第39話 こいつが魔王なの!?
異世界再び行く響夜御一行。
しかし異世界で待ち受けていたのは……。
午後5時。
俺、御剣 響夜はレンと西川と一緒に加藤家の庭で突っ立ってた。
「準備完了」
「こっちもOKだ」
「アタシも準備完了ですわ」
西川の謎の新スキルで異世界に行き来できると判明した後、あれこれ準備した。
目的は置き去りにした仲間の救出。
仲間の救出には西川も了承。
快く引き受けてくれる。
一方でレンは最初非協力的だったが。太子に復讐するのも目的のため、利害が一致。
協力を約束してくれる。
しかしながら、様々な状況を想定したので道具の吟味に思ったよりも時間がかかってしまった。
先を急がねば。
「では、行くか」
「あぁ」
「はい、響夜様」
3人揃って服装も戦闘用のものを身に着けて、いつでも戦闘可能な状態。
準備も整い。いざ異世界に出発しようしたその時である――
「「ただいま」」
「あ」
よしふみくんと義史ちゃんが学校から帰ってきてしまう。
「西川さん、何をなさってたんですか?」
「はい、義史様。これこれしかじかで――」
2人に内緒で異世界に行く予定だったが。
西川が包み隠さずベラベラ喋ってしまう。
口の軽い男だ。
こいつ本当に忍者なのか怪しいな。
「そう。なら、わたしも行くわ」
「ぼくも連れてって」
「しかしだな……」
話しが終わると、2人揃って連れてけと言われる。
非情に危険な場所への転移ゆえ、最初は断ってたが。
2人の熱意に根性負け。
こちらが折れて話がまとまる。
それもこれも俺がもたついたのが原因。
段取りが悪い自分が恨めしい。
現在よしふみくんと義史ちゃんの支度が終わるのを待ってる。
あーあ……。また遅れてしまう。
「お待たせいたしましたわ」
俺が勝手に悔やんでる間に現れる義史ちゃん
剣道用の防具を身に着けて中々様になってる。
そういえば、義史ちゃんは学校で剣道クラブのエース選手だったな。
「響夜にいちゃん、どう?」
義史ちゃん少し遅れて現れるよしふみくん。
その姿はブカブカのアメフト用装具。
あれは昔よしふみくんのお父さん。つまりは俺の伯父さんが大学時代に使ってた物だ。
「これは変ちくりんだ。どうにも整わんな」
「ガーン」
しかしながら。加ちゃんの伯父ちゃんはガタイの良いがっしりした体つき。
小学3年生のよしふみくんには大き過ぎてチンチクリン。
見るに堪えん。
思った通りに言ったら、よしふみくんしょ気てしまう。
ちょっとストレートに言い過ぎたな。
ちょいと失敗。
「でもまあ、丸腰よかマシだからね」
「そお?」
などとフォローするものの。
モンスターとの命懸けのバトルが繰り広げられる世界でアメフトの防具程度では気休め程度。
まあ、ないよりはマシか。
まあ、それはさておき。
あれこれ話してるとよしふみくん立ち直ってる。
立ち直りが早いのは彼の長所なのだ。
「いざ異世界に!」
「さあ行こう、夢のファンタジー世界!」
よしふみくんと義史ちゃんは張り切ってウォークライ。
異世界に過度な期待してるけど。ぶっちゃけ、そんないい所ではない。
行ったらきっとガッカリするだろう。
「皆様、それじゃあ行くわよ。《エルファオルファ》!」
そうこうやってる間に西川がスキル発動。
腕で空間を叩き割って異世界に旅立つのであった。
◆
「なんだここは?」
「さあ」
俺、御剣響夜達5人は西川のスキルで異世界に瞬時に移動するも出てきた場所は見覚えのない場所。
どうなってんだこれ?
「あれは魔王城!」
「なにっ!?」
出てきた場所は、なんと魔王城の真ん前。
レンの一言で知るところとなる。
「あれが魔王城なのか……」
はじめて魔王城見たが。
目の前に聳え立つそれは――どう見ても日本風の城。
大阪城や名古屋城にでも観光に来たのかと思ったぞ。
「どうなってるのこれ? この手の城って洋風なのがテンプレだよね?」
知識・常識と現実のギャップに軽い混乱状態。
少し考えるも皆目見当がつかずに頭を抱える。
「響夜様、アタシはどうすれば!?」
想定外の事態に西川もアタフタ。
俺の服の裾を引っ張って、指示を仰ぐ。
またこれだ。ピンチになると迷わず俺に助けを求める。
で、こっちは毎回何らかの被害を受ける。
ホント、いい迷惑だよ。
「ちきしょうめ! マジでどうしよう」
正直言って、魔王軍の本陣に出てきてしまうとは予想外。
スキル・エルファオルファは出る場所を選べないという問題点が発覚。
でっかいヘマをやっちまった。
「侵入者だ!」
「ひっ捕らえろ!」
瞬く間にモンスターの大軍勢に取り囲まれる。
武器を抱える暇をあたえてくれない。
さすがは本陣を護ってるだけあって精鋭揃い。
ぶっちゃけ強い。
しかしながら一方的にやられる気などさらさらない。
抵抗はしたさ。
しかし、多勢に無勢。
抵抗もむなしく、あっという間に捕らえられてしまうのだった。
◆
「じぎじょう……!」
俺、御剣響夜。
捕らえられた後、魔王城の牢屋にぶち込まれてしまう。
無論他の4人も一緒に牢屋の中。
それもこれも俺の過信と軽率が招いたもの。
4人に迷惑かけてしまった。
もう少し念入りに実験してから実行すればよかったと後悔。
現在、後悔から鉄格子を握り、歯軋り。
「「「……」」」
よしふみくんも義史ちゃんも、そしてレンでさえもどんよりして黙り込んでいる。
悪いことをしてしまった。
口や態度に出さないが。心の中では自分なりに懺悔している。
「アタシは無実よ! 出して!」
「うるさいぞ! ギャーギャー騒ぐな!」
「シュン……」
西川が鉄格子をバンバン叩いて騒ぐが。
看守のオーガに黙らされる。
鬼の看守ってか。
だが、看守がオーガなのは都合がいい。
懺悔も程々に名案を思いつく。
「看守さん、看守さん。これを見てください」
「なんだ?」
「わが左手の鬼よ、その力を示せ!」
思い立ったが吉日。早速アイデアを実行に移す。
ミトンを外し、鬼の左手の力を示す。
鬼の手から発する妖気が強いため、力を解放すれば一部の妖怪や鬼族には同類と認識される。
あのオーガは結構な強者だが。俺の手の鬼の力の方が上回ってる。
西洋と東洋の違いはあるが。同類で格の違いわかるはず。
それに賭けてみたわけだ。
「あ、あなた様は灼熱地獄の貴族・鳴鬼様!」
オーガは顔面蒼白。
額からは汗がダラダラと流れ落ちる。
てか、この手の鬼の名前は鳴鬼っていうのか。
それに灼熱地獄とも言ってたな。
地獄ってのは8つの層からなっていて、深い層ほど堕ちた者は強く、極悪・邪悪になる。
灼熱地獄はその6番目の層だから、鳴鬼は相当強い鬼だったのだろう。
だけど、その鬼を倒しちゃう太子っていったい……。
「鳴鬼様がなぜにこのような場所に?」
「いろいろあってな。それよりも牢屋から出してくれないか?」
「直ちに」
オーガは俺を鳴鬼と勘違い。
仲間共々出してくれる。
しめしめ上手くいったぞ。
こうなりゃこっちのもんだ。
「出して早々だが、魔王様に会わせてくれないか?」
「はい! 尊敬する鳴鬼様のためなら喜んで」
「これからは俺のことは響夜と呼べ」
「ハッ! 響夜様」
本来の名前と違う名前で呼ばれるのはどうにも落ちつかん。
違和感がつきまとう。
なので、早々に本来の名前に訂正させる。
「他の4人は丁重に扱うのだぞ」
「では、客間にでもお連れします」
「それで頼む」
他の4人を連れてくとややこしくなりそうだから置いていく。
で、4人を残し。オーガに案内されるがままに魔王に会いに行く。
◆
俺、御剣響夜は魔王とアポをとってもらえることになる。
意外にもあのオーガは結構な大物で、幹部候補だったという。
そんなヤツのお願いだと魔王も無碍にできないらしく。面会を承諾。
現在、魔王の部屋にて待たされてるのだが。
「ここも日本風か……」
この部屋まるで時代劇に出てくる『お殿様の部屋』みたいな部屋。
それも成金趣味なイヤミなやつ。
いわゆる大広間みたいなものか。
豪華ではあるが。城の外装といい、どうにも日本のイメージ。
魔王は日本カブレなんだろうか?
もしも本当に日本カブレなら、侍や歌舞伎役者みたいなのが出てくるかもしれん。
身構えてると――
「おれが魔王だぞぉ」
「なっ……!?」
出てきたのは狩衣姿の小太りの男。
真っ白な肌 (「白色っぽく見える」というレベルではなく、はっきりとした白色) に3頭身のずんぐりむっくりな体。
スマイルと憎しみの表情がごちゃ混ぜになったような顔してる。
――その風貌は昔話に出てくる『福の神』そのもの。
これまた予想の斜めいったのが出てきたぞ。
ちょいとビックリしてしまった。
「あなたが魔王様なんですか?」
「おう! おれが魔王福の神だぞぉ」
もしやと思ったが。こいつは福の神。
この世に神が実在してたとは驚きだ。
しかし言動といい雰囲気といい、どうにも軽いなこいつ。
神としての神々しさがまるで感じられない。
神のイメージぶち壊し。こうなると本当に神なのか怪しい。
下級神なのか?
あるいは自称じゃないよな。
だんだん心配になってきた。
それに人々に幸福を与える福の神が魔王とはこれいかに。
そもそも神が魔王ってのもへんちくりんだよなぁ。
人類の存在価値を認めようとせず他の神々と対立し離反したのか?
あるいは悪に堕ちたのか?
いずれにせよ、彼には何らかの事情があるようだ。
「で、おれに何用だ?」
「はい、それは――」
魔王に疑問は尽きぬが。それは今解決しなければならないものではない。
今すべきは魔王との交渉。
上手く交渉し、魔王軍に入れてもらうのだ。
あわよくば魔王軍幹部の地位にでもなってやろうかって打算もあったりする。
悪堕ちするのに抵抗はあったけど。
これも太子に対抗するため。
苦渋の選択なのだ。
……まあ、何はともあれ。
とりあえず事の事情を魔王に説明するのであった。
福の神のプロフィール
・性別:男
・種族:神
・血液型:不明
・年齢:不明(推定数百歳)
・一人称 :おれ
・身長:156センチ
・体重:65キロ
・好きな食べ物:高い物全般、真鯛、酒。
・嫌いな食べ物:安っぽい物全般。
・趣味:目立つ事、自慢。
・性格:不作法でうぬぼれ屋。
・人物:福の神なので、居るだけでお金が転がり込む不思議な力を持っている。おかげで魔王軍が財政難に困ることは全く無い。何かにつけていい事は自分のせいにし、悪い事はやな神のせいにする困ったヤツ。数年前に本来いた世界から追い出され異世界にやってきた。そこで福の神の能力を使って好き勝手やって魔王扱いされる。神で魔王だが戦闘力はそれ程高くなく、力比べは苦手な模様。




