2013年正月用短編 蛇娘に恋する少年と家主 前編
巳年なので書いてみました。
あと今回、テスト的に1行開けを多用しています。
好評ならこれ以後もこの形式で行きます。
「俺、好きな人が出来たかも知れない」
大手ハンバーガーショップでハンバーガーを食べようと包みを手に取ったところでその声が聞こえた。私の右方向、窓際の席から聞こえてきた。少し視線を向けると、少年が2人。ほほう、チラ見で確認した限りでは高校生か。
こういうところは気軽でいい。ウチにホームステイするあいつはこういうところでは絶対に食べないからそういう意味でもとても安心だ。
「へえ……相手は誰だよ」
高校生の恋バナたまには良いかもしれない。と、私は彼らの話を彼らに気取られないように盗み聞きすることにした。そこそこ言い値段がする安いセットのお供には充分すぎる。いい暇つぶしになる。
「同じクラスの、ファティマさん」
ん? ファティマ? 名前に引っかかるものを凄まじく感じるが、流石にないだろう。綺麗で良い響きの名前だ。
「え? 留学生の?」
「うん」
り、留学生なんだ。
「あの蛇人の?」
「うん」
ああ、そのファティマって蛇人、俺よく知ってるわ。
蛇人、というのは中東の砂漠に住む亜人の一種で、蛇だ。巨大な蛇に人の手を付けたような姿をしている。手足ではない。手だ。鎌首をもたげたような姿勢で地面を這うように移動し、接地面から頭までが人間と同じくらいの高さ。地面につく所から尾の先まではその7倍程度。という本当に人として括って良いのか疑問過ぎる姿をしている。
いや、差別するわけでは無いが、姿が違い過ぎるのだ。そんな蛇人に恋をする少年、ちょっとどうなんだ。
「……彼女のどこが何故そんなに気に入ったんだお前は」
ハンバーガーを囓りつつ、横目でみると、聞き手の少年が「マジかよお前?」という信じられない者を見ているような顔をしながら問いかけている。その気持ちは非常によく分かる。
「分からないんだ。ただ、いつの間にか目で追いかけるようになってて」
聞き手の少年はきっと彼女の何処を追いかけているのだろうと考えているに違いない。長いもんな、ヤツは。
「輝いているように見えるんだ」
「お前それは光を跳ね返してんだよ鱗で」
その通りだ少年B。奴の鱗はてらてらと光を反射するんだ。
「彼女が食事をするところをじっと見て喉が動く所とかみるとすごくキュンとするんだ」
「ダチョウの卵丸呑みだもんな。怖いよな。お前それ恐怖だよ」
あれ凄いよな。でも卵より全力でかっぴらいた口の方がでかいんだぜあいつ。
「声もお腹の底から僕を震わせるんだ」
「かなり低いしゃがれ声だよな。絶対声帯の構造人間と違うって」
あと恐怖で体震えてないか少年Aよ。
「機嫌がいいと尻尾をふるふるって震わせて、凄く可愛いんだ」
「あれ殻みたいなのがガラガラなって超うるさいんだけど。っていうか威嚇だろ」
私、アレで1回指切った。
「彼女が歩くところとかくねくねと凄くセクシーだよね」
「蛇だもんな、這う時はそりゃ蛇行するよ」
フローリングの床が傷つくんだよアレで。
「とにかく僕、彼女の事が好きなんだ」
「それ絶対好きじゃねぇって、何か別の感情だって」
バーガーの端を口に入れしっかりと噛んで飲み込む。うんそこそこに美味しい。
「あ、でも彼女も僕に気があるみたいなんだ」
「マジかよ」
マジかよ。
「あの大きな瞳で時々僕をじぃ、と見つめてくるんだ。授業中とか」
「まぶた無いもんな。丸くてでかいよな。ていうか席隣だったよな。目、横に付いてるよなあいつ」
少年Aよ、たぶんそれ前見てる。
「いやほら、ちゃんと僕の方に顔向けてくれるんだよ。そして舌をピロピロって。これぜったいキスしたいって思ってくれてるよね」
「蛇の舌って匂い物質を口の中の嗅覚器官に送り込む役割持ってるんだって」
匂いかがれてる。あ、これはひいき目に見れば……うん無理。
「僕がそれに気付くと、口元に手を当てて慌てて前に向き直るんだ。でも目だけは変わらず僕を見ているんだ」
「授業中だしな。あと目、横に付いてるよな。2回目だけど言うよ俺」
授業中だもんな。
「それに……これが一番の根拠なんだけど」
「なにさ」
横目でちらりと見ると、少年Bは手で顔を覆って哀しそうに俯いている。がんばれ少年B。
「すれ違う時、よく顔を舐められるんだ。口をぐわって開けて」
「…………もうぜってー食われそうになってるだけだよそれ」
どうしようウチの住人が人食いそう。
後編はまだ出来てないです。
最近、見てくれる人が増えてきて嬉しいです。
がんばりますよー




