15●次に何が来るのか? それが問題だ。
15●次に何が来るのか? それが問題だ。
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にしても……
書くしかありません。
ラノベの書き手を取り巻く環境は、いよいよ残酷物語の魔境に入ってきました。
これまでをまとめますと……
ラノベを含む文庫の出版市場は21世紀の20数年で半減しました。
ラノベの読者としてとらえられてきた二十代以下の若者は、今後十年間は増えることなく、二割ほど減ってゆくばかりです。
常識的に、ラノベは今年よりも来年、来年よりも再来年となるほどに、確実に売れにくくなってゆくはず。
つまり、お先真っ暗。
対策のひとつとして、ラノベの読者として二十代以下の若者にこだわることなく、「ラノベから卒業していないオタク高齢者」を読者対象に取り込むことが考えられるでしょう。
それは「シン・〇〇」の映画シリーズを支持した人口層です。
それらの人々は、心の中で待っていることでしょう。
ジブリアニメの系譜を継ぐ作品、そしてエヴァンゲリオンと世界名作劇場の空白を埋める作品を……と。
その作品に必須の要素は……①昭和ノスタルジー、②聡明な中高年キャラの存在、 ③「いかにして手に入れるか」よりも「いかにして何を残すのか」という視点。
いかんせん現在のラノベは、わりと基本的な設定の矛盾とか、変換ミスなどの誤字脱字が指摘されます。出版前の校閲を重視してストーリーを改良し、過去の作品を読みなれた高齢読者の「なにか物足りない」感を充足させることも大切でしょう。
「即席で感動する」作品よりも、「じっくりと時間をかけて感動する」作品を、高齢読者は求めているのではないでしょうか。ファストフードやレンジでチンではなく、よく漬け込んだ沢庵や梅干し、コトコト煮込んだシチューや鍋物のような。
そこで今後は……
文庫レーベルの看板は「若者向け」であっても、作品の内容は、六十代の高齢者でも読み応えを感じるような作品が現れて来るのではないか、と予測しています。
アニメでイメージするならば、「死んで転生、チートで無双」のパターンでなく、二十年ほど昔の『カウボーイビバップ』『theビッグオー』『トライガン』『ノワール』『スクラップドプリンセス』などなど……を乗り越えようとする作品ですね。
もちろん『新世紀エヴァンゲリオン』や『少女革命ウテナ』を意識して、さらなる高みを目指す作品もあるでしょう。
高齢読者は、それらに加えて、『世界名作劇場』やジブリ系作品のシャワーを存分に浴びて青春を謳歌してきた世代です。いかにして手に入れるか」よりも「いかにして何を残すのか」という視点が不可欠となることは明らかです。
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さて、現在のラノベ界を席巻している、「死んで転生、チートで無双」パターンの異世界作品群、そのブームはいつごろから始まったのでしょうか?
私見ながら、如月ゆすら氏の『リセット』(2010~)と、カルロ・ゼン氏の『幼女戦記』(2013~)が、異世界転生ラノベのブームを決定的に推進したものと思います。
ですから、ブームは「ここ十数年」の間、続いてきたのであり、ブームを支えたのはおもに二十代以下の若者層だったでしょう。
しかし問題は、若者層だけを対象としていたら、今後20年ばかりは、確実に人口が減り、マーケットが縮小することです。
ニッポンの人口ピラミッド(2022 総務省 国勢調査等を基にGD Freak!が作成)を再度、振り返ってみましょう。
十数年前に二十代前半でブームを牽引した層は、2022年現在、三十代後半ですから……
●35-39歳 男性380.1万人、女性365万人。
しかし、今の二十代前半は……
●20-24歳 男性321.9万人、女性305.5万人。
これが、20年後にどうなるかというと、現在の0-4歳の人口数となります。
●0-4歳 男性228.0万人、女性217.1万人。
二十代以下の若者層だけを読者としていると、今後20年間は着々と人口が減り続けること、火を見るよりも明らかですね。
一つの解決策として、団塊ジュニア世代である「四十代後半よりも高齢の人口層」へと読者対象を露下、そのまま今後20年間、読者として持ち上がってくれることを期待する……という考え方もあると思います。そうすれば、読者対象は、下記の人口数となります。
●45-49歳 男性494.9万人、女性479.7万人。
現在の「0-4歳」の人口の、倍以上ですね。
今後は、若者に対して売ることに拘泥せず、「中高年にも読まれるラノベ」を意識すべきでしょう。そうせざるを得ない時期に差し掛かりつつあると思います。
なぜならば……
「死んで転生、チートで無双」パターンの異世界作品群、そのブームはすでに十数年、続いてきました。いつのまにか、干支の十二年をぐるっと一周したのです。
もう、盛り上がりのピークは越えたのではありませんか?
そろそろブームをシフトチェンジする時期が到来しつつあるのではないか?
つまり、「次に何が来るのか、それが問題だ」ということですね。
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さて、ここまで十五章をかけてクダクダと述べてきた内容、出版社の編集氏さまは、すべて先刻ご承知でしょう。
ラノベの出版を取り巻く危機的状況は、編集氏さまこそ、重々にご理解なさっているはず。
もう待ったなしで、何らかの手を打とうとされていると思われます。
「死んで転生、チートで無双」パターンの異世界ラノベブームの次に来るものは何なのか?
新たなラノベフロンティアの開拓者を求めて、編集氏さまが、さまざまな“観測気球”を上げておられることが、巨大小説投稿サイト内で実施されている各種コンテストから推察することができます。
編集者の側から、かなり具体的な「お題」を設けているからです。
例えば……
① 従来ありがちだった“お馬鹿キャラ”ではない、「賢いヒロイン」のお話。
② 異世界作品ブームの前に21世紀初頭の市場を席巻した「デスゲーム」作品。
③ 十代前半を対象とする、昔は“ジュヴナイル”と呼ばれた「児童小説」。
④ すたれることなくファンが付く「学園ミステリー」。
それぞれのジャンルに対して、将来的な可能性を探ろうとされていることが、解りますね。
③の「児童小説」は、今後、読者人口が減少してゆく分野であり、有望ではなさそうに見えますが、その狙いはおそらく「ハリポタよ再び!」でしょう。子供たちだけでなく、むしろ四十代の大人の心も掴んで、その膨らんだ財布の紐を緩めてもらえれば大成功です。
それに、「児童小説」コンテストの審査員さんは、たぶん子供でなく大人なんでしょう?
作品の良し悪しを判断するのはオトナ、買うのもオトナなのです。
【次章へ続きます】




