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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
焚き付ける
59/64

第58話 見逃してやるからさっさと尻尾巻いて逃げろよ!

かなり文字数オーバーしてしまった。

すいません。


 王城付近の草原。


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)はキイロスズメバチで魔王軍を退けた。

 本隊が撤退するまで時間稼ぎするように残された可哀想な者達も脅して逃がしたった。


 そして太子(たこ)率いる王国軍と直接対決にもつれ込む。

 

「プリーストよ、解毒魔法で刺されし者を治療せよ」


 太子はキイロスズメバチの毒に解毒魔法で対処しようとするが――


「それが、プリーストが全員倒されておりまして……」

「なっ!? 響夜、きさまの仕業か!」 

「あぁ、俺だ!」


 そう。

 仲間達に積極的に倒すように指示した“ある職業(ジョブ)の者”とはヒーラー。

 毒の類いを使う場合、真っ先にヒーラーから潰すことが定石。

 敵としてこの役割の存在がいる場合、放置しているとジリ貧と化す危険性が高いからね。


「ならば全てを焼き払う! 《インフェルノ》ッ!」


 回復・解毒が望めないと知るや。

 太子は真正面から向かってくるキイロスズメバチに、最高位の炎の魔法を発動。

 

 以前、あの魔法で殺された経験があるから威力は折り紙付き。

 放たれた瞬間にトラウマがフラッシュバック。

 心臓バクバクで破裂するかと思ったぞ。


「「「「ギャアアアアアアアア!」」」」

「あーあー……やっちまったよ」


 巨大な炎が彼女の正面のものを焼き尽くす。

 百匹以上キイロスズメバチを殺すも。

 同時に五十人以上の仲間を巻き込む。


 太子の取った行動は、大型モンスターとの1対1の戦闘なら正しい選択。

 だが、現在相手してるのは極小な昆虫の大群。

 それに加え、仲間が多い状況で広範囲な攻撃などすれば味方に被害が及ぶのは必然。

 つまりはヤツの選択は間違いだったというわけだ。


「この外道め! お前のせいで何人もの人間が死んだぞ」

「なに言うか! 自分でやっといて人のせいにするんじゃないよ!」

「グッ!」


 俺の正論に太子は反論できずに歯軋り。

 ヤツの性格からして、他の者も聞いてる手前、絶対に本性を明かすような行動は起こさないだろう。

 世間の目に対しては無駄に気を配ってるのが裏目に出たな。 


 ざまあみろ! 

 誰彼構わず都合の良い事ばかりいってるから罰が当たったんだ。


「太子、もしもお前が手を突いて謝り。二度と俺に逆らわないと誓うのなら死んだお前の仲間を生き返らせてやる!」


 この機に乗じて収納魔法で蚊取り線香と受け皿を出すと。

 受け皿を右手で持ち。着火魔法で蚊取り線香を焚きつつ、太子に歩いて近く。

 そして停戦勧告を出す。

 できるなら無駄な血を流したくないからだ。


 蚊取り線香を使用したのは、交渉の場をスズメバチに邪魔されたくないため。

 なお、この蚊取り線香も錬金術スキルで強化したもの。

 殺虫作用はないが、防虫効果は市販のどの蚊取り線香よりも高い。

 少なくとも蚊取り線香が燃え尽きるまではスズメバチは寄って来ないだろう。


「そんな甘言に騙されるものか!」

「あかん。この人状況が全く把握できていない」


 譲歩するも。頭から否定され、信用されず。

 とはいえ今まで敵対関係だったから無理もないか。


「ではサービスで一人だけ生き返らせたげよう。《蘇らせた兵士なのだ》!」


 そこで信用させるために一人生き返らせる。

 なお、生き返らせるのは隊長格と思われるアモスとかいう男。

 こういった場合、小物よりも大物のが劇的な効果を演出させるのがテンプレ。

 ラノベやアニメから学んだ知恵だ。


「ヒエッ! 生き返った!?」

「信じられない」

「奇跡だ! これは奇跡だ!」


 兵士達がざわめき出す。

 目の前の光景が信じられないみたいで。揃いも揃って腕で目をゴシゴシさせてた。


 まあ、死者の蘇生のなど通常あり得ないから、無理もないか。


「俺の力を理解できたかな? もっと言うと、解毒魔法も使えるから、刺された者も助けられるぞ」

「「「「なんと!」」」」


 俺の一言に王国軍の皆さん驚き、騒めき出す。


 無理もない。

 錬金術師程ではないが、プリーストも希少な存在。

 冒険者の中でもなり手の少ないプリーストのスキルを習得してる者は少ないのだ。


「信じる者には解毒魔法掛けてやるぞ」

「はい! ですから親友を生き返らせるください」

「抜け駆けするな! そんなヤツよりも我が友ヒロの蘇生を」

「揉める者など放って置いて。私の解毒を――」

「「横入りすんな!!」」


 友を失った者やキイロスズメバチに刺された者が藁にも縋る勢いで助けを求める。


 刺されたヤツらの殆どは自身のための行動。

 きっと『自分さえ良ければ他人はどうなっても構わん』という考えなのだろう。

 他者を蹴落として俺に近寄ろうと我先にしてもらおうとするもんだから、足の引っ張り合い。

 自分の都合で行動するならず者らしいぜ。


 一方、蘇生を望む者は自身より誰かのための行動。

 とんだ友情野郎だな。

 でもまあ、そういうヤツは嫌いじゃない。


「押すな押すな! 太子が停戦に同意したら皆助けて――」

「隙あり!」

「アイタァッ!?」


 詰め寄せる者達を宥めていると。

 突然頭に何かでブッ叩かれたみたいな衝撃。

 頭がゴーンとなり。よろける。

 どうやら背後から剣で斬りかかられたらしい。


 幸い足軽用の笠を装備してたお陰で外傷はない。

 ちょっと頭がクラクラしたけど。


「誰がやったぁ?」

 

 蹌踉(よろ)めきながらも振り返って確認してみると。

 やったのは誰であろう俺が蘇らせた鼻の毛穴ボコボコのブ男――アモス。


 あんにゃろう恩を仇でかえしやがった。

 見た目も悪ければ中身も悪いときた。

 どうしようもないクズだな。


「この恩知らず!」

「グエッ!」


 報復として顔面に本気の右ストレートをぶち込む。

 アモスはまともにくらってダウン。

 

 鼻が陥没してしまったかもしれんが。

 元がブサイクだから、たいして変わらないだろう。


「こんにゃろう! なにしてくれるか!」

「毒を治療してもらえなかったら、みんなお前のせいだぞ!」 


 俺に縋る者達が一斉にアモスを踏みつけ。

 哀れアモスは寄ってたかって叩きのめされる。


 ちょっとだけ気の毒に思った。

 ほんのちょっとだけね。


「「「「オラオラオラッ!」」」」

「ちょっ、やめろ! 俺は隊長だぞ!」

「知るか! オラァ、冒険者だ!」


 アモスは権力を振るい、攻撃をやめさせようとするも効果ゼロ。

 直属の部下ならともかく。

 荒くれ者揃いの冒険者連中に権力など振りかざしたところで、効果は薄いだろう。


「成り上がり者が偉そうなことを言うんじゃないよ!」

「最初からお前なんか隊長だとは思ってなかった!」


 踏みつけるのは冒険者連中だけかと思ったが。そうではないらしい。

 その証拠に部下と思(おぼ)しき者も普通に混ざってる。

 新隊長の人徳の無さが浮彫になったな。


 これは俺の仮説だが。

 太子がアモスを隊長にしたのは、素行・人望を無視した実力主義で選んだのだろう。

 性格破綻者のアイツらしいぜ。


「もうその辺にしとけ。これ以上やると死んでしまうかもしれんぞ」


 一方的にボコボコされるアモスが不便に思えてきたのでストップさせる。


 間接的でも俺が原因で人が死ぬなんて後味最悪。

 だから救いの手を差し伸べたのだ。


「「「「はい! キョウヤさん」」」」


 幸い、皆は俺の鶴の一声に従ってくれる。

 おまけにさん付けだし。

 まあ、肝心のアモスはボロボロで泡吹いてピクピクしてたけど。


 ……もうちょっと速やかに止めに入るったほうがよかったかも。


「キョウヤさん、解毒魔法を」

「そう急くなよ! 太子が停戦に同意したらしてやる」


 急かさせるが。

 無論、目的である停戦を結ばなければ誰一人として救わない。


 求める者達には悪いが。

 そうすれば彼らは太子を必死で説得しようとするだろう。


「「「「タコ様、どうか停戦に同意を!!」」」」


 事実、彼らは血相変えて太子に懇願。

 土下座する者や目を血走らせてる者も少なくない。

 彼らの必死さが遠目で見てもひしひしと伝わってくる。


 とはいえ、プライドモンスターなあの女だ。

 下の者が熱願したところで。どこまで心を動かしてくれるかは知れたもんではない。

 素直に従う可能性は限りなく低いだろう。


「悪になど屈しない! たとえ最後の一兵になったとしても御剣響夜を殺す」

「「「「そんなッ!!」」」」

「あらあらお気の毒」

 

 案の定、太子は停戦を結ぶ気などさらさらなく。

 嫌がる部下を戦いに駆り出す。


 無能がトップだと下の者は悲惨なもの。

 心の底から彼らを不憫(ふびん)に思う。


 しっかし、ワンマンでプライド高く、傍若無人で無慈悲で残忍な極悪非道とか最悪だな。

 太子を今まで出会った中で『一番のクズ』と軽蔑の念を抱いていたよ。


「……交渉決裂」


 自身の要求が受け入れられないなら情けは無用。

 蚊取り線香の燃えてる部分を折り。足元に捨てて踏み消す。

 立ち上る煙が瞬く間に消える。


「「「「ギャアアアアアアッ! 害虫が!」」」」


 阻むものが消えると、上空でブンブン飛び回ってたキイロスズメバチが王国軍の皆さんに一斉に襲い掛かる。

 王国軍の皆さんパニックに。

 

 キイロスズメバチは一度巣を刺激されると、その後はしばらく警戒心が高くなり、少しの刺激でも興奮して攻撃するようになる。

 人間に例えるなら殺気立ってる状態。

 つまり、今のヤツらの駆除難易度は最高レベルに達してるのだ。

 


 ――なお、キイロスズメバチに遭遇した時の禁止事項と安全に逃げるコツは


 大声を出さない

 手で追い払おうとしない

 とにかく刺激しない

 静かに、ゆっくり離れる


 だが――



「あーあー。なんであんなことしちゃうんだろう……」

 

 揃いも揃ってすべきではない行動ばかりする。

 結果、さらに刺激してしまい攻撃される。

 完全に悪循環に陥る。


「これでも食らえ!」


 俺はこのパニックに乗じて太子に小瓶を投げつける。


「こんなもの!」


 太子は防衛本能でそれを刀で抜刀。

 小瓶は真っ二つになるが――


「うっ!?」


 小瓶の中身が太子の全身にぶっかかる。

 ッと同時に強い香りが漂う。

 それこそ鼻をつまみたくなるぐらいに。


 小瓶の中身は錬金術スキルで雑に調合した――簡易香水。

 スズメバチ亜科に属するものは、香水等の匂いは攻撃フェロモンと誤解して襲う場合がある。

 その習性を利用させてもらった。


「なっ!?」


 香水はつけすぎるとただくさいだけ

 香水の香りに引き付けられて、キイロスズメバチが総攻撃。

 それもこれも匂い物質で意思伝達をするハチにとって知らない匂いは敵と問答無用で判断することもあるため。


「もうイヤ! 城に帰る!」


 冷ややかな目で静観していると。

 重度のトラウマになるぐらいに体中を刺された太子は堪らずに撤退を決意。


 異世界チートでトントン拍子上手くいって増長したに過ぎないあいつも所詮は言い訳や屁理屈ばっかの単なる口達者。

 忍耐などは皆無。

 運だけのヤツが困難にぶち当たれば、逃げ出すのも当然だ。

 

「――いいよ、見逃してあげる。さっさと尻尾巻いて逃げろよ……!」

「クッ!」


 歯軋りする太子。

 悔しそうな顔だ。

 同時に凄まじい怒りを感じた。


 今の俺、なんだか強者みたい。

 なんかめっちゃ気分いい。


「退くぞ。盾子(じゅんこ)、城までテレポートしろ」

「は、はい! タコ様。《テレポート》!」


 盾使いにテレポートで帰還するよう命令した。


 盾使いのテレポートの高い適性を持つ。

 運べる人数も距離も俺のテレポートを大きく上回る。

 だが、王国軍の皆さんを全員運ぶのは不可能。


「あぁ、タコ様待ってぇ!」

「置いてかないで!」


 そのせいで置き去りにされる者多数。

 その殆どが命が危険な状態の者。

 彼らは必死に縋るが――


「プイッ」


 太子はいっさい意に介さない。

 そっぽを向いて容赦なく見捨てる。

 

 あれでは死ねって言ってるみたいなもの。

 性格破綻者のアイツらしいぜ。

 見捨てられた者達が不憫でならん。


「やった……!」


 ヤツが撤退する後ろ姿を見て、勝利を確信。

 喜びからガッツポーズしてた。

 

 この瞬間、太子に『ぎゃふんと言わす』という悲願を果たす。

 今まで溜まってた鬱憤を晴れた気きがした。


 復讐が達成された達成感に嬉し涙が込み上げてくる。

 だが、みっもなく泣いては威厳もへったくれもない。

 それに仲間達に示しが付かなくなるのでグッと堪える。


 だから『喜びとは一人で噛み締めるもの』そう考えて、復讐を終えた後の余韻に浸ろうとするが――

 



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