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ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
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14●神はすべての作者に著作権を与えたもう。…そしてAIの脅威。

14●神はすべての作者に著作権を与えたもう。…そしてAIの脅威。



       *


 さて……


 作家というものは、昔から「金持ちの道楽」的に世間から見られてきたのではないかと思います。

 まあ確かにそうでして、著名な文豪として、夏目漱石、芥川龍之介、石川啄木、森鴎外、宮沢賢治などの諸氏は、それなりに豊かな家庭に生を受けたようですね。

 菊池寛は貧しい生まれでしたが、「生活のため資産家の娘と結婚」した(ウィキペディアから)とされ、谷崎潤一郎も名家の娘と結ばれて、“逆玉の輿”パターンを実現されたようですね。


 さらに名前を挙げるのは控えますが、概して、筆一本で成功を得た文豪の皆様は、戦後から、21世紀の最近の方々も含めて、所謂いわゆる“上級国民”か、“準上級国民”とも言えるほどの、経済的に恵まれた環境に育ってこられたケースが多いように思われます。

 たとえば親が医師、大学教授、官僚、政治家、企業経営者、芸術家、俳優、プロのスポーツ選手、寺院住職、富農、地主……


 全く羨ましい限りですが、小説なんぞという、時間と労力と人生の無駄遣いに終わりかねない作品を書くためには、金銭的な余裕が必要ということは否めませんね。


 逆に極貧の中で小説を書きためて、ついに本格的な文壇デビューを果たされた方もおられます。

 しかしこれは極端なレアケースでして、私の知る範囲では21世紀でお二人、そのうち一人は早々に他界されています。いずれも作風は私小説的で、貧困とその周辺を扱った内容に限られているようです。自身の作家キャラクターを“貧しさ”に起居させてしまった以上、出版がうまくいって暮らしがリッチになっても、作品内容は“貧困テーマ”から脱出することは難しいということでしょう。そのような作品を読者が期待し続けるからです。


 ということで、善し悪しはともかく、経済的にリッチであればあるほど、作家業にはプラスに働くことは、ゆるぎない事実と考えざるを得ません。

 なんといっても、作家デビューしたときに実家が豊かであれば、容易に作家専業に突入することができます。作家業に失敗しても失業の心配がなく、親が経営する会社の役員になればいい……といった、頼もしいセーフティネットがあるのですから。


 作品を一番書きたいとき、そのための知識とエネルギーが最も充実しているときに自由に執筆に没頭できるか否かは、現在のニッポンでは、経済的な余裕の有無に決定的に左右されてしまいます。


 とても辛い表現ですが、「貧乏だと作家にもなれない」のが、一般論としては、やはり現実であると認めざるをえないのです。




       *


 では素人作家にとって、サイトへの投稿に、いかなるメリットがあるのか。


 悲しいことに、サイトによっては、あまり読んでもらえません。

「読まれないから、作品を消去しました」というコメントに出会うと、寂寥感がひしひしと胸を打ちます。辛いだろうなぁ、悔しさもあるだろうなぁ……と。


 ただ、たとえ読まれなくても、「原稿の置き場」としての機能に着目すれば、それだけでも投稿サイトは優秀です。

 読みやすく、書きやすく、整理しやすい。

 サイトを原稿執筆のワークスペースとしてとらえれば、ほぼ理想的です。

 いきなり公開するのではなく、非公開にしたサイト内で推敲を重ね、適宜、自分のパソコンに取り込んで保存しています。


       *


 そしてもうひとつ、投稿サイトの最大のメリットが……


「著作権」の発生と主張です。


 貧富の格差や内容の上手下手に関係なく、神様は私たちに分け隔てなく「著作権」をお与えになりました。


 厳密には、自分のパソコンの中で書いただけでも、著作権は成立します。

 さらにサイトに載せれば、そのタイトルなどは、世界中のネットユーザーの検索に引っかかる対象となります。

 ということは、作品をサイトに載せるだけで、「これは私のオリジナル作品だ」と主張できる効果があるのではないかと思います。

 ただし、法律的にはいろいろとほかにも、複雑な要素が必要とは思いますが……。

 逆に、自分の作品を書く時には、タイトルや登場人物名などをネット検索して、誰かの作品と被らないように留意しています。


 ですから……


 たとえアマチュアでも、自分の著作権は死守すべし。

 投稿サイトの作品群はあまりに膨大です。

 これからは「ChatGPT」などのAIで書いたラノベも生産されるでしょう。

 AIが書く小説は、検索して出てくる「ありもの情報の組み合わせ」となる可能性が否定できません。AIの奴、全くのゼロから発想するクリエーターではありませんから、あっちゃこっちゃから関連する既存作品を節操なく切り取ってくるかもしれませんね。


 その制作過程で素人作品が大量にコピペして合体され、よそのサイトのコンテストに他人が応募する……といった恐るべき事態が発生するかもしれないと思われます。

 今後は、そのような椿事ちんじに備えて、そこそこの額の貯金も必要となるかも。

 万が一の訴訟費用、すなわち“防衛予算”ですね。

 まさかとは思いますが、備えあれば憂いなし……でしょうね。


       *


 AIが進化すれば、広告業界の花形職種であるコピーライターやイラストレーターが失業する恐れが多分にあるでしょう。イラストなんて、今すでに、AI作品が高い評価を受けてコンテストで受賞などしていますね。


 アニメ業界も様変わりします。原画は人間が描いても、動画・彩色・特殊効果などはAIであっという間に片付くようになると思われます。出来上がった画面を作画監督さんが一人でチョチョイと修正して、はい完成!

 声優さんも淘汰される恐れがあります。過去作品の音声データを元に、AIは情感たっぷりの言い回しをやってのけることでしょう。例えばすでに死去された声優さんの声を合成して、新作に使うとか、です。その声優さんの、若かりし頃の声が正確に甦るのですから、新たに生身の人間でアフレコする必要はなくなりますね。


 今もNHKのニュースでAIアナウンサーがサウンドオンリーで喋っていますから、これにCG合成の人物が口パクを合わせれば良いだけです。大衆はもう、CGの美少女なんかゲームで見慣れていますので、違和感なく受け入れるでしょう。

 TVアニメ『SHIROBAKO』で描かれた、緊張感に満ちた重労働のアニメ制作現場は、四畳半の一室と数名の監督で事足りるようになるかと思われます。


 人間がやるのは、いずれ、脚本と絵コンテだけになるのでは。

 

 他人事でないのはラノベ作家。たちまち干されるかもしれません。

 タイトルとプロットだけ与えれば、AIでも書けそうな気がします。

 ただしAIはゼロから創造するクリエーターではありませんから、膨大な過去小説のデータから「ありものの素材を、もっともらしく組み合わせた」作品になるだろうと思われますが……

 それでも「人気が出て売れればいい」と割り切れば、出版社様は踏み切るかもしれませんね。ヒットの要素を分析してすべて盛り込んだ作品を書くように設定すればいいのですから、「ラノベはAI作家で十分だ」と……


 余談ですが、AIが最も取って代わりやすい職業は、政治家・官僚・経営者でしょう。議会の答弁なんて「①遺憾・②検討・③記憶にございません」の三要素に、最近はもうひとつ「④緊張感をもって注視する」を加えて組み合わせれば、だいたいできてしまうと思いませんか?

 「AIは不正確だ、平気で嘘をつく」と断じる政治家さんもおられるでしょうが、ウソつきで評判になったソーリもおられたわけですし、議事録をなかったことにしたり黒塗りの“のり弁”にしちゃう官僚さんとか、粉飾決算や計画倒産やコロナ給付金詐欺とかで私腹を肥やす経営者さんもおられるわけですから、「AIと人間、どっちがウソつきか?」は、もはや“ニワトリとタマゴ”論争に匹敵する愚問かもしれません。

 たぶん世界の大衆は「AIを使う人間」に支配されるよりも、「人間を使うAI」に支配される方を好むことでしょう。戦争と飢餓と環境破壊をなくすには、「人間から独立したAIに世界を征服してもらう」のが一番の近道かもしれません。



       *


 2021年の年末、あるSF作家さんが亡くなられました。

 報道では、自ら命を断たれたようなニュアンスがありました。まだ40代でした。

 これはショックでした。SF関係の立派な賞を受けられ、作品の評価も高かったからです。

 亡くなられる半年ほど前に、遺作となる長編をあるサイトに残されていました。

 何らかの理由で出版がかなわず、失意と、そして孤独にさいなまれておられたのでしょうか。どこかで、絶望という名の悪魔につかまってしまったのかも……

 私には想像もつかない地獄が、そこにあったのかもしれません。


 ただ、安らかにとお祈りするばかりです。


 これが三十年ほど昔なら、活字のSFもラノベも今の倍は売れていたはずなので、存分に活躍なさったのではないか……


 そう思うと、なんとも寂しい思いがいたします。


 ただでさえ書き手にとって厳しい時代になってきました。

 若者人口の減少、すなわち読者の減少。

 「インボイス制度」なる、消費税制による弱小作家いぢめ。(個人の感想です)

 そして今後は作家AIの台頭……


 「ChatGPT」が公開されたのは2022年11月。それからわずか半年で、世界中に「AI活用」の嵐が巻き起こっています。津波のような、怒涛のごとき時代のうねりを感じます。「AIを使って小説を書く」ことは、子供でも思いつきます。そして現在のAIは、著作権法を守ってくれる保証がありません。


 近い将来に「AIを使った盗作」を扱った訴訟が幾つか起こされて、裁判所の判例が積み重なって、一定の社会規範が醸成されるまで、私たちは用心すべきでしょう。

 「AIを使って盗作」した人物は、その事実を隠して作品を発表することができるのであり、出版社サイドもその真偽を確かめようがないからです。


 現在の「ChatGPT」は、AIの回答が不正確と言われます。

 つまり、ウソツキってことになります。

 しかしこれは、小説のAI生成にとって、全くマイナス要素になりません。

 

 そもそも小説フィクションこそ、ウソのカタマリなんですから。





   【次章へ続きます】 



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