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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
魔王
41/64

第41話 やっぱし簡単に魔王軍に入れてはくれんか


 夕暮れ時。

 とある異世界の村。


「ここがその異世界か……」

 

 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は魔王福の神に連れられ。よしふみくん、義史(ぎり)ちゃん、西川(にしかわ)、レンと共にある異世界に来ていた。

 異世界を自由に渡る能力を持ってるとは、さすがは神といったところ。


「しっかし古びた所だなぁ。時代劇みたいだ」


 この異世界は、その昔の日本みたいな世界。

 文明のレベルは、江戸時代か戦国時代ぐらいだと思われる。

 複数の世界があれば文明のレベルに差が出るのは納得だが。

 

 異世界はいくつあるのだろうか?

 いくつあるかは謎であるが。世界は広いってわけだな。

 

「しかし、この世界だとファンタジー衣装は浮くな」

「ですね。この世界だとアタシの服装が最適ね」

「どうだろうか……」


 西川の言う通り、時代的には正しいが。

 街中で真っ黒な忍び装束着たヤツが歩き回ってれば、それはやっぱり浮いてると思う。


 ……まあ、格好はともかく。

 異世界に来た理由は、仲間に入れる条件として百人力の強者"とうせん坊"なる男を仲間に出来たら魔王軍に入れてやると言われたからだ。

 史上まれにみる凶悪な男、とうせん坊は悪の軍団に入れるに相応しい。魔王軍幹部・九大魔将軍にしたい人材なのも納得。

 何がなんでも引き入れたいのだろう。


 たぶん、自分でできないから俺に頼んだろうな。

 やる前から大変なのがわかった。

 しかし魔王はもしも仲間にできたなら俺を幹部にしてやるとも言ってくれた。

 そうなるとやる気になる。


「絶対に九大魔将軍の空位におさまってやる!」


 などと意気込むが。

 九大魔将軍は最初から五人しか存在してなかった (つまりは四人分空位)

 そもそも魔王が九大魔将軍などと名付けた理由は『強そうだから』という呆れたもの。

 そんなだからかぐや姫みたいな悪い女に利用されてしまったのだろう。


 これはかぐや姫が悪賢いのか。それとも魔王がお人好しなのか。

 もしも後者ならば、なんか残念な魔王だな。


「んッ!」


 どうでもいいやり取りしてると。どこからともなく一本足の高下駄のカタカタ鳴るのが聞こえた。

 他のヤツは気づいてない様子だったが俺にはわかった。


 これも俺がブチハイエナの亜人であるが故(ゆえ)に成せるもの。

 動物の亜人・獣人となれば、その動物並に身体能力が向上のだ。

 要するに野生の力ってやつ。


「近づいてくる!」


 本能的に来るそれがヤバいヤツだと感じ取った。


 この時俺は「来るなら来い!」と思ったが。その一方で「できれば来ないで」とも思った。

 今まで未知の強敵出会った場合、高確率で苦戦するのがテンプレ化している。

 できれば自分より弱い敵だけ相手したいのだ。


 正直言って帰りてぇ。


「来やがった!」


 ついにとうせん坊が現れる。


 とうせん坊は西川と同等ないしわずかに上回る大男。がっしりしてて体重もありそうだ。

 力持ちとはこういうヤツのなのだと思わせる容姿。


 人を呪ったみたいな鋭い眼光。

 針金みたいな逆立った髪はまるで剣山留めかと思うぐらい刺々しい。

 凄まじい怒りの気迫を放っており。俺達はその気迫に押されて怯む。


「フハハハハハ!」


 現れて早々にとうせん坊は見境なしに大暴れ。

 人々を襲い、右手に持った松明で家に火をつけて渡る。

 

 おまけにそれを笑いながらやってる。

 大した悪人だ。

 こいつが魔王軍に入ったら、どれ程の悪行をするだろか。

 想像するだけでゾッとする。


「とうせん坊、俺が相手だ!」


 とはいえ。このままヤツを放っておいたらとんでもない被害となるだろう。

 対話できそうにない以上、やり合うしかないな。

 呆気に取られてる仲間をよそに。俺は勇気を奮い立たせて立ち向かって行(ゆ)く。


「わらしごときが!」

「フンヌゥッ!」


 とうせん坊は全力の右ストレート。

 俺は左手の鬼の手で受けとめたが。


 受けとめた手がしびれた。予想以上の馬鹿力だ。

 こりゃあ1対1の真っ向勝負は不利。


 となれば――


「西川、ビッチ合体だ!」


 最初から全開走行。

 短期決戦で相手を仕留める!


「またあれやるんですか?」

「そうだよ! でなきゃあいつに勝てん」

「あんまり気が進まないわね」

「ごちゃごちゃ言っとらんで合体せい!」

「は、はい!」


 西川がごねるもんだから一喝。

 強引にビッチ合体する気にさせる。


 で、合体しようとするが――


「やらせるものか!」

「西川後ろに跳べ!」

「はい!」

「ウワァアアアアア!」

「ブッフゥウウウウッ!?」

「西川ッ!」

 

 本能的にヤバいと感じ取ったとうせん坊は西川の腹をグーパンチ。

 バックステップさせたのでダメージは軽減させたが。

 西川は激しいダメージを受けて吐血。

 戦闘不能となってしまう。


「凄い威力だ……!」


 もしもクリティカルヒットしてたら即死だったに違いない。

 百人力の強者と言われるのは嘘偽りでも誇張でもないのだと思い知らされたよ。


「《ヒール》!」


 回復魔法で西川を回復させるが。

 困ったことに、西川はダメージから中々復活しない。


 本質には気づいてないみたいだったが。腹が立つぐらい勘の鋭いヤツ。


「義史ちゃん、西川を頼む」

「わかったわ」


 義史ちゃんに西川の介抱を任せ。単身、とうせん坊に向かってく。

 西川を守るためだ。


 なお、その間も魔王はただ突っ立て眺めてるだけ。

 面接官みたいな立場とはいえ、ちょっと薄情だな。


「どないしよ……」


 勢いで向かってったはいいが。

 ビッチ合体できなくなって、あっという間に手詰まり。

 次なる策を考えねば。


「《雷神剣》!」

「ンッ!?」


 突然、レンが雷を纏った斬撃を放つ。

 斬撃はとうせん坊の持ってた松明の燃えてる部分を切り落とす。


「掩護(えんご)を感謝する」

「あんたのためにやったんじゃない!」

「ツンデレかて!」

「ふざけるな!」


 レンにピンチを救ってもらったものの。

 些細なことでくだらない口喧嘩に。


「こいつはオレが倒す。お前は黙って見てろ」

「おい、レン!」


 レンは右手で俺の胸を突き飛ばすと。果敢にとうせん坊に向かって行く。

 

 しかし、その戦い方は完全に殺す戦い方。

 アイツ、目的をわかってないのじゃなかろうか。

 この脳筋が!


「ガァアアアアア」

「グッ!」


 勇敢に向かって言ったはいが。

 とうせん坊の力の前にレンは防戦一方。

 実力の差をまるでわかってない。

 血気盛んなのはいいが。レンは思慮に欠ける猪突猛進タイプ。


 勝算もないのに強敵に挑むとか、まったくもって口だけのやっちゃでほんま。

 これは俺が救いの手を差し伸べなあかんな。


「レン、俺と合――」

「断る!」

「まだ言っとらんぞ!」

「どうせ合体しろとか言うんだろ。あんなダサい合体なんてできるか!」

「ぐぬぬ……!」


 まったくもって言いたかったのはそれ。

 レンにビッチ合体を完全拒否された。

 助けてやろうという善意を踏みにじりやがったよ。

 空気の読めんヤツだ。


「……やっぱし俺がしっかりしないといかんか」


 なんて言ってるが。勝ち目の薄い状況に躊躇(ちゅうちょ)。

 足が重い。

 自らの弱き心が足枷(あしかせ)となってる。


 どう考えても臆病風に吹かれてるな。

 どうしよう……。


「響夜にーちゃん、ぼくと合体して」

「なぬッ!?」


 よしふみくんが合体相手になると申し出る。


「ぼくとじゃできない?」

「できないわけではないが……」


 ビッチ合体の性質上、よしふみくんとの合体も可能ではあるが。

 なんだか嫌な予感がするのだ。

 俺の嫌な予感はよく当たるから難色を示したのだ。


「やってみようではないか……!!」


 とうせん坊の強さは異常だ。

 鬼の左手を駆使しても勝利するのは難しい。


 となれば、ヤツに対抗するにはビッチ合体しかないと悟る。

 これが数秒で導き出した答えだ!


「よしふみくん、合体するぞ! 《ビッチ合体》ッ!」

「はい、響夜にーちゃん!」


 合体スキルを発動。

 双方の体は立体パズルを組み替えるごとく部品単位で組み替わる。


「完成! よしふみ響夜」


 よしふみくんとのビッチ合体は難無く成功。

 俺が下半身となり、よしふみくんが上半身となる。


「西川との合体と違って、頭が重くない」

 

 よしふみくんは西川程頭でっかちでないので、カブレノ響夜よりかは全体のバランスがいいと思えなくもない。


 しかし、股間に顔ってのはどうにも締まらん。

 これじゃあ、せっかくパワーアップしても素直に喜べない。

 この股間に顔ってのが無ければ大分マシになるんだけどなぁ。


「こいつはすげえぜ! 体の中から力が漲ってくる」


 否定的に言ってばっかだが。パワーアップの度合いは甚だしい。

 西川とビッチ合体した時との違いに違和感を感じるものの。強い力を感じる。

 大幅にパワーアップしたのに間違いはなく。負ける気がしねぇ。


「いくぞとうせん坊! 好き勝手にはさせないぞ!」


 俺、よしふみ響夜は威勢よくとうせん坊に向かって行く。


 新たなるビッチ合体の力を見せつけてやるぜ!



とうせん坊のプロフィール

・性別:男

・種族:人間

・年齢:詳しい年齢は不明だが10代だと思われる。

・一人称 :おら、おらぁ

・身長:182センチ

・体重:85キロ

・好きな食べ物:米の飯、なべ料理。

・嫌いな食べ物:特になし

・性格:心の捩じれた捻くれ者だが、元々は意気地無しの無口。

・人物:物心付いた時すでに両親は無く、寺に預けられていたが、大柄で頭が足りなかったので和尚や坊さんや子供達に「うすのろ」「でくの坊」等と苛められて育った。そんな連中を見返してやりたいと思ったとうせん坊は、観音堂にこもって祈り続けた。満願の日、観音様が差し出した手まりを食べた彼は百人力を授かった。しかし、その力も誰にも認められないばかりか、罵られた結果、大人子供関係無く、怪力で殴り殺して回る暴れ者と化した。

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