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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
焚き付ける
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第59話 ついさっきまで敵対してた人達の人命救助に奔走てるけど……俺、悪党だったよな?

一番の強敵太子を追っ払うのに成功するも。

戦いは終わらなんだ。

強い赤鬼鳴鬼を残してゆく。

結果として響夜一味は迷惑な置き土産を相手する羽目に。


 王城付近の草原。

 昼過ぎ。


「クソッ! なんでこうなる?!」


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)とその仲間達は太子(たこ)率いる王国軍を撤退させるのに成功した。


 ――しかし、太子のヤツは赤鬼・鳴鬼(めいき)を置いてきやがった。

 お陰で鳴鬼と戦う羽目に。


「あんにゃろう! とんでもない方法を思いつきやがった」


 戦闘開始時点では、鳴鬼は頭の部分が無いので、単純な行動しかできないから楽勝だと高を括るも。

 そうはならなかった。


 太子は召喚師スキル(召喚獣スキル)の五感(ごかん)の共有を使って鳴鬼を遠隔操作しやがった。

 なんと要領がいいのだろうか。

 憎ったらしいぐらい頭の回転が速い。


 その能力を世の中のために使えばいいのに。間違った使い方をするから俺を含め、多くの者を苦しめる。

 まったくもってどうしようもない悪女だよアイツは。


 こうなると鳴鬼の体を持つ太子と戦ってるみたいなもの。

 オツムが足りない鬼に太子の狡猾な頭脳が加わったといえる。


「想像以上に強い!」


 鳴鬼は頭がないので五感も触覚ぐらいしか使えないが。 

 驚くほど正確な攻撃を繰り出す。

 たぶん、鋭い皮膚感覚で動いてると思われる。


 それに加え、左手もないので若干の弱体化してると思われるものの。その状態でも十二分に強い。

 単純なパワーだけなら太子と同等かそれ以上。

 これは厄介極まりない。


 西川(にしかわ)が召喚を妨害させなかったら、あんなに強いのが戦力にできたと思うと惜しい気持ちになる

 あの時契約できなかったのが恨めしい。


「毒も効果が薄い!」


 キイロスズメバチに鳴鬼を倒すの委ねるも。

 ヤツの皮膚は硬く。象の硬い皮膚以上。

 それに加えて、上位種全般にいえるが各種耐性が高い。

 強力な顎と針をもつキイロスズメバチでも抵抗できず。


 それでも諦めず攻撃を続けてる。

 そんな勇敢な姿をちょっとだけ健気に思えた。


「やっぱし他力本願は駄目ってか……」


 とはいえ早々に出端(でばな)を挫(くじ)かれ、別の対策を余儀なくされる。

 

 どうして俺の相手って厄介なヤツばかりなのだろう。

 次から次へと現れる強敵に心が折れそうになる。


「俺、精神的負担で胃潰瘍を発症するんじゃなかろうか?」


 攻撃を回避してると。

 突然、ストレスによる胃潰瘍で倒れてしま自分の姿が脳裏に浮かぶ。

 

 実際にそうなりそうだけど。

 今はそれどころではないな……。


「「「「――ウウツ……クゥ……ッ!」」」」

「ハッ!」


 戦闘の最中、無情にも太子に置き去りにされた王国軍の皆さんの苦しむ姿が目に入る。

 俺がやらかした張本人である以上。それが蜂毒にもがき苦しんでるのだと容易に想像できる。


「……」


 ちょっと前まで敵対してた者達だが。

 彼らは太子のあまりに非道な計画に巻き込まれたせいで、人生を狂わされ犠牲者に過ぎない。

 哀しき者達なのだ。

 そんな者達を見殺しにするなんて道徳に反する。


 そして俺には彼らを救える力がある。


「置き去りにされた者達を助ける! 西川以外(にしかわいがい)のみんなはしばらく時間を稼いでくれないか?」


 一瞬躊躇(いっしゅんためら)うも。

 良心が勝り、彼らを助けると心に決める。


 解毒魔法使う間は殆ど無防備なので、時間稼ぎを頼む。


「お任せくだせぇ、お頭!」


 真っ先に了承したのはとうせん坊(ぼう)。

 彼は先陣を切って鳴鬼に肉弾戦を挑む。


 危険なお願いだったが。彼は躊躇わずに実行。

 力一杯ぶち当たり。がっちりと組み合う。


 素晴らしき決断力。そして勇気。

 自分以上の勇気(それ)を持つとうせん坊を羨ましく思う。


「ぅぐぉおおおおおおおお!」


 しかし、まったく警戒することなくガンガン組み付いていく様子などは勇敢を通り越して無謀の域に達していたりと豪快すぎて危なっかしい部分も多い。

 事実、力比べで若干押されている。


 あいつにはもうちょっと慎重さを身に付けさせたほうがいいかも……。


「ぼく達も行くよ」

「はい、お兄ちゃん」


 とうせん坊の劣勢を悟り、よしふみくんとゾウレンジャーが加勢する。

 それにつられて他の仲間も鳴鬼に向かって行く。


「西川、解毒魔法を使え。俺は蘇生スキルを使う」

「はいな。《解毒魔法》!」


 西川が解毒魔法を発動するが。

 たった一回の解毒魔法で王城付近の草原に散らばる王国軍全員の中毒を治療する。


 驚く程広範囲に発動したのに加え。効果はてきめん。

 全員完治している。

 本職のプリーストでもこうはいかない。


「すげぇものだ」


 西川の解毒魔法の凄さにあぜん

 回復魔法も凄かったが。解毒魔法も最上位のレベル。

 

 プリーストのスキルは“崇拝する神の力”と“信心”に大きく依存するが。

 思い返してみたら、西川は毎日祈りを捧げてたな。

 信心の強さがヤツのプリーストとしての力の源なのかも。


 あるいは強い神を崇拝することでプリーストとしての高い能力の恩恵に授かってるのかも。

 だとしても異常にハイスペック。

 今度どんな神を崇拝してるのか聞いてみよ。


「どうですか、アタシの解毒魔法は?」

「大したもんだ。恐れ入ったよ」

「エッヘン!」


 あまりの凄さに西川はプリーストにジョブチェンジしたほうが活躍できるかも、と思ったほど。

 そのぐらい西川はプリーストとして優秀だった。


 調子に乗って胸張ってたのは頂けんが……。


「俺もやらねぇとな。最大パワーの《蘇らせた兵士なのだ》ッ!」


 気後れするも。

 自らのすべきことを思い出して、蘇生スキルを発動。

 草原で命を落とした者達が次々と生き返ってく。


「ンンッ!?」

「響夜様、怖いです!」

 

 突然地面から腕が生えてきた。

 それはホラー映画なんかの『墓場から際限なく湧いてきたゾンビ』を彷彿(ほうふつ)させる。


 おまけに数も結構なものなので。ただでさえ不気味なものが割増で不気味に思えた。


「ハッ!」


 西川と一緒にしばらくビクビクしたが。

 突然の閃きで、こいつらの正体を悟る。

 こいつらは“ずっと昔にこの土地で戦死した者”なのだと。


 余計な者まで蘇らせてしまった。

 最大パワーでスキルを発動させたのがまずかったかも。

 心ならずも“異なる時代の人間”を巻き込んでしまった。 


「《収納魔法》出し! 西川、迅速に掘り起こせ!」

「は、はい! 響夜様」


 俺の蘇生スキルは遺体をそのまま蘇生させる。

 そのため遺体が埋められてた場合、生き埋め状態になってしまう。


 このままにしておけば、彼らは窒息間違いなし。

 一刻も早く掘り出してあげねばならん。

 

 工事現場で使うような大型のショベルを二つ出す。

 無論、加藤家から勝手に拝借した物だ。


「「わっせい、わっせい!」」


 で、西川と一緒に力一杯地面を掘り返す。


 ◆


「……どうにかなったか」

「ですね」 


 俺、御剣響夜と西川は生き埋め状態の人達を全員救い出すのに成功。

 案外なんとかなるものだ。


 正直、余計な仕事が増えてしまったと思うものの。

 これは自分がやらかしてしまったこと。

 失敗は償うもの。

 俺はそれを全(まっと)うしたに過ぎないのだ。


 しかしながら自分のオリジナルスキルの融通の利(き)かなさには困ったものだ。

もうちょっと


「「「「生き返らせてくれて、ありがとうございますキョウヤさん」」」」

「お礼なんていいからさっさと全員逃げろ!」


 生き返った王国軍連中が深々とお辞儀して、感謝の意を示す。

 感謝されるのは好きだが。今は呑気にやり取りしとる場合ではない。

 強大な力を持つ敵と戦闘中なのだ。


 復讐対象外の者に自分から積極的に喧嘩を売らないのはもとより。

 戦う意思を失った者を巻き込みのは俺の美学に反する。

 だから逃がす。


「逃げる~~!」

「お前は逃げるな!」


 どさくさに紛れて西川が逃げようとするので、慌てて引き留める。

 西川は困難にぶち当たると、ほぼ確実に「逃げ」の一手を打つ。

 能力的には優秀なのに人格に問題があるんだよなぁ。



「我々も加勢するぞ!」

「あぁ! 生き返らしてもらった恩義があるでな」

「掩護はまかしてくれ」


 多くの者が逃げる一方で。

 十人ぐらいがその場に残り、助太刀しようとする。


 申し入れはありがたいが。

 皆、思い思いに動くものだから、やってることがバラバラ。

 これではとても連携が取れそうにない。


「あとは俺に任せろ。あいつは俺がぶっ倒す」

「我々もご一緒に!」

「お前たちの敵う相手ではない。足手まといだから退け」

「しかし……!」

「なーに。何とかなるさ」

「……わかりました。お気をつけて」

「あぁ」


 即席チームで上手く戦う自信もないので、強引に帰させる。

 誰も死んでほしくないからだ。


 まあ、やり方にスマートさの欠片もないが。

 これがベストな選択だったと個人的には思ってる。


「《収納魔法》出し!」


 彼らが撤退するのを確認すると。スコップを放り捨て。

 足軽用刀を出して再び戦闘態勢に入る。


 で、鳴鬼に突っ込もうとするが――


「ンオッ!?」


 ゾウレンジャーとフォルティスがぶっ倒されてるではないか。

 おまけに他の仲間もボロボロ。


 ついさっきまで数で圧倒してたのに。

 ちょっと目を離した隙に逆転されてる。


「あれが原因か……」


 ちょっと見でわかった。

 逆転されたのは、協調どころか各々勝手に戦ってるのが原因だ。


 どうにも俺の仲間達は『命令には忠実だが指示が無いと殆ど何も出来ない』所謂『指示待ち君』みたいなもの。

 この戦闘で、問題点が浮き彫りにされる。


 戦闘で俺に依存し過ぎだろ! 

 俺って絶対君主なの?

 ……早々に改善せねば。

 


「――鳴鬼……ぶっ倒す!!」


 見込みが甘かったとはいえ。

 仲間達は予想外に苦戦を強いられてる。


 決意を新たに。鳴鬼に向かって行く。


 仲間達を救うべく、頭をフル回転させて逆転の一手を導き出さねば……!




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