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ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
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31●ヒットしそうなラノベの類型:「一途な恋物語」「ロードムービー方式」「幸せ探し」

31●ヒットしそうなラノベの類型:「一途な恋物語」「ロードムービー方式」「幸せ探し」




●「一途な恋物語」

 

 「恋愛ラノベ」はそれこそ無数にありますね。そう、ラブコメ。ラブコメは1970年代に生まれた名称ですが、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『結婚が前提のラブコメ』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』等々、21世紀の今も陳腐化せずに使われている用語であるということは、本当にすたれようのない半永久的な鉄板ジャンルとして確立しているのでしょう。

 ラノベの類型に含まれる作品として、古くは……

 漫画『うる星やつら』(1978-87連載)

 漫画『みゆき』(1980-84連載)

 ※なるほどと思います、両作ともラブコメのバイブルみたいな名作ですね。

 ラブコメの表現は、なんといっても活字よりも漫画が有利、阿吽の呼吸で、二人の表情だけで語れる場面も多いでしょうから。

 21世紀になると……

 漫画『エマ』(2002-06)、アニメ『英國戀物語エマ』(2005)

 漫画『聲の形』(2011-14)、劇場アニメは2016。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2015-20)、アニメは2018-20。

 劇場アニメ『君の名は。』(2016)

 そのほか無数に……


 これらの作品はラブコメのコメディ部分が薄まって、「一途な恋物語」として成功しています。そのテーマを徹底したのが『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。恋い焦がれるあのひとを探しても探しても行き違うかのように報われない展開は、本家本元のラジオドラマ『君の名は』(1952-54)を彷彿とさせます。

 ただ、ヴァイオレットの「一途さ」はあまりにもシリアスなので、強烈なインパクトを残してしまいます。それゆえに「ちょっと怖い」雰囲気も漂います。彼氏が浮気なんかしたら、ヴァイオレット嬢の悲嘆と憤怒はゴジラかビッグバン並みでしょう。もう命がけの相思相愛生活となりかねません。できればコメディの気分も少し交えて、彼女がお腹の底から楽しくて破顔爆笑する場面が、ラスト近くにあって欲しかったなぁ……とも思います。



 ※これからはLGBTQの多様性を推進する方向性から、さまざまな新作が登場することと思います。昭和のラブコメのように男女ペアに限ったシンプルな物語はいまや、社会の実態に合わなくなってきたわけで、中高生の皆さんにとっても目の前の現実の問題であるわけですから、いずれ「LGBTQラノベ」が登場しないはずがありません。

 LGBTQを描き上げた作品がコンテストで大賞を得ても不思議のない時代が到来したということでしょう。私みたいなオッサンの頭の中は大混乱で、もう何が何やら…なんですが。


       *


 「一途な恋」テーマの作品の最高峰は……

 やはりR・F・ヤングの短篇『たんぽぽ娘』(1961)。

 これにまさるお話はありません。

 もうひとつ、同じR・F・ヤングの短篇『わが愛はひとつ』も逸品ですね。




●ロードムービー方式(クエスト、あるいは「股旅もの」) 


 主人公が諸国を旅して、多種多様な事件に遭遇……という筋書きは、昔ながらのラノベの王道とも言えるでしょう。

 ラノベというジャンルが成立した1990年代から、ラノベを代表する作品が、たいていそうでしたね。


 『スレイヤーズ!』シリーズ(1990~)

 『ゴクドーくん漫遊記』シリーズ(1991-99)

 『スクラップド・プリンセス』(1999-2005)

 ※これに加えて……

  『キノの旅』シリーズ(2000~)

 ※それに、こちらもロードムービー方式ですね。

 漫画『ONE PIECE』(1997~)

 ゲーム『ドラゴンクエスト』(1986~)も、クエストですから、近似値の作品と言えるでしょう。

 ※比較的最近では……

 『錆喰いビスコ』(2018~)

 『魔女の旅々』(2016~)

 『豚のレバーは加熱しろ』(2020~)

 その他いろいろ……


 ※ロードムービー方式の「股旅ラノベ」こそ万古不易のトレンド!  しかもコンテスト大賞作品あり、メガヒット作品ありで、王道中の王道かも。コンテストに応募するなら「股旅ラノベ」だ! 知らんけど(関西弁)。


 というのは、もちろん古典に大ヒット名作があるからでして……

  『水戸黄門漫遊記』

  『東海道中膝栗毛』

  『西遊記』

 なるほどとうなずくしかありませんね。

 ロードムービー方式はラノベの王道! ロード・オブ・ザ・キングなのです。


 ※なんといっても最後は印籠ひとつで万事解決&一件落着の水戸光圀公こそ、チート力で全国制覇する史上最強のラノベキャラではないかと……。イケメンの助さん格さんに、入浴シーンがお約束の美女といい、キャラ設定はもう「時代劇ラノベ」。そのまま異世界に転移していただいても即戦力で活躍できそうな皆様ですね。


 ※もっと古くは……

 ホメロスの『オデュッセイア』(紀元前8世紀頃)に収められたエピソード「アルゴー号の冒険」。

 アラビアンナイトの『シンドバッドの冒険』(国産劇場アニメは1962)

 シェイクスピアに並ぶ文豪セルバンテスの『ドン・キホーテ』(1605)。

 イプセンの『ペール・ギュント』(1867)。

 ※こうなると、むしろロードムービー方式こそラノベの基本に見えてきます。

 なにぶん便利なことに、完結しなくても「そして旅は続く……」で終われば体裁がつくんですから。



●幸せ探し


 「幸せ探し」……

 これ、古今東西のファンタジーの究極目標ですね。達成できるかどうかは別として、主人公たちが目指すゴールは「幸せ」であること、論を待たないと思います。


 ラノベ以前は、もっぱら少女漫画で幸せが探されていました。

 少女漫画に分類される作品、「クモ少女」なんかのホラー系は例外として、まず全部が、ヒロインの「幸せ探し」の物語だったと思います。


 「幸せ探し」のテーマで、とくに印象深いのは……

 「ふくやまけいこ先生の作品群」です。1980年代から現在まで、息の長い御執筆に加えて、作品が少しも古くならないことに驚きます。作風はレトロムードですが、それがいいのです! お味噌汁の味は百年たってもお味噌汁なのですから。

 とにかくお読み下さい。「幸せって、こうやって探すんだよ」と教えていただける、素晴らしい作品ばかりです。

 初期作品として、最近復刊された『エリス&アメリア ゼリービーンズ』『何がジョーンに起こったか』、そしてファンタジー好きな方には『話の話』、なお小品ながら『週刊マンガ日本史:ひめゆり学徒隊』は必見! “幸せを探す少女たち”って、これですね!


 「幸せ探し」のテーマは、スローライフ系の物語に合います。

 漫画『ヨコハマ買い出し紀行』(1994-2006)

 TVアニメ『NieA_7(ニア アンダーセブン)』(2000)と『灰羽連盟』(2002)

 そして、ちょっとドタバタですが、TVアニメ『アベノ橋魔法☆商店街』(2002)も、昭和の薫り高きスローライフ感覚の佳作ですね。

 とくに『NieA_7』、大好きです。宇宙人のハッピーなボンビーライフは絶品!


 またTVアニメの、『世界名作劇場』の作品群は、ことごとく「幸せ探し」がメインテーマだと断言できるでしょう。

 『アルプスの少女ハイジ』『小公女』『フランダースの犬』『ペリーヌ物語』……


 だから「幸せ探し」の古典といえば……

 メーテルリンクの『青い鳥』(1908)に尽きますね。

 おなじみ、チルチルとミチルの兄妹が、伝説の青い鳥を探して異世界を旅します。

 これ、クリスマス・イブのお話。

 しかも筋書きは、ロードムービー方式。

 ファンタジー系ラノベな物語のバイブルです。


 『銀河鉄道999』(漫画は1977~1999)はこの『青い鳥』をモチーフにしているとされ、TVアニメ主題歌の歌詞でも「♪ひとはだれでも しあわせさがす 旅人のようなもの」とあり、「♪きみも出会うさ 青い小鳥に」と締めくくられます。


 これ、ラノベの普遍的テーマと考えてもよいのでは?


 人間誰しも、幸せを探して生きようと、もがいていますね。

 幸せを探す意欲すらなくなった時、人は生ける屍になってしまいます。

 しかし21世紀のニッポン。

 貧しさが原因で「幸せを探す」ことすらままならない人々が増え、その一方で「自分の幸せを得るために他人を平気で不幸にできる」人も増えているのではないでしょうか。私たちはゾンビじゃないけれど、まるでゾンビのように生きているのでは?

 「幸せ探し」はますます、困難な旅路となりつつあります。

 その意味でも、「ほんとうのさいわいをさがす」物語が求められているのかもしれません。

 まさに、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』みたいに……

 あ、『銀河鉄道の夜』も『銀河鉄道999』も、ロードムービー方式でしたね。

 なにかにつけて「愛」を主張する点が耳タコ気味でしたが『宇宙戦艦ヤマト』(1974)も往復数十億光年という壮大なロードムービー方式でした。


       *


 で、「幸せ探し」の結末は……

 じつは、わりと簡単なのでは?

 チルチルとミチルが探す、幸せの青い鳥は、意外と近くにいましたよね。


 「幸せ探し」……どのようなファンタジーを書くにしても、最終的に帰結するのはこの一点に尽きるのかもしれません。




   【次章へ続きます】



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