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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
焚き付ける
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第61話 手でも脚でも持っていきやがれ!!

負傷したよしふみくんを救うために奮闘する響夜くん。

ケンタウルスオオカブトとガチバトルの西川&親兵衛。

そして、響夜の転生。


……てなお話かいてたら、また文字数オーバーしてしまいました。すいません。


 王城付近の草原。

 おやつ時。


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は頭を抱えていた。

 それというのも、仲間のよしふみくんが敵対する太子(たこ)の操る赤鬼・鳴鬼(めいき)に左手と両脚を潰されてしまったのだ。


 現在、アプレンティスら契約獣を加勢させて、他の仲間に鳴鬼を足止めしてもらってる。

 多少の時間稼ぎはできると思うが。それにいつまで持ちこたえれるかは知れたものではない。

 彼らは優秀だが、決定打に欠けるのだ。

 だから仕上げは俺がやらねばなるぬ。


「俺の回復魔法では救いようがない……」

 

 横たわる彼を心配するも。

 対処のしようがなく手を拱く。


 いとこって身贔屓(みびいき)もあったが。

 親愛なる者の命が今まさに尽きようとする状況に焦りを隠せずにいた。

 たぶん 今までで一番動揺してると思う。


「あれでもない、これでもない」


 どうにかしようと収納魔法で収納した物を出すも。

 大量に詰め込んでるのに加え。慌ててるために、無関係な物を撒き散らすばかり。


「響夜にいちゃん……ぼく、もうだめかも……」

「よしふみくん、しっかりしろ! 諦めるな!」


 彼の意識を保たせるため、必死に喋り続けた。


 西川の回復魔法なら四肢の欠損なども治せるが。

 ヤツは現在、愛馬のバイコーンである親兵衛(しんべい)に跨り。昆虫相撲の要領で、ケンタウルスオオカブトと力比べの真っ最中。

 手綱を操るのに必死で、とても他事に手を回せる状態ではない。


「こうなりゃヤケだ! ウリャアアアアア!」


 収納魔法で収納してた刀を出すと。自らの左手と股から両脚を勢いよく切断。

 

 と、同時に謎スキル――ファイナルゲートを習得。

 なんでも自分の魂と肉体を分離するスキルらしい。

 ……このスキル使い道あるのか?


「ヌォオアアアアアアアアアアアアッ!? 痛ってええええええええッ!」


 切り離された体が地面に落っこちる。

 痛みと大量出血で意識が朦朧(もうろう)とするも。

 今は自分を気遣ってる場合などではない。

 瀕死のよしふみくんを救うのが、今やるべきこと。

 意識をしっかり持って踏みとどまる。


「《移植》! からの《ヒール》!」

 

 意識もうろうとする中で倒れそうになる体を、腰の力で立ってる状態に維持しつつ。

 迅速に切断した部位をスキル移植で移植してあげる。


 移植は無事成功。

 よしふみくんは五体満足に回復。


 一方、俺は左手と両脚を失う。


「響夜にいちゃん、これは!」

「助かってよかったぜ……」


 よしふみくんが危機的状況を脱した安心感から、痛みがどっと押し寄せる。

 立ち上がるよしふみくんを見ながら、背中からぶっ倒れる。

 一応は回復魔法も使うが。そんなのは気休め程度。

 ちょっとでも気を抜けば間違いなく失神するだろう。

 

「自分の手脚をくれなくとも。響夜にいちゃんならスキルでぼくを生き返らせれたのに」

「まあな……」


 確かによしふみくんの言う通りだ。

 だが、俺の蘇生スキルは一回限りの代物。

 使用には制約があるため、切り札は最後まで取っておくタイプの俺はできるだけ使用したくないのだ。

 渋ちんなのだ。


 それもこれも今後何が起こるかわからない状況がそうさせたもの。

 使いたくても使えない状況にだけは絶対にしたくないからな。


「ヒヒンッ!」

「ッ!?」


 自分が危機的状況の中。

 ケンタウルスオオカブトと力比べしてた親兵衛が一種のスキを突き、はね飛ばす。


 跳ね飛ばされたケンタウルスオオカブトは受け身も取れずに背中から落っこちる。


「畳み掛けるわよ! 親兵衛しゃま、やっちゃって」

「ヒヒンッ!」


 西川は追撃の手を緩めない。

 親兵衛を大ジャンプさせ、全体重をかけたフライングヘッドアタックを繰り出す。


「ゴッ!?」


 身動きが取れなかったケンタウルスオオカブトは技をまともに食らう。

 

 甲虫の外皮は昆虫類でも最強クラスの硬度を誇る。 

 だが、腹部は背中ほど硬くはない。

 サラブレットと同等の体格の親兵衛なら、体重もサラブレットと同じ五百キロ前後なのは確実。

 その全体重を攻撃に乗せたのだ。強固な外皮を持っていてもひとたまりもないだろう。


 事実、バイコーンの二本の角が腹部を貫き、大量出血。


「――――――――ッ!!」


 断末魔のような彼の悲鳴が響き渡り。

 間もなく絶命した。


「勝っちゃったよ……」


 親兵衛が名馬なのは何となくわかってたが。

 まさかあんなに強かったとは予想外。

 もしかしたら俺のパーティメンバーで最強なのは親兵衛かもしれない……。


 しかしながら、以前戦った時よりケンタウルスオオカブトの動きに切れがないような気がした。

 もしかしたら超強力蚊取り線香の残り香で弱体化してたのかもしれない。

 もしもそうであれば、あの大型甲虫系統の相手と戦う場合の対抗策となり得るだろう。


「お見事です、親兵衛しゃま。あなたは男の中の男よ~」

「そいつは牝馬(ひんば)だど」

「え!?」


 西川が親兵衛を褒め称える中、とうせん坊が余計な一言を。

 

「とうせん坊のヤツ、余計なことを言いやって……」


 西川は親兵衛を牡馬(ぼば)だと思い込んでるから、真実を言ってしまうとややこしくなるから黙ってたのに。

 とうせん坊のせいで、ひた隠しにしてたのがバレてしまったではないか。

 

 こうなると今までの経験上、愚図りそうな予感。

 あいつが駄々をこねると、高確率で拗れるんだよな。

 どうしよう……。


「……そうだったの。なら、これからは親兵衛ちゃん……いや、親(しん)ちゃんと呼びましょう」

「あららぁ」


 西川は予想に反しあまり気にしてないみたい。

 今までの経験上、駄々をこねるかと思ってたけど。

 意外と融通が利くのかも。


 予想外の反応に、肩透かし食らったみたいな気分になったよ。


「あらやだぁ!? 響夜様、どうしちゃったの!?」


 勝手に困り、それが何事もなく無事に済んでホッとしてると。

 西川が俺の異変に気づく。


「これは重症だわ。今、回復魔法で治しますからね」


 珍しく迅速かつ適切な判断。

 西川がこんなに気が利くなんて気持ちが悪い。

 

「これは凶兆なのでは……」


 普段役立たずなヤツが急に役に立つとか、死亡フラグではなかろうか。

 嫌な予感がしてならなかった。


『回復させるものですか!』

「きゃあああああああ!」

 

 悪い予感的中。

 鳴鬼は食い止めるアプレンティスらを振り払い。俺達に殺意たっぷりに急接近。

 西川は恐怖で大絶叫。


「ブシュ!」

『!?』


 鳴鬼は西川目掛けて右ストレートを繰り出す。

 しかし、親兵衛が寸前にボクシングにおけるカウンター・ブロウのごとく自らの角を使ってカウンター攻撃。

 角に拳が当たった瞬間、鳴鬼の右拳は力負けして散った。


 それにしても素晴らしい反射神経。

 驚くほど正確な攻撃を繰り出しやがる。

 過去の戦いで親兵衛に最前線で戦ってもらってたら勝敗が変わってたかも……。


「どうよ! 親ちゃんはとっても強いんだから」


 親兵衛の圧倒的強さを目にした西川は自分の力でもないのに胸張って、ドヤ顔。

 その挙句、得意気に挑発までしてしまう有り様。

 これでは『虎の威を借る狐』もいいところ。


 愚か者め……策におぼれるとろくなことにならんぞ……!


『だったら!』

「ンゴォオオ!?」


 右拳を失うも“右がダメなら左がある”とでも言わんばかりに左パンチ。

 左手が無いので威力は半減してるものの。元が上位種の鬼だけあってプロボクサー顔負けのパンチ力。

 油断しきった西川は回避できないで腹にまともにくらってしまい。手綱を握ったまま白目をむいて気絶した。

 またしても悪い予感的中が的中してしまった。


 しかし右手を失っても瞬時に攻撃しようとは。人情の欠片もない

 太子は鳴鬼を使い捨ての道具としか思ってない。

“味方がどれだけ傷つこうが目的が果たせればそれでいい”そんな考えなのだろう。

 太子は疑いようがない酷い女だ。


 ――この命に代えても太子を倒さねば……!


「《テレポート》!」

「「「「!?」」」」


 最大パワーでテレポートを発動し、仲間だけを4km(キロ)先の丘に移動させる。

 予告なしにテレポートしたので、困惑してたが。

 これから発動させる“ある魔法”に巻き込まないためにはやむを得ないのだ。


「《収納魔法》出し! ングッ!」


 高かったので一本だけしか購入できなかった高級魔力回復ポーションを一気飲み。

 高級品だけあって魔力を全回復させてくれる。

 これで準備は完了した。


『いまさら魔力を回復させたところで、お前に私を倒す術なんてない』

「そいつはどうかな」

『なに?』


 こちらが殆ど動けないからか。鳴鬼は余裕たっぷりにじりじりと迫ってくる。

 まあ、油断しててくれた方がやり易いので、好都合だが。


「死なばもろともだ! 《爆裂魔法》!!」

『!?』


 至近距離で最高位の爆発系魔法を発動させた。

 過去に発動に失敗した経験から、使える自信はなかったが。使えてよかった。


 発動すればこっちのもんだ。

 鳴鬼の土手っ腹に閃光が走り抜ける。

 続いて熱風。須永舞い上がる。

 次に振動。最後に、凄まじい爆音が鳴り響く。

 うっきゅっぽゎの爆裂魔法よりかは数段見劣りするものの。それでも凄い威力。


 爆裂魔法の爆発はいわゆる無属性で人類やモンスターなど生物は勿論、悪魔、霊体などあらゆる存在に効果を発揮する。

 それを至近距離で使えば 上位種の鬼――鳴鬼でも一溜まりもないだろう。


「――《ファイナルゲート》」


 どういう訳か、意図せず習得したてのスキルが発動して“肉体と魂”が分離。

 今の俺は魂だけの存在。

 早い話が――幽霊みたいな状態である。


『ぁああああああ!!』


 だが、大技を至近距離で発動すれば自分も致命傷を負う。

 

 しかしだ。

 魂だけのお陰か、痛みはなく。

 また、爆裂魔法をまともに食らう鳴鬼を見物できたりもする。

 

 おまけに新スキル・魂だけでも故郷に帰してやろう、を習得。

 どうなってんだこれ?


 とはいえ。俺の首も腕も吹き飛び、内臓はグッチャグチャ。見るも無残な姿に。

 残骸から一目で死んだと確信できるレベル。

 またしても死んでしまった。


 一回きりの蘇生スキルも使ってしまったからこれでお終いか……。


『さすがの私もどうなるかと思ったけど。どうにか耐えれたわ』


 なんということだろうか!

 砂煙が晴れると――そこには鳴鬼の姿が。

 相当なダメージを受けはするものの、命を落とすには至ってない。

 

『俺の命懸けの攻撃を鳴鬼は耐え抜くとは。決死の覚悟でやったのに無駄死になろうとは……』

 

 どうして世の中こうも上手く行かないものかねぇ。

 人生の大勝負に負けたような気がした。


『……待てよ。今の俺は零体だよな。もしかしたら憑依できるかも……』

 

 絶望に打ちひしがれるも。

 アニメなんかで“ある者の体から魂だけが離れ、そのまま他人の体に入ってしまう”って、場面をふと思い出す。

 

『もしかすると、今の自分にもそれができるのではなかろうか』


 どの道それ以外に現状を変える術がないので試してみる。


 憑依する肉体は以前人体錬成した魂なき存在――うっきゅっぽゎの変異体クローン。

 ばらまかれたアイテムの中からそれが 契約の魔石を見つけて憑依してみる。


「よっしゃーッ! 珍しく大成功!」


 俺の仮説は正しかった。

 魂と肉体は無事に融合成功。

 契約の魔石が砕けて、うっきゅっぽゎの変異体クローンが出てくる。


 出て早々に両腕をブンブンと振って具合を試してみるが。

 拒絶反応などもなく、きちっと動いてくれる。

 

 仮の肉体だが、悪くない。

 ルックスもいいしね。

 

 ただ一つ、黒色だった毛色が石灰色に近い白色に変色してるのが気になったが。

 今は毛色にこだわってる場合ではないので無視!


『こ、これは……なんかの間違えでは……』


 俺の復活に、太子は小刻みに震えてやがる。

 たぶん、俺の蘇生スキルを一回限りだと高を括(くく)ってたから、驚きも大きかったのだろう。

 アイツは悪知恵は働くが、予想外の事態には弱いから浅はかである。


 だからこそ付入る隙があるんだけどね。


「第二ラウンドの……はじまりだッ!!」


 今度こそ太子を倒すと心に決めて。

 肉体を新たに――ファイテングポーズをとる。




加藤よしふみのプロフィール(第61話以降) 

・種族:人間→人間兼鬼(半妖でもある)

・身長:132センチ→137センチ

・体重:27キロ→30キロ

 失われた両脚と左手を響夜が自らの両脚と左手をスキルによって移植した姿。響夜の両脚と左手を移植したため、身長と体重が増大した(響夜のが身長も体重も勝ってたため)。鬼の手を移植したため、鬼の固有能力と妖力を得る(逆に響夜は失う)。


スキル《ファイナルゲート》について

・使用者もしくは他者の肉体と魂を分離させるスキル。

・使用者が自身に使用する場合はノーコストだが。他者に使用する場合は使用者がレベル30以上でなければ使えず、MPの消耗も激しいので実用的とは言い難い。

・肉体と魂の分離には時間制限があり。その時間を過ぎてしまうと魂は消滅する。

・肉体と魂の分離できる時間は約三十時間(使用者によって数分から十数分ほど変化する)

・時間制限は有限で、分離してただけ時間は減り、回復はしない。従って、時間を使い果たした場合は消滅する。

・使用者本来の肉体でなくともなんらかのものに憑依していれば分離扱いにならないので、魂が消滅する心配はない。

・アニメなどのお約束としてそのまま他人(別に人間でなくてもよい)の体に入り、憑依可能。憑依した者はその体を自由に動かすことができるようになる。

・ただし、魂なき存在や、本能しかない獣などなら容易に憑依できるが、強い精神を持つ者などが激しく拒絶した場合は憑依できない。

・発動するタイミングが限られており、自由に発動させるられない。そのわりに使用者の意思に反して発動する場合もある。



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