第33話 帰ってきたぞ!!
またしても文字数オーバーしてしまいました。
無計画ですいません。
時空の歪み。
ここは時間の無い世界。
おそらくここはワームホールか異次元空間だと思われる。
俺の名は御剣響夜。
ブチハイエナの亜人少女になってしまった男だ。
コウマの放った黄金の火球で空間の一部はまるでガラスのように割れ、俺、西川、剣使いは時空の歪みに飲み込まれ、閉じ込められる。
時空の歪みに吸い込まれた瞬間、死んだと思ったが。そうはならなかった。
まともに動けなかったが死んではいない。
悪い状況ではあるも。命があるだけ儲けものか。
現在、俺達3人は時空の歪みの荒波にもまれていた。
「なにがどうなってるんだ?」
「……」
もがく剣使い。失神したままの西川。
はたしてどうなってしまうのやら。などと悩んでいると――
「え……?」
時空の歪みは突如として開き、俺達3人をどこかに飛ばされてしまう。
◆
俺、御剣響夜。
空が割れて俺達3人は別世界に出てくる。
しかし、出てきた場所は2階建ての屋根ぐらいある高さの上空。
飛行能力を持たぬ俺達は重力には抗えず。西川、剣使い、俺の順番でそのまま落っこちていく。
下にあるのは耕したばかりと思われる畑。
コンクリートやアスファルトの地面よりかはマシだが。着地に失敗したら痛いのに変わりはない。
上手く着地せねば。
「ンギャアッ!?」
西川が大の字のポーズを取って畑の畝にぶち当たり、めり込む。
また、畑にぶち当たった際に意識を取り戻す。
ギャグマンガみたいだが、彼は失神してたのだから着地に失敗するのも無理はない。
痛そうだけど、耕したばかりの畑だから土は柔らかいと思う。
だから大丈夫だろう。
「こんなもの」
西川とは対照的に剣使いは華麗に着地成功。
腐っても勇者。高い身体能力と鋭い反射神経で難しい着地も可能としているのだろう。
俺も剣使いの着地を参考にしよ。
「ノギャアアアアアアアアッ!?」
剣使いを真似るも着地に見事失敗。
頭から真っ逆さま。畝にめり込む。
頭で思ってても体がついていけないってやつか。
情けねぇ。
「んしょ! ペッペッ、不味い」
いつまでも全身逆さでいる訳にもいかんので。俺は逆立ちする要領で畝にめり込んだ頭を引き抜く。
そしてめり込んだ際に土が口の中に入ってしまったので、それを慌てて吐き出す。
その後、辺りを見渡す。
すると、畑には城の謁見の間にあったと思われる壁や床の破片が複数散らばっている。
はっきし言って、こんな残骸など何の役にも立たないが。破片の中には掘り出し物も。
「いいものみ~つけた♪」
それは4つの王冠と複数の装身具。
これらは4人の王が身に着けてた物だ。
太子に皆殺しされた4人の王だが。その際に上級魔法をまともにくらったにも拘らず、これらの品は殆ど傷んでない。
腐っても一国の主というところか。いいもの使ってるぜ。
「そんじゃあ、分けるか」
「キャー! 響夜様愛してる。好きよ、ブチュン、ブチュン!」
「投げキッスやめろ! 気色悪い」
金に目がない西川は、金目の物が貰えるとわかると目の色変える。
その際に俺をおだてるが。あからさま過ぎるぞ。
媚び諂うなら、もうちょっとオブラートに包んで。
「まあ、ともかく分けるぞ。剣使い、お前もこっち来い」
「オレもか?」
「そうだが。いらんか?」
「貰えるなら貰おうか」
一瞬驚くも、剣使いグッと握り拳を作った。
……なんで半笑いなんだよ。微妙にテンションが上がってるのが分かるぞ。
きっと内心は大喜びなのだろう。
今も昔も女性は光物がお好きだが。剣使いも例外ではなかったか。
剣使いも女だねぇ。
「しっかし……ここはどこなのかしら?」
「わからん」
西川と剣使いは辺りキョロキョロと見渡すも、ここがどこだかわからない様子。
だが、俺にはこの場所に見覚えがあった。
「……間違いない。ここは俺の故郷だ」
「ここ響夜様の故郷なの!? いい所ですね」
「ショボい田舎だな。俺の故郷よりかなり遅れてる」
かなり対照的な反応。
これはたぶん2人の生まれ故郷の違いによるものだと思われる。
「――誰だい、畑を荒らしてるのは?」
とかなんとかやってると聞き覚えのある声。
現れたのは刈り上げ付き坊ちゃん坊ちゃん刈りの田舎少年。
「よしふみくん!」
忘れようったって忘れない。彼は俺のいとこの――加藤よしふみくんだ。
いまどきサスペンダー付きの短パンルックなんぞ彼ぐらいなもんだ。
まあ、そのお陰で彼が誰なのかわかったとも言えるが……。
「あーあっ……畑がぐちゃぐちゃだ。さっき生ゴミから作った堆肥を撒いたばっかなのに」
「オエーッ! ペッペッ!」
とんでもないことを聞いてしまった。
慌てて唾を吐く。
「獣耳のおねーちゃんだいじょうぶ?」
「……なんとかな」
とは言うが。口に入ったものに生ゴミが含まれてたと考えると気持ち悪くてしょうがねえ。
ちょっと油断すれば確実に吐くぞ。
「獣耳のおねーちゃん、男みたいな声」
「よしふみくん、声にツッコミは入れないで」
「ぼくの名前を知ってるってことは……男声のおねーちゃんは、ぼくのファン?」
「違うから」
「ぼくに惚れた?」
「それも違うから」
「ぼくは惚れた」
「えっ!?」
よしふみくんの突然の爆弾発言に俺は動揺した。
「声が男みたいで嫌だけど。好きです! 付き合ってください」
「ちょっと待て! いったん落ち着こうな」
「つい最近、好きだったアイドルが寿退社しちゃったんだよー! 慰めてー!」
「知るかぁ!」
知らなかった。よしふみくんが恋愛にこんなにも積極的だったなんて。
グイグイ押してくるとはいえ。中身男な俺に男から告白されても困るだけ。どれだけ押したところで靡かない。
突っぱねるが――
「安心して。ぼくこう見えても小金持ってるでー」
今度は金持ちアピール。
オヤジかこいつは!
とはいえ、よしふみくんのお母さんは中小会社の女社長。アパート経営もやっており小金持ってるのは確か。
将来有望な存在。
案外付き合っても悪くないかもな。
身贔屓もあるが。少なくとも、あの10万人の美青年軍団よりかは愛せる気がした。
「ともかく落ち着け! 俺は御剣響夜だ」
流されそうになったが。意志を強く持ち、持ち堪えた
そして自らの正体を明かす。
「響夜にいちゃんと同じ名前だ。同姓同名の別人っているんやなー」
「違う! 俺は君のいとこの御剣響夜だ」
「うっそー!? じゃあ、響夜にいちゃんの誕生日は何月何日?」
「7月13日」
「当たってる。じゃあ、血液型は?」
「O型だ」
「これも当たってる。じゃあじゃあ、響夜にいちゃんが1番好きな恐竜は?」
「バロサウルス」
「じゃあ――」
よしふみくんに疑いの目を向けられ、機関銃のごとく質問さられるも。俺は黙々と嘘偽りなく答えた。
「間違いなく響夜にいちゃんだ」
5分後、よしふみくんは俺が御剣響夜だと認めてくれる。
「でも、どうして獣耳美少女鬼の左手付きになったの?」
「いろいろあってな……」
ただ、違う質問攻めにされてしまう。
こと細かく説明したので、時間を要した。
「……ふーん。そうだったの」
なんとなく察してくれたと思うが。
表情はわかってるのかわかってないのか、微妙なもの。
ちゃんと理解しているのだろうか?
「それで、このでっかい顔のおじちゃんと剣士みたいな女の人は?」
俺に聞きたい質問し終えると。今度は他の2人に視線を向ける。
「アタシは響夜様の一の子分! 西川 徳川家光カブレノ豊臣側よ」
「響夜にいちゃん異世界で子分なんてできたの!?」
「ま、まあな」
「すげー!」
よしふみくんに尊敬のまなざしを向けられる。
こりゃあ、期待・イメージを崩さないよう頑張らなくっちゃいけなくなったな。
でもまあ、憧れられるのは悪い気はしない。
「この人も響夜様の子分よ」
「勝手に子分にするな! オレは子分になってなどいない」
「あら、そうなの」
「そうだよ!」
「怒っちゃやーよ」
西川に俺の子分だと言われると。剣使いは怒りをむき出しにする。
しかし、そんなに否定せれると軽くショックだぞ。
「こいつは剣使いだ」
「剣使い、剣使いと言うな! 俺にもちゃんとした名前がある」
「赤パンツか」
「ぶった切るぞ!」
「あぶねえ!? 今の本気で殺すやつじゃねーか!」
グダグダになりそうだったので、俺が説明するも。
赤パンツのことを触れられると剣使いは凄まじい形相になり、本気で俺の首に斬りかかる。
気性が激しいやっちゃ。
死ぬかと思ったけど。鬼の手でなんとか受けとめるのに成功。紙一重だったけど……。
しかし、鬼の手は凄い反射神経。左手だけ感覚が研ぎ澄まされた感じ。
それに頑丈。
剣使いの剣による攻撃でも手のひらに軽い切り傷がある程度。
それも瞬く間に自然治癒。
鬼の手は強力。
しかし世の中には太子を筆頭にこれを上回る力の持ち主が複数存在するために、これ程の力を得ても気休め程度。牽制力とはなり得ない。
これだけパワーアップしてもバリバリ最強ナンバーワンになれないとか、人生うまくいかないよなぁ。
考えるだけで気分が滅入っちまう。深く考えるのやめよ。
「さっきのは冗談だよ、そう怒るなって。確かレイだったっけ?」
「レンだ! レン・テンモクだ。ふざけるなよ」
「ちょっとボケただけだよ。そういや、そんな名前だったな」
「本当にわかってるのか?」
「おうよ」
「怪しい」
などと知ってるみたいに言うも。フルネームは知らなかった。
名前も当てずっぽうで言ったに過ぎん。
俺は人の顔と名前を覚えるのが苦手なのだ。
名前言い間違えたから、こりゃあ疑惑の目を向けられてるな。
当てずっぽうに言ったのも見透かしてるっぽい。これも『女の勘』のなせるわざ。
女性に隠し事はできないって、ホントなんだな。その内名誉挽回しとこ。
「レンっておねーちゃんもキレイな人やな」
「煽ててもなにもでないぞ」
レンは口ではどうでもいいみたいに言うも。表情はまんざらでもないご様子。
きっと内心は大喜びなのだろう。
ツンデレが。
「でも、響夜にーちゃんのが美人だ」
「んなっ!?」
よしふみくん、上げて落とすとか酷いことするぜ。
レンのヤツ、凄く引きつった顔してる。
相手の気分を持ち上げておいて、その後で一気に落胆させるとか最悪だが。
これは彼の悪意がそういった行動をさせたわけではなくて、彼自身の素直な思考から生じた行動に過ぎない。
なにせよしふみくんはまだ小学三年生。あの発言も『子供特有といえる残酷さ』と言っていいだろう。
「響夜にーちゃんも西川のおじちゃんも汚れてるし、お風呂貸そうか?」
「いいの」
西川が食いつく。
無理もない。体全体で畑に落っこちたので全身土塗れ。
生ゴミから作られた堆肥も全身で浴びてしまったので、臭いも気になるところ。
俺も頭から畑に突き刺さった時に着ていたドレスが汚れてしまった。
白は汚れが目立つからなぁ。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
いちおう洗浄魔法で身体と衣服をきれいにできるが。できるのならお風呂のがいい。
だから誘いに乗る。
「さあ、レンさんも行くわよ」
「お……おう」
いまだに超ピクピクさせてたが。西川に背中を押されて歩き出す。
どうやら女としての魅力で負けたのを認めたくないらしい。
まあ、それはともかく。
かくして俺達3人は加藤家におじゃまするのであった。
加藤よしふみのプロフィール
・性別:男
・種族:人間
・血液型:O型
・年齢:9歳(小学3年生)
・誕生日:7月13日(響夜と同じ)
・一人称 :ぼく
・身長:132センチ
・体重:27キロ
・毛色:黒
・瞳の色:黒
・好きな食べ物:和食全般
・嫌いな食べ物:洋食全般(ただし、ムリすればなんとか食べられる)
・趣味:野球、プラモ、アニメ、人形劇、土いじり、釣りなど(多趣味)
・性格:子供らしく素直で好奇心旺盛だが、思っていることを包み隠さずに表現してしまうところがある。
・人物:御剣響夜のいとこ。響夜を響夜にーちゃん(もしくは響夜にいちゃん)と呼び、懐いている。刈り上げ付き坊ちゃんがりという古臭いヘヤースタイルだが、これは彼の母の趣味で、彼自身もわりかし気に入ってる。元から響夜に懐いていたが、彼がTS(性転換)すると異性として好きになる。親が中小会社の社長でアパート経営もやってるので結構な金持ちではあるが、自慢癖が玉に瑕。恋愛にはわりと積極的だが、年齢が年齢のため夜の話などは理解できない。好きになった人には一途。しかし、度が過ぎてダダ甘と化す。一日のおこずかいは1万円。劣等生な響夜と異なり、成績は良い部類に入る(中の上程度)




