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ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
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50●『NieA_7』貧乏な君たちはどう生きるか?:貧乏ラノベのまとめ。【付記】『NieA_7』唯一の脚本ミス?

50●『NieA_7』貧乏な君たちはどう生きるか?:貧乏ラノベのまとめ。【付記】『NieA_7』唯一の脚本ミス?




 以上、『NieA_7』にからめて、「貧乏な主人公を設定したラノベ」について、つらつらと考えてきました。


 まとめてみますと……



●「貧乏主人公のラノベ」は、概ね三パターンが考えられます。


① 「貧困と格差」の現状に逆らわず、上級国民をめざしてコツコツと努力する。

 ただし世襲化した社会では、本人の努力だけで「成り上がる」ことは不可能。

 そこで「玉の輿or逆玉の輿」のロマンスが発生し、主人公の苦境を救う。

 そのさい、「貧しくとも心豊かに」の価値観が二人を結びつける。

  ↑ラノベではこのパターンが最も多い。というか、ほぼ、こればっかりである。


② 「貧困と格差」を打破する正義を掲げて「反旗・反逆・反乱」に走る。

 この場合、主人公は「貧困と格差」の元凶たる「真のラスボス」と対決する。

 主人公一人では無理なので、地道に仲間を集め、反抗組織を立ち上げる。

 大戦中のナチス占領国家におけるレジスタンスかパルチザンの位置づけ。

 (作品例は『スター・ウォーズ』エピソード4-6)

 ウクライナと同様、他者から軍事的支援を獲得することが必要となる。

 苦難の末に勝利して社会体制を変革、新しい独立国家を創ることで大団円となる。

 (模範的作品として、ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』(1966)がありますね。月の岩石をカタパルトで地球へ投げつける戦法は、後年のガンダム“コロニー落とし”を思わせる大胆な発想。また反乱組織の形成や作戦をAIが指導するなど、言うことなしの傑作です!)


③ 「貧困と格差」の社会を捨てて「自由への脱出」を図る。

 「貧困と格差」の元凶たる「真のラスボス」に対抗して「反旗・反逆・反乱」に邁進したものの、企ては失敗し、官憲に追われる身となる。すなわち落ち武者である。

 逃亡の末、自分に友好的な他国へ亡命するか、他人になりすまして遠隔地へ隠遁するなどして、いずれ「真のラスボス」へ挑むために再起する方策を模索する。

 あるいは安全な別世界へ逃れて、そこに理想郷を建設する。桃源郷シャングリラである。

 負けて落ち延びる物語はつまらなく見えるが、裏切りと支援が錯綜する中で、主人公にとって真の友情、真の愛が試され、その本質を明らかにするという、奥深いテーマに取り組む物語を創ることができる。

 そしてラストシーンには「自由な世界への脱出」という、希望に満ちたカタルシスが期待できる。

 一見して惨めな逃亡生活を描くようですが、必ずしもそうではありません。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンのあの名作『カサブランカ』(1942)こそ「脱出テーマ」の大成功作なのですから。同じくボガート氏の主演で、ズバリ『脱出』(1944 なんとアーネスト・ヘミングウェイ原作)という映画もあり、こちらは、なんだか『カサブランカ』の続編みたいな雰囲気のお話です。

 また『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)で一家がアルプスを越えてゆくシークエンス、ジョージ・ルーカス監督の『THX 1138』(1971)、またスケールが大きい作品では『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)も広い意味で「脱出テーマ」の傑作といえましょう。

 大ヒットした漫画『約束のネバーランド』(2016-20)も「脱出テーマ」に含まれますね。



       *


 このように、“貧乏主人公”をめぐって、上記①②③のドラマとその組み合わせが考えられます。そこから、これまでのラノベでは見られなかった新しい物語も発想できるのではないでしょうか。


       *


 2023年8月初め、女性議員の団体が研修ということでフランスへ旅して、エッフェル塔の前でお目出度いポーズをとった写真をSNSに公表したことで、世論の総スカンを食った……という話題がネットを賑わせています。数日の旅行で研修は正味六時間ほど、家族を同行させた議員さんもおられたとか。

 その種の写真、30年ほど昔のバブル景気のムードが残っていた時代なら、たいして問題にならなかったでしょう。国民は全般にリッチで、高収入と円高を背景に、おフランスなんかいくらでも行けたからです。

 しかし2023年の現在、この写真がこうも多くの人々に問題視されるということは、この30年でこの国の一般大衆が著しく貧乏になった事実を物語るのではないでしょうか。

 自己負担わずか30万円で、セーヌ川のディナークルーズ付き三泊五日。

 かたや、子ども食堂の調査によると、うどん玉一つを四人で分けるような、赤貧の母子家庭。

 この格差のあまりの大きさに、ニッポンの一般女性が怒ったということでしょう。


 にしても、こんな研修旅行だと、受け入れるおフランスの皆様からもすっかり軽視されて「またジャポネーゼがシャンゼリゼの爆買いにやってきたぜ」とナメられているのではないかと心配になりますが、ま、いらぬ老婆心でしたか。


       *



 貧乏大国ニッポン。

 財務省が7月3日に発表した2022年度の国の一般会計の税収は約71兆1373億円と過去最高を更新しました。物価高の影響で消費税収が伸びたことが大きな要因だったようで……

 「最高の税収」はしかし、喜んで自慢できることではありませんね。

 裏返せば「それだけ国民から巻き上げたので、それだけ国民が貧しくなった」ということでもあるのでは?

 「物価高なので消費税の税収が増えた」という事実も、裏を返せば、ある種のおぞましさを禁じえません。食品や光熱費など、低所得者の家計をゴッソリと直撃した結果なのですから。値上げイコール自動増税のシステム、いやまったく「傷口が広がったらそこに塩を擦り込む」みたいな悪魔の税ではないですか。

 「税収の増加」と「国民の幸福」はイコールで結べないことを、私たちは今、切々と実感しつつあるわけです。


       *


 ということで、ラノベの読者が一般大衆であるならば、20世紀に比べて、最近のラノベの読者は、明らかに貧乏になったと言えるでしょう。

 ならば、「貧乏な読者」の共感を得る作風を意識する必要もあるのでは?


 21世紀のファンタジーで最大のヒット作は何かというと、今のところ『ハリー・ポッター』シリーズであることは論を待ちません。

 初刊から20年余りが過ぎた今でも、テーマパークに姿を変えて、ヒットし続けています。

 その理由のひとつとして、「主人公たちに貧富の格差が描かれていない」ことも挙げられるでしょう。

 寄宿制の魔法魔術学校という、家庭ごとの貧富の格差をほとんど感じさせない環境を舞台にしたことも慧眼ですが、登場するオトナたちにも、それほど貧富の格差が感じられません。デラックスな超豪華魔法貴族がいてもおかしくないのですが。

 悪の親玉ヴォルデモートですら、最終エピソードあたりでは莫大な富と権力をほしいままにしていたはずですが、豪邸でパリピ三昧とか、スーパーカーや豪華ヨットを乗り回すこともなく、マグルの王立空軍を支配下におさめてホグワーツ校に戦術核を落とそうともせず、最後まで「独裁者なのにどうしてあんなに貧乏臭いのだ?」と観客を不思議がらせてくれます。

 ハリポタと同時期のOVA『HELLSING』と見比べるとわかりますね。魔法(魔法同様の超能力も)を使う悪の帝王は、いまどき空母やヘリや飛行船を駆使できなくてはおかしいのです。


 しかしハリポタは、「庶民的貧乏魔法使い」の路線を貫きました。

 発展途上国も含めて、世界的な支持を得たのには、そのあたりのセンスも味方していることでしょう。

 ハリーは魔法界のエリートとして周囲に認識されますが、実家はごく普通のテラスハウスという庶民派です。これが豪邸に住む貴族のお坊ちゃまでフェラーリを乗りつけ、執事やメイドをはべらせていたら、その人気に限界があったのでは?


 ですから……

 「貧乏」はラノベの新しいテーマになると思います。




       *

       *

       *



【付記】『NieA_7』唯一の脚本ミス?


 『NieA_7』はTVアニメの傑作ですが、ただひとつ、これは脚本のミスだと思われる展開があります。

 第10話で、まゆ子が洋食屋“かるちえ”の智絵ちゃんに連れられて、駅前のスーパーらしき大規模小売店へ買い出しに行く場面。

 買い出しが終わってから、二人は屋外の公園スペースで、仲良くアイスを舐めるのですが……

 食材を入れた四個のレジ袋を、真夏の猛暑炎天下のコンクリ地面に置きっパにしている!

 まゆ子がとろけたアイスを落とすくらいですから、それなりに気温は高いはず。

 しかし二人の足元で太陽光を浴びるレジ袋の中には、確かに生のベーコンなんぞが入っているのです。無料のドライアイスなどを入れていたとしても、不用心。

 「たべものや」の智絵ちゃんがこのように油断大敵な食品腐敗リスクを冒すとは考えられません。

 舞台を、冷房の効いた屋内のベンチかイートイン・スペースにしておくべきだったでしょう。

 「生肉でも腐らない世界設定」だったと考えてもいいのでしょうが、それなら売り場に冷蔵ケースは必要ありませんから。


 この場面は、やはり脚本ミスだったと思います。

 もちろん、とりたてて非難するミスではありません。

 ファンとして、「智絵ちゃんヤバいぞ! 肉は腐るんだぞ!」と心の中で注意してあげましょう。


       *


 さて、『NieA_7』で最も世間をお騒がせした、あの、母船。

 どこへ行ってしまったのでしょうか?

 そこはさすが『NieA_7』、最後の最後に見せてくれます。

 エンドロールが終わってからの最終話最終カット。

 仲良しポーズのニアとまゆ子。その前を旋回しつつ……

 母船らしきUFOが星空へ飛び去っていきます。

 ニアはその場でまゆ子と一緒にいるので、ニアが乗る自作UFOではありません。

 となると、只今宇宙を旅している大母船でしょうね。

 わが赴くは星の大海……

 そんなところでしょうか。さらば母船!





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