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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
焚き付ける
56/64

第55話 天使軍団


 王城付近の草原。

 昼。


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)のパーティーは弓使いに見つかってしまう。


 射程はあちらが勝ってるから、このままここに居座っても一方的に攻撃されるだけなので。

 テレポートで王国軍と魔王軍が戦う草原に移動。

 う~☆ゲロゲロゴージャスと太子(たこ)に復讐する作戦を前倒しにする。


 またしても行き当たりばったりな展開。

 計画性もへったくれもあったもんじゃねぇな。


「来るな来るな! 当たると痛いぞ!」


 俺はパーティーの先頭に立つと。

 槍を振り回し、向かってくるザコをバッタバッタとなぎ倒す。


 表面では奮闘してるが。内心では恐怖でガタガタ。

 空元気なのだ。

 

 なお、う~☆ゲロゲロゴージャスも太子も目の前の敵に意識が集中してて、俺達に気づいてない。

 サーキちゃんも魔将軍引き連れて勇者達と交戦中。


 それもこれもスキル・潜伏を自分のパーティーに最大出力で発動させたから。

 スキル・潜伏は周囲から自分及びかけられた相手の気配を消す。

 だから直接見ない限り、俺達に気づかないだろう。


 でも、いつ発見されるかは知れたものではない。

 正直帰りてぇ。


「響夜にーちゃん、敵のど真ん中に突っ込んでって大丈夫なの?」

「大丈夫だ、俺を信じろ」

「そうよ、よしふみ様。響夜には考えがあるのよ」

「はあ……」


 疑問に思うよしふみくん。

 細かく説明できなかったってのもあるが。イマイチ理解できてないっぽい。


 無理もない。敵の真っただ中に飛び込んでいくなんて無謀と思うもの。

 総勢八人のパーティーが無策に動いたところでやられるのを待つばかり。

 開き直って正面から向き合った時こそ勝利のチャンスが見えてくるもの。


 正直言って、敵の数は多い。特に魔王軍の数なんてこっちの数百倍だ。

 だが、懐に飛び込めば敵も迂闊(うかつ)に攻撃できなくなる。

 敵味方が入り乱れる場所では“数”もデメリットにもなるのだ。


 だから思い切って突っ込んだのだ。


「ウオラァーーーッ!」

「「「「グハッ!」」」」


 事実、突然の第三勢力の介入に敵は動揺して、思い切った攻撃ができない。

 反面、こちらは少数精鋭なのでガシガシやれる。


 この作戦は割かし成功したと言っていいだろう。

 特にとうせん坊とキングはバッタバッタと敵を殴り倒してくれてる。

 心強いぜ。


「やっぱし俺って強いんだよな……」


 冤罪後、俺はレベル上げして確実に強くなった。

 並みの人間なら圧倒するだけの戦闘力はある。

 

 しかしその強さを凄いと感じないのは、う~☆ゲロゲロゴージャスや太子といった規格外の強者と比較するからだろう。

 自分の強さって世界で何番目なのだろうか?

 冒険者ギルドの等級評価受けてないからわかんねぇや。


「――現れいでよ、大天使レッドデビル!」

 

 自身の強さを疑問視してると。

 う~☆ゲロゲロゴージャスが胸の谷間から契約の魔石を出す。

 そして地面に叩きつけると。身長五メートルオーバーの全身真っ赤な幼児体型の黒ビキニをまとった女天使が現れる。


 あれは前(まえ)に俺達の三大恐竜を圧倒した天使だ。

 切羽詰まって切り札を出したな。

 とはいえ。あいつは強いから戦況ひっくり返せるかも。


「――現れよ、鳴鬼(めいき)!」

「なぬッ!?」


 う~☆ゲロゲロゴージャスに対抗して、太子も契約の魔石を使用。

 バチバチと凄まじく禍々しい力を放ちながら契約獣が現れる。


 てっきりコウマが出るものだと思った。

 しかし出てきたのは頭と左手のない――身長二メートルはあろうかという巨大な体躯の赤鬼。


 あれは西川が灼熱地獄より召喚した鬼――鳴鬼だ。

 断言してもいい。

 その証拠に鳴鬼から移植した俺の左手が反応してる。

 切り離された肉体と再び一つになりたいと訴えている。


 まあ、返すと左手がなくなってしまうから、返す気はないが。


「やれ」

「ゴッ!」

「!?」

 

 命令されると鳴鬼はレッドデビルにタックル。

 強烈な攻撃にレッドデビル転倒。

 そのままマウントを取られる。


「ゴッ!」

「ガッ!?」


 しかしレッドデビルもやられっぱなしではない。

 足技で鳴鬼を払いのけると。立ち上がって応戦。


「ゴゴォッ!」

「ガガァッ!」


 けれども苦戦を強いられる。

 攻撃は単純だが、戦闘力では確実に鳴鬼のが勝っているからだ。

 

 それにしても強い。

 左手と頭の部分がないから少なからずパワーダウンしてるのにあの強さ。

 完全な状態ならどれ程の強さだったか。


 西川が躊躇(ためら)わずに、さっさと召喚獣にしとけば強力な戦力になったと言える。

 残念だな、もったいない。

 今更何言っても愚痴だよな。


「ならば質より量! 出てこい、大天使貴婦人! 大天使デゴイチ! 大天使シージュウイチ!」


 胸の谷間から契約の魔石を三つ出して加勢。

 どれも天使タイプのモンスター。

 大きさもレッドデビルと同等の大型戦力だ。


「――あれは!」


 デゴイチとかいう天使を見て、ピンときた。

 デゴイチの脚部には炭水車と思われるパーツが随所に見られる。

 復刻版ビッグワ〇ガムでD51を作った俺には、あれがD51だと直感で理解できたのだ。

 あれはD51形蒸気機関車と天使を錬金術スキルで一つに融合して生み出したものだと断言できる。


「まだまだ出すぞ! 現れろ、大天使ビッグボーイ! 大天使フライング・スコッツマン! 大天使シティ・オブ・トルーロー!」

 

 豊かなバストを揺らして胸の谷間から契約の魔石を空中に放り出し、天使を召喚。

 まだ持ってたのかよ!


 てか、どれだけ天使保有してんだよ! 多過ぎだろ。

 あと、どんだけ胸の谷間に契約の魔石詰め込んでんだよ!

 四次元おっぱいかて。


「やっちまえェ! おめえら!」


 命令されると七人の天使は無言で寄って集(たか)って袋叩き。

 これには強者である鳴鬼も防戦一方。

 戦いは数ってか!?


「他人事ながら震えが……」


 それにしても惨い。

 天使達は非情な命令も躊躇わずに実行してる。

 もしかしたら、あいつらはロボットみたいに“心無き存在”なのかもしれない。


 元が蒸気機関車だから仕方ない気もするけれど。

 いいように使われるだけなんて、気の毒に感じた。


「いいぞいいぞ、もっとやれぇ」


 天使達の一方的な戦いっぷりにう~☆ゲロゲロゴージャスは有頂天。

 鼻を鳴らしながら胸張っとる。

 あの人もう勝った気でいるよ。


「《インフェルノ》ッ!」

「んなッ!?」


 油断大敵。

 太子がう~☆ゲロゲロゴージャスに上級炎魔法を放つ。

 不意を突かれてう~☆ゲロゲロゴージャスはビックリ仰天大騒ぎ。


「天使ども、フルパワーで防御態勢! おれっピを守れ!」


 大慌てで天使達に盾になるように命令。

 天使達は鳴鬼に攻撃するのをやめ。凄いスピードでう~☆ゲロゲロゴージャスの前に立ち、我が身を盾にする。


 なんと健診的なのだろうか。

 

「「「「!? !? !?」」」」


 しかし、それと結果とは別問題。

 攻撃に耐えられず天使達は負傷。

 内四体が戦闘不能に陥る。

 

 それにしても凄まじい熱量。

 俺を消し炭にした時より……もっと!


「排除……ニシムラ……タコォォォ……!」


 戦闘不能に陥ったかと思われた大天使シティ・オブ・トルーローが立ち上がる。

 しかしズタボロ。

 あれでは戦う力なんて殆ど残ってないだろう。


「あいつ、根性あるよん」


 シティ・オブ・トルーローは全身ズタボロになりながらも必死に立ち上がり、勇敢に向かって行く。

 見上げた忠誠心。


 健気。

 思わず関心してしまった。

 ヤツの勇気は俺も見習わないといかんな。


「愚かな」

 

 満身創痍のシティ・オブ・トルーローに太子は刀で容赦なく切り刻む。

 攻撃を受けて限界に達し、バラバラに分解してしまった。


「このアホンダラ! 一撃で沈むか、普通」


 自らのために犠牲となった天使達を軽んじた扱い。

 自己中が。

 

 全力を尽くし、散っていった者に最後まで何の関心も向けられることがないとか酷過ぎるぞ。

 う~☆ゲロゲロゴージャスが憎らしく思えてきた。

 

「役立たずめ! お前なんてお払い箱だっピ!」


 ボロ屑のようになってしまった大天使シティ・オブ・トルーローの体を蹴り飛ばす。


 見込みが無くなれば冷酷に切り捨てるとか、なんて冷酷な女だろうか。

 他人事ながら怒りがこみ上げてくる。

 それこそ、敵討ちをしてあげたいぐらいに。


「次はお前の番だ」

「ヤバッ!」


 形勢逆転。

 鋭い眼光を向けられて、う~☆ゲロゲロゴージャスは目を白黒させながら冷や汗を流す。

 後ろ盾を失い、後がなくなったなったのだろう。

 

 大魔女とか恐れられても、なにも後ろ盾がなければタダの小心者。

 ありゃあ死んだな。


 薄情者に相応しい末路だぜ。


「ざまあみろ! ハッハッハッ! 横暴な振る舞いをするから罰が当たったんだ」

「あ! ミツルギキョウヤ!」

「なにッ!?」

「ヤベッ! 見つかっちまった」


 感情に流されて嘲笑ったら、う~☆ゲロゲロゴージャスに発見されてしまう。


「覚悟ォ!」

「ノギャアアアアアアアアア!?」


 お陰で太子が標的を俺に変えて向かってきた。

 またしてもピンチに陥る。


 やっぱしバックレた方がよかったかも。



う~☆ゲロゲロゴージャスの天使について


 う~☆ゲロゲロゴージャスの天使は本物の天使から採取した体の一部を錬金術スキルのスキル融合にて蒸気機関車と融合したもの。

 蒸気機関車と融合させたのはう~☆ゲロゲロゴージャスの趣味がSLだったから、好きなものと一緒にしようという安直な理由。

 作中では語られてないが。天使達の体色は元となった蒸気機関車の車体色に準ずる。

 容姿は全員幼児体型。

 性別は全員女(元となった大天使が女天使のため)

 全員天使の翼を持つ。

 レッドデビル以外のメンバーは実験機みたいなもので、細部に蒸気機関車の面影がある。

 機械的な喋り方をする。


レッドデビル以外のメンバーは


大天使貴婦人。その正体は国鉄C57形蒸気機関車。

大天使デゴイチ。その正体は国鉄D51形蒸気機関車。

大天使シージュウイチ。その正体は国鉄C11形蒸気機関車。

大天使ビッグボーイ。その正体はユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車。

大天使フライング・スコッツマン。その正体はLNER A3形蒸気機関車4472号機 フライング・スコッツマン。

大天使シティ・オブ・トルーロー。その正体はグレート・ウェスタン鉄道の3440号機関車。


 っと、なっている。

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