第32話 裏切りの剣の勇者と鬼の手と再会のコウマ
長かった城での戦いも今回のお話にて決着。
ただ、詰め込み過ぎて予定文字数をオーバーしてしまった(笑)
城の謁見の間。
起死回生に召喚してもらった赤鬼も魔王も倒されてしまって、あっという間に手詰まり。
そんな最中に剣使いが太子の感覚についていけず離反。
牙を剥く。
しかし、実力の差は歴然。
僅かながら健闘するも返り討ち。
裏切りの代償として左手を失う。
「剣使いよ、痛々しいな」
俺、御剣響夜。
現在、蹲る剣使いの目の前に立ってる。
剣使いに救いの手を差し伸べるためだ。
蹲る剣使いの傷口を見てみるが。
左手を完全に失ってるから、冗談抜きで痛々しい。
「ミツルギキョウヤ……! オレに何するつもりだ――」
「こうするのさ! 《ヒール》!」
「回復魔法!? いったいどういうつもりだ?」
睨みつけてくる剣使い。
ギャーギャー言ってたが、言い終わる前に回復魔法を使用したった。
HPは回復し、傷口は閉じるも。残念ながら失った手は再生しなかった。
「やっぱし回復魔法程度では駄目か……。だったらしょうがねぇ! こうするか」
「!?」
落っこちてた剣使いの剣を拾うと。その剣を使って自分の左手を切り落とす。
そして剣使いの左腕を引き寄せる。
「《移植》!」
スキルを使って左手を移植。
移植は無事成功。俺の左手が剣使いの左手としてピッタリくっつく。
俺の方が体が小さいので、若干手が小さくなってしまったが。普通に生活するには問題ないだろう。
このスキルもビッチ合体と同様――大魔女う~☆ゲロゲロゴージャスが残した魔導書に記されてたもの。
ホント、彼女は多種多彩なオリジナルスキルを生み出したと思う。
使い勝手に難あるスキルも多かったが。スキルポイントは有り余ってたので、魔導書に記されてたスキルは全部習得した。
「お前は何がしたいんだ!?」
「利害の一致した局面では手を組む場面だろ?」
「! わかった、共に戦おう」
混乱状態の剣使いに要点だけスパっとポッキリ言ったった。
すると剣使いも察してくれたらしく共闘を了承。
しめしめ上手く抱き込めた。
「がぁっつっ!!? カッコつけ過ぎてしまった……!」
ちょっと気を抜いたら一気に痛みが押し寄せてきやがった。
らしくもなくキザに振る舞うもんじゃねえな。
カッコつけただけに余計にカッコ悪い。
「このままでは出血多量で死んでしまうかも! は、早く変わりの手をくっつけねば……!」
手首から緑色の血がぼたぼたと流れ落ちるのを見て危機感をいだく。
ダッシュで赤鬼の亡骸の前まで行き、左手を切断、
「《移植》!」
スキルで鬼の手をくっつける。
「案外上手くいくもんだな……」
移植は無事成功。
全く異なる種族だったが拒絶反応などもなく。きれいにくっついてる。
人体の不思議だね。
無我夢中でやったが。想像以上に上手くいった。
鬼の細胞が体内に入り混じり、戦闘力の強化にも繋がる。
それに加え、魔力とは異なる力――妖力も得た。
また、鬼のスキルも複数習得。
大きなメリットとなる。
「しっかし、地獄先生みたいになってしまったな……」
しかし、デメリットもあった。
まず2メートルはあろうかという巨体な鬼の手をくっつけたため、左手が一回り以上大きくなってしまった。
剣道小手かミトンみたいにでかくて物を摘まむのに難儀しそう。
まだ左手に違和感もあり、慣れるのに少し時間がかかるかも。
……まあ、単純な損得勘定では得になったから良しとしよう。
「それじゃあ共闘するぞ」
「言われるまでもない。オレに指図するな」
「ムムッ」
「お前はオレの指示通りに戦え!」
「わかったよぉ」
せっかく分かり合えたと思ったが。剣使いは自己中で一方的に合わせることを強いる。
ちょっとムッとしたが。これも太子を倒すのに必要なこととグッと堪えた。
とりあえず今のうちはこちらが折れるとしよう。
「行くとしよう。一緒にタコを倒すぞ!」
「あぁ」
共に武器を構えて、太子に向かって突っ込むのであった。
◆
アタシ、西川 徳川家光カブレノ豊臣側。
城の謁見の間で、響夜様の宿敵である太子さんと戦ってるけど。
彼女とっても強いわ。隙が全然なくって、アタシも響夜様も攻撃の手が出せないで守ってばっかり。
ジリ貧になっちゃった。
響夜様は打開策にマナタイトっていう宝珠渡を渡してきたわ。
で、言われた通りに使ってみたけど。
これすごいわ。
召喚魔法使うと、ちょっと疲れるんだけど。マナタイトを使うと身体にかかる負担がこれっぽっちもない。
これいいわ。
ホント、響夜様は道具の使い方が天才的ね。
でもまあ、アタシの主ならこのぐらいできて当然よねー。
「次いくわよ。召喚!」
調子いいから3体同時召喚を試してみるわ。
魔法陣が出現して、3体召喚されたわ。
これで響夜様の宿敵の太子さんを倒すわよ。
「――――ッ!」
「シャ――――!」
「トン、トン、トンカラ、トン」
召喚されたのは、
体長が2尺4寸ぐらいある、変わった形のおっきなカブトムシ
カブトムシの角って掬いやすいように枝分かれしているだけど。このカブトムシは頭角が長めの角。
カブトムシってこんなだったかしら?
包帯ぐるぐる巻きの男性
痛々しい感じ。合戦で深手を負っちゃったのかしら?
もしもそうならかわいそう。
全長が26尺3寸ぐらいある8本首の大蛇
八岐大蛇かしらねえ?
……何だかよくわからないのが出て来たわね。
「ゲ―! トンカラトン!?」
包帯ぐるぐる巻きの男性を見た瞬間、響夜様が縮み上がってるわ。
何でかしら?
「一気に畳みかけるわよ。3人共、やっちゃって頂戴」
苦しそうな呼吸してる今の太子さんなら、やっつけれるはず。
3人に指示したけど――
「――――ッ!」
「ト、トンカラ、トン!?」
カブトムシが包帯ぐるぐる巻きの男性にすごい勢いで突進。
2本の角で腰を挟むと、えぐり上げたわ。
鈍い音と共に包帯ぐるぐる巻きの男性が悲鳴を上げたわ。たぶん背骨が砕けたんじゃないかしら。
遠目で見てもあれはお亡くなりになってるわね。お悔やみ申し上げます。
「何なんだ、このケンタウルスオオカブトは!? メチャクチャ強いじゃねーか!」
「けんたうろすおおかぶと? 響夜様、このカブトムシってそんな名前なの?」
「呑気に質問しとる場合か!」
「怒っちゃやーよ」
響夜様に怒鳴られてしまったわ。
でも、なんだかよくわからないうちに怒られちゃった感じで釈然としないわね。
「我はアフリカの格闘王なりぃ!!」
「喋った!?」
驚いたわ。このカブトムシ人語を使えるじゃないの。
どうなってるのかしら?
「――――ッ!」
「シャ――――!?」
あらやだ。今度はカブトムシが8本首の大蛇を角でバラバラにしてしまったわ。
この子達仲間割れ始めちゃったわ。
やだー。このカブトムシ見境なしに攻撃してるわ。
あっという間に他の2人を殺しちゃったら、アタシを標的に向かってくるじゃないの。
マズいわ。
「西川、何をやってる『契約の魔石』を使え!」
「あ! 忘れてました」
「おバカ!」
またやっちゃったわ。
アタシ忘れん坊なのよ。
治したいけど悪い癖って、ちょっとやそっとじゃ直らないのよね。
アタシって惨め。
「キャッ!」
何とか対処しようとしたけど、転んじゃった。
「――――ッ!」
「キャッ!」
転んだアタシをカブトムシは角で跳ね上げられてしまったわ。
そのまま落っこちる最中に響夜様みたいに受け身を取ってみようとしたけど――
「ノギャッ!」
見事に失敗。
床に体全体を衝突してしまうわ。
やっぱり響夜様みたいに上手にいかないわね。
勢いで適当に召喚しちゃったけれども。
見境なしに相手を襲うみたいなヤバいの召喚しちゃったかも。
「……自分の才能が恨めしいわ」
朦朧とする意識の中でそんなこと思いました。
「バタン……!」
そのまま意識が遠のいて、アタシは気絶しました。
◆
「まずはこのモンスターの攻撃を避けて注意を引く。で、その後は各々の必殺技を放つ!」
「わかった」
俺は御剣響夜。
西川が召喚した特大ケンタウルスオオカブトと戦うことになったが。
剣使いの作戦は雑。
少々呆れるるも剣使いの言われた通りに従うが――
「あんまりウロチョロするな。攻撃できん」
「敵の攻撃に当たるとヤバい。動き回るのは当然」
「それじゃあ攻撃できんぞ」
「お前は注意を引き付けていれば良いんだ! もう少し周りを見て戦え!」
「できるかぁ!」
「察しろ」
「こいつ……!」
剣使いは共闘こそするものの常に自己中で一方的に合わせることを強いる。
あんにゃろう、俺というものを自分から注意を逸らさせる為の駒程度にしか思ってない。
所詮は即席タッグで息の合った連携など不可能だったか。
もう気にせず自分のやり方で戦う。
「――――ッ!」
ケンタウルスオオカブトは見境なしに攻撃を仕掛けてくる。
凄まじい強さ。
魔法攻撃を使わないものの。単純な攻撃力では太子をも上回る。
俺、剣使い、太子を同時に相手して圧倒するとか化け物かよ。
「《妖力波》ッ!!」
鬼の手を利用して妖気を手から放つ。
真正面に直撃するも、殆どダメージがない。
防御力も半端ない。
最大出力の妖力波をぶち込んでも傷ひとつないとか強過ぎるだろ!
鬼の左手を得て、俺は確実にパワーアップしているんだが。
それを上回る強敵の出現で1ミリも注目されん。
パワーインフレに取り残されてっぞ。
どんだけ強くなれば俺の時代がくるんだよ!!
俺が頂点に君臨するのはいつになるやら……。
「脆い! これでは遊び相手にしかならん。だが、この世界なら我は頂点に立てるな」
俺と剣使いを角で跳ね飛ばすと、ケンタウルスオオカブトは余裕発言。
ムカつく。
「あいつ別世界最強だろ。西川のヤツ、とんでもない厄介者を召喚してくれたもんだ」
「我が最強? 違うな。我が故郷最強は"残虐なる巨人"である」
「なっ!?」
嘘だろ。ケンタウルスオオカブトよりも強いのがいるの!?
表情でホントか嘘か判断はできないけれど。
声はガチなトーンで、冗談には聞こえない。
マジかよ。あいつ倒せてもそれ以上に強いのが背後に控えるかよ。
「無理ゲーじゃねーか……」
俺はただただ絶望した。
「こいつを使うか――」
絶望し、動きがストップする俺をよそに。太子は懐からクリスタルを取り出す。
それは――契約の魔石だった。
あいつも召喚魔法使えるようになったの!?
「来い!」
太子がクリスタルを地面に叩きつける。
粉々に砕けて現れたのは――紅い瞳をした、黒髪のロングヘヤーの女の子。
「コウマ!」
見覚えのあるそいつは、俺のかつての奴隷コウマであった。
太子とはじめて戦って敗北して以降、行方知れずになってたが。いつの間に太子の配下になっとる。
何でこうなった?
「やれ」
「ハッ! 太子様の仰せのままに。《アンゴルモアファイヤー》!」
命令されるとコウマは口から黄金の火球を放つ。
火球は空間を叩き割り、時空の歪みを発生。
「うわああああああああ!」
時空の歪みは周囲のものを吸い込んでいく。その際に剣使いと失神中の西川が吸い込まれてしまう。
発動者のコウマと太子には影響がない。どうなってるの?
「吸い込まれてなるものか!」
俺は全体重をかけて踏ん張る。
「――――ッ!」
しかし、最も対処しなければならないであろうケンタウルスオオカブトは時空の歪みなど物ともせず。太子が魔王をぶっ倒した時にぶち破られた壁から外に飛んで行く。
「タコ様、我々は『直通テレポート』で退避します」
すっかり忘れられてた盾使いが、弓使いと槍使いを左右の肩に担いぐと、足元から魔法陣が出現。どこかに姿をくらます。
聞いたことがある。直通テレポートは、あらかじめ登録していた場所へテレポートする事ができる魔法だと。
ならばあそこに行けば安全な場所に逃げられるってか。
「あっ」
不覚。
気を取られた隙に体が浮き上がってしまう。
「ぎゃあああああああああああっ!」
瞬く間に俺は時空の歪みに吸い込まれてゆく。
「姉御、助けに来たっちゅーに」
そんな最中にサーキちゃんが助けに駆けつけるが、
「遅いよ!!」
時すでに遅し。
時空の歪みへ飛ばされてしまう。
と、同時に開けられた時空の歪みも閉じられるのだった。
御剣響夜のプロフィール(第32部分以降)
・性別:女→女
・種族:特殊なブチハイエナの亜人→特殊なブチハイエナの亜人兼鬼(半妖でもある)
・身長:140センチ→140センチ
・体重:70キロ→70キロ
左手を失った響夜がスキル移植によって赤鬼の左手を移植して、手首から上が鬼の手となる。鬼固有の能力と妖力を得る。鬼の妖力を持つため、力を示すことで、妖怪や鬼族には同類と認識される。ただし、これらの能力は鬼の手が自らの体とくっついてる間のみ有効で、何らかの方法で鬼の手が切り離された場合は鬼の能力を失う(完璧に結合したわけではないため)
西川が召喚したモンスター達
トンカラトン
・種族:妖怪
・身長:170センチ
・体重:70キロ
ヒュドラ
・種族:ドラゴンの亜種
・全長:10メートル
・体重:200キロ
アフリカの格闘王
・種族:ケンタウルスオオカブト
・全長:90センチ
・体重:不明




