第31話 裏切りの剣使いと召喚された魔王ロウカモウティブ・グレイブヤード
突如として太子を裏切った剣使いレン。
対立した2人は対決するのであった。
俺は御剣響夜。
城の謁見の間にて、宿敵太子に惨殺されそうになるも。剣使いが突然太子を裏切ったことで、結果的に救われる。
現在向かい合う2人。
あの様子だと闘いは避けられないだろう。
「レン、私を攻撃するとはどういうつもりだ?」
「タコさん……いや、タコ。オレはアンタの掲げる正義に賛同した。けれどもアンタのやってることは正義なんかじゃない!」
「なんだ、私に文句あるのか?」
「そうだ! アンタなんかと組んでられるか。オレはパーティーから抜けるぞ!」
「あっそー。響夜みたいなザコ1人倒せねーようなやつは私の方こそいらねーんだよ。バイバイ」
「こっ……このやろー……!」
せせら笑う太子に、剣使いが逆上して斬りかかる。
「愚かな」
これに太子も刀で対抗。
激しいチャンバラを繰り広げる。
案の定両者は対立してしまう。
「剣使いのヤツ、何の勝算もないの太子に挑むとか無謀過ぎだぞ……」
剣使いは強い。レベルも彼女のが高い。
だが、太子の強さはチート級。レベルで上回ったぐらいでは気休め程度。
ぶっちゃけ剣使いの強さでは、奇跡でも起きない限り太子に勝ち目はない。
倒されるのは時間の問題だろう。
「《パワード》そんでもって《ブレッシング》」
なので、さり気なく支援魔法で剣使いをサポート。
一時的にステータス強化と運をよくしてやる。
これで多少はマシになると思う。
っと言っても、俺の支援魔法の程度は低い。1000が1001になるぐらいだ。
それに加え時間も短く、強化できる時間は1分。
魔力消費の割に効果が薄く、実戦に耐えられる代物ではなかった。
事実、実戦で使用した経験はゼロ。
そこまで低い理由は俺がプリーストでないから。
技の完成度も本職には及ばないのは元より。属する宗派もないので神の加護も受けられない。
そんな理由で程度が低いわけ。
「西川、だいじょうぶか?」
「あ! 響夜様、助けて~」
長々と自分の欠点を説明してしまったが。
太子の注意が剣使いに向いていたので。この機に乗じて匍匐前進で倒れて動けなくなってる西川に近寄る。
「今、回復魔法唱えてやっからな。《ヒール》」
回復魔法で傷を癒やす。どこまで怪我を治せるかはわからないけど。
まあ、なんとか動けるぐらいにはなるだろう。
「動けるか?」
「はい、だいじょうぶです」
西川は立ち上がると、軽くジャンプして無事なのをアピール。
これなら逃げるのも問題なさそうだな。
太子注意か他に向いてる隙に逃げよ。
「ああああああああああっ」
そうこう西川とやり取りしてると。
剣使いの叫び声。
振り返ってみると、左手を切り落とされてた。
強い痛みに右手に握ってた剣を落っことす。
そして右手で切り口を押さえながら蹲る。
「《サンダーボール》!」
太子は切り落とされた左手を拾うと、それを頭上に放り投げる。
そしてそれ目掛けて雷の球を撃ち出して剣使いの左手を完全破壊。
なんと無慈悲な仕打ち。
圧倒的な力と、いかなる者も及ばない恐るべき凶暴性を兼ね備えた――最凶最悪の女だ。
そんなチートを相手に支援魔法でちょこっと強化した程度の剣使いでは勝てんわな……。
「私を裏切った罰は……万死に値しますよ!」
大技を出す構え。
魔力がチャージされていく。
ありゃあ、剣使い息の根を確実に止める気だ。
「…………」
すぐにでも逃げるのが得策のこの状況で俺の足が止まった。
自分でも理解できなかったが。本能が剣使いを助けろと告げている。
「……ちきしょうめ! 見捨てられん」
剣使いは太子と同じ敵対する者で、かつ自分と妹因縁の相手であるはず。
にも関わらず剣使いに憐れみを感じてしまう。
けっきょく助けるという愚かな行為に走る。
ビッチ合体のクールタイム終了まで、まだ13分もあるのに。
何を考えてるんだ俺は……。
「西川、耳貸せ」
「ごにょごにょごにょ……」
「えッ!? そんなのムチャですよ」
「ムチャでもやれ! いいな」
「わ、わかりましたわ」
西川に秘密の作戦を伝えて、収納魔法で収納してたアイテムを渡す。
「じゃあ、俺は行ってくる……」
俺は太子に向かって全力疾走。
「これでもくらえ! エクスプロージョン!」
そして太子目掛けて右手を構えて攻撃を放つ。
高度な魔法のエクスプロージョンとか言ったが。実際には無詠唱のファイアーボール。
俺がエクスプロージョンを習得してるわけがない。
まあ、教えてもらえれば習得できると思うが。
「バ、《バーリア》!」
攻撃は顔面に直撃。
だが、当たる寸前で防御スキルを発動されてたので殆どダメージはないだろう。
「あれがエクスプロージョンなのか?」
首を傾げる太子。
当たり前だがエクスプロージョンとファイアーボールでは威力に雲泥の差がある。
言ってることとやってることが違うので、疑問に思うももっともな話。
「我に力を召喚ッ!」
「!?」
だが、あいつが疑問に思ったって知ったこっちゃない。
間髪を容れず召喚魔法を発動。
太子の目の前に魔法陣を出現させる。
予想外の行動に、太子はとっさの対応が出来ない。
「グガガァ」
けたたましい鳴き声と共の召喚されたのはコボルト。
雑魚モンスターの代名詞的存在。
またぽかをやらかす。
「グォガガァ」
「こんなもの」
「……!?」
コボルトは無謀にも太子に襲い掛かった。
けれども目にも留まらぬスピードの刀の一振りで縦真っ二つ。
コボルトは、斬られたのにしばらく気付かず。反応した途端に絶命。
何が何だか分からない間にやられちゃったって感じか。
「私の邪魔ばかりして……。御剣響夜、殺してやる!!」
太子の注意が俺に向く。
それでいい。なぜなら俺は囮。
本当の目的は他にある。それは――
「アタシに力を召喚……!」
右手に高密度に魔力を封じ込めた宝珠マナタイトを握った西川が召喚魔法を発動。
本当の目的は西川に強力な召喚獣を召喚させること。
召喚を妨害させないために俺自身が身を挺して太子に向かって行ったのだ。
右手に持ったマナタイトから膨大な魔力が西川の体に流れ込む。
魔法陣出現。そして召喚。
召喚されたのは――
「――我が名は魔王ロウカモウティブ・グレイブヤード」
機関士風の作業服と作業帽に白いファーを首に巻きつけた男。
身長170センチ弱。標準的な体型。
ちょっと見では人間みたいだけど。ニヒルと笑ったその表情からは底知れぬ不気味な雰囲気を醸し出す。
魔王とか言ってたが、本当に魔王なのか?
仮にそうであれば、この世界脅かす巨悪を呼び寄せたことになる。
どうしよ。仲間が起こしたトラブルとはいえ、一番召喚してはならん人物を召喚してしまった……。
こんな災害を引き起こしてしまった俺は、自身を"世界に仇なす者"っと、心ならずも自覚ざるを得ない。
「おれにはやり残した仕事があるんだ! てめぇらに構ってる暇はねぇ」
魔王ロウカモウティブは突然騒ぎ立て、口調も泥酔者みたいなめちゃくちゃなものに。
さっきまでのニヒルなイメージは何処へやら。三枚目になっとる。
「くず鉄にしてやるから覚悟しやがれ! 《デス・メテオ》!」
その場にいる者を全員消せんと、巨大で邪悪な炎の球を撃ち出す。
凄まじい炎。その炎の凄まじさは俺のファイアーボールの比ではない。
並の冒険者では歯が立たない次元の強さ。ヤツは紛れもなく魔王だ。
「こりゃあ、死んだな俺……」
「《インフェルノ》ッ!」
「な……なんだっ。これは……!!」
死を覚悟したのも束の間。
太子が最高位の炎の魔法を放ち、魔王の邪悪な炎に対抗。
驚きながらも、魔王も真っ向から受けて立つ構えだ。
「ぐおおおおっおおお……!!」
「ぐわあああああああっだぁっ!!!!」
両者の炎はぶつかり、押し合いを展開。
壮絶な撃ち合いを演じた。
炎の熱で謁見の間はサウナ状態。
暑っちい。
なお、魔法を発動してる間は魔力を消耗するが。両者共に消費魔力が大きい魔法を持続させてるので、消耗は半端ないだろう。
俺が2人の真似したなら2秒しか持たさられない。
「ま、魔力が!?」
「消えてしまえッ!!」
「ぐががががががっ!!」
威力はほぼ互角であったが、途中で魔王が魔力切れを起こしパワーダウン。
太子が押し勝ち、魔王にまともに命中。
そのまま壁をぶち破り、城の外まで吹き飛ばされる。
そして燃え尽き、完全に消滅。
これでは俺の蘇生スキルでも生き返らせるのはムリだな。
まあ、制御不能なヤツだったから生き返らせるつもりは毛筋程もないが……。
「敵ながらすんごい威力……」
スゲー! 魔王を倒しちゃったよ。
敵ながらあっぱれ。
あちらさんに俺達を助けるつもりはなかったと思うが。結果的に尻拭いしてもらった。
今回ばかりは感謝するぜ。
心の中でだけど。
「ハアッ、ハアッ、ハッ……」
太子は魔王から勝利をもぎ取るも、膨大な魔力を消耗。
息を切らしていた。
無理もない。上級魔法は威力は高いが代わりに消費魔力が大きく連発できないスキル。
そんな魔法をドカドカ撃てば魔力も枯渇寸前だろう。
少々予定と違ったがまあいいか。
次の段階に入ろ。
魔王ロウカモウティブ・グレイブヤードのプロフィール
・性別:男
・種族:魔族
・年齢:833歳
・身長:172センチ
・体重:68キロ
・好きな食べ物:目玉焼きサンド
・嫌いな食べ物:砂糖(見ただけで怯える)
・趣味:蒸気機関車をスクラップにすること
・性格:せっかちで乱暴者だが、本質的にはドジで三枚目
・人物:現在響夜がいる世界とは別の世界の魔王。魔王だけあって戦闘力は高いが、太子には今一歩及ばない。手先が器用で彫刻はお手のもの。配下の者はいるらしいが少ない。時間を無駄にすることを嫌っており、1分1秒を大切にしている。
・名前の由来は『機関車の墓場』である。




