表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
52/54

52●外資系AI出版社はラノベ界の黒船になるのか?:②今や「紙が2、電子が1」

52●外資系AI出版社はラノベ界の黒船になるのか?:②今や「紙が2、電子が1」




〈電子書籍の市場推移〉

  2014年:192億円 → 2019年:349億円 → 2022年:446億円


 どうして電子書籍は市場規模が小さく、伸び悩んでいるのでしょうか?

 単純に思いますに……

 お値段が高いから、でしょうね。


 本はたいてい、紙の書籍と電子書籍が併売になります。

 読者は、どっちを選ぶか。

 あるラノベの新刊が出たとして、例えばキ●ドルなどの電子書籍のお値段を観ますと、あまりお安くありません。

 電子本といっても、紙の本の低下からせいぜい一割引きくらいなのです。

 うーんそれなら、紙の本にしておくか……

 一割ほど高くても、紙の本なら、読み終えてブック●フあたりに持って行って換金すれば、二割三割と回収できるかも??

 電子本は、古本屋に売れませんからね。

 そうはいっても、紙の本だって売れ行きは芳しくありません。

 毎年じわじわと減少傾向が続いています。

 それもそのはず……

 すぐに買わずに、ネット古書店に出回るのを待てば、電子本よりもはるかにお安く購入できますよね。

 ラノベの文庫本は一冊700円くらいが多いのですが、これが数か月待てば半額になり、一年待てば200円以下、あるいは50円にまで落ちてしまうケースも……

 しかも“中古品”なので、10%の消費税も要らないのです。


 これホント、ラノベ作家の地獄道ですね。

 紙の本で商業出版にこぎつけても、書店の棚に置いてもらえるのはせいぜい二、三週間に過ぎず、売れ残ったら出版社にドサッと返品されてしまいます。

 そのあと、ネットの直販で売れればいいのですが、あれよあれよという間に、古本がネット古書店に半額以下で出回ってしまいます。

 そうなると正価の本はガクッと売れにくくなるでしょう。

 ラノベ作家の天敵とでもいうのか、宿命的脅威ですね。

 最初の一か月でがっぽり売れて採算ラインを超えなければ、悲しい赤字に……


 さて一方、電子本が正価の九割程度とお高いのは、たぶん、紙の本との価格バランスをとるためでしょう。

 紙の本は書店さんで売られ、書店に本を卸す取次店さんも中間マージンを得ます。

 2009年の記事ですが「1冊の本が売れると、取次のマージンは8%、書店のマージンは22~23%」(ITmedia ビジネスオンライン「日販とトーハン、2大取次が寡占する日本の出版流通事情」2009年8月26日より)となっています。

 書店さんと取次店さんのマージンは電子本では不要ですから、合わせて3割程度安く価格設定できることになります。また、紙の本と違って、「印刷・製本・保管」のコストもかかりませんので、ともすれば書店売りの正価の半額で売ることも可能かもしれません。

 しかし、最初からそんなことをすると、読者はたいてい格安の電子本を選択してしまい、書店に並ぶ紙の本はてんで売れなくなってしまいますね。


 だから、書店さんや取次店さんへの特段の配慮を含めて、キ●ドルさんなどの電子本は紙の本の正価の九割くらいに価格設定されているのでしょう。


       *


 ということは……


 一作出せば最初の一か月で十万部とかさばける売れっ子作家は別として、今、多くのラノベ作家にとって、紙の本の出版は“地獄道”となりつつあるのかもしれません。


 最初の一か月で売れなかったら、書店さんから返品されて、在庫の山を築きます。

 あとはその在庫を出版社のネット直販で細々と売ることになりますが、半年も過ぎると、ネット古書店に半額とか百円程度で中古本が出回ってしまいます。

 かといって電子本は正価の九割ほどの価格設定ですから、これはもう、「紙の中古本」にかないません。

 こうなると八方ふさがり、ラノベ作家残酷物語。

 いずれ紙の本の在庫は断裁され、燃やせるゴミとして葬られる運命となります。


       *


 さて、電子本の将来性は如何に?

 例によって出版科学研究所のデータです。


〈紙+電子=出版全体の市場推移〉

  2014年:17208億円 → 2019年:15432億円 → 2022年:16305億円


 出版不況とはいえ、電子も含めた全体の市場規模は、“微減”といったところです。

 その中で、電子出版は……


〈電子出版(コミック+書籍+雑誌)、全体の市場推移〉

  2014年:1144億円 → 2019年:3072億円 → 2022年:5013億円


 2014年の数字から四倍以上に伸びていますね。

 対して、紙も含めた全体の市場規模は“微減”。

 ということは、「紙の売上が減った分を電子が埋めた」のです。

 2022年の出版全体の市場規模は16305億円、そのうち5013億円を電子出版が占めるようになりました。

 2014年では全体の7%程度だった電子出版は、いまや30%程度にまで占有率が増加したのです。おお凄い。

 前記の数字をご覧の通り、2020年以降のコロナ禍でリモートが流行り、スマホやPCの画面で“書く読む”機会が増えたこともあってか、ここ三年ばかりの伸びはまことに著しいですね。


 今、電子が1、紙が2の比率ですが、このままでは数年で肩を並べるのではないかと思います。


 電子本は間違いなく、普及の度を高めています。

 ある時点でせきを切ったように、電子本の怒涛が出版界を席巻するかもしれません。

 なにしろ、今どきの子供たちは、小学生の時点から全員タブレットで読み書きしているんですから。小説の“画面読み”に抵抗はありませんね。

 そうこうするうちに現在の比率が逆転し、電子が2、紙が1の割合になることも、十分に想定されると思いますよ。


       *


 ということは……

 この先、出版界もグローバル化とばかりに、「自前の小説投稿サイトを持ち、電子出版に特化した外資系の出版社」が続々と上陸してきたら、どうなるのでしょうか。

 かれらは、自前の小説投稿サイトにアマプロ問わずに作品を集め、そこからAIで有望作品を選び出し、自前のネット販売システムで電子本を売っていきます。

 紙の本は最初から出しません。

 そうすることで、既存の書籍流通システムに忖度そんたくすることなく、つまり、取次店さんと書店さんを最初から素っ飛ばして、通常価格の三割~四割安く価格設定することができますね。

 販売方法は、現在の電子コミックサイトで行われているポイント購入制などが応用されるでしょう。


 こうなると、ある意味、ラノベの価格破壊が起きるわけです。

 「取次店と書店のマージン」と「印刷・製本・保管」「本の送料」のコストを削り、定価を割安にする。

 その反面、電子出版のサーバー管理などの手数料はかかるものの、著者印税の割合と出版社の利益は、紙の本に近い水準に維持できるのではないでしょうか。

 なによりも、電子コミックの販売サイトが大成功しているわけですから。

 あれのオリジナル・ラノベ版を作るだけです。


 乱暴な表現ですが「どうせ書店で売れないのなら、最初から電子本にしてしまえ」ということですね。


 「電子本オンリーのラノベ」のメリットは……

 読者にとって、書店に行かずとも安価に購入し、すぐに読めること。大量購入しても本棚の保管スペースが不要なこと。

 そして作者にとっては……

 人気作家は「薄利多売」を狙うことになりますが、一作の単価が低くても、本の返品や断裁破棄による販売の機会損失がありませんし、倉庫の保管料もかかりませんから、絶版なしで半永久的に販売可能となります。

 それほど売れない著者の場合は「薄利《《少》》売」となりますが、そのかわり、何年にもわたって長期間売り続けることで地道に稼ぐ作品が現れるかもしれません。

 しかもその間、紙の本のように古本が出回って百円五十円と値崩れすることなく、比較的安価とはいえ、定価のままいつまでも販売することができます。電子本は転売できないので、古本になりようがありません。

 著者にとっては、いまや紙の本よりもメリットが大きいのではないかと……


 そのような仕組みの外資系出版社が上陸してきたら……


 国内の出版社が「手ぬるい、本土決戦なのだ」とデスラーみたいにうそぶいてタッグを組み、各社がオリジナルの電子ラノベ販売サイトを設置、同時に全体を束ねる総合ポータルサイトを立ち上げて、対抗することに……なるでしょうか!?

 そうなると、ラノベ出版界に大変革がもたらされるかもしれませんね。




   【次章へ続きます】




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ