表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
PR
13/54

13●転生者は自分一人のはずがない。そして、「現実と戦うラノベ」への期待。

13●転生者は自分一人のはずがない。そして、「現実と戦うラノベ」への期待。



       *


 現代ラノベの「物足りなさ」について、引き続いて……



【CASE5】

 合理主義者のエリートサラリーマンが故意に電車ホームから落とされて死亡、異世界で天才的な魔法少女に転生、国軍の魔法航空隊指揮官を務め、第一次大戦と第二次大戦の戦間期並みの軍事科学と戦術魔法が混在した戦場で、大戦果を上げてゆく。


 TVアニメと劇場版を観たのですが、そのとき期待したのは、敵役に「前世で天才的な軍略家だった人物が転生してきて、もう一人の天才魔法少女となって主人公の前に立ちふさがる」という設定が登場しないかなあ……ということ。

 主人公と同様のチート転生者が主人公の少女だけでなく、敵方にもう一人いたら……と望むのは私だけでしょうか。実現すれば、ロンメルvsパットン、楠木正成vs真田幸村、ハルゼーvs山口多聞といった夢の好カードに匹敵するかも、ですし。


 というのは、転生者は自分一人だけと思ったら大間違いで、現在、この地球上では毎日毎日一万五千人余りが死亡しているわけで、けっこう大変な数の魂が日々、転生しているだろう……と思うのが、むしろフツーなはずです。


 とすると、異世界の人間は全員が転生者で、たまたま前世の記憶を持ったまま生まれてくる人が少ないだけかもしれません。

 とはいえ、自分ひとりだけ転生者、というのはやはり不自然。

 神様からチート力をもらうのが一日一万五千人の死者の連続の中で自分一人だけだなんて、そこまで特別扱いされる理由はないでしょう。神様から見てチート力を授けて転生させてあげたいと思う、将来有望な魂、他にいくらでもいるでしょう。


 異世界転生アニメの嚆矢こうしは、一般に『聖戦士ダンバイン』(1983-84)とされますが、転生する聖戦士は主人公一人だけでなく、早々に計7人登場しましたね、納得です。

 自分ひとりだけ、という、「ぼっち転生」は、たぶん、確率的には、ありえないほど少数派ではありませんか?


 ですから「前世の軍事知識を備えた、もう一人のチート転生者」こそ【CASE5】の主人公の少女にとって最強のライバルとなり得るわけでして、これはぜひとも、ご登場を願いたいものです。(私、最近の書籍版は読めていないので、すでに登場されていたら、失礼をお許し下さい……)


       *


 転生者、ホントはもっと一杯いるはずの異世界。


 とはいえ、みんながみんな前世の記憶を持って生まれた転生者で構成された異世界は、主人公にとって前世と同じで、全く異世界ではなくなってしまいますね。


 まあしかし、そういうお話も、あっていいのかもしれません。

 みんな「告白するのは恥ずかしい」から黙っていただけで、よくよく訊いてみれば「俺も転生、あんたも転生、あっちもこっちも、みんな転生?」な世界って、案外、本当にあるのかもしれませんよ。“転生インフレーション・ワールド”ですね。


 ひょっとすると、この世界だって……




       *


 それに、「神様」が登場すれば、「幽霊(霊魂)」や「魔物(悪魔、魔王)」も同時に、かつ並列的に存在することがうかがわれるわけで、この「神様・幽霊・魔物」が物語中でそれなりに納得できるように配置されていないと、やはり「物足りなさ」につながってしまうと思います。


 まあ、そもそも、異世界が存在すること、そちらへ転移転生すること自体が巨大な謎でありますから、「死んで、とりあえず転生ありき」とする物語は、それだけでいくらかの「物足りなさ」を含んでしまうように思います。

 というのは、「死んだらどうなる」はフィクションでなくガチのリアル世界における、切実な謎なんですから。他人事じゃない、自分事として。


 「死んで、とりあえず転生する」物語は、21世紀の20年余り、あまりにも大量に作られ続けて、一読者としては、もう、さすがにお腹一杯な気分です。

 そして振り返れば、20世紀には、『紺碧の艦隊』以外にはほとんど見られなかった作品群でもあるわけです。

 「死んで、とりあえず転生する」お話が、世紀を超えたとたん、なぜこれほどにも大量出現したのか、それ自体もおおいなる謎ですね。編集氏の皆様にお尋ねしたいところです。

 「異世界で“やり直し”」という作品ジャンルがあるほどですから、「生きる価値のないリアル社会と現世に対する絶望感」が「とりあえず転生」作品の背景にあることは察せられますが、それならば、より積極的に「現世を世直しする」テーマの作品がもっと現れてもよさそうなものです。


 現実から逃避するのでなく、現実と戦う作品。


 描かれているのが異世界でも、「現世を世直しする」という心の動機に通じる作品ですね。

 そろそろ、そういう作品を読みたいものです。

 空想の物語でどれだけ異世界にトリップしたところで、このくだらない現世の人生は否応なく現実そのものであり、いちどしかない、やり直しがきかないものであるという事実は変えようがありませんし。

 それならばこの世界のどこを、どのように変えればいいのか、そんな示唆をもたらす物語が、もっと生まれてきてもよさそうなものです。

 ごく身近なことでも、いいはず。

 (なにはともあれ、ラノベ読むなら選挙に行くべし、若者よ! みんなで清き一票の権利を行使すれば、世の中、少しは変わるはずだから)



  【次章へ続きます】





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ