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ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
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33●金字塔の方程式…「土台+新機軸」でヒット作爆誕!? 『タイタニック』『スター・ウォーズ』『銀英伝』『ハルヒ』

33●金字塔の方程式…「土台+新機軸」でヒット作爆誕!? 『タイタニック』『スター・ウォーズ』『銀英伝』『ハルヒ』




 これまで、ファンタジーの本質って何だろう? と考えながら、「ヒットしそうな作品類型」を並べてきました。私個人の経験則に基づく例示ですので、普遍的な論理性はありませんが……


 それでも、ヒット作が生み出される大前提というか、方程式のような共通要素を抽出できるのではないかと思います。


       *


 結論から述べますと……


◆秋山完による「金字塔:メガヒット作」の方程式


  作品力(土台+新機軸)×社会力(投資+情報)=金字塔(メガヒット作)


       *


 メガヒット作の爆誕を、古風には「金字塔を打ち立てる」と申します。

 私が申し上げる「メガヒット」とは、「商業的な意味で“記録的”なヒットである」ことです。

 たとえば映画『タイタニック』や『千と千尋の神隠し』は観客動員数や興行収入でそれまでの記録を塗り替えましたし、小説では『世界の中心で、愛をさけぶ』も発行部数で記録を更新しました。

 そういうヒットのことを、ここではメガヒットと呼ぶことにします。


 で、メガヒットとは「金字塔を打ち立てる」と言われもします。

 金字塔とは?

 エジプトのピラミッドのことですね。ご存じの通り、それが語源なわけです。

 「金」の字に似た形の塔状の巨大建造物。

 なるほどピラミッドこそ、人類史におけるメガヒット物体と言えましょう。

 カイロ近郊にそそり立つ、ギザの三大ピラミッド。

 ああいうメガヒット作を、出版社は求めているわけです。


 で、方程式の説明です。

 魅力ある作品が備える「作品力」、そして、その作品の購入を促す「社会力」のかけ合わせが、金字塔と呼べるメガヒット作を生み出す……という考え方です。


 まず「作品力」とは何か?


 ずばり、本物の金字塔ピラミッドを建てる前提として絶対に必要なのは、しっかりとした「土台」です。ギザの三大ピラミッドは堅固な岩盤を選んで建設されました。

 これが砂の上だったら、文字通り「砂上の楼閣」、数十年もせずに陥没したのではないでしょうか。

 そして金字塔ピラミッドが金字塔たるゆえんは、「土台」の上に、他の遺跡にはない「新機軸」が形作られたことです。

 それはまず「高さと大きさ」、すなわち「スケールの巨大さ」ですね。あんなに大きくシンプルで、しかも偉大さを感じさせる建造物は、人類史の前にも後にも実現していないでしょう。

 そして“新機軸”はもう一つ、「謎の大きさ」です。20世紀半ばまでは王の墓というのが通説でしたが、今は、いちがいに断定できなくなりました。ピラミッドの正体は不明であり、その中に未知の空間が幾つも隠されているらしく、「何のために、どうやって建造したのか?」と、いまだに世界の人々の関心を惹きつけています。

 このように「土台+新機軸」がピラミッドのミステリアスな魅力となり、完成後四千年を経てもなお、ただならぬ集客力を発揮し続けているのですね。


 で、現在、2023年のニッポンで最も象徴的なメガヒット現象は……

 A国の大リーグでご活躍の「Oタニ選手」ですね。一日たりとも報道されない日はありません。それだけ視聴率を稼げる、まさに人間金字塔です。

 しかしOタニ選手、ただ一人だけだったとしたら、こうも爆発的なメガヒットになったでしょうか?

 やはり、先輩としての1ロー選手、良き仲間のDビッシュ選手、また脇役を固めるNトバー選手など、さまざまなニッポン人のA国での活躍あればこそ、と思うのです。とりわけ1ロー選手が長期にわたって大リーグで先駆的に檜舞台への道を開かれた実績は、大きくプラスに働いているでしょう。

 大リーグでニッポン人選手が立派なプレーを見せて高い評価を受けている……という「土台」が積み重ねられたことによって、Oタニ選手が存分にプレーできる環境が整ったとも考えられます。そうでなく、Oタニ選手が大リーグでのニッポン人第一号だったら、最初はさまざまな偏見や逆風もありえたでしょうし、その人気のスケールはいまほど大きく爆発しなかったかもしれませんね。

 そして、その「土台」の上でOタニ選手が示した、他の選手にない「新機軸」が、あの“二刀流”であること、議論の余地はないと思います。


 これを「作品」の世界に置き代えてみましょう。

 たとえば映画『タイタニック』(1997)、この作品の前に、巨船遭難パニック映画は幾つかありました。特に『ポセイドン・アドベンチャー』(小説は1969、映画は1974)は大ヒットして、数度にわたって続編やリメイクされましたね。

 そして1997年当時のニッポンはバブル景気の余韻が濃厚で、3万トン近くの豪華客船「飛鳥」が国産で建造され、1991年に就航後、クルーズ船ブームが盛り上がっていました。タイタニックな船旅を楽しむ乗船料金を、ようやく中流の国民が出せるようになってきたというところでしょう。とはいえ、その後21世紀になれば、たちまち中流以下の国民はボンビーに転落しましたが。

 それら文化的な「土台」の上に、映画『タイタニック』は登場しました。このとき、他の巨船遭難パニック映画にはない「新機軸」として、若者の悲恋…ロミオとジュリエット…の要素を加えたことが、結果的にメガヒットを呼んだのだと思います。

 つまり『ポセイドン・アドベンチャー』の二匹目のドジョウ狙いに見せながら、その名も『ロミオ+(&)ジュリエット』(1996)で主演した翌年のピチピチの“レオ様”を起用、彼のイケメンぶりは世の女性のハートをガッチリと掴み、大成功の要因となったと思われます。

 この「新機軸:憧れのレオロミオとジュリエット」が無かったら、『タイタニック』はただの巨大パニック映画に終わったことでしょう。


 映画『スター・ウォーズ(エピソード4)』(1977)も同様です。

 「土台」として、『2001年宇宙の旅』(1968)と『サイレント・ランニング』(1972)が宇宙特撮の素晴らしさでSFの通たちを喜ばせていましたが、いかんせんクソ真面目な作風で、娯楽映画としてはイマイチでした。まあ、要するにラノベっぽさが足りなかったのです。

 そこで、『2001年宇宙の旅』と『サイレント・ランニング』を文化的「土台」として、そこに「ハラハラドキドキで、最後にスカッとする冒険譚」を「新機軸」として上載せしたのが『スター・ウォーズ』でした。

 もう一つ、「土台」となっていたのが、TVドラマの『宇宙家族ロビンソン』(1965-68)と『スター・トレック』(1966-)です。しかしどちらもTVゆえ、比較的低予算、特撮はどうしてもチャチさを抜け出せません。そこで大健闘したのが『謎の円盤UFO』(1970-)、さすが『サンダーバード』譲りの特撮は超一流でしたが、舞台は1980年とされ、未来に飛び込んだ自由さはなく、それに英国風で、どことなくジトッと暗い。

 それらの物足りなさを一気に充足したのが、特撮にしっかりとおカネをかけた上で、「国籍不明、年代不明の、剣と魔法のアドベンチャー」を素直に宇宙へ持ち込んだ『スター・ウォーズ』でした。

 「自由奔放な明るい冒険譚」が「新機軸」だったわけです。


 さてSForライトノベルの分野で、20世紀最大のメガヒットは『銀河英雄伝説』(1982-)でしょう。

 『銀河英雄伝説』の作品力の「土台」はやはり宇宙活劇スペースオペラですね。『宇宙戦艦ヤマト』(1974-)と『スター・ウォーズ』(1977-)、映画版『スター・トレック』(1979)にTVドラマ『宇宙空母ギャラクティカ』(1978-)を踏まえて、国内のスペースオペラ人気がブワーッと高まった一番おいしい時期に出版され、最高のタイミングを得ました。

 あン時にスペースオペラの新作を出しておけば……コンチクショー……と地団太を踏む若手SF作家、多かったのではないかと思います。

 そして『銀河英雄伝説』(1982-)をメガヒットにまで押し上げた「新機軸」は何だったのか。

 あくまで私見ですが、「三国志」だと思います。

 つまり「スペオペ三国志」。それとも「宇宙版キングダム」?

 それがヒット要因でした。古代の戦争歴史書を思わせるスタイルで叙述され、魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備、さらに関羽、張飛、諸葛亮孔明にそれぞれ相当するような登場人物を配したのは誠に巧緻、これに古代ローマ風のヨーロッパテイストをまぶして北欧神話のドレッシングを施したことで、既存の英雄伝のイメージに拘束されない、自由で壮大な銀河のドラマが語られたのだと思います。

 とはいえ、光年単位の超巨大な宇宙空間で戦われる艦隊決戦が、二次元の陸上戦と同じ手法で描写されたのは、一つのスタイルとはいえ、SFファンにはちょっと「許せない」感覚もあったのですが、読者はそんなこと気にしなかったわけですね。

 というわけで、『銀河英雄伝説』は、ブーム絶好調のスペースオペラを「土台」とし、三国志を「新機軸」として上載せしたことで成立した、メガヒット作だったと考えております。


 『涼宮ハルヒ』シリーズ(2003-)も「土台+新機軸」でメガヒットしたと思われますね。

 「土台」になるのは20世紀の『時をかける少女』(未来人登場)や『狙われた学園』(未来人&超能力者登場)等から連綿と続く「学園SFもの」。

 それらを踏まえて構築された物語の「新機軸」は、「解析不可能な超常現象を扱う本格SF」でした。わりと、ラノベらしからぬハードSFの高品質路線です。

 ハルヒ、長門有希、みくるの三人を中心に発生する不可解なSF現象を、いちおう主人公で語り部役のキョンが「観測者」となって描写するスタイル。これが科学トレンド最先端の量子力学を思わせます。

 つまり、ハルヒたちは「観測者キョンがあってこそ存在する超常現象」であり、「観測者キョンがいなければ、その現象は存在しないのと同じ」ということなのですね。だからキョンはハルヒたちに大事にされるわけですよ。アニメ第一期のオープニングでは、背景にチラッとシュレディンガー方程式が書かれているらしく、何とも量子力学っぽい演出です。

 この魅力的な、そして結構キチッとしたハードSF設定の物語がファンを魅了し、「異世界ファンタジー」の洪水に呑まれていたラノベ世界に斬新な「新機軸」をもたらしたのだろうと思う次第です。


       *


 まとめますと……

 「火の無い所に煙は立たぬ」ように「土台と新機軸あってこそメガヒット作が現れる」ということですね。




     【次章へ続きます】




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