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2013年正月用短編 蛇娘に恋する少年と家主 後編

後編です。


1行空けについては意見が来なかったので、ちょっと続けてみます。

「あら、どうしたのですか家主さん」


 帰宅した私を迎えたのはそんな冷静だけどかなり低いしゃがれ声。ホームステイさせている同居人だ。両親が亡くなり広い家を持て余したため、ホームステイ先の登録をしたのだ。デミヒューマン向けの。蛇が来るとは思わなかった。


「な、なぁお前。人を食おうとはしてないか?」


 こういうときは簡潔に聞くことにしている。が、流石に単刀直入かつ簡潔すぎたかもしれない。


「なんです? とうとつに」


 しゃがれ声の主は本に向けていた視線をこちらに向ける。体をぐりん、と回して。楽なのか上半身、いや、起き上がったときに地面から離れる部分を積み重ねたクッションに腹ばいにもたれた姿勢のまま、人間なら上半身に当たる部分だけを捻ってこちらに向けている。私にはどう見てもでかい蛇に手が生えているようにしか見えない。一応、ブラウスらしき布をまき付け袖を通しているが。布で覆っていない部分が多いため蛍光灯の光がてらりと鱗に反射してくるのに慣れた自分に哀しくなる。


「いや、食事しているときに聞いたんだ。ファティマという蛇人の留学生が顔を舐めてくるって」


「ああ、彼ですか。美味しそうですよね」


 おいしそう?


「……ふ、ふぁてぃま?」


「……冗談ですよ?」


「お前の冗談は分かりにくいんだ!」


 微動だにもせずに怖いことをいうんじゃない。せめて表情ぐらい変えてくれ。


「で、実際どうなの」


「実際、とは」


 首を傾げれば可愛かったかもしれない。いや駄目か。


「彼って特定したことは一人なんだろう。そいつ、食いたいのかそれとも別の何かなのか」


 私の心は冷えている。しかし彼の一応の安全のためには問い詰めねばなるまい。


「そうですね……、ありていに言えば恋、というのでしょうか」


 こい……恋とな。聞き間違いか漢字違いかもしれない。聞き返そう。


「恋?」


「そうです。色恋沙汰の恋」


 恋だった。


「彼を見ていると、心臓の鼓動が速くなります。ドキドキする、と表現するのでしょうか?」


「ドキドキ、それだけじゃ分からんな」


「そうですね、彼のことが気になって、ついつい彼の横顔を見つめるのです」


 ほほう。


「私とは違って嫋やかで」


 それは少年に使う言葉ではないがまあ良い。


「人として整った顔ですし」


 そんなイケメンじゃなかったが、彼女にはそう見えるのだろう。


「少し乱暴に扱ったら折れてしまいそうに華奢で可愛くて」


 おお、これはもしかして。


「胸の奥がきゅぅ、と痛むのです」


 そう言って彼女は胸……にしてはかなり下の方を抑えた。ヤツの心臓はどこだ? いや、蛇だし長いし下の方にあるんだろう。きっと。


「カラスの濡れ場のような御髪も美しいですね。日本人は皆そうですが、彼のはよりそう思います」


 うんうん。


「新鮮なお肉のように瑞々しい肌もよろしいでしょうし」


 肉? 何がよろしいの?


「背丈も抱えてしまえそうなのがよいです」


 抱えてどうするの。


「それとですね、彼の顔を舐めたとき、照れなのか顔が真っ赤になっておりました。まるでリンゴのようでしたがそれがまたいじらしいのです」


 何故舐めた。


「しかし彼の顔はそれにしても良い味でした」


 それはヤンデレはいってるのか、それともガチなのか。


「ああっ! こうして考えていると彼を我が物にしたいという浅ましい欲求が!」


 彼女は本を取り落とし、こちらに向けていた体を戻してくねくねうねうねと悶える。クッションにもたれた上半身部分だけなら良いのだが、、5mを軽く超える尾までの体の部分も。鱗に反射する蛍光灯の光がちらちらと目障りで非常に鬱陶しい。


 そしてお前は我が物にしてどうする気だ。その真意は? 食欲か、愛情か、どっちだ。


「これほどまでに深い感情は初めてなので、果たして本当に恋なのか……」


 くぅぅ、と腹の虫のような音が聞こえる。


「ああ、そういえば昼食がまだでした」


 悶えるのをピタリとやめ、彼女は体を動かして部屋の隅のダンボールの所まで上半身を移動させる。そしてダンボールを開けると、新聞紙に包まれた大きな物を取りだした。包み紙を解くと、ダチョウの卵。彼女はそれを両手で掴み、上に掲げつつ口をあんぐりとかっぴらき、口の中にでかい卵を入れる。


「ごくん」


 一飲みだ。


「ふぅ……ともかく私はこれまでにない激しい思いに囚われているのです」


 少年の未来はどっちだ。

コレにて終わりで御座います。

続きが気になるのなら……それでも終わりなのです。


拍手が増えてきて嬉しいです。

コメントや感想が来て下さればもっと良いのですが、今しばらくはこのままがんばってみることにします。


それでは今年もよろしくお願い致します。


20130114 14:05追記

ファティマさんの容姿について質問があったのでお答えします。

蛇の頭から下に腕を一対2本生やしてください。以上です。あとデカいです。あと服は着てます。上だけですけど。

蛇に服を着せて腕に袖を通した感じです。足はありません。蛇なので。手はありますが。

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