一発ネタ03 ハーピーさんの不自由な生活
コウモリさんも鳥さんも、どちらにも人の生活環境は不自由になるのです。
やまもおちもたにもありませんが、ハーピーさんの生活の一場面を切り取ってみました。
目が覚めると、もうすっかり見慣れた部屋だ。暖房が効いて部屋は快適だが、布団を被れるならこんなお金の掛かる使い方はしたくない。
私はベッドの柵を掴んでいた足を開いたり閉じたりして目覚めを促す。上体を起こし姿勢を変えベッドに腰掛けるようにしてから翼を広げて伸びをした。
広い部屋だが、やはり感じてしまう閉塞感に厭気がする。なぜ私達の種族は胸と腹に羽毛が生えていないのだろうと思いながら床に立つと足指の爪がフローリングの床にあたってカチ、と音がする。オープンな集落で暮らしていた私には日本の暮らしは辛いものがある。が、それはむしろ私たちが前時代的な生活をしていたことの証左なのだろう。
空を飛べる大きな翼は邪魔な上に指が無いので飛ぶ以外の役に立たない。足は器用だが鉤爪が酷く作業を損ねる。持っているものを傷つける可能性があるのは現代において致命的、なのかも知れない。代理店の勧めでAIパッドを買って見たが、タッチパネルの操作は鉤爪には無理だった。専用のペンを買うという散財までしてしまったのだ。
カチ、カチ、と爪と床で音を立てながら歩いて冷蔵庫の前に立ち、扉を足で開け、牛乳を取りだす。牛乳は取っ手の付いたプラスチックのボトルに入っている物で、通販で買わねばならないが、日本に来て初めて飲んで以降毎日欠かさず飲んでいる。
水皿を戸棚から出して牛乳を注ぎ、更に顔を寄せ舌で掬うように舐め取り喉に運ぶ。叶うならば人間のように手で持ってぐいっといきたいものだ。一度やってみたが片足立ちで仰け反る様に飲まねばならないためバランスが悪い。そういえば何かに座ってやればよいのかもな。今度やってみるか。
一杯の牛乳と少量のナッツを食し、寝間着のヒモを解く。寝間着も服も基本的に同じ構造で、要するにエプロンとスカートだ。下着は履くための補助器具がある。腰の位置にあるピンにパンツをセットし、飛び上がって足を入れ、着地すると履けている、というものだ。スカートかショートパンツ、今日はどちらにしようかな。
住宅補助金は出ても翼に指すらないので……。歩けるし部屋が広いのでコウモリさんほど不自由するわけではありませんが。
ちなみに「僕」こと彼氏さんはいません。全てのデミヒューマン娘に彼氏がいるわけじゃないんだ……




