第50話 灯台下暗し
十数文字、文字数オーバーしてしまいました。
すいません。
昼前。
加藤家所有の山。
「ダウリャアッ!」
「よしふみ様、そっちに行きましたわ」
「まかせろ」
俺、御剣 響夜は、よしふみくん、西川、とうせん坊と一緒に経験値稼ぎがてら、農作物に被害を与えていたアライグマを退治していた。
「こいつで最後か……」
駆除という大義名分のもと虐殺し続け。
最後の一匹を加藤家の台所から拝借した菜切包丁で首チョンパ。
ついに山のアライグマを全滅させるに至る。
これで町民の安全と農業の発展に貢献したわけ。
日本全国のアライグマ被害で見れば氷山の一角だが。
少なくともここいら一帯の農作物被害は食い止めれた。
「いちおう良い行いをしたんだよな……?」
やっといて難だが。これで良かったのか疑問が湧く。
なにせやったのは大量虐殺だからな。
やり終わった後の罪悪感が半端じゃない。
それこそ、自分が殺戮マシーンにでもなったように思えた。
とはいえ、すべてはアライグマを日本に解き放ってしまった者が悪い。
アライグマ達だって好き好んで日やって来たのではないからな。
だから俺達はそいつらの尻拭いをしたに過ぎない。
言わば影の功労者なのだ。
だから誰かにとやかく言われたくはない。
……でも、市当局の名において表彰くらいはして欲しかったなぁ。
「うーむ……」
けっきょく良いか悪いかどちらとも言えない状態。
んで、モヤモヤから唸っていた。
「響夜様、これからどうしましょう?」
「うーん……」
アライグマを皆殺しにした以上、ここには作物を食い荒らす外来種はもういない。
いちおう作物に被害を与える動物はツキノワグマとイノシシがいるが。
こいつらは日本の在来種。一匹二匹ならともかく。あまり駆除し過ぎると生態系が乱れる。
それだけは避けたい。
どうしようか知恵を絞らねば。
「……別の狩場に行こう」
一分後、案を思いつく。
我ながらナイスな案だ。
「では、私達は何処でレベル上げをすればよろしいんでしょうか?」
「そうさなぁ……」
西川に問われ、言葉に詰まる。
ヤツの言うように場所が問題だ。
俺のスキル・テレポートでは行ける距離は最大でも4kmが限界。
それに一日に数回しか使えないから、それ程遠くには行けないだろう。
移動距離に問題が無ければ沖縄県に行って生態系に悪影響を及ぼしてる特定外来生物ジャワマングースを狩りまくるのだが。
現在地は中部地方。テレポート距離の都合上、現実的ではない。
能力不足で断念せざるを得ないとは。
あぁ、情けない。
別のプランを立てねば……!
◆
俺、御剣響夜は山のアライグマを全滅させると、とっとと加藤家に帰る。
で、加藤家の食卓にて四人でお昼ご飯。
西川に料理してもらう。
「できましたわよ」
「またアライグマ鍋か……」
「もう飽きた」
出された食事に愚痴る。
よしふみくんも同様だ。
「響夜様、食べ物は粗末にしては駄目よ」
「そりゃあそうだけどさぁ……」
料理した西川の言い分も尤も。
それに彼の作るアライグマ料理は丁寧に下処理されてて実に美味い。
しかし、三日三晩も続くとうんざりしてくる。
そんなんだからぼやいてしまうのだ。
「そうだ! 閃いたぞ」
仕方無しにアライグマ鍋を口にすると、脳細胞が刺激され、ある案を思いつく。
「どうしたんですか藪から棒に?」
当然大きな声を出す俺に西川はオドオド。
まるでイタズラが母親にバレそうになった時の子供みたいになってる。
「西川、お前の異世界移動スキルで異世界に行くぞ」
「異世界って、どの異世界ですか?」
「魔王と太子が居座る、あの世界だ」
「あー、あの世界ですか」
ざっくり説明すると察してくれる。
そういえば、異世界はいくつもある忘れてたな。
あの世界の名称わかんなかったんだ。
いつか調べよ。
「すぐにここを出発する! 用意しろ」
「わかりやしたぜ、お頭」
「うん」
「なんだかわかんないけど、響夜様が言うなら間違いないわね。従うわ」
思い立ったが吉日。
鍋を掻っ込むと、迅速に行動に移す。
◆
「はい、異世界に到着です」
「うむ、ご苦労」
俺、御剣響夜並びに三人の仲間は異世界の奴隷商に足を運ぶ。
『灯台下暗し』なんてことわざがあるように。義史ちゃんもまさかこの世界に俺達がやって来てるとは思うまい。
「不気味な場所だわ。響夜様、ここで何する気ですか?」
「戦力となる奴隷の調達だ」
「奴隷ですか……」
この世界にやってきたのは経験値稼ぎだけではない。
なにせ魔王軍にせよ、太子の軍団にせよ、敵の数は多い。
俺のパーティーは少数精鋭だが、所詮は多勢に無勢。
いくら強くなったところで四人では、どちらに戦い挑んだとしても勝ち目は薄い。
そこであれやこれやと戦力増強の方法考え、奴隷を使う、っという答えに行きつく。
召喚獣に頼るという道もあったが。
あれは運しだいで信頼性に欠ける。
それに万が一にでも制御不能な怪物が出てくれば、取り返しのつかん事態を招く恐れさえある。
事実、召喚魔法には何度も痛い目にあってるので少なからず懲りてる。
だから金はかかるが、自分で選べる奴隷のが安全ってわけ。
「ジャマするぜ」
堂々と肩で風を切るかのごとく来店。
他の三人はオドオドした足取りで俺に続く。
「いらっしゃいませ。お客様、本日はどのような商品をお探しでしょう?」
仮装用マスクを付けてたゴリラみたいにむさっ苦しい男性店員が紳士的に話しかけてくる。
こいつは俺がコウマとフープを入手した時に対応したヤツだ。
しかし、俺が最初に奴隷を売ってほしいとやって来た時には睨み付けてきたのに。今のヤツの物腰は柔らか。
対応に随分と差がある。
どうやら俺を御剣響夜だと認識できてないらしい。
声は同じでも容姿が別もんだから無理もないな。
なにせ今の俺は身なりを整えたドレススタイル。
何処ぞの貴族令嬢にでも見えてるだろう。
つまり貴族令嬢の可能性が高いから無下にできない。
だから対応も紳士的なわけ。
相手によって態度変えるとか酷いヤローだ。
まあ、そう誤認させる様に狙ったのだけどね。
「奴隷が欲しいんだが」
後から知ったのだが。この店は表向きは魔物商として魔物を取り扱っている。
だが裏では正規のルートではさばけない奴隷、盗品、違法薬物、禁止されてる製法で作られた魔道具なども扱う機関。
言わば闇の存在……ブラックマーケットなのだ。
「失礼ですが、お客様 お手持ちのほうは」
「《収納魔法》出し」
疑ってるっぽかったので。俺は収納魔法で保管してた腕輪を出し、渡す。
以前戦利品として手に入れた王の装身具の一つだ。
「これは失礼しました。どうぞこちらに」
渡された腕輪が高価な物だと瞬時に見抜いた奴隷商は媚び諂い。
物の目利きは大したものだが。あからさまなのは頂けんな。
……まあ、それはさておき。
奴隷を吟味するのだが。
「うーむ……」
俺がはじめて入店した時に見なかった顔もチラホラあった。
だが、どれもこれも小者ばかり。
能力にせよ、容姿にせよ、俺のお眼鏡ににかなう奴隷が見つからない。
これでは十把一絡もいいところ。
計画が早々に壁にぶち当たってしまった……。
「もう当てずっぽうで選んではどうですか?」
「馬鹿言うんじゃないよ。適当に買って、質が悪ければ安物買いもいいとこだぞ」
「それもそうね。すいませんでした」
品定めに時間がかかるもんだから、西川が不満をぼそり。
だが俺は譲らない。
なにせ前に入手したコウマとフープは欠陥品もいいところな奴隷だった。
故にじっくり時間をかけて真剣に選ばねばならぬ。
「どうですか、お客様。お気に召す奴隷はいらっしゃいましたか?」
「いまいち、ピンとくるのがいないな」
部屋をぐるっと一周し終わるも、どれもイマイチ。
買うに値する奴隷ではない。
大量入荷でもしてくれれば目ぼしい奴隷が見つかったかもしれん。
大口のお得意さんなら気を利かせて都合してくれただろう。
しかしながら、俺は一見さんみたいなもの。
そこまで贔屓はしてもらえない。
どうしようか腕組しながら唸っていると――
「ん?」
奥のほうに何かあるのに気づく。
そこからはなんとなく腐敗臭がしてきている。
遠目でも分かる、それが死の臭いだと。
「お前達はここで待っていろ」
あそこは目に入れると心が病みそうだ。他の仲間には刺激が強過ぎるだろう。
だから一人で行く。
「お客様、そちらに行かれては困ります」
「俺は客だ。ちょっとぐらいいいだろ」
「わかりました。それではどうぞ」
奥に行こうとすと奴隷商に止められた。
だが俺は強引に説得して見に行く。
「こりゃあ酷いな……」
そこにある檻には三人の奴隷の哀れな姿があった。
恐怖による失禁や、環境の変化による嘔吐の痕跡もみられる。
覚悟はしていたが。想像以上に酷い。
「こいつらはいくらだ?」
「そのようなものは売り物には」
「じゃあ、タダでいいな」
「は、はあ……」
先にこう言っておかないと後で代金を請求されそうなので、釘を打つ。
こうすればあちらも文句は言い辛い。
「《蘇らせた兵士なのだ》ぁ!」
「これはいったい……!?」
蘇生スキルを三人の奴隷に発動。
生前の姿を取り戻す。
奴隷商は目の前の出来事が信じられないらしく、口をパクパクさせていた。
「こいつはいい……」
蘇らせた三人の奴隷。
一人目は口に象牙有し、大きく三角形の耳とを生やした男の子。こいつはアフリカゾウの亜人だ。
二人目は長い耳介にガタガタの歯に豚っ鼻。太く長い尾持つ男の子。こいつはツチブタの獣人だ。
三人目はマアジの胸ビレのような物が、動物の耳の代わりに生えてる女の子。こいつは鰭耳竜族という強力かつ希少な亜人である。
いずれも痩せ細っており。横たわりぐったりしていた。
背丈も幼稚園生ぐらい。
現時点ではとても戦力にならない。
だが、俺はこの中で一人だけキラリと光るものを持つ者を見つける。
そいつは鰭耳竜族の少女。
こいつは強力な戦力となり得る。
そして上玉に育つと俺の直感が告げてる。
「少女よ、きょうからお前は俺のものだ。この御剣響夜に従え!!」
予想外の掘出し物を手に入れた喜びから、邪悪な笑みを浮かべて笑っていたよ。
この瞬間、鰭耳竜族少女の育成計画が行動方針となるのであった。
鰭耳竜族について
・魚の胸ビレのような物が、耳の代わりに生えてる種族の総称。
・元々はドラゴンの一種で、海竜族といえるような姿をした種族。
・この世界のドラゴンは様々な種族と交配することができるので、その中で人種と交配し、誕生したのが鰭耳竜族の亜人である。
・鰭耳竜族の亜人は原種よりもポテンシャルが数段劣るものの。元が生態系を簡単に狂わす程の力を持つため、戦闘力は普通の亜人よりも遥かに高い。
・原種、亜人種問わず希少種なので、数は少ない。




