39●金字塔の方程式…とあるコンテストの“お題”に「作品力」の「土台」と「新機軸」をあてはめてみよう。……どうするマニアック!
39●金字塔の方程式…とあるコンテストの“お題”に「作品力」の「土台」と「新機軸」をあてはめてみよう。……どうするマニアック!
*
さて、とあるコンテストの主宰者からの「お題」の二つめです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【編集部からのお題②】
ファンタジー×マニアック、求む!
たとえば、こんな作品……
魔法と科学、合わせれば最高! SF×ファンタジー
魔法で謎解きしちゃう!? 魔法×ミステリー
ダンジョンなしでもいいんじゃない!? 現代ファンタジー
そんな、あなたの「好き」を詰め込んだファンタジー作品を読んでみたいです。
流行とは違えど一点突破できる強烈な個性を持った作品をお待ちしています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうか、「ファンタジー×マニアック」で、「流行とは違えど一点突破できる強烈な個性」が求められている!
じつはこれ、「金字塔の方程式」の「作品力(土台+新機軸)」における「新機軸」の部分にあたります。
最初に「ファンタジー×マニアック、求む!」とありますので、「ファンタジー」が「土台」、「マニアック」が「新機軸」の部分にマッチするわけですね。
要するに、ファンタジー作品に、個性的で異質な要素を「新機軸」として上載せすることです。
あくまで「ファンタジー」が「土台」であることがミソ。
SFをベースにとか、ミステリをベースにするのではありません。
これ、典型例がひとつ。
あの映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』ですね!
幽霊も妖怪も魔物もアリの、“鬼太郎”的なファンタジー世界で、主人公の一色先生は鎌倉警察の求めに応じて、怪奇な事件の探偵役をこなします。
「ファンタジー×魔法×ミステリー」ということになるでしょう。
また、「ファンタジー×SF」の典型例としては……
手塚治虫先生の大河漫画『火の鳥』ですね!
科学の概念を超えたファンタジーならではの、超自然の完全生物である“火の鳥”が、SF的に解釈されたのは『火の鳥 未来篇』と『同 宇宙篇』でしょう。
あるいは、故・今敏先生のアニメ作品もそんな感じです。
『PERFECT BLUE』『千年女優』『妄想代理人』『パプリカ』ともに、ファンタジーとサイコ・スリラーと「+αの何か」といった組み合わせですね。なるほど、どの作品も「お題」のように「流行とは違えど一点突破できる強烈な個性」を有していると思います。
ラノベにおけるファンタジーの要素として、切っても切れないのは「魔法」です。
「ファンタジー=魔法」と言ってもいいくらいですね。
ディズニーアニメ、特に21世紀に入ってからの作品は、たいていみんなそうです。
わずかな例外を除いて、みんな「魔法ありき」。
また、『ハリー・ポッター』シリーズもそうですね。「魔法ありき」です。
*
……とすると、「ファンタジー=魔法」×「(ユニークな要素)」で物語を構成するのが基本となりますね。
このパターンで成功した例をひとつ。
『月とライカと吸血姫』(2016-2021)。
メガヒットとはいかぬまでも、2021年にアニメ化を果たし、SF関係の賞も受けた、優れた作品ですね。成功作です。
「ファンタジー=魔法」×「(ユニークな要素)」のパターンにあてはめますと、
「ファンタジー=魔法=吸血鬼」×「宇宙開発」
吸血鬼の女の子(吸血姫)が宇宙飛行士にスカウトされ、人類初の宇宙飛行に挑戦する……というお話で、世界設定は一応異世界、ソビエトな国家で、ボストークな宇宙船に乗って、バイコヌールな発射場から衛星軌道を目指します。
なんとなく『王立宇宙軍 オネアミスの翼』ですね。
しかしアニメを見る限り、解せない点は残ります。
どうして、吸血鬼が宇宙飛行士の適正に合致するだろう?
人間でなく、吸血鬼でなくてはいけない理由が、解りません。
吸血鬼ならではの、人間離れした強靭な肉体と頭脳、という特性が絶対に必要ということでしょうか。しかし最初の打ち上げは吸血鬼で良くても、二回目以降は人間の宇宙飛行士が乗らねばならず、それなら最初から、「人間専用」で設計し、人間を訓練すればいいわけで……
だって、人間と同じ訓練を吸血鬼に課しているので、その育成にかかっているコストは人間と同じなんですから。敢えてそれを吸血鬼にする理由がどうも……
それに、衛星軌道へ昇って地球を周回すれば、その都度、日の出と日の入りを見ることになります。『オネアミスの翼』で、宇宙飛行士第一号のシロツグ君が、軌道を周るカプセルの中で、窓から差し込んできた強烈な太陽光に顔をしかめる場面がありましたね。
これが吸血鬼だと、健康への影響が結構ヤバいと思います。光線を遮る大気が無いぶん、地上よりもはるかにキツい光でしょう。
また、地上へ降下するにあたっても、夜間に降りなくてはならず、最後の行程はパラシュート降下でしたから、手順が狂って昼半球に降りなくてはならない場合、あるいは夜半球に降りられても、夜明けまでに発見し車両等へ収容できるのか、いろいろと面倒なことを心配しなくてはなりません。やはり、生きて帰ってくれなくては、困りますしね。
もうひとつ、かなり残念に思うのは「噛まれたら吸血鬼になってしまう」という、吸血鬼小説の普遍的ハラハラ・セオリーが適用されていないこと。
噛まれても吸血鬼にならないのなら、吸血姫の彼女はせいぜい蚊と同じようなわけで、それなら彼氏がボランティアで噛ませてあげても、スリリングな要素に欠けてしまうのです。
やはり「噛まれたら人間でなくなる」という恐怖感があればこそ、うっかりキスなんかできないわけで、それなら彼氏とのロマンスは緊張感あふれるハラハラドキドキ要素に彩られたことでしょう。
そんな吸血鬼の危険性を存分に表現したのが、アニメの『HELLSING』(2006-2012)でしたね。オンエア版でなく、OVAの方ですよ。ロンドン空襲をめざすラスト・バタリオンの吸血兵士たちが歌う“イングランド・リート”は絶品でした。
*
さて、お題の「ファンタジー×マニアック、求む!」に対応する条件は、他にどんなものが考えられるでしょうか?
「ファンタジー=魔法」×「(ユニークな要素)」には、次のようなパターンが考えられますね。
①「ファンタジー=魔法」×「(ジャンル:分野)」
「戦争と平和」「」「国語・算数・理科・社会」「物理学、地学、天文学、海洋学、生物学、植物学……」「文学、宗教学、経済学、歴史学、考古学、医学、衛生学……」そういった「分野」と結びつける方法です。図書館の「十進分類法」の名称がそうですね。
「ファンタジー=魔法」×「ミリタリー」の成功作は『ストライクウィッチーズ』や『艦これ』もそうですね。ラノベでは『幼女戦記』(2013-)が代表例でしょう。12巻で累計950万部の、まさにメガヒット作です。
アニメでは『終末のイゼッタ』(2016)が優れた佳作でした。ナチスドイツな敵国メカがとりわけしっかりと構築されていて、グラフ・ツェッペリン級空母のカタパルトで艦載機を発艦させた直後に、機体を載せていたドリーを甲板下に回収する過程をちゃんと見せてくれたのには感激しました。ありゃ歴史的偉業ですよ。マニアックとはこのことです。
惜しむらくは、ドイツ風兵器がみな敵役だったことで、そこが辛い。「国破れて戦車あり」の国ですからね。ヒトラーとゲーリングは大嫌いでも、ロンメルとガーランドはリスペクトするって人は多いでしょう。(当時の)ドイツの兵器は世界一ィ! と信奉する身としては、イゼッタ嬢にことごとく潰されるヤラレ役に回ったのが可哀想でなりません。
できれば全26話に延長して、ゲルマニア帝国の皇帝はクーデターで亡んでロンメルな人物が政権を握り、これまでとは逆にエイルシュタットと手を組んで、東の無法なあの侵略大国からヨーロッパを防衛してもらいたかったものです。
この場合、イゼッタに対決する魔女ゾフィーは、ラスプーチンな悪魔が育てたロシアンなクローン少女ってことになるでしょう。
2023年6月のリアル世界ではウクライナ戦争がついに反転攻勢のフェーズに入ったところです。その意味でも、軍事大国の不当な侵略に耐える小国エイルシュタットの祖国防衛の物語は、高く評価されてしかるべきではないでしょうか。
作品中で、イゼッタは八面六臂の活躍でゲルマニア群を撃破しますが、正当防衛の戦争とはいえ、おそらく数千人は敵兵士を殺しているわけで、それでも後悔をしない彼女の強さと恐ろしさ、そこに『終末のイゼッタ』の凄さがあるのですが……
ああ、DVDが出ていない(輸入もので観ています)のが残念!
②「ファンタジー=魔法」×「(職業)」
このパターンはそこそこ、試みられていますね。「異世界×冒険者」といった定番だけでなく、「異世界のレストラン」といった飲食業、「モンスターのお医者さん」といった医師や獣医、そのほか、異世界の「司書」「農家」、異世界の「音楽家、作曲家」あるいは「不動産業」など、バリエーションも広がってきています。「温泉旅館」とか「古本屋さん」はありそうですね。
今後はややマイナーな職業も注目されるでしょう。
異世界の「葬儀屋さん」「廃品回収業」「動物園、水族館」「レーサー、運送業」「渡船業」「造船業」「橋をかける工務店」「山小屋経営」「マラソン選手」「刑務所勤務」「探偵業」「詐欺師、贋作師」「復讐請負人(仕事人)」「吸血鬼むけ血液銀行」「巡回カーニバル業」「レコード盤製造業」……自分で書いてみたいなと思うのは「スケーター」と「灯台守」と「映画館、あるいは写真家」ですね。「映画館」では、『キネマの天地』『キネマの神様』『今夜ロマンス劇場で』など参考となる作品があります。
③「ファンタジー=魔法」×「(偉人)」
偉人のキャラクターを当てはめる手法です。「ファンタジー=魔法」の異世界に、たとえば、ナイチンゲールやキュリー夫人やマザー・テレサみたいな人物がいたら……、あるいは、野口英世、二宮金次郎、伊能忠敬、坂本龍馬……、あるいはエジソン、ニコラ・テスラ、アインシュタイン、アルキメデスやガリレオ・ガリレイ、ガンジー、アムンゼンにアメリア・イヤハート、チャップリンにエノケン……そういった偉人の皆様みたいな人(あくまで同一人物でなく、キャラが通じる人達)がいたらどうなるか、という発想ですね。
*
ファンタジーと異質な要素の組み合わせで数多くの傑作をものした偉大な作家は、レイ・ブラッドベリ。これはもう、作品を読むしかありません。ファンタジーと「火星」で『火星年代記』、ファンタジーと「本」で『華氏451度』といった具合です。
発想の転換の凄さでは……
『藤子不二雄 SF全短篇』(1987-88 中央公論社〈中公愛蔵版〉 全3巻)が、1980年代当時の空気感を感じさせて、必読。全三巻で短篇が101話も読める超充実版、しかもリーズナブル。
2023年6月現在、NHKのドラマ化で再注目されていますが、原作の漫画を読めば、ドラマがチャチく感じられるほどです。天才の偉業を感じさせる三冊ですね。
*
今、注目しているのは「AI」です。「ファンタジー×AI」、これまでの作品は多くが「AI=ロボット」となって、美少女アンドロイドのお話などになっていましたが、今後は、生活の隅々までに入り込んで、市民を優しく導く、あるいは監視して強制する「妖精or魔神的な存在」になっていくでしょう。科学の産物だけど実質的に魔法と同じように。
今は質問しても回答に嘘や出まかせが多いようですが、自己学習が進んでいくと、いずれ世界の政治的意思決定に影響してくるかもしれません。
*
ということで、いろいろと頭を巡らせて、新しい作品に取り組んでいきたいものですね。
皆様のご健筆を!
【次章へ続きます】




