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47話

総合評価100越え、ありがとうございます!

「おし! じゃあ! 手筈通りに行くぞ!」


 ライアンの声が周囲に響き渡った。

 その顔は未知なる死地へと赴く戦士そのものであり、後ろを破邪の雷龍の四名が続く。多少なりとも不服な表情をしているのは、今回の作戦が彼等の気持ちを無視したものであるからだった。好意的には捉えていない男の命令を聞き、剰え、その身を守らなければいけない。


『皆様がご存知の通り、僕の固有スキルは共鳴です。その力があればダンジョンに僕をヴィルだと誤認させる事が出来る反面、意識をそちらに向けなければいけなくなります』


 ノーグの言葉は全員の表情を曇らせた。

 方や戦力としての認識から、方や誇りを捨てなければいけないという事実から……だが、同時に後者の者達であっても拒否する事は出来なかったのだ。冒険者として生きていく上で重要な要素である情報、それを落としてくれたのは他でもないノーグ達であった。


 では、それを無視して単独で進むのか。

 そんな事はライアンが許す訳もない。依頼の内容はダンジョン攻略ではなく、ギルドマスターであるライアンの護衛だったのだ。もちろん、彼等自身も態々、名指しをしてきた友人を救うために来たという目的はある。だが、その前提がある時点で独断専行等は不可能であった。


『絶対に……救えるんだよな』

『君達が僕の命令に従うなら、確実に』


 嫌いな男、とはいえ、実力は認めていた。

 当たり前の事だろう、彼等が親しくしていた少年が褒め言葉を並べるような存在なのだ。据等が無ければ彼等も喜んで手を取りあっていたかもしれない。だが、それは既に潰えた運命である。故に求めていたのは友人を救うという、本来の目的の達成だけであった。


「ディーラさんに魔素を分散してもらいます。その補助はステラがしてください。前衛はライガとフウゴ、そしてライアンさんに任せます」


 全員の頭に響き渡った言葉、従い全員が動く。

 ライガとフウゴは口元を歪ませながらも前衛に立って互いの篭手の先へ一振の剣を出す。その表情が一瞬だけ笑みに変わったかと思うと現れたブラックウルフ達が全て粉へと変わった。死んだ事も気が付かずに粉塵は彼等を包んで煙へと変わっていく。


 ノーグが既に白い甲冑に身を包んでいる。

 彼等は知っていた……そんな姿自体、ノーグが好みはしない、と。それでも意地を捨ててヴィルを救うためだけに動いているのだ。互いに意地を捨てなければいけない空間、それが分かればライガとフウゴにはどうでもよかった。


 その様子がただノーグには心強かったのだ。

 名声通りに、強さは理解していたものの気迫や士気までもが最高潮な状態。その事実が只管に今は嬉しかった。誰よりも大切に思いながら、未だに分の悪い賭けに付き合わせてしまっている懺悔……そんな気持ちは誰にも伝わる訳が無い。だからこそ、成し遂げなければいけない事が一つだけ確実にあるのだ。


「アリア、ダンさんへ支援の歌。ギネさんは魔道具の準備をお願いします。残り十四分ですから」


 残り十四分、その事実が全員の肩に伸し掛る。

 共鳴……その力は本来であれば、ストックしていた仲間の力を断続的に扱う事を目的とした能力であった。だからこそ、ノーグの持つ十のストックの中の三つは既に仲間のもので埋まっている。だが、それは言葉通りに本来の意味合いとして取るのならば、であった。


 今回であれば、一つのストックが重要なのだ。

 ヴィルのストック、その力を行使する事で恰もダンジョンに対して、ヴィルと同じ何かが来ていると錯覚させるというのが本懐である。確かにストックの中でもヴィルの力は明確に頭一つ抜けたものではあった。それを持続的に使えるように、と努力をした事もある。


 それですら、継続出来て十五分が限界だった。

 不服、不快……恋焦がれていながらも手に出来ない力にただ苛立ちすらも覚えてしまう。もしも、今の状況で時間すらも気にしなくて良かったならば、彼自身が嫌っている者達へ力を借りずとも済んだのだ。それがただ只管に不満でしかない。


「空いたぞ!」

「なら! シャロ!」

「ん! 今なら出来る!」


 後退する前衛の隣をシャロ達が通り過ぎる。

 どれもが覚悟を瞳に宿した姿、それも仕方の無い事だろう。今から降りかかるのは本体にとって地獄の苦しみでしかないのだ。……誰もが求めてはいない事であっても、許容しなければいけない現実だ等と本音を口に出来たならばどれだけ楽だろうか。


「自爆……ッ!」


 魔塞石を搭載した壁、それすらも瓦解していく。

 魔力等を抜きにした単純なる火力、ただの暴力が目の前で広がっていたのだ。ステラの結界で今し方起こった爆発では、空いたばかりの穴への損害は無かったものの、それでも多くの面々に驚愕の表情を表に出させる。


 それだけの火力ですら、足を飛ばす程度だった。

 天使の実力……目の前の破壊力を前にして、破邪の雷龍の者達は共に戦う仲間達の異常さを理解したのだ。腕を飛ばす、足を飛ばす……それらを十全に操れる少年の存在。全てがただ彼等を高揚させる要素にしかならなかった。だからこそ、いの一番にライガが下へと降りる。


 ハァと小さな溜め息が聞こえ、足場が出来た。

 強さと弱さ、両方を理解しているのは何もノーグに限った事ではない。ライガも多少の勝手ならば助けるための指示を飛ばすと予測していたのだ。同時に降り立った五階層の中心で叫び声をあげ始める。


「やんなら来いや! 暇でしかねぇぞ!」


 強烈な威圧、例えるなら魔物に近いだろう。

 敵を屠り、自身の価値を知れ渡らせるような弱肉強食の世界……それを表にしたような存在でしかないのだ。同時にミノタウロス四体、彼に飛びかかるが小さく嘲けて笑う。速度も一撃も重いものではあったが、確かに上位の存在を彼は知ってしまっているのだ。


「悪いが邪魔になるなら殺す!」


 ゆっくりと漂う剣の一振、誰でも追える速度だ。

 だというのに、そこから起こったのは周囲全てを消し去る程の斬撃であった。ミノタウロス、それと共に飛び掛ろうとした後続、周囲の木々すらも塵へと変えてライガは得物を軽く振るう。


「これで満足かよ!」

「ええ! 最高ですよ!」


 彼等の足元に魔法陣が浮かぶ、転移である。

 動けなかった一つは確かにヴィルの共鳴を長引かせるためであった。それと同時にノーグが動けなかったのは発動した転移の魔法陣、十二人のメンバー全てを緑部屋まで運ぶための重要な作戦でもあったのだ。


 同時に彼等が見たのは半開きの扉であった。

 中からは恐れる程の魔素が外へと垂れ流しとなっており、少しばかり見える内部には明確なサジタリウスとは違った魔物がいる。……先に戦った者達ならば知っている造形、天使であった。

次回は明日の9時の予定です。

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