璧にこなしてみせますよ!」
「お願いします、もう一度チャンスをください」
「お、お願いします、二リハさん!」
そして、今回もへこたれてはない様子。
あんまり無鉄砲に動かれてもハラハラするんだけど、まあ、私がいる間の方がずっと安全か。
「わかった。けど、本当に注意してよ、皆。私の方だって、次も助けられるかわからないんだからね」
「はい!」
とにかく、今日も無事に帰れる。
モエルの魔力量がまた上がったみたいで、今ならもう少しクラウドマンとも戦えるかもしれないけど、やっぱりまだ無理はしない方が良いだろう。




