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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
故郷への帰還
36/64

第36話 蘇らせた兵士なのだを試す

また、予定文字数オーバーしてしまいました。すいません。


 お昼過ぎ。

 加藤家の庭。

 

 加藤家の庭は広い庭で、正確な広さは知らんが。100坪以上あるのは確実だな。

 

 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)。

 あの後、山で西川(にしかわ)とよしふみくんと一緒にレベル上げするも。お昼頃には下山。

 この世界でもレベル上げできるのかという謎が解決したので、無理に留まる必要がないからだ。

 本格的なレベル上げは、また今度でよい。


 で、3人で加藤家に帰宅。

 西川は仕留めたツキノワグマを処理し、毛皮と食肉にしてもらい。

 よしふみくんには俺に実家へお使いを頼む。


「……」


 現在、俺は庭のど真ん中に突っ立って、右手に焼き鳥缶。左手に牛大和煮缶を持って眺めていた。

 なお、食べるのが目的ではない。

 

 一応言っておくが。缶詰を開封できず手をこまねいてるわけではない。

 目的は実験である。


「《蘇らせた兵士なのだ》ぁ!」

「モォ~」

「コケコッコー」


 俺のユニークスキル・蘇らせた兵士なのだ、を缶詰に発動。

 すると缶詰をぶち破って鶏と牛が生き返る。


「こんなものでも蘇生できるのか……」


 やってはみたものの。正直、これでできるかあまり自信はなかったのだが。

 問題なく缶詰の食材 (内容物) を生前の姿に戻したのだ。

 こんなもんでも蘇生できるから、スキル・蘇らせた兵士なのだ、は汎用性があるスキルなのかも。


「響夜にいちゃん、持ってきたよー」

「おぉ、ご苦労ご苦労」


 お使いを頼んだよしふみくんが帰ってきた。

 蘇生させた牛と鶏を放置し、すぐさま持ってきてもらった物を受け取る。

 それは2つの小さなプラスチックのケース。

 

 ケースの中身のは――恐竜の歯の化石。

 肉食動物特有の鋭い歯。

 1つはスピノサウルス。もう1つはカルカロドントサウルスのもの。

 どちらも全長10メートルを超える史上最大級の肉食恐竜である。


 この化石は数年前に科学館のミュージアムショップで入手した物。

 結構高額ではあったが、思い切って買っちゃった。

 こずかい貯めて苦労して買った……ということはない。


 実は俺、加ちゃんの伯母ちゃんの会社で働かせてもらってるので、同世代のそれよりリッチな部類に入るだろう。

 事の発端は俺が加ちゃんの伯母ちゃんにこずかいせびったら『お金が欲しいなら、働いて稼ぎなさい』って言われたので『じゃあ働かせてくれ』って言ったら加ちゃんの伯母ちゃん持つ3つの会社の1つで雇ってくれた。

 そこで柔道や剣道の道着を作る仕事をした。

 金への執着心か、筋がよかったかは定かでないが。普通の人が要する半分学習時間で熟達できた。

 正規の社員と同等かそれ以上の仕事をする俺に加ちゃんの伯母ちゃんは正社員並みの給金で支払ってくれた。

 金払いが良いので、暇さえあれば働かせてもらった。

 お陰でこずかいでに困ることは全く無くなったわけ。


 また、腕が良かったから『高校卒業したら、うちの会社に就職しなさい』と、お誘いも受けてる。

 今のところ、どこにも内定取れなかったら誘いに乗ろうと考えてる。

 

「……はたして上手くいくかな?」


 化石から恐竜を蘇らせるのが目的であるが。

 ぶっちゃけあまり自信はなかった。

 なぜなら蘇らせる対象はいずれも約1億年前の化石。死後途方もない時間が経過してる。

 今まではスキルで蘇らせた者は死後時間をおかずに蘇生させてきた。できるかかどうか定かでない。


 それに加え、俺の化石は補修品。

 化石というと完全な状態で発掘されるものだと勘違いしてる者が少なくない。

 多くは傷ついてたり割れてたりするのが殆ど。

 出回っている化石の多くは、人の手の入った補修品が多いと考えられている。


 不安要素から躊躇し、化石を握る手が震えてしまう。


「為せば成る、為さねば成らぬ何事も! 《蘇らせた兵士なのだ》……ッ!」


 突然頭にこのことわざが浮かぶ。


 向かっていくかどうかは己の勇気次第。

 俺は臆病者ではない。

 自らを奮い立たせてスキルを発動する。


「ギャーーーオ!」

「ゴガアアアア!」


 実験は大成功。

 生き返ったスピノサウルスとカルカロドントサウルスが雄叫びを上げる。

 現代の日本に恐竜が蘇ったのだ。

 

 その迫力に牛は脅え、鶏は逃げ纏う。


「どっちも猛々しくてかっこいいぜ」

 

 恐竜好きの俺にとっては感動もの。

 ジーンとくるぜ。


「響夜にいちゃんすげー」

「だろ」


 などと自慢気に言ってるが。

 実は俺も自分の能力に驚いてたりする。


「ギャーーーオ!」

「ゴガアアアア!」

「オワッ!?」


 自分の能力に惚れ惚れするのも束の間。

 2匹の肉食恐竜が俺に噛みつこうとしてくる。

 こいつら、これから主人になる俺をエサだと勘違いしやがった。

 

「ギャーーーオ!」

「モォ~!」

「見境ないなこいつ」


 かと思えばスピノサウルスが牛の首に食らいつく。

 

 牛の首は食いちぎられて即死。

 強烈な一撃。すごい攻撃力だ。

 最大の肉食恐竜と謳(うた)われただけはあるな。


「……なんて感心してる場合ではないな」


 スピノサウルスは牛に標的を変えたが。カルカロドントサウルスは一心不乱(いっしんふらん)に俺を追いかける。

 とはいえ相手が14メートル級の巨体なので小回りが効かない。

 ちょこまかと動き回ってチャンスを待つのが得策――


「あっ! ヤベェ……」


 と、思ったが。

 よろけたカルカロドントサウルスが加藤家に寄りかかり、壁の一部が崩れて落ちた。

 長期戦に持ち込めば家が倒壊するかもしれん。

 あんまり悠長(ゆうちょう)に構えてる場合ではないな。


 おまけに牛を平らげたスピノサウルスも再び俺を標的とする。

 まあ、全長15メートルの巨体には牛1頭では腹いっぱいにはならんよな。


「よしふみくん、目をつぶれ」

「え!? なんで?」

「いいから早く!」

「は、はいっ!」

「《フラッシュ》ッ!」

「「!?」」

 

 早期決着のためにスキルを発動。

 

 強い光を発して目くらまし。

 二大恐竜の視力を奪う。


「響夜様ぁ~……。ンギャアアアア!? 目が、目がぁ~!」


 フラッシュを発動させた瞬間に西川がひょっこり出てきてしまい、放出された光をもろに見てしまう。

 結果、両目を両手で覆い、もだえ苦しんでる。

 タイミングが悪かったとはいえ、彼には気の毒なことをしてしまった。


 とはいえ、スキル・フラッシュは視力を一時的に奪う程度のスキル。

 時間の経過とともに視力も回復するので、深刻な問題にはならんだろう。

 

 それよりも二大恐竜が目をくらませてる間に契約せねば。


「《収納魔法》出し! 御剣響夜の名において命ずる。我に応え、我に属し、我に従え」

 

 収納魔法で収納してた契約の魔石を2つ出し、無理やり屈服させて自らの契約獣とするために儀式を行う。

 カルカロドントサウルスとスピノサウルの首に契約を結んだ契約獣の証『隷従の首輪』がまとわりつくと、俺に拝伏(はいふく)した。

 契約が成功した瞬間だった。


 はじめてやってみたが。ここら辺は召喚獣と似てる。

 まあ、契約獣と召喚獣の違いはラーメンと中華そばぐらいのもの。

 だから契約の魔石がそのまま使えるのだ。


「響夜にーちゃん、ぼくにも1匹ちょうだい」

「なぬっ」


 契約が完了したと余韻に浸ってると。

 よしふみくんがねだってくる。


 ぶっちゃけ、両方とも自分の配下にするつもりだったからなぁ。

 よしふみくんは大事ないとこだが、カルカロドントサウルスもスピノサウルスも譲りたくはない。

 こうなると立ち往生。どないしよ……。


「嫌ならぼくの化石からやって」

「よしふみくんも化石を持ってたのか?」

「はい」


 そう言ってズボンのポケットからケースを取り出す。


「こ、これは!?」


 ケースに入れられた歯の化石を見て己が目を疑った。

 分厚く頑丈で、鈍器のようなそれは――恐竜界のスーパースター・ティラノサウルスのもの。


「よく入手できたな」

「ネットオークションで競り落としたんや」

「ネットオークションか……」


 ティラノサウルスは人気知名度ナンバーワンの恐竜。

 それ故に欲しがる者はごまんといる。

 そこに目を付けて、実物から型をとって人形焼のごとく型抜き製造された偽化石を売る輩も。

 顔の見えないネットオークションならなおさら。


 よしふみくんが偽物を掴まされてないか心配になってくる。


「響夜にーちゃんならできるよね」

「……まあ、やるだけやってみるか。《蘇らせた兵士なのだ》!」

 

 期待のまなざしを向けられた状態でやるのはなんともやりにくい。

 期待されるのはプレッシャーだ。

 これで失敗しようものなら落胆も大きかろう。

 だから人の期待って裏切りづらいよ。


 いちおう蘇生スキルを発動するけど。

 失敗した場合を考えながらやったので、煮え切らない気持ちでスキルを発動してしまった。

 なんとも中途半端なテンションだったと自分でも思った。


「ゴガァァァァ!」


 しかし心配をよそにティラノサウルスは蘇生。

 と同時にけたたましい叫び声を上げる。

 全長約11メートル。

 先に蘇生させた2匹よりは小さいが。それでも十二分にでかい。

 戦力としては申し分ないだろう。


 上手くいって良かった。心配するだけムダだったな。

 心配したっていいことないってか。


「ゴガァァァァ!」

「あぶねっ!」

 

 などと考えてると。ティラノサウルスに噛みつかれそうになる。

 バックステップで回避に成功するが。ちょっと危なかった。


 忘れてたが、あいつも血に飢えた肉食獣。

 油断できない相手だった。


 しっかし、先に蘇生させた2匹といい、なんで俺ばっかり狙われる。

 俺って手頃な得物なの? 美味しい得物なの?

 ……考えたってわからんか。


「カルカロドントサウルス、スピノサウルス、そのティラノサウルスを取り押さえろ!」

「「ゴ!」」


 カルカロドントサウルスとスピノサウルスは頷くと、前肢でティラノサウルスを左右から押さえ込む。

 最強の肉食恐竜ティラノサウルスといえど、自分よりも大きい肉食恐竜2匹に取り押さえられてはまともに動けないご様子。

 契約するにはベストな状態だろう。


「《収納魔法》出し! よしふみくん、今のうちだ。俺がやったみたいに契約しろ」

「わかった! 加藤よしふみの名において命ずる。我に応え、我に属し、我に従え」


 で、契約成功。

 今度は労せずに終わった。


「よろしくね、ジャイアンザウルス」

「それこいつの名前なの!? 個体名なのに種族名みたいな名前つけたな」

「ダメ?」

「ダメとは言わんが……。好きにしてくれ」

「じゃあ好きにする」


 否定するのも野暮ったいのでそれ以上何も言わないことにした。


「……俺も名前考えないとな」


 で、カルカロドントサウルスをディサイプル、スピノサウルスはアプレンティスと名付けた。

 名付けた時に妙に疲れたが。なんでだろう?

 

 しかし、契約の魔石を結構使ってしまった。

 これで残りの契約の魔石は2つ。

 よく考えて使わないとな。

 

 なお、崩れて落ちた加藤家の壁は、西川が回復後に速攻で修復してくれた。

 どこで覚えたか知らんが西川は多芸だ。

 まあ、お陰で加ちゃんの伯母ちゃんにどやされずに済んだといえる。

 

「ホント、あいつは縁の下の力持ちだよ」


 なんて、感心しながらそう口にしてた。


 

 


ディサイプルのプロフィール

・性別:メス

・種族:カルカロドントサウルス

・全長:14メートル

・体色:緑系

・性格:主人に従順だが、自己主張が激しい一面も

 名前の由来は弟子。

 カルカロドントサウルスは響夜の2番目に好きな恐竜です。


アプレンティスのプロフィール

・性別:メス

・種族:スピノサウルス

・全長:15メートル

・体色:茶系

・性格:主人に従順で勇敢だが、知性にやや難あるので、あまりお利口ではない。

 名前の由来は徒弟。


ジャイアンザウルスのプロフィール

・性別:オス

・種族:ティラノサウルス

・全長:11メートル

・性格:主人に従順だが、凶暴で口が悪い

・体色:茶系

 名前の由来は特になく。よしふみくんが勢いで名付けた。



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