第30話 怒れる太子に尻尾を斬られてしまった
否応なしにまたしても太子と戦う羽目になった響夜くん。
前回のお話で殺されてしまう。
しかしユニークスキルで生き返る。
で、仕切り直し。
はたしてどうなってもしまうのか?
城の謁見の間。
俺の名は御剣響夜。
ブチハイエナの亜人少女だ。
最近忘れられてるっぽいから、念のために言っておく。
さて。
ビッチ合体にて最大の強敵である太子を圧倒してたものの。突如合体が解除。
合体が解除されたとたんに形勢逆転。
最高位の炎の魔法・インフェルノで4人の王共々焼き殺されしまう。
――ところが死んだ時に謎スキル・蘇らせた兵士なのだ、が発動。
俺と4人の王を生き返らせる。
「なんで生きている!? 確かに殺した筈なのに……」
「俺は死も乗り越えたのだ。不死身なのだ!」
動揺する太子に無敵宣言。
――とは言ったけれど。これは虚勢。
次殺されたら、もう後がない。
幸い、このスキルの効果を知らなかったことによる情報アドバンテージがある。
強引に押し通すしかない。
「ならば何度でも殺してやる! 《ペニトレイション・ライトニング》ッ!」
鬼のような形相で魔法を放ってくる太子。
――あれは雷系上級魔法。貫通性のある稲妻を放つスキル。
貫通性のあるスキルに俺のスキル・エネルギーシールドすり抜けてしまい防げない。
おまけに威力もバカ高。
あんなものくらってはひとたまりもない。
「きゃあ!」
恐怖のあまり、頭抱えてすごい勢いでしゃがんでた。
我ながらすごい反射神経。
「ヌッ!?」
しかし、回避したために後ろにいた王の1人に直撃。
頭に命中し、王の頭は跡形もなく吹っ飛び、そのまま倒れる。
即死だった。
「あちゃ~、やってしまいました」
アカイ王ではない無関係な王を殺してしまった。
面識はないけど。やっぱり人が死ぬのは気分のいいものではない。
間接的とはいえ。自分のせいで殺してしまったらなおの事。
悔やむ。
「太子、なんてことするんだ!」
見ず知らずの王の死を悔やむと同時に、太子に強い怒りがこみ上げてくる。
「知ったことか! 何人死のうが、お前を消せればそれでいい」
「なんてヤツだ!? 盾使いさん、剣使いさん、これがこやつの本性ですよ」
「そ、そんな……!」
「世迷言を」
太子の本性を諭すと剣使いは顔面蒼白。
そんなことがあっていいのか、とでも言わんばかりに膝をつき、ショックを受けてるご様子。
信じてたものが偽りだと知りゃあ、ああなるわな。
一方で盾使いは聞く耳持たず。
太子に盲目的な忠誠を誓っているみたいだ。
ありゃあ駄目だな。
「……人格破綻者が。ぶっ倒してやる!」
怒りに任せて突っ込んで行くが――
「愚かな」
「おわあああああッ!」
パワーでは到底敵わない。
簡単に組み伏せられてしまう。
「もう一度死ね」
背中に当てられた太子の左手から強い魔力を感じる。
これは上級魔法のそれだ。
こんなもの至近距離でくらったら確実に死ぬ。
しかし、がっちりロックが決まってて逃れる手段がねえ。
どうしよう……。
「響夜様を死なせないわよ! 強いの出てきて。召喚!」
そんな中、西川が召喚魔法を発動。
俺を助けようとしてくれる。
床に魔法陣が出現し、バチバチと凄まじく禍々しい力を放ちながら2メートルはあろうかという巨大な体躯の赤鬼が召喚されていく。
これはすごい。
今まで西川が召喚した召喚獣で一番強いんじゃね。
こいつなら勝てるかも。
「《インフェルノ》ッ!」
「きゃあああああああああ!」
「西川ああああああああッ!」
太子のヤツ、俺に使う予定だった上級魔法を西川に放ちやがった。
最高位の炎の魔法をまともにくらった西川は、一瞬で身体が燃えて焼死した。
西川がいた場所には灰だけが残るだけ。
なんて非情なヤツ。
だが、左手を使ったのでロックが甘くなってる。
これはチャンス。
「よくも西川をッ!」
「うわっ!?」
太子の足首の辺りを自分の足で思いっきり払って、転ばす。
関取でもバランスを崩すと倒れる。小柄な女の力でも十分できる。
それは相手が太子であっても同じこと。
「もう一発!」
「ぐふっ!」
起き上がろうとする太子へ転んだふりをしてヒジで一撃かます。
まともに入ったので、これでしばらくは動けないだろう。
俺ってピンチになると機転が利くな。
「《蘇らせた兵士なのだ》ッ!」
「あらぁあ!? アタシ死ななかった?」
「詳しい説明は後だ。逃げるぞ」
「わ、わかったわ」
ロックから解放された俺は、灰になった西川に駆け寄ると。大慌てでスキルを発動。
西川を生き返らせる。
そして逃げる手筈を簡単に説明した。
「《ライトニング・ストライク》ッ!」
そうこうやってる間に太子は召喚途中の鬼の頭上に雷を降らせる。
この魔法も上級の雷魔法。
召喚中で守備行動のとれない鬼は雷をまともにくらって、頭が砕け散る。
すごい威力。
風のうわさによると。西川が初召喚した怪獣も、太子があっという間に倒したと報じられたらしいが。
どうせうわさに尾鰭がついたのだと思ってたけど。
あんなスゲー攻撃見せられたら、マジでやってのけたっぽい。
「貴様ら絶対にぶっ殺す! 《ファイア》ッ! 《大火》ッ! 《ギガフレイム》------ッッッッッッッッ!」
太子は当たり構わず炎系魔法を放ちまくり。
何考えてんだ!
ついに余裕がなくなったのか?
普段の太子は、自信に満ち溢れ、冷静な皮肉屋を気取っているのだが。今のヤツからはそんなもの微塵も感じられない。
もしそうだとすれば、ヤツは追い詰められると感情が剥き出しになるタイプだな。
――などと脳内分析してる間に辺り一面は火の海。
田舎道で盾使いとやり合った時の比ではない。
火炎地獄みたいになってしまった。
ヤバいぞこりゃあ。
「ひ、火が迫ってくる!」
「何もかも燃えちまう!」
「助けてくれ!」
迫りくる炎に3人の王が慌てふためく。
当たり前だが火を恐れるのは動物の本能だからな。
しっかし、普段偉そうにしてるヤツはこういう時にまるで役に立たねえ。
でも、そんな中で冷静でいられる俺っていったいなんなの?
「おいジュンコ、どうすればいい?」
「知るか! 自分で考えろ」
王達程でないが剣使いと盾使いも混乱状態。
自らが想定した「以外」の事が起こったり、急に打つ手がなくなり、言動がポンコツに。
土壇場になると何もできない役立たずに成り下がる。
「ハッハッハッ」
太子のヤツ、この地獄絵図みたいな惨状をみて笑ってやがる。
おまけにいつの間にか冷静さも取り戻してるし。
冷酷かつ残忍。
いかれた神経の持ち主だと思ってたが。まさかここまでとは……。
「――呑気に自己分析しとる場合ではない! 一刻も早くここから脱出せねば」
「逃がすか!」
「ぶわっ!?」
背後から太子に尻尾を掴まれる。
「太子、俺に構ってる場合ではないぞ。パツキンのチャンネーと弓使いが焼け死ぬぞ」
「知ったことか。でいやあっ!」
「んぎゃああああっ!」
気を失ってる弓使いとパツキンのチャンネー (槍使い) が危機的状況なのを諭すも。まったく聞く耳持たず。
刀で尻尾を根元から斬られてしまった。
出血は大したことないが、痛いわー。
「太子、これ以上関係ない者を争いに巻き込むな」
「黙れ、悪の根源が! 正義の使者である私に指図するな」
「あかん。この人聞く耳持っとらん」
再度対話を試みるも、あっけなく撃沈。
これ以上何を言っても無駄か……。
「俺はパツキンのチャンネーと弓使いを運ぶ。西川、お前は王を誘導して脱出しろ」
「脱出って言われても。どうすすればいいの?」
「ちっとは頭使え。忍法壁抜けがあるだろ」
「あ! そっか」
言われてようやく気づく体たらく。
こいつ本当に忍者か?
「王さん方、逃げますよー」
「「なんと頼もしい」」
「あなたこそ真の救世主だ」
西川は王の手を引き脱出しようとする。
手を引かれた3人の王は西川を揉めちぎる。
都合のいい性格してるなぁ。
「逃がすものか。《トルネード》ッ!」
ここでも太子は妨害する。
巨大な竜巻を発生させ、西川と3人の王を襲う。
「《エネルギーシールド》!」
咄嗟にエネルギーシールドを西川の前に展開したが、やすやすと破られてしまう。
「「「ぐっ! くぅ……!」」」
凄まじい竜巻だ。余波だけでも不起訴ばされそう。
俺も忍者刀を床に突き刺して踏ん張った。
同様に剣使いも盾使いも自分の武器を床に突き刺して堪えていた。
「ぎゃわ!」
「「「ぎゃあああああああッ!」」」
竜巻は3人の王を飲み込む。
太子の発生させた竜巻は局地的ハリケーンにも匹敵する。
そんなものの前では、人間もまるでミキサーに入れられた果物みたいなもの。
瞬く間に3人の王は砕かれ、肉片となった。
――惨い。
「目が回るーーーーーーーーッ!?」
一方、西川は水平・垂直両方向に大回転。
しかし時間の経過とともに発生した竜巻も消滅。
重力に引っ張られ、回転しながら地上まで降下。
大の字のポーズを取って地面にぶち当たる。
「きゅあッ!? 痛いわ~……」
全身は切り傷とかすり傷だらけ。
相当痛かったらしく、涙目になってた。
ちょっと見ではわからないが、骨折してるかもしれん。
目も回してるだろうし。あれではしばらく動けないだろう。
とはいえシールドの最もぶ厚い部分に守られてたために軽傷で済んだと言えなくもない。
それにしても酷い被害だ。
だが、暴風の影響で炎の海は完全に鎮火。
この点だけは素直に良かったと思った。
「太子、なんて事するんだ――」
のあまりの非情さに、俺は怒りをあらわにした。
だが――
「悪党がなにを言う? 悪を滅ぼすのに犠牲はつきものであろう」
まったく悪びれもせずに俺を悪と決めつけて糾弾していた。
なんてふてぶてしいヤツだ!
自身の非を認めないプライドモンスター。
あいつの正義は歪んでいる。
「神をしても間違いを犯すことがあるのか……。お前の様な怪物を生み出してしまうとは」
「神は間違うことはない。私自信が神だからな」
自分を神扱いするとか、おこがましいヤツだ。
こいつは自分以外の人間を虫ケラ扱いしているか?
「勝手に神の名を騙るな! お前が神なら俺も神だ」
「だったら王を生き返らせてみろ。それともできないのかい?」
「クッ!」
あんにゃろう、俺の蘇生スキルが1人に1回しか使えないのを見抜きやがった。
ムカつく程勘の鋭い女だ。
「神を相手に手向かうか?」
「《サンダーネイル》!」
「愚かな」
「うわっ!」
果敢に向かっていくも攻撃は防がれ、足技で軽くあしらわれて仰向けに倒される。
「今度こそ逃がさんぞ。お前もバカな王どもと一緒に黄泉の世界に行くがよい!」
トドメを刺そうと両足で俺の両腕を踏みつける。
そして右手を俺の顔に向けて魔力をチャージ。
――あれは脱獄した時に使われそうになった魔法波だ。
過去の恐怖がフラッシュバックする。
「せっかく生き返ったのに、早々に死に戻りとか酷過ぎだな……」
打つ手なし。
もう何もかもが嫌になり自棄ぱち状態。
どうにでもなれと思ったその時である――
「《ウインドカッター》ッ!」
「《バーリア》」
何処からともなく小さい風の刃が太子に向かって飛んでくる。
攻撃はスキルでやすやすと防がれてしまうが。
その攻撃を仕掛けた相手は――
「レン……!」
それは誰であろう剣使いであった。
突然の仲間からの攻撃に驚く太子。
これには俺にも何が起こったのかよくわからなかった。
熱心に書いてたら、また予定文字数オーバーしてしまった(笑)




