第62話 大決戦!! 響夜死す!
転生する響夜。我が身を犠牲に悪を倒そうとしますが。その結果は……。
また、熱心に書いてたら文字数オーバーしてしまいました。すいません。
王城付近の草原。
おやつ時。
俺、御剣 響夜は仲間全員をテレポートで強制的に逃がし、太子の操る赤鬼・鳴鬼を倒すために爆裂魔法を発動させる。
――しかし、鳴鬼は相当なダメージを受けはするものの、命を落とすには至らない。
一方こちらは至近距離で爆裂魔法を使用した弊害か。体がバラバラに吹き飛んでしまい、命を落とす。
だが、新たに習得したスキルを臨機応変に使用。
人体錬成したっきり、しまいっぱなしだった――うっきゅっぽゎの変異体クローンに憑依して転生した。
で、仕切り直し。
現在、互いに向かい合ってる。
「今度こそ道ずれににしてやる! 《爆裂魔法》!!」
『また爆裂魔法だと!?』
鳴鬼は爆裂魔法耐え抜いたものの。かなりガタがきてるはずだ。
もう一発爆裂魔法をぶち込めば、確実に決まる。
確実に仕留めるために。また至近距離で爆裂魔法を発動させた。
曲りなりにも今の俺の体は――高名な魔法使いうっきゅっぽゎのクローン。
魔力だって十分ある。
爆裂魔法だって問題なく使える…………と思う。
『こ、こんな馬鹿な!』
思った通り、爆裂魔法は問題なく発動してくれる。
鳴鬼の土手っ腹に閃光が走った。世界が白くなるような閃光だ。続いて熱風。次に振動。最後に、轟音が耳をつんざいた。
完全な状態なら耐えれても、ズタボロの状態では耐え抜くなど不可能。
今、ヤツは地獄の苦しみを味わってるに違いないだろう。
声のトーンから、自らの消滅が信じられないみたいだった。
傲慢なあの女らしいぜ。
「ぐああああああああああああ!」
だが、それはこちらも同じ。
安全性を度外視したこの戦法は自らにも甚大な被害を及ぼす。
最終的な結果は痛み分け。
お互いに跡形もなく消滅した。
『――《魂だけでも故郷に帰してやろう》』
体が跡形もなく消し飛ぶと、謎スキルが勝手に発動して魂となる。
スキル名から想像するに。そのまま故郷に帰還し、成仏するのだろう。
消滅するのは嫌だけど。全世界に悪影響を及ぼす者を撲滅できたので心は満たされた気がしなくもない。
我が身を犠牲に悪の権化である太子を滅ぼすのに成功――
『――してねぇじゃん!!』
冷静に考えてみれば、今さっき道ずれにしたのは鳴鬼。
太子は操ってたに過ぎない。
早い話が太子本人は無傷。
『なんてこったい! 目先のことにとらわれて、とんでもない思い違いをしてしまった……』
気づいた頃には既に手遅れ。
乗り移る肉体もなく。打つ手はなかった。
『あぁ、お迎えが……』
俺の魂は徐々に薄れてゆく。
このまま消滅してしまうのだろうか?
だとしたら悲惨過ぎる。
『全てを捨てても、太子を超えることができず。最強にも英雄になれず。何も残せず何者にもなれなかった……』
夢も理想も果たせず。
なりたかったものにもなれずに、童貞(?)のまま死亡とか、マジあり得ないが。
全ては自分のやらかしたヘマが原因なので。心ならずも受け入れるしかなかった。
薄れゆく精神の中でメソメソ泣きながら自分の人生を悔やんだ――
◆
草原から役四キロ離れた丘。
「「「「うーん……」」」」
テレポートで強制的に移動させられた、響夜くんの仲間達何人かが頭を抱えていた。
それもそのはず。パーティーリーダーが死んだと悟ったからだ。
時より愚痴ったりケチったりするものの。なんやかんやで響夜くんに大きく依存していたのが伺える。
結果として、何をしていいのかわからなくなってしまうという問題を生み出した。
しかしながら、大型恐竜のアプレンティスとディサイプルが頭を抱える姿はシュールである。
「響夜にいちゃん…………」
特にショックが大きかったのはよしふみくんで。
精神的な幼さもあり。悲しみに打ち拉がれていた。
「お兄ちゃん、貴方は強いお方です。だからしょ気ないで」
「そうなのだ。しょ気るなんて男らしくないぞ」
一方で、新参者はケロッとしており。
あまり気にしてない様子。
響夜くんを少なからず嫌ってるゾウレンジャーはともかく。
響夜くんの側近であるフォルティスが気にしないのはどうかと思う。
それどころか響夜くんがいなくなって、砕けたようにさえ感じられる。
もしかしたら響夜くんの考えとは裏腹に、何らかの不満があったのかもしれません。
「アハ―ーーーーン……!」
ゾウレンジャーの的外れの優しさと、フォルティスの無神経さによしふみくんは感情を抑えられずに泣いてしまう。
実力はあれど、精神的にはまだ未熟。人生経験が不足しているのだ。
とはいえ、所詮は九歳児。年相応の反応といえる。
彼がこのまま絶望しないといいが……。
「…………」
各々が悲しんだり、悩んだりしてるなどのアクションを取る中。ノーアクションの者が一名。
そう、西川である。
彼は親兵衛に跨ったまま意識を失っている。
それも爆睡もいいところな気絶っぷり。
その証拠に、一回目の爆裂魔法が放たれても気絶したまま。
ここが戦場のど真ん中でなかったのが幸いか。
「ンゴォォ……!?」
二回目の爆裂魔法の空気を揺さぶる爆風と轟音で、ようやく目を覚ます。
遅すぎる目覚めである。
もしも戦場に放置られてれば、間違いなく命を落としただろう。
「ここどこ?」
「これこれしかじかでありまして――」
「えー!? そんなになっちゃったの?」
「残念ながら」
何が何だかわからないらしく。辺りをきょろきょろ見回す。
福富が事と次第をざっくり話す。
「助けに行きますわよ~~~~!」
「カブレ様、今向かわれたところで、もう彼奴は死んでおります」
話を聞くなり、西川は戦場に戻ろうと親兵衛を走らそうとする。
しかし福富が両手を広げて前に立ち、行く手を阻む。
「そんなわけないわ! 響夜様は生きてるに決まってるわよ!」
「しかし!」
「響夜様なら爆発に巻き込まれても生きてるかもしれないじゃない!」
根拠のない自信から、福富の言い分を全否定。
直接見てないので、僅かな希望の可能性に賭けてしまう。
どうしようもないぐらい未練がましいが。
諦めの悪い人はみんなこんなものです。
普通の人間なら、爆裂魔法にまきこまれれば生き残れる可能性は殆どゼロ。
それでも生きてると言い張る。それだけ響夜を信用・信頼してるわけだが。
それは都合のいい理想に過ぎず。彼の中での響夜は、実際よりも大幅に美化・誇張されている。
そんなものは周囲の者からすれば、それは迷惑以外の何ものでもなく。
今の西川は駄々っ子みたいなものだった。
「親ちゃん、行くわよ。響夜様、今すぐ向かいますからね~~~~ぇ!」
「カブレ様!」
行く手を阻まれようが、そんなものなどなんのその。
強張った顔で手綱を操作。
親兵衛をジャンプさせ、福富を飛び越える。
制止を振り切って無理やり向かってしまう。
「西川のおじちゃん、待って!」
西川を一人にしておくと何をしでかすか知れたものではありません。
それを知ってるよしふみくんは涙をぬぐって後を追います。
他の仲間も後に続きました――
◆
う~☆ゲロゲロゴージャスの秘密基地――北アルプスの野次ヶ岳。
その地下室の一室。
そこには広い部屋には鉄道模型の巨大なレイアウトが。
それも“金と時間と労力”を湯水のごとく使用して作り上げられた壮大な代物。
趣味のためだけに使用してる部屋と言っていいでしょう。
なお、それを作ったのは誰であろうう~☆ゲロゲロゴージャスなのです。
彼女の趣味は豪快な性格に似合わず、SLだったりする。
「あんにゃろめぇ……!」
う~☆ゲロゲロゴージャスがブツブツ文句言いながら蒸気機関車の鉄道模型をいじっている。
おおかた、負けた鬱憤を趣味に没頭して忘れようとしてるのでしょう。
しかし、これでは『明日の小遣いしか頭にないようなタイプ』もいいところである。
けれども、何かに没頭してるときは他者に迷惑かけてない。
存在自体が迷惑極まりないう~☆ゲロゲロゴージャスの数少ないブラックではない部分といえるかもしれません。
「――魔王様!」
「なんでぇ、藪から棒に」
う~☆ゲロゲロゴージャスが鉄道模型の改造に没頭する中。
オークが一人、血相変えて部屋に入って来る。
「伝令いッス! ミツルギキョウヤが鬼を道ずれに死んだッス」
「なにっ!? ……そうかそうか……アイツ死んだのか♪」
一瞬驚くも。
響夜の死を知ると、多端にニタニタした顔に。
「キョウヤが死んだ、キョウヤが死んだ! ざまあみろ♪」
「ま、魔王様!?」
う~☆ゲロゲロゴージャス、やりかけの鉄道模型を放り捨てて響夜の死を嘲笑う。
するとどうだろうか。オークと腕を組む。
何が何だか分からないで戸惑うオークを巻き込み、歌いながら踊り出す。
しかし、響夜が死んだのを本気で喜ぶとか、とんでもない外道である。
まぁ、だからこその魔王であり、大魔女でもあるのだが……。
「ヤツの仲間を皆殺ししに行こ! 皆の者に用意するよう伝えろ」
「今からですか!?」
「そうだ! 早よせい!」
「御意!」
う~☆ゲロゲロゴージャスは踊りも程々に、報復を企てる。
殲滅を掲げ、虐殺のための部隊を編成に取り掛かる。
強大な憎悪の炎が、残された響夜の仲間を焼き尽くそうとしていた……。
◇
城の謁見。
「「「「タコ様を出せ!」」」」
「落ち着かんか愚か者!」
盾子ら太子の取り巻き三人と大勢の兵士が言い争いの真っ最中。
なお、太子自身は体調が優れないとか言って、この場に現れておりません。
早い話が、“部下に丸投げ”である。
「あなた達はタコ様に逆らうおつもりですか?」
「逆らうつもりはありません…………ただ、彼女のタコ様と話し合いたいのです」
イツキの威圧的な物言いに兵士達は少し怯むも。
言いたいことを言う。
なにせ彼らは生き延びるのには成功したものの。
太子の非情な行いを間近で見たために、トップの掲げる正義に疑問をいだいていた。
それに戦場に置き去りにされた者も結構な人数の証言もあり、敵対してた響夜を“本当は悪いヤツではないのでは?”とも思い。彼らの心は揺らいでおりました。
「そのうちタコ様から直々に説明があるだろう。だから今日はもう帰れ!」
「「「「わかりました……」」」」
盾子の強引な説得に兵士らは渋々了承。
不満げにそのばをさりました。
かれらは口では従うものの。不満は高まっていきました。
◇
「タコ様……終わりました」
「うむ。ご苦労であった」
城にある太子の部屋。
盾子が部屋に入ると。中は絢爛豪華なきらびやかな部屋。
それもそのはず。この部屋は、かつて王が使ってた部屋をリホームしたものなのです。
そんな部屋で、彼女はふんぞり返っていた。
体調不良など、真っ赤な嘘。
高級な解毒剤でも使ったのか、スズメバチに刺されたのにピンピンしていた。
「上手く丸め込んでおきました」
などと、盾子は報告してますが。
実際は強引に説得させただけなので、虚偽報告もいいところである。
たぶん、自分の評価を上げようとしたのだと思われる。
「お前は手際が良くて助かる」
しかし、そうとは知らない太子はそれを鵜呑みにする。
太子は盾子を取り巻きの中で最も信頼してるからです。
ですが、実際には兵士達の忠誠心は大幅に下がり。彼らと太子とのあいだに深いみぞがうまれました。
組織全体は揺らいでいました。
それこそ、いつ内輪揉めが起こってもおかしくないぐらいに――




