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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
故郷への帰還
38/64

第38話 新スキル習得


「今日はこの辺にしとくか」


 夕暮れ時。

 

 加藤家に遊びに来た3人を帰した後。俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は西川(にしかわ)とよしふみくんと一緒に加藤家所有の山に。

 目的は外来種アライグマを駆除しつつレベル上げ。


 今回は鼻の利く種族であるティラノサウルスを使って獲物を狩り出してみた。

 ついでに俺の契約獣も戦闘に参加させる。

 結果的に効率よく得物を容易に見つけ出す事が可能となった。

 

 戦闘に関しても、契約獣達は恐竜パワーを遺憾なく発揮して大活躍。

 作戦は見事成功のだった。

 

 一方、経験値の効率は劣悪。

 異世界のモンスターよりも経験値の量がはるかに劣る。

 レベルを1上げるだけでも一苦労。

 既に30匹以上倒してが3人共レベルアップしてない。

 レベルアップするのが気が遠くなるほど長い。滅入っちまうぜ。


「効率の良い得物はないものか……」


 腕組みをして考え込んだ。

 小難しい顔でムスッとした。

 そのぐらい効率が悪かったからだ。


「マスター、ディサイプルはレベルアップしました」

「アプレンティスもレベルアップしました」

 

 俺達3人がレベルアップしなかった一方で、契約獣3匹はレベル1からレベル2にレベルアップ。

 モンスターのレベルは人間のそれよりも上がりやすいのだ。

 その影響か、契約獣達が人語を話すようになる。


 そういえば、名無し魔物に名前を付ける“名付け”とかいう儀式があるらしい。

 確か、上位の魔物が下位の魔物に場合のみ効力が発揮され、“名付け”られた魔物は名付けた魔物から所有魔力奪うことにより進化するとか。

 恐竜達に名前を付けた時に妙に疲れたのは、このせいかも。 

 

 しかしながら恐竜達のパワーアップには成功した。

 知能も戦闘力も、生前のそれを確実に上回るだろう。

 

「マスター、そんなしょんぼりしないでください」

「そうです。しっかりしてくださいマスター」


 ディサイプルとアプレンティスがしょげる俺を気遣い。

 恐竜に慰められちゃったよ。

 なんか複雑な気持ち。


 言葉遣いからもわかるように、どちらも忠誠をつくしてくれてる。

 蘇生時に俺を本気でエサにしようとした2匹がなぁ。

 世の中何がどうなるかなんてわからないものだと痛感させられたよ。

 

 ◆


「今更だが、俺のレベルが上がらなかったのは契約獣のせいでは……」


 翌日。

 午前10時。

 

 俺、御剣響夜は畳部屋にて座布団に座り、裁縫しながら昨日のことを考えると。

 ある結論にたどり着く。

 

 それは経験値が頭割りになるってこと。

 冷静に考えたら、戦闘に参加する数が多ければ多いほど1人あたりの取り分が少なくなる。

 自分がレベルアップできなかった原因がわかったよ。


「俺は選択を間違えたのか……?」


 効率化しようとして、かえって効率が悪くなってしまうとは本末転倒。

 見込みが甘かったと思い知らされた。


 とはいえ、契約獣をパワーアップしたので、結果的に戦力強化はできた。

 

 良くはないが、悪くもない。

 そう考えると、俺の考えが間違ってなかったと言えなくもない。

 マジでどっちなんだろう?


「……おっと! できたか」


 どっちつかずで頭の中はモヤモヤしたてると。裁縫が終わってる。

 どうやら無心 (あるいは無意識) に近い状態でやったらしい。


 なお、作ったのは魔法少女のコスプレ衣装。

 昨日来たよしふみくんの友達の角刈りと約束したやつものだ。


 手縫いで作ったが、半日とかからずに完成した。

 我ながら手が早い。


「ウル〇ラマンみたいになってしまったな……」


 調子を見てみるために試着してみるが。

 色をレッド&シルバーにしてしまったせいで、ウル〇ラマンそっくりのカラーリングに。

 いちおう、デザインイメージは『羽』のつもりだったが。色のせいで完全に陰に隠れてしまったぞ。

 これじゃあ隠し要素もいいところ。どっちがメインかわからなくなってしまった。

 ……改めて色の力(ちから)って大きいよね。


「響夜様ぁ、お茶が入りましたわ」

「ああ、ご苦労」


 西川がお盆にお茶載せて持ってきてくれる。

 ちょうどなんか飲みたい気分だったのでグッドタイミング。

 よく気が付くヤツだと感心した。

 

 戦闘ではあんまり役に立たない西川だが。

 家事全般が得意で、尚且つ積極的。

 あいつ、奉公人でもやってたのかな?


 それに加えて世話焼きときた。

 できる旦那さんになりそう。


「あら、可愛らしい服ね。どうしたのそれ?」

「よしふみくんのダチ公(こう)と約束した魔法少女のコスチュームだ」

「あー、忠義(ただよし)さんと約束したやつですね」

 

 そんな名前だったか。

 ろくに自己紹介せれてねえからわかんねえや。


「しかし可愛らしい服ですね。アタシにも作ってくださらない?」

「ブッ!?」


 西川のトンデモ発言に、飲んでたお茶を吹き出してしまう。

 

「西川、なに気色悪いこと言ってんだよ!?」

「いけると思いますけどね。想像してみてください」

「どれ」


 言われた通り想像してみるが。


「オエ―ッ」

「まあ、失礼ね!」


 余計に気持ち悪くなった。

 想像するんじゃなかったぜ。


 西川はぷりぷりと怒ってたが。

 あのずんぐりむっくり男に魔法少女のコスチュームは似合わん。


 呆れた少女趣味。

 オネエ言葉のイカれた男だと思っとったが。まさかここまでとは……。

 

「なにやってるんだ。うるさいぞ」

「「あっ」」


 西川とギャーギャー騒いでると、部屋にレンが入って来る。

 俺の目がレンの目と合い、声がハモる。

 見られたくない相手に魔法少女姿を見られてまった。


「プッ! なんだよそれ」


 レンは俺を鼻で笑い、小馬鹿にする。

 あいつに見られた時点でこうなるだろうとわかっとったわい!

 心ならずだけど……。


「レン、お前は俺をバカにしてるのか?」

「ようやくバカだと自覚したか」

「んだとコラァァ! 表に出ろ。ぶっ飛ばしてやる!」

「やれるものならやってみろ。返り討ちにしてやる!」


 売り言葉に買い言葉。

 今まさに決闘にならんとしたその時である――


「フンッ!」

「「!?」」


 西川が畳に拳を叩きつける。

 このアクションに2人揃って西川に意識を向けた。


「虫殺した」

「なっ!」

「がくっ!?」


 一喝でもしたかと思ったら。その場にいたハエを殺しただけ。

 これにレンは口あんぐり。呆然と立ち尽くす。

 俺はズッコケた。


「紛らわしいぞ!」

「響夜様、怒っちゃやーよ。でも、レベルが1上がりましたわ」

「なに!? どれ、《能力透視》!」


 西川のステータスを確認してみると。確かにレベル2からレベル3にレベルアップしてる。

 思い返してみれば、昨日の経験値稼ぎで西川はもうちょっとでレベルアップできるところまできてたんだった。

 ハエ1匹でも経験値は得られるが微々たるもの。それでレベルアップしたのだがら、本当にキリギリのところだったんだろう。

 

「響夜様、スキルポイント得られましたわ。あと、新しいスキルを習得しました」

「10ポイントも入っとる。スゲーな」

 

 普通は1レベル上がると得られるスキルポイント1か2。

 スキルポイントは本人の才能や適正によって得られる量が変化すると聞いたが。

 レベルが1上がるだけでスキルポイントが10も得られるとか、むっちゃ優秀じゃないか!? ビックリしたよ。

 

 西川は弱っちいのに、潜在能力の底が知れない。

 サシでバトった経験皆無なので、強いのか弱いのかさっぱりわからん。


「なにかスキルを覚えてみる気はあるか?」

「はい! 響夜様みたいなスキル欲しいです」

「俺みたいなスキルってどんなだよ?」

「そこのところは響夜様にお任せします」

「俺に見繕(みつくろ)えってか。うーむ……」


 で、西川のスキルを選ぶわけだが。

 適当に選んではスキルポイントの無駄遣いになるだけ。

 どんなスキルを習得させるかちょいと悩む。

 

 今の西川なら、習得にスキルポイント10必要な中級魔法も即座に習得できる。

 しかし、西川にガンガン攻め込ませると高確率で何らかのヘマをやらかすのが関の山。

 

 っとなれば、支援系。プリーストのスキルがいいだろう。

 で、ヒール、ターンアンデッド、ブレッシング、パワード、解毒魔法を教えた。

 これで使ったスキルポイントは5。

 残りの5ポイントは保留とした。


「あと、新スキルも覚えたとか言ってたな。どんなだ?」

「はい、試しに発動させてみますね《エルファオルファ》!」

「ちょっ!? いきなり発動させんな!」


 西川を確認もせずに謎スキルを発動。

 腕で空間を叩き割られ、時空の歪みが出現。


「「「おわああああああああ!」」」

 

 瞬く間に3人揃って吸い込まれてしまう。


 ◆


 俺、御剣響夜達3人は西川のスキルで別世界に出てくる。

 その際に2階建ての屋根ぐらいある高さの上空に出てしまい、地面に降り着くことを強(し)いられる。


「ふっ」

「ほぎゃ!?」

「ノギャッ!?」


 レンが着地成功。

 一方、俺と西川は着地失敗。

 すっ転んで砂まみれ。

 どうにも着地って苦手なんだよなぁ。


「ここは……!?」

 

 立ち上がって辺りを見渡すと。そこは見覚えのある景色。

 すぐにわかった。ここが異世界の城下町郊外の田舎道だと。

 

 もしかしたら西川の新スキルは異世界を行き来できるスキルなのだはなかろうか。


「西川、でかしたぞ!」

「はへ?」


 思い掛けず異世界に戻った喜びのあまり西川の手を握っていた。

 当の西川はわかってない様子だったが。


「西川、スキルをもう1回使ってくれ」

「はい、わかりましたわ。《エルファオルファ》!」


 で、再びスキル発動。

 腕で空間を叩き割ることで時空の歪みを作り出し、時空の歪みに飲み込まれる。


 ◆


「「ンギャアッ!?」」

 

 俺、御剣響夜。

 西川にスキルを発動してもらいが。

 また2階建ての屋根ぐらいある高さの上空に出てしまい、着地する流れに。

 またしても西川と一緒に着地に失敗してしまう。

 

 とはいえ、故郷に帰還できた。

 やはり西川の新スキルは異世界に行き来できるスキルだった。

 これで異世界に行き来できると判明。

 

 そうとわかれば善は急げ。

 故郷にてサーキちゃん達を救出する準備をするのであった。



スキル《エルファオルファ》について

・空間を砕いて穴をあけて異世界に移動するスキル。

・西川のオリジナルスキルで、他の者には使用できない。

・使用するMPは微々たるもので、1日に複数回使用可能。

・クールタイムは6分。

・空間に穴をあけてしまうので、使用するたびに各異世界に悪影響を及ぼす。


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