32●ラブコメの快作! 映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』と『憧れの作家は…』のクリソツ感。
32●ラブコメの快作! 映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』と『憧れの作家は…』のクリソツ感。
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さてここで、最近特に再感動している特別な作品。
映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017)です。
どんなお話なのか、「amazon」などネットの作品紹介を引用しますと……
「鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和のもとに嫁いだ亜紀子は、その生活に驚くばかり。ここ鎌倉では、人間も幽霊も魔物も神様も仏様もみんな仲良く暮らしているらしい。鎌倉署の捜査にも協力する夫・正和は、小説の仕事に加え、多趣味でもあり忙しい。亜紀子の理想とはちょっと違うが楽しい新婚生活が始まり…!?」
DVDで何度も観ましたが、出来栄えがパーフェクト!
物語前半の伏線バラマキと、後半の伏線回収がスッキリしていて、細かな点(ラストでキンさんたちが迎えに来た場所はこの世かあの世か、どこなんだ? とか、一色氏の肉体をほったらかしていいのか? とか)にこだわりさえしなければ、とてもいい気分で観終えることのできる傑作だと思います。
DVDの強みは、監督や制作幹部の皆さんのコメンタリーがついていること。これ必聴ですよ。作品世界の、ちょっと込み入って難解だった部分、これで解消します。
ネットを見ると、意外と賛否両論な作品なのですが、ポイントは……
①「幸せ探し」の作品であること
これ、鬼太郎なホラーでもなく怪奇ミステリーでもなく異世界アドベンチャーでもなく「新婚夫婦のラブコメ」なのです。アツアツの二人の「ラブラブな幸せ探し」。西岸良平先生の原作漫画を読めば納得です。
幸せってなんだっけ? と、ちょっぴり幸せな気持ちで考えることのできる、「ほっこりファンタジー」なんですね。ホラーやミステリーやアドベンチャーをガチに期待して構えると、肩透かしを食らいます。つまり、「ホラーやミステリーやアドベンチャー」として評価すれば点数が低くなることを、あらかじめ織り込んでいる作品なのです。
どうかお間違いなく。全編、本質は「ラブコメ」以外の何物でもないのです。ああ楽しかった!
②「魔物と幽霊と神様をセットで扱った」稀有な作品。
魔物、幽霊、神様、この三点セットは、それぞれ別物ではなく、まとめて統一的な考え方で説明されるべき存在です。三者に相互補完関係がみられるからです。
しかし多くの作品では、「魔物、幽霊、神様」のひとつかふたつにとどまり、全体を矛盾なく構成して、しっかりと見せてくれる例は、極めてまれですね。
それを、人の「死後の世界」にからめて、矛盾を感じさせない一篇のヒューマン・コメディにまとめちゃったところ、慧眼です!
通常、悲劇として描かれる「人の死」が、「魔物、幽霊、神様」が綺麗に、統一理論みたいな形で描かれたことで、「死の運命」を心あたたかく捉えた、微笑ましい作風に仕上がったこと、『鎌倉ものがたり』ならではの魅力ではないでしょうか。
「死」は誰にでもいつか訪れるDESTINY。
だからこそ、不幸や悲しみや恐怖で捉えるのでなく、もっとハートウォームなアプローチがあってもいいのでは。その意味で斬新な先駆作なのです。
③「ジブリロス」の欠落を埋めてくれる。
御無沙汰が続いて久しいジブリアニメ。
しかし『鎌倉ものがたり』のビジュアルや演出がいかにもジブリアニメを想起させて、それが決して借り物の安っぽさでなく、むしろ「いい味」を出しています。ある意味、ジブリの欠落を埋める薬効あり。
描く世界が「昭和ノスタルジー満載」なのでジブリ作品に似てくるのは当然ですが、アニメでなく実写であることが、かえって強みになったと思います。同じ画面をアニメにしたら、「ジブリ未満のジブリアニメ」にとどまったでしょうから。
『鎌倉ものがたり』は実写で表現されたからこそ、新境地を開いています。主人公の一色氏が霊体化する場面は特に注目ですが、ここがアニメだったら、全く驚きがありませんね。CGとはいえ実写だからこそ、「面白い!」となりますし、「一度やってみたい」と思わせる楽しさがあります。死と同等の霊体離脱なんですけど、笑えるのですよ。
ちょっと残念なことに、2017年12月に公開された『DESTINY 鎌倉ものがたり』は、興行的には大苦戦しました。
なにしろ『スター・ウォーズ エピソード8』や『妖怪ウォッチ』とカチ合ってしまったのですから……
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で、この『DESTINY 鎌倉ものがたり』は、同じタイトルのノベライズが同じく2017年に出版されております。が……
同じ2017年に出たラノベなテイストの文庫作品『憧れの作家は人間じゃありませんでした』(著:澤村御影)を読んでびっくり。
設定がほぼクリソツ。
「amazon」などネットの紹介文を引用しますと……
「文芸編集者2年目の瀬名あさひは、憧れの作家・御崎禅の担当となる。映画好きで意気投合するものの、彼は実は吸血鬼であり、人外の存在が起こした事件について、警察に協力していることがわかる。」
先に挙げた『DESTINY 鎌倉ものがたり』の紹介文を再掲しますと……
「鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和のもとに嫁いだ亜紀子は、その生活に驚くばかり。ここ鎌倉では、人間も幽霊も魔物も神様も仏様もみんな仲良く暮らしているらしい。鎌倉署の捜査にも協力する夫・正和は、(以下略)」
※この亜紀子さんは、出版社のアルバイトで作家・一色の担当となって一目ぼれし、結婚したばかりという関係。
両者、似てますね。
ということで、同じ年に、「憧れの作家の担当になって結婚した(もしくは惚れた関係の)女性が、魔物や幽霊などが普通に出てくる世界で、怪奇なミステリーに巻き込まれてひと騒動……」という設定のファンタジー作品が並列したわけです。
『憧れの作家は人間じゃありませんでした』では、作中の作家さんが吸血鬼でもある、という点が異なりますが、読んでいて『鎌倉ものがたり』と同じ世界にいるような気分になっていきます。
偶然の一致とはいえ、これも、一つの面白さですね。
ただ、ミステリーがらみという点で一言。
『鎌倉ものがたり』の捜査方法のひとつとして、「殺人事件の被害者の霊を呼び出して事情聴取する」という、鉄板の心霊捜査が登場します。これは絶対アリですね。
しかし、『憧れの作家は人間じゃありませんでした』では、少なくとも一巻目では登場せず、その点は物足りなさが感じられます。
「座敷童」あり「吸血鬼」ありなら「死者の霊」は当然ありですし、故・明智K五郎さんが霊界専門の幽霊探偵となって、化けて出て活躍されても不思議はないのですよ……
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そう考えると、霊界と現世、“あの世”と“この世”をまたにかけたハードボイルド探偵物語……なんてのも成立しますね。
そんなラノベもアリだと思います。
【次章へ続きます】




