第60話 一難去ってまた一難かよ……
すいません。
また、文字数オーバーしてしまいました。
王城付近の草原。
おやつ時。
俺、御剣 響夜とその仲間達は太子の操る赤鬼・鳴鬼と戦うも。
苦戦を続けてる。
鳴鬼のパワーはそれ程強いのだ。
「やっぱし俺一人が加勢しただけでは殆ど変わらんか……」
敵の強さに軽く絶望しつつも。
頭をフル回転させて最良の手を考える。
「よしふみくん以外のみんなは一旦下がれ! よしふみくんは俺とクロスアタックだ」
「はい、響夜にいちゃん!」
考えついたのは別方向からの同時攻撃。
その際に邪魔になるので他の仲間は下がらせる。
無論、単純な戦力はダウンはするものの。
彼とのタッグによって生み出されるパワーは侮れない。
それもこれも最も信頼の置けるよしふみくんだからできる芸当。
彼とは“ツーカーの仲”なのだ。
仮に他のメンバーでやったとしても、できないか、劣化コピーのどっちかにしかならないだろうからね。
「西川は仲間達を回復魔法で癒やしてくれ」
「わかりましたわ、響夜様。《ヒール》!」
仲間を下がらせたのは邪魔になるという理由もあったが。
真の目的は仲間を回復させること。
万が一に俺とよしふみくんが倒されてしまっても、後を託せるように。
西川に回復魔法発動。
一瞬で傷ついた仲間達が完全回復。
何度見ても西川の回復魔法は規格外の性能だと驚かされるよ。
「ヤツのどてっ腹にファイアーボールを五連打するぞ」
「はい、響夜にいちゃん!」
別方向に逃げ回りながらチャンスを待つと。
早々にチャンス到来。
どこまでダメージがあるかわからないが。可能な限りの火力をぶち込む。
「「「《ファイアーボール》五連打!」」」
「えッ!?」
本来、5+5で10発のファイアーボールになる筈なのだが。数か多い。
背後で何者かがファイアーボールを放ったらしい。
「ノギャア!? あちちちッ!」
おまけにその流れ弾の一発が俺の背中に直撃。
そのまま引火してしまう。
「《ヒール》! 《ヒール》!」
大慌てで仰向けに倒れ、背中を地面に擦りつけて消火。
と、同時に回復魔法で火傷を癒やす。
心ならずも“かちかち山のタヌキ”の気持ちがわかった気がした。
「お前か西川! 余計なことするな!」
「怒っちゃやーよ」
振り返ってファイアーボールを放った者を確認すると、犯人は西川だった。
「……ちょっと待て。なんでお前が中級魔法を使えるんだ?」
頭に血が上って判断が遅れたが。
西川に中級魔法を教えた覚えはない。
にも拘らず、彼が使用したのは間違いなく中級魔法のファイアーボール。
理解できなかったので問いただしてみると――
「響夜様と合体した後にスキル覚えてました」
「なぬッ!?」
一瞬驚くも。
思い返してみれば、錬金術スキルの実験した際に西川は教えてない錬金術スキルを使用してた(それも俺よりも遥かに上手く扱えていた)
あの時は自身が禁忌を犯してしまったのに動揺したのに加え。造り出した人体をどうするかで揉めて、それどころではなかったのだ。
目先の問題解決を優先して、根本的な部分を見落としてたわけ。
我ながらマヌケなミスをしてしまった。
……まあ、それはさておき。
少し考えてみて、西川が合体時に合体相手のスキルを自分のものにできる特異体質なのだと理解した。
それもこれもアニメなんかで似たもんを見た経験があったので理解できたのだ。
まったくもってアニメとはためになるものである。
「ヒイッ!? 死ぬぅ!」
「しまった!?」
西川と話し合ってる間、よしふみくんが一人で一生懸命足止めしててくれる。
悪いことをしてしまった。
「《ファイアーボール》!」
横っ腹にファイアーボールを打ち込むも。まるでダメージを受けていない。
ちょっとやそっとじゃ沈みそうにない。
タフネスなやっちゃでほんま。
「よしふみ様、あいつ倒すためにアタシとビッチ合体しましょう」
「なに仕切ってんだおめぇ!」
「怒っちゃやーよ」
勝手に作戦を決める西川を咎めるものの。
そのアイデアは悪くない。
なにせ一人でもメチャクチャ強いビッチ合体した戦士が二人。
鬼でもなんとななるかもしれない。
勝機が見えた!
「まあいい。ビッチ合体すっぞ!」
そう決めた矢先――
『させるものですか。《妖力波》ッ!!』
「なッ!?」
突如、鳴鬼が喋る。
その声は太子のものだ。
けれどもそれは耳から聞こえてくるものではなかった。言葉ではなく、心に直接響くようなもの。
だが、呑気に推理してる場合ではない。
妖力を凝縮させて一気に放出させる大技を使ってきたのだ。
しかも全力ぽいやつ。
「あんなのくらったら一溜まりもない! 皆、俺の後ろに隠れろ!」
妖力波は妖怪の力でなくては防ぐのはおろか、対抗すらできない厄介な技。
この場でそれができるのは俺のみ。
「《妖力波》ッ!!」
我が身を守るため。
そして仲間を助けるために同じ技で対抗。
「フヌヌウゥウウウウウウウウ!」
全力全開で放つも。
ポテンシャルの差から、押し返されていく。
無理もない。
鬼の力は彼方のが勝ってるからだ。
なにせ彼方は左手と頭以外の体の大部分があるのに対し。こちらは左手しかない。
単純な力比べでは勝ち目がない。
「勢いで同じ技で対抗しちゃった俺のバカバカバカ!」
行き当たりばったりな自分の性質を呪うも。
今はそれどころではない。
徐々に迫ってくる妖力波をなんとかせねば。
「こうなりゃ一か八かだ! ダァアリャアアアアアアアアアアアアアッ!!」
『!?』
押し返すのは不可能と悟った俺は作戦を変更。
全妖力を絞り出して、鳴鬼の放つ妖力波の軌道を変えるのに全神経を集中させる。
努力の甲斐あって軌道をずらすのに成功。
軌道がずれた妖力波は、勢いよく別方向に向かって行き。
最終的に俺達が最初に隠れてた丘に直撃した。
「ヤッター! 珍しく大成功」
などと喜ぶが。
鳴鬼の妖力波は凄まじい威力。
妖力波がぶち当たった丘は崩れ。地形が変わってしまった。
あれをまともにくらってたらと想像するだけでゾッとするぜ。
おまけに今ので俺の妖力はすっからかん。
もう一発も妖力波を使えそうにない。
鳴鬼が一発でも妖力波を使ったら、マジでヤバいぞ。
『――――ッ!!』
ヤバいと思ったのも束の間。
崩れた崖の方から聞き覚えのある鳴き声が響き渡る。
続けて翅を羽ばたかせる音が聞こえた。
音の感じから、こっちに向かってるっぽい。
「ゾゾッ!」
恐ろしさに震えおののく感覚が、体中に駆け巡る。
凄く嫌な予感がした。
『――――ッ!!』
「ギャー! ケンタウルスオオカブト!?」
嫌な予感は的中。
上空から現れた、そいつの正体は城で西川が召喚した――大きなケンタウルスオオカブト。
城での戦いの後、行方知れずになってたが。
ちょっと前まで自分達が高みの見物してた所に潜伏してたとは。
見物時は油断してたから、不意打ちされてたら一溜まりもなかったぜ。
襲われなくてよかった。
「……呑気に考えとる場合ではなかった!」
あの凶暴なケンタウルスオオカブトだ。何もしないなどあり得ない。
きっと見境なしに戦場を引っ掻き回すに違いない。
「響夜様、助けてぇ!」
案の定、ケンタウルスオオカブトは攻撃を開始。西川が標的となる。
現在ドタバタと走り、空を飛ぶケンタウルスオオカブトから必死に逃げ回っている。
「お前もトラブル体質だな」
なんて呆れながら言うものの。
自分もその口なので、これ以上は言わないでおこう。
ケンタウルスオオカブトの注意を引くために、攻撃魔法を放とうとすると――
『隙あり!』
「ヤベッ!」
西川に注意がいってた俺は、背後から忍び寄る鳴鬼に気づかなかった。
既にヤツは目と鼻の先。右手を大きく振り上げて貫手の構え。
ヤバい! 足が竦んで動けん。
「ッ!」
『!?』
突如、鳴鬼の左肩にショルダーアタックを仕掛ける者が。
それは――大天使シティ・オブ・トルーロー。
最大出力で蘇生スキルを発動した時に一緒に蘇生してたのだろう。
どんな偶然が作用するかなんてわからないものである。
不意の攻撃に鳴鬼は踏ん張り切らずダウン。
シティ・オブ・トルーローは、このまま一気に決めたやると言わんばかりに飛び込む。
「そういえばアイツも死んでたな……」
一瞬呆気にとられるも。
この機に乗じて俺はバックステップで距離を取る。
彼女の攻撃が体勢を立て直すチャンスを与えてくれた。
まあ、彼方さんにそんなつもりはなかったと思うが……。
「シティ・オブ・トルーロー、手ぇ貸すぜ!」
このまま鳴鬼をシティ・オブ・トルーローに任せて逃げるって選択もあったが。
加勢してあげようと決める。
借りを作ったままでは気分が悪いからな。
「ゴッ!?」
で、掩護射撃でもしてやろうとした矢先。
鳴鬼の貫手で胸を貫かれてしまい。名誉の戦死を遂げてしまう。
なんてこったい!
一瞬の判断の遅れで救える命をみすみす見殺しにしてしまうとは……。
「太子ォ! 許さん……ッ!」
俺のスキルでは、一度生き返らせた者は二度と生き返らせれない。
目の前で散ってしまった命を惜しでも、時すでに遅し。
どれだけ悔やんでも取り返しのつかん。
「《収納魔法》入れ!」
シティ・オブ・トルーローをスキルで収納。
これ以上傷つけさせないためだ。
っというのも、戦いが終わった後に埋葬してあげようと思ったから。
「うぎゃあああああああ! 響夜にいちゃーーーーーーーーん!」
「ッ!?」
ちょっと俯いてる間によしふみくんは鳴鬼に左ストレートを繰り出すが。
あっさり右手で受けとめられてしまい。そのまま握りつぶされしまう。
痛みから傷口を押さえながら悲鳴をあげる。
もがき苦しむよしふみくんの姿を見ても鳴鬼は追撃の手を緩めない。
手刀でよしふみくんの両脚を切断。
小学生相手になんと容赦のない戦い方。
非情以外の何ものでもない。
「あの女、命をなんだと思ってるんだッ!」
咄嗟に飛び込みよしふみくんを回収するも。
危機的状況。
ちょっと前の俺なら絶望してただろうが。
今は違う。
西川という頼りになる回復魔法の使い手がいるのだ。
ヤツの回復魔法なら四肢の欠損なども治せる。
で、西川に回復魔法を掛けてもらおうとするが――
「親兵衛しゃま、やっちゃって!」
「ヒヒンッ!」
西川はバイコーン親兵衛に跨ってケンタウルスオオカブトとエキサイトしていた。
昆虫相撲の要領で――双方角をぶつけ合い力比べの真っ最中。
一瞬も気を緩めれない状況。
今話しかければ西川はやられるかもしれん。
とても回復魔法掛けてくれ、なんて言える状態ではない。
でも、このままではよしふみくんが死んでしまう。
どうしよう……。
西川が響夜のスキルを使えた理由
・作中で響夜が考察したように。西川の特異体質により、何らかの形(今回の場合だとビッチ合体)で繋がる際に、相手のスキルをコピーしている。
・コピーなので、コピー相手がスキルを忘れたり、使用不可になることはない。
・基本、勝手に行われるので。西川自身は無自覚。
・コピーはスキルポイントを使用しないばかりか、適正さえも無視する。従って、確実にスキルをものにできる。
・自身の素質によっては、元の持ち主よりもその能力を引き出すことも可能。




