第53話 異なる育成の結果発表なんだな
昼下がり。
城下町のとある定食屋。
「ズズゥー……」
俺は御剣 響夜。
見た目だけは王族らしい気品と、どことなく儚げな印象を持つブチハイエナの亜人の美少女である。
現在テーブル席にてお茶を啜りながら、西川とよしふみくんの到着を待つ。
両隣にとうせん坊とフォルティスを座らせ、定食を食べさせてる。
二人共大食漢なので『喫茶店で一服』みたいに飲み物飲むより、がっつり食事するのがいいらしい。
「「ガツガツ、ムシャムシャ!」」
しかし食事するのは構わんが。
どうにもマナーが悪い。貪るみたいな食べ方。
飢えた野獣かこいつら。
お陰で他のお客の視線も冷ややかなもの。
ちょいと恥ずかしい。
しかし当人は他のお客の嫌な顔もなんのその。
一心不乱にガツガツ食べ進める。
「……ちょいと遅れてるな」
腕時計で時間を確認。
それというのも今日は約束してた日。
育てた奴隷のお披露目会なのだ。
「しかし……」
フォルティスの横顔を眺める。
顔だけは芸術的に整った。
しかし食べさせ過ぎてブクブクに太ってしまってプロポーションが残念仕様に。
体だけはすっかり太ってしまったけれど。どういうわけか顔だけは太らなかった。
どうしてだろう?
「やっちまったなぁ……」
亜人は幼いころからレベルを上げると比例して肉体が最も効率の良いように急成長する。その際、成長 するための栄養を求めて飢餓状態になり、通常時の数倍の食事を必要とする。
無論、フォルティスも例外ではない。
そのためにともかく食べさせればいいと思い――ジャンジャンバリバリ大食させたのだけど。
加減を間違いデブデブに。
失敗した。
過ぎたるは及ばざるが如し、ってやつだな。
……とはいえ。こうしてしまった責任上、フォルティスの面倒は見てやるつもり。
俺は無責任などではない……と思う。
「遅くなり申し訳ございませんわ」
「おう、西川か……。んっ!?」
今後とうしようかあれこれ想像してると西川のパーティーがやって来る。
だが、どういう理由か左隣にはオランウータン。
それも通常の個体よりも大型な。
そいつと一緒にと手をつないで歩いているではないか。
おまけに後ろには小型の猿がぞろぞろと後ろからついて来る。
どうなってんだこりゃあ?
「何者だこいつは?」
「紹介しますわ。このお方はジャングルで一番偉い猿さんキング・モイ様です。で、後ろのお猿さん達はキング・モイ様の子分ですわ」
なんだか事情が分からないので。
とうせん坊とフォルティスをその場に残し、西川とオランウータンが別席に座らせる。
他の猿は下がらせた。
で、俺も西川の正面の席に。
「こいつらは味方なのか?」
「はい。成り行きで仲間になりました」
「成り行き……」
で、西川が説明を問うも、いまいちピンとこない。
どうにも説明はザックリし過ぎだ。
情報が不足してる。
説明下手かて!
「おめえがカブレの主のキョウヤとかいう人間か?」
「うおっ! 喋った!?」
西川に冷ややかな目を向けてると。
キングとかいうオランウータンが口を利く。
驚いて声が裏返ってしまった。
「で、カブレよ、この弱そうなのがキョウヤなのか?」
「はい、このお方こそアタシの主響夜様にございます」
「これがねぇ……」
キングは俺の顔を呼びさして西川に確認を取ると。
全体的に嘗め回すように見ると――
「強そうで凛々しい姿を想像してたのに拍子抜けだ」
「なッ!」
「それに混ざってて純粋な人間でもない」
「ムッ!」
早々にため口で言いたい放題。
狼藉者が!
ジャングルで一番偉いくせに作法もへったくれもありゃしねぇ。
事情を知らないからズカズカ言ってるが。こっちだって好きでこうなったんじゃねぇやい。
このオランウータンは口も柄も悪くてどうにも荒っぽい。
はっきり言って印象が悪い。好感は持てない。
「こんにゃろう、好き勝手言いやがって! ぶっ飛ばすぞ」
「できるかな」
「ヤロー! 表に出ろ、ぶっ飛ばしてやる」
「「ガシッ」」
言い返すとキングは中指立てて挑発。
激昂した俺は立ち上がると、ヤツも立ち上がる。
そのままロックアップの体勢に入ると。がっちりと組み合い、力比べ。
お互いの力を確かめ合う。
「響夜様、落ち着いてください」
「わかっとる! 俺はいつも冷静だ」
西川が仲裁に入る。
俺は西川の言葉に引き下がった。
「命拾いしたな」
「お前がな」
「こいつ……!」
捨て台詞を吐くも、キングも減らず口で対抗。
この態度ににムカつくも。不毛の争いと割り切り、怒りを静める。
しかしながらムカつく一方で、これでよかったとも思ってる。
なにせキングの力はう~☆ゲロゲロゴージャスやサーキちゃんには一歩譲るものの、優れたパワーを秘めている。
技ならともかく、単純な力比べでは分が悪い。
あのまま力比べを続けていたら良くて互角、下手をすれば自分が敗北と危惧したほど。
つまり、道具を使わないで戦ったら最後、勝ち目はないと言ってよい。
西川が仲裁に入ってくれて助かったと、ホッと胸を撫で下ろす。
「キョウヤよ、オイラを人間にしてくれ」
「はぁ!? どういうこと?」
「響夜様、これこれしかじかな事情でして」
キングの訳のわからんお願いに混乱してると。西川が耳元で囁く。
西川の説明によると。
キングは人間になりたい。
そして俺ならキングを人間にできると説明したらしい。
「……で、俺に俺に丸投げしたわけか」
「掻い摘んで申しますとそうなります」
「また無理難題を引き受けてくれたな」
「なんでもできる響夜様ならできると思いまして」
「うーむ……」
どうにも俺に対する西川の期待・イメージは実際の実力以上の評価をされている。
これも期待や憧れの強さがエスカレートしていったゆえ。
憧れられるのは嬉しいが。
その期待に応えるのは精神的重圧以外のなにものでもない。
良くも悪くも西川は厄介なヤツだよ。
「まあそれは追々考えるとしよう」
「お願いします」
パッと妙案が思いつくものでもないので先延ばし。
「響夜にいちゃん、おひさー」
「おぉ、よしふみくんか」
「城下町で寄り道して遅くなりました。ごめんね」
「まあ、それならいいが」
そうこうやってると。
遅れてよしふみくんのパーティーもやって来る。
彼の後ろにはゾウレンジャー。
まるで親の後ろに隠れる子供のみたいにビクビクしとる。
こいつは人見知りするちびっ子かて!
……まあ、それはともかく。
全員集合したので仕切り直し。
本来の目的である、奴隷の成長具合を見せ合う。
◆
で、いざ本題である育成した奴隷のお披露目。
俺、御剣響夜並びに、それぞれが異なる強化方法を信じて実践した奴隷を拝見とゆく。
「響夜様、誰なんですかこれ?」
「……フォルティスだ」
「あらまあ」
然しもの西川もこの異変に気づく。
気遣いからか、必要以上に何かを言わなかったが。
要らぬ優しさに情けなくなった。
当の本人であるフォルティスはあっけらかんとしていたが。
育成した俺としては恥だ。
我が子の不出来を嘆く親の気持ちがわかった気がした。
でもまあ、甘やかし過ぎたのは俺の責任だからから何も言えない。
しかしながら、ステータスは悪くないんだけどなぁ。
「これは……」
西川の奴隷であるツチブタの獣人福富を見せてもらうと。
成長して――なんと細マッチョに。
顔も入手時のやつれた感じは微塵も無く。凛々しい顔立ちに。
レベルとステータスを調べるも、こちらも高水準。
驚きの変化。
まさかこんなにも上玉に育つとは。
「まさか西川に育成の才能があったとは驚きだ」
レベルで上回ってるのもあるが。現時点ではフォルティスを上回っている。
どのような育成方法だったかは不明だが。
結果だけ見れば俺の完敗。
強い味方が加わったのは嬉しいが。
反面、自分よりも上手く奴隷を育てた西川を軽く妬む。
「ぼくのはどう」
「お兄ちゃん押さないで~」
自らの奴隷であるアフリカゾウの亜人ゾウレンジャーの背中を押し、俺に見せてくるよしふみくん。
これにゾウレンジャーはアタフタしてたが。
よしふみくんはお構いなし。
ちょっと強引だな。
「あんまし変わっとらんな……」
しかし、僅かに背が伸びたぐらいで殆ど変化無し。
いちおうレベル・ステータスも伸びてるものの。
福富、フォルティスと比べると能力値の上昇が低いので、大きく劣ってると言わざるを得ない。
とはいえ、育成環境が悪かったからこのようなお粗末な結果でも仕方がない。
「こりゃあ西川のおじちゃんの勝ちみたいだね」
「そうらしい」
「育成大会は西川のおじちゃんの優勝。パチパチパチパチ」
「パチパチパチパチ」
三人が三人の奴隷を見て回るも。
結果は西川の一人勝ちもいいところ。
心ならずも西川の勝ちを認め。
よしふみくんに釣られて拍手を送る。
「いいぞ、いいぞ」
「ヒュー、ヒュー」
これに同調してか、猿共も大声を上げたり。
口笛を吹くなどする。
「いやぁ、どうもどうも」
拍手喝采に西川は頬を赤らめ、恥ずかしそう俯く。
脚光を浴びるになれてないからか、緩んだ顔でもじもじ。
こういう時は照れてはいかん。
締まりがないからな。
「まあ、何はともあれ祝杯だ。定員さん、飲み物と料理ジャンジャン持ってきて」
「はい、承りました」
ウエイトレスを呼び、全員分の料理と飲み物を注文。
負けはしたものの。成果自体は悪くねえ。
だから功労者を祝ってをあげる。
普段ならこんな気前よくはいかんが。
今は小金あるので、大盤振る舞い。
それというのも以前戦利品として手に入れた王の装身具を奴隷商に二つ売ったからだ。
まあ、正規のルートの半値で買われたが。それは仕方ない。
なにしろ盗品同然の代物だからな。
それでも結構な金額だったので、損な取引は涙を呑んで割り切ったさ。
「あ……飲み物にお酒は出さんでくれよ」
「かしこまりました」
注文をちょっと訂正。
本当は酒で一杯やりたかったけど。
よしふみくんが見てる手前、未成年の俺が飲酒してるの見せてはいかん。
悪に堕ちた俺だけど。よしふみくんの前では模範でありたいのだ。
「では皆の衆、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
飲み物がいきわたると乾杯の音頭をとり。
ささやかなお祝いといく。
フォルティスのプロフィール(第53話以降)
・身長:125センチ→163センチ
・体重:29キロ→91キロ
・スリーサイズ:B小さい W細い Hちっこい→B107 W85 H99
・レベル9
・概要:フォルティスが成長した姿。戦闘力は強化されたものの、響夜が餌あげ過ぎてブクブクに太ってしまった。かなり太ったが、本人は気にしてないので、まだ太るだろう……。戦闘スタイルは後方支援タイプ(ウィザードタイプ)
ゾウレンジャーのプロフィール(第53話以降)
・身長:110センチ→113センチ
・体重:14キロ→15キロ
・レベル5
・概要:ゾウレンジャーが成長した姿。よしふみが行き当たりばったりにレベル上げしたので効率が悪く、三人の奴隷で一番レベルは低い。元々が小さかったのに加え、成長のピークも過ぎてたらしくあまり背は伸びなかった。これ以上大きくなるのは難しいだろう。しかしながらステータスはまだ伸びる見込みはある。戦闘スタイルはバランス型。
福富のプロフィール(第53話以降)
・身長:120センチ→162センチ
・体重:21キロ→58キロ
・レベル19
・概要:福富が成長した姿。凛々しい顔立ちの細マッチョ。西川の抜群の育成センスで育てたので、理想的に成長したといえる。ステータスも大幅に強化させている。細マッチョの体から繰り出される打撃技は強力だ。戦闘スタイルは接近戦主体




