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ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
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11●現代ラノベの「物足りなさ」は、メンドクサイことを省略したいから?

11●現代ラノベの「物足りなさ」は、メンドクサイことを省略したいから?




 現代ラノベの「物足りなさ」について、前章に引き続いて……



【CASE4】

 主人公は新人サラリーマン、しかし就職先は壮絶なブラック企業。上司のパワハラが日常茶飯事で、とうとう精神を病んで、あわや鉄道自殺する寸前、「高校の同級生」だという不思議な男に助けられる。そして何度か会ううちに友情が生まれ、人生を見直して、他の職業で再出発するきっかけをつかんでゆく……


 ……と、これもいいお話で、映画化もされたのでDVDを観ました。

 すると気になる。主人公の実家はブドウ園を営んでおり、いかにも高級なマスカットなどを送ってきてくれるではないか! ……そこで初歩的なギモンが。


 どうして主人公は、実家の家業を継がないのだ?


 これが物凄く、ひっかかります。なにもブラック企業にこだわらなくても、最初から別の道がセーフティネットの如く用意されているではないか!? そこで原作の小説を読むと、主人公の実家はどのような仕事をしているのか、もやっとぼかしてあるわけです。何を家業にしているのか、文中の表現では判然としません。


 それらを踏まえた上で物語を結末に持っていくには、主人公が「何らかの事情で家業を継ぐことができない」理由を説明しなくてはなりません。しかし説明するとなると、両親や家族とうまくいっていないとか、家が実は経済破綻しているとか、身勝手な家出で家に帰れないとか、なんだか深刻な事態が登場することになります。

 すると物語の主軸が、「ブラック企業からの脱出」から「家庭の問題解決」へとシフトして、要するに、プロットが複雑化して“面倒くさく”なるのです。

そこをスルッとスルーしちゃったかも?


 こちらも、美しい結末を優先するために「細かいことは気にしない」的に、読者の気にかかる問題点に触らずにスルーしたような印象が残ってしまうのです。



       *


 つまり……

 たぶん20年ほど昔の編集氏なり校閲の関係者ならば、そういった“気になる点”を事前に指摘して、作品を版組みして校正するよりも前の段階で作者に修正を示唆していたのではないかと思うのです。

「ここはやはり、主人公は普通このように考えてこうするだろうから、つじつまが合うように直したら?」ということですね。


 そういった“作品の点検”を、いまどきのラノベの編集氏は確実に行っておられるのだろうか? と、なんだか疑問になってしまうところです。

 美しい結末を前にして、まあ、どうでもいいような些事は無視してもいいだろう……というご判断なのかな、ひょっとして?


 しかし、校正の前に修正すれば、観客や読者の納得度は、より高まるでしょう。作品は質的に洗練されるはず。


 しかしそういった《《面倒くさいプロセス》》は省いて、とにかく「結末の美しさ」が全てであるようなラノベがあふれ返っているような……?


 DVD等で映画観賞するのに、最初から早送りでチャッチャと結末を見てしまう、あるいは既製のファスト映画を大量に消費する人たちが増えたといいます。

 物語のプロセスはメンドクサイ、手っ取り早く、即、結末を知ればいい……という、昭和人には理解しがたい風潮も影響しているのでしょうか。



   【次章へ続きます】


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