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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
分岐点
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第48話 俺のパーティー急にむさっ苦しくなったな


 加藤家のお風呂場。


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は一風呂浴(ひとっぷろあ)びていた。

 合戦場でかいた汗を流すためだ。


「ふぅー……」


 さて。

 西川(にしかわ)の勘違いで合戦場のど真ん中に出でしまった後、どうなかったのか簡単に説明しますと――

 

 なんとかスキル・エルファオルファのクールタイムである六分間を逃げ延びるのに成功。

 クールタイムが終了すると、速やかに故郷へ帰還するのであった。


 また、合戦場での戦いで何人かの足軽を返り討ちにし、身ぐるみ剥ぐと。戦利品として足軽の装備一式を九セット手に入れた。

 酷い目にあったけれど。悪くない収穫だと思ってる。

 これには『怪我の功名』ことわざが脳裏を過ったよ。


 ……っとまあ、だいたいこんな感じ。

 説明終わり。


「……俺のパーティー、急にむさっ苦しくなったな……」


 現在のパーティーメンバーは俺以外全員男。

 紅一点になってまった。

 っと言っても俺も中身は男だから、紅一点って言っていいのかわからんけど。


 皆いいヤツだが。男ばっかだとどうにもむさっ苦しい。

 心ならずも逆ハーレム作っちまった。


 そのうち異世界行って女の子の奴隷を買うとしよう。

 最初に買った二人には裏切られたから。今度はなるべく従順なのを選ぼ。


「これからどうしようかな……」


 今はいいが。いつまでも加藤家に留まってはいられない。

 なにせ魔王軍には勘の鋭い義史(ぎり)ちゃんがいる。

 加藤家に隠れてるのがバレるのも時間の問題だろう。


 今後の具体策を考えねば。


 ◆


「……のぼせた」


 俺、御剣響夜はリビングに真っ裸でぶっ倒れていた。

 湯船に浸かったままぶっ通しで考えたもんだから、長湯し過ぎて茹で蛸になってしまったのだ。

 

 幸い、異変に気付いたよしふみくんが西川と一緒に助けてくれたので、大事にならずに済む。

 発見されてれなかったらどうなってたやら。

 まったくもって危機一髪だったよ。


「響夜にーちゃん大丈夫?」

「お頭、今冷やしやす」

「こんなになるまで考えるの熱中するなんて、しょうがないお人ね」

「面目ねぇ……」


 現在、よしふみくん、とうせん坊、西川の三人に扇子で仰いでもらってる。

 我ながら情けない有り様だなぁ。


「響夜様は重いから、湯船から引っ張り出すの大変でしたわ。よしふみ様と一緒に一生懸命引っ張って、どうにか救い出すのに成功したんですもの」

「重い重い言うな! あぁ……頭がクラクラする……」


 西川の愚痴が頭にきて勢いよく立ち上がるも。

 立ちくらみして再び倒れてしまう。


「響夜にーちゃん無理しないで。もうちょっと安静にしてなよ」

「やっぱしそうするしかねぇか……」


 ぐうの音も出ない正論を言われては、それに従うしかなく。

 よしふみくんに膝枕されながら扇子で仰いでもらい、冷ましてもらう。

 その間、全裸を晒して。


 ◆


「この際、白黒はっきりつけようじゃねぇか!」


 俺、御剣響夜は湯あたりから回復すると。パンツとブラを着て、リビングに体重計を持ってくる。

 目的は、自分の体重を見せて重くないのを証明するためだ。


「やるだけムダだと思いますよ」

「うるせぇ! 俺の言い分のが正しいんだ」

「絶対にアタシのが正しいと思います。だから恥を掻くだけですよ」

「まだ言うか! っんなら間違ってたらヘソ踊りでもなんでもしてやる」


 西川の『自分のが正しいんじゃね』的態度にムカついたから、勢いでそんな約束をする。

 自らの首を絞める行為だが。それだけ自信があるから問題ない。

 それもこれも西川に己の非力さを見せつけるためだ。


「よいしょ」


 で、体重計に乗る。


「ほら見ろ、体重70キロ――ッて、重いじゃねぇか!?」

 

 体重計に表示された体重にビックリ。

 体型的に肥満体でもないし、身長が140センチ程度なのになんでこんなに重いんだ?


「体脂肪率は16パーセントだよ、響夜にいちゃん」

「ああ、そうだね」


 体脂肪計付き体重計なので、体脂肪率も追って表示されるが。その数値はいたって普通。

 どうなってんだこりゃ? 体の中に鉄の塊でも入ってるのか?


「それじゃあ交わした約束実行してくださいね」

「ウグッ」


 しまった! 西川が正しかったらヘソ踊りする約束してたんだった。

 西川のヤツしっかり覚えてるとか、普段ザルなくせにこういう時に限って抜け目がねぇ。


「わかったわかった。やりゃいいんだろ、やりゃあ」

「そうです。約束は守るものなのです」


 西川のヤロー、さも当然って顔してやがる。

 ムカつくが、身から出た錆(さび)。

 約束を守るしかなかった。


「あっ、そらそらおヘソのダンス。ヘソヘソヘソヘソ、おヘソヘソ~ォ」

 

 で、ヤケクソ気味にヘソ踊り踊る。

 ああ、情けない……。


 ◆


「ゼハハハハ! 今日からおれっピが諸君らの新しいリーダーだ」


 響夜が馬鹿やってる中。

 魔王城では、パーティー会場にてう~☆ゲロゲロゴージャスの戴冠式が行われていた。

 

 どうしてこのようになったのか?

 実は響夜達が去った後、う~☆ゲロゲロゴージャスが下克上(げこくじょう)をやらかしたのです。

 理由は『自分より弱いヤツに従えるか!』っという、意外と的を射たもの。

 大方(おおかた)、魔王福の神を秒殺した際に自分との実力差を見抜いたのでしょう。


 さて。こうなると周りも黙ってない。

 この機に乗じてう~☆ゲロゲロゴージャスに鞍替(くらが)えする者が複数現れる。

 だが、現魔王支持派も多い。


 最初は衝突を避けようと話し合いでしたが。

 双方は譲り合わず、ついに戦いに勃発。

 数時間の激闘の末、う~☆ゲロゲロゴージャス陣が勝利。

 これによりトップが入れ替わるのであった。


「おれっピが魔王だ」

「「「「ははぁぁぁ!!」」」」


 魔王軍を掌握したう~☆ゲロゲロゴージャスは有頂天。

 ワインをボトルのままグビグビとラッパ飲み。

 その姿は、女性ながら豪快で男らしいものです。


 この豪快さに惹かれた者多数。

 多くの者が彼女の前で伏し拝んでいた。


「で、おれがナンバースリーなんだぞぉ。魔将軍の一人なんだぞぉ」


 福の神がう~☆ゲロゲロゴージャスの左で偉そうに振る舞っている

 負けはしたものの。元魔王・福の神は殺されたり、追い出されたりはされずに魔王軍に残留(ざんりゅう)。

 魔王軍幹部・魔将軍という形で、う~☆ゲロゲロゴージャスの下に付く。

 

 福の神は、この手の悪の首領としては珍しく、トップの座にこだわる様子はなく。う~☆ゲロゲロゴージャスに忠誠を誓っている。

 なんとも潔いですね。


「まさかこんな事になるなんて……」


 かぐや姫が会場の裏側で一人ブツブツと不満を口にしている。


 う~☆ゲロゲロゴージャスをトップとして素直に認める者が多かったが。

 中には不満分子もちらほら。

 その一人がかぐや姫である。


「あの牛女、いい気になりやがって……!」


 響夜を排除するためにう~☆ゲロゲロゴージャスと手を組むも。

 そのう~☆ゲロゲロゴージャス早々に問題を起こし、手を組んだのを後悔していた。


 それもそのはず。

 最高幹部だったのがタダの幹部に降格されてしまったのですから。

 

 利用してやろうとした相手にいいように引っ掻き回されてしまうなんて予想外だったでしょう。

 彼女には青天(せいてん)の霹靂(へきれき)の出来事だったに違いない。

 今は恨みのこもった般若(はんにゃ)みたいな顔で歯軋り。

 どうやってう~☆ゲロゲロゴージャスを陥れようか策をめぐらせていた。


「……」


 軍団の中にはう~☆ゲロゲロゴージャスがトップになったのを良くも悪くも思ってない者も。

 それは義史である。

 

 彼女はパーティー会場の隅っこで、グラス片手にう~☆ゲロゲロゴージャスをぼんやりと眺めていた。

 だが、その瞳の奥には何らかのもくろみがある模様。

 はたして義史のもくろみとはいったいどのようなものだろうか?

 真意は今のところ不明であった……。


「ぼくちゃんナンバーツーなんだっちゅーの! あんまりご先祖様に近づくなっちゅーに」


 軍団ナンバーツーになったサーキがう~☆ゲロゲロゴージャスの隣に立つ福の神を引っ張る。

 それこそ『自分がう~☆ゲロゲロゴージャスの右腕』っとでも言わんばかりに。


「子孫よ、そうカッカするな。こいつには利用価値がある」

「その利用価値ってのは、なんだっちゅーに?」

「こいつは腐っても神族だ。強い子を産み出すのにこいつを有効活用する」


 そう。目的は福の神との子作り。


 う~☆ゲロゲロゴージャスは生前から強い血があると判断した場合は種族関係なしに子供を作っている。

 彼女は好色家なのだ。

 生前でも男漁りをしまくり。それが結果として多種族の父親との間に数多くの子供を産み出した。

 どのぐらい産み出したか正確な数は不明ですが。直系は五人らしい。

 

 言ってみれば福の神は“ミツバチのオス”みたいなものだった。


「大魔女の強さで太子(たこ)を倒してだぞぉ」


 そうとは知らない福の神は呑気なもの。

 それこそ『太子を倒してくれる心強い味方』程度にしか思ってなかった。

 

 これからレイプされるのを福の神は思ってもいないだろう。


「あっという間に潰してやるよ」


 とはいえ、う~☆ゲロゲロゴージャスも太子を倒す気。


 しかし、う~☆ゲロゲロゴージャスは太子をなめていた。

 直接勝負してないために太子の強さを知らないので、過小評価してたのだ。

 それに加え、自らの強さを過信していた。


 近いうちに太子との直接対決して楽々勝つつもりらしいが。

 その予測が間違ってて、実際にそうならないのをこの時のう~☆ゲロゲロゴージャスはまだ知らない……。



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