38●金字塔の方程式…とあるコンテストの“お題”に「作品力」の「土台」と「新機軸」をあてはめてみよう。……どうするヒロイン!
38●金字塔の方程式…とあるコンテストの“お題”に「作品力」の「土台」と「新機軸」をあてはめてみよう。……どうするヒロイン!
これまで、私家版の「金字塔の方程式」なるものを提示して、ラノベ作品を眺めてきました。
では、これから、私たちはどんな作品を書けばいいのでしょうか?
おもにファンタジー作品を対象としているコンテストで、募集にあたって主宰者の編集部から、具体的な要望が「お題」として示されるようになりました。
じつはそれは、方程式における「作品力」の「土台」と「新機軸」に相当します。
そこから、「どんな作品が求められているのか?」を考えてみましょう。
編集部から「お題」を提示していただけるということは、「お題に適合する作品が欲しい!」ということであり「そのような作品が、編集部が期待したよりも少ない」という現状を物語っていると思われます。
ケースワークとして、とある募集要項から引用しますと、下記のように……
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【編集部からのお題①】
ひたむきに我が道を歩むヒロイン(女性主人公)作品、求む!
たとえば、こんなヒロイン……
レアジョブでおもしろお仕事(もふもふ相手の仕事とか、ユニークなお店経営とか!)をしていたり。
和風や中華風の異世界で、その世界独特の文化や技術を身に付けていたり。
恋愛なんてそっちのけ! 冒険やお仕事に邁進していたり。
そんな、ただカワイイだけで終わらない個性的なヒロインの作品を読みたいです。 みずからの足で立ち、進む道を切り拓いていく、しなやかで逞しいヒロインの活躍を描いてください。
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そうか、「みずからの足で立ち、進む道を切り拓いていく、しなやかで逞しいヒロイン」が求められている!
これ、「主人公」という非常に基礎的な設定に関する要望ですから、「金字塔の方程式」の「作品力(土台+新機軸)」における「土台」にあたります。
こういった「女性主人公」が活躍する歴史的な作品をチェックして、それらを新作のベースに据えればいいわけです。パクリは絶対にしてはいけませんので、あくまで「過去の名作に学ぶ」姿勢ですね。それに、事前に可能な限り読んでおくことで、ネタのダブりを防ぐ必要もあります。自分でメチャクチャ考えたつもりでも、じつは他人様の作品と同じになるってこと、ありますしね。
ただ、いかなる傑作も、何もなしでゼロから発生するはずがありません。
まずは「土台」となるものが必要なはずなのです。
しかしながら……
この「みずからの足で立ち、進む道を切り拓いていく、しなやかで逞しいヒロイン」を主人公にした小説や漫画や映画で、過去にヒットした作品はあったっけ?
そこが思案のしどころです。
じつは結構、コケた例が多いような……。
ひとつはジャンヌ・ダルク。職業は聖騎士でしょう。かの美女イングリッド・バーグマンが主演した映画『ジャンヌ・ダーク』(1948)は、かなり残念な結果だったそうです。
また比較的最近は、女海賊という職業もありました。『カットスロート・アイランド』(1995)は、洋風クイーンエメラルダスな女流海賊さんが船長まで上り詰める大活劇。ワタシ的にはドンドンパチパチの盛大なアクションが大好きで、アゲアゲな音楽も最高なのですが、ウィキペディアによると「製作費・宣伝費合わせて1億ドル以上がかけられたが、興行的には大失敗し、その1割強ほどしか回収できず、(中略)ギネス・ワールド・レコーズに「最も興行赤字が大きい映画」として記載された。この記録は2022年現在も破られていない。」
……と、散々な結果だったそうです。ああ、もったいない。未見の方はぜひ。
「女性主人公」の作品って、意外と当たらない?
その点は、用心された方がいいようです。
特にアニメでは、必ずと言っていいほど「女性主人公」よりも「美少年+美少女」が主役を張りますね。
男女キャラの一方があんまし「美」でなくて、「美女と野獣」もしくは「美少年と野獣」なケースもありますが、まあ、おおむねイケメン男女ペアです。見た目はともかく心は美しいという場合もありますね。
小説よりもアニメの方がビジュアルが際立ちます。となると美男美女は鉄板。
『ワンピース』『鬼滅の刃』『進撃の巨人』『君の名は。』『ソードアートオンライン』などなど……『名探偵コナン』だってそうですね。
ジブリアニメも大体みんなそうです。
実写映画では『ロミオとジュリエット』が基本例で、『タイタニック』が応用例。
おそらく、女性の観客は美男をめあてに、男性の観客は美女をめあてに、うるわしきものを愛でるため観賞に訪れるということでしょう。男女の双方から観客動員できるので理想的だと思います。
つまり、ラノベにおいても、男女の読者を共通に惹きつけるには、「美少年+美少女が主役」というのがベーシックな大原則だと思えるわけです。
しかしそうすると、「お題」の「ひたむきに我が道を歩むヒロイン(女性主人公)作品」とは方向性がズレてしまいますね。
そこで「ひたむきに我が道を歩むヒロイン(女性主人公)」が一人で単独というのは、相当に無理のある難題ではないかと……
「お題」では、「ただカワイイだけで終わらない個性的なヒロイン」が求められていますが、これも重ねての難題。
ラノベの伝統では「女性からみてカワイイ男子、男性からみてカワイイ女子」が組み込まれることで、女性と男性の両方の読者を獲得するのですから。(カワイイでなくツンデレの場合もありますが)
ということで、「女性だけが主役」の作品は、可愛くなかったら男性読者を逃がしますし、カッコイイ、もしくはカワイイ男性キャラが準主役級を張ってくれませんと、「ひたむきに我が道を歩むヒロイン(女性主人公)」だけでは女性読者が果たして熱狂してくれるのか、はなはだ疑問なわけです。
先に述べました失敗例の映画『ジャンヌ・ダーク』『カットスロート・アイランド』ともに、準主役の男性キャラが存在しないか、まるで冴えなかったのです。
では、どうすればいいかと言うと……
「カワイイ美少女と、カッコイイ男性的美女」のペアで主役を張るのです。
二人一組でパワー倍増の「ひたむきに我が道を歩むヒロイン(女性主人公)」。
そう、百合ですね。百合ペアの大活躍です。
見た目はタカラヅカの娘役と男役みたいな感じです。
これ、有望だと思いますよ。
たとえば、「“銀幕の歌姫”李香蘭と“男装の麗人”川島芳子」みたいな二人がタッグを組んで、戦前満州帝国風の異世界で、活劇あり陰謀あり色恋あり戦争ありのノンストップ・アクションを繰り広げてみるのは、いかがでしょうか。
そうです、「満州のダーティペア!」
二人が進んだ道には、色恋沙汰の餌食となったイケメン男子とマッチョ男子の屍が累々……となりますが、帝国陸軍の甘粕正彦や、ダンディな白洲次郎、陸軍中野学校のエリートたちに相当するツワモノ男子が脇役を固めて、北の某大国の一方的な侵略に立ち向かっていただければと。戦前といったって、ノモンハンでしっかり大戦争してたんですから。「戦争」と言わなかっただけで。
あ、若き娘のニノチカさんも敵役で出演いただけますよ。
ただのスパイ小説にとどまるのでなく、役柄上、「李香蘭と川島芳子」のヒロインは、さまざまな職業人を偽装するハメになりますので、二人で夜泣きそばの屋台を引いたり、鉄道員や駅長をやったり、中華料理店を営んだり、漁師や猟師になったり、旅客機パイロットや添乗員も少々無理してこなすわけで、色々なお仕事をキッザニア感覚で体験できるでしょう。あ、もちろん吸血鬼さんも出てきます。妖しい魔法使いラスプーチンも死んでなければピンシャキの現役ですし。
「李香蘭と川島芳子」は全く同時代であり、チョイと接点もありながら、実際には運命が分かたれてしまいました。
戦前の満州帝国、あのエキゾチックでデンジャラスな世界でこそ、この二人が仲良く手を取り肩を組んで、大暴れしていただきたいものです。全長250mもあるツェッペリンの豪華飛行船が危ない危ない水素満載でリアルに世界一周飛行していた時代。それだけでも一仕事してもらえそうなものです。
以上、勝手な戯言でした。
無責任ですみませんが、うっかり信用しないでくださいね。
【次章へ続きます】




