037 ゼロ
〜ロスクルド帝国〜
荒れ果てた大地に、その男は立っていた。
「久しぶりだな。ゼロ」
ゼロと呼ばれる男は、ロスクルド帝国のバルーデ禁足地にいた。
5年前の戦争で、ここバルーデは戦火に見舞われた。
かつては、本国と外国を結ぶ大きな港町があったそうだが、今は見る影もない。
以来、軍がこの土地を管理しているのだが、何があるのかは軍人と王家の者にしか分からないのだ。
ゼロが声のする方に目を向けると、そこにはロスクルド帝国の王の姿があった。
「何の用だ?フィリップ。」
無精髭を生やした男が、細い目でフィリップを睨みつける。
癖のある髪の毛は、どこかフィリップと似ていた。
「それはこいつから説明してもらう。」
隣にいた男を前に差し出した。
「誰だぁ?そいつ。」
隣にいたのはハーロン博士だった。何やらこの男に用があるらしい。
「わ、私はマイケル・ハーロン……ロスクルド帝国がこの世界を支配するために尽力する科学者です……。」
ハーロンはたびたび問題視されるような実験を繰り返していた。食虫植物に切り刻んだ小動物を食べさせたり、野生動物の子供を群れから離して単独で生活させ、ストレスを与えてみたり…今回もきっとまともな事はしないだろう。
「なぜ俺に会いに来た? 」
「じ、実は、ロスクルド帝国の歴代の王の遺伝子には、不思議な情報がプログラムされているのです……。で、ですので王族の血を継ぐあなたに実験の協力をお願いしようと……。」
「実験?」
元々目つきの悪いゼロが、博士を睨みつける。
「は、はい。フィリップ様とゼロ様の遺伝子細胞を、他の人体に取り入れるのです。そ、それにより身体に何かしらの変化が生まれるかもしれません……。」
「誰の身体に移すっていうんだ? 」
「そ、それは私が実験台になります。うまくいけば、兵士達にも取り入れ、せ、戦力の上昇が見込めるかと……。」
ゼロはあまり乗り気ではない様子だが
「ま、いいか。継承順位は低いけど王族の血が流れてるもんな。俺も協力するよ。ただし、争いはごめんだぜ? 」
「あぁ、わかってるさ。」
普通の人では入れないこの地で、2人が手を結んだ。ビバ帝国側が弟子達を鍛えている一方で、ロスクルド帝国側も新たな戦力を加え入れようとしていたのだった。
ゼロ。彼は一体、何者なのだろうか。




