第25話 王を捕らえたぞ!
さて。
美青年達が城に突入しましたが。
城は大きく、敵の侵入に備えて複雑に作られておりました。
「王はどこじゃい?」
「クソッ、迷ってまった」
「王よ出てこい! オレがぶっ殺してやる」
結果、どこにアカイ王がいるかわからない状態。
そのため美青年達は「ここだ!」と思う所に突き進む。
早い話が当てずっぽうです。
その間も乱戦は続く。
足元には死体の山が築かれ。泥沼の消耗戦にはまり込む。
◆
「――響夜様、重いです」
「重いとか言うな」
俺、御剣響夜は、バイコーンに乗馬する西川にお姫様だっこされていた。
なぜにこのような乗り方をしてるのか?
事のいきさつを語ると。
城での戦いの様子を確認すべく、俺と西川は現地に足を運ぶ。
実際のプロジェクトを見て、変化があれば、即対応できるからだ。
んで、手っ取り早く目的地に行くため、西川に馬型の生物を召喚してもらう。
認めたくねえが、召喚士としてのポテンシャルは西川のが上。
だから任せた。
「我に力を召喚」
魔法陣から砂を舞い上がらせ、白いバイコーンが召喚される。
どんな召喚獣を召喚できるかは運しだいだが。
西川は召喚獣を自由に選べるのではないかと俺は推測している。
事実、指定した馬型生物を召喚できた。
もしかしたら西川は『天才』の部類に入るのかも。
まったくもっていい拾い物を仲間にできたよ。
もっとも、あんなヘボを天才扱いしたくねえけどな。
「ほら、『契約の魔石』だ。ちゃんと契約結んどけ」
「わかったわ」
以前、怪獣を召喚した際はこれを知らなかったがために酷い目にあった。
であるからして。ちゃんと召喚獣の契約『隷従の儀式』をするのだ。
なお、契約の魔石は魔道具室より勝手に拝借。
サーキちゃんに勝手に使ったこと問い詰められたら出世払いにしてもらお。
「西川 徳川家光カブレノ豊臣側の名において命ずる。我に応え、我に属し、我に従え」
契約は無事に成功。
バイコーンの首に、契約を結んだ召喚獣の証『隷従の首輪』がまとわりつく。
「よっと」
契約が済むと、俺はバイコーンに手綱をつなげ、乗ろうとするが、
「ブシュルルルッ」
「にょわっ!?」
乗ろうとするとバイコーンは全力で振り落とす。
なんと気性の荒い馬だろうか。
「あっ」
地面に落ちた時に思い出した。バイコーンは「不純を司る」存在。
どうやら俺は処女だった模様。
「どないしよ……」
処女になつくユニコーンであれば乗れたろうが。
非処女を好み、処女を忌避する性質をもつバイコーンでは、どう頑張っても乗れない。
普段なら非処女より処女のが価値があるから喜んだとこだが。
今はバイコーンに乗れないデメリットでしかない。
最悪、処女を喪失すれば乗れるだろうけど。西川に抱かれたくはないし。
熟女好みの西川も俺を抱きたくないだろう。
「どうしたものか……」
それであれやこれやと考えて「間接的に乗ればいいんじゃね」って、結論に至る。
「西川、俺をお姫様だっこしろ」
「どうしてそんなことするのよ?」
「いいからやれ」
「わ、わかったわよ。どっこいしょ」
歯を食いしばりながら俺をお姫様だっこ。
へっぴり腰が。
しかし、なんとかお姫様だっこできた。
これが西川にお姫様だっこさせた一部始終だ。
説明終わり。
「ヨッシャ! 上手くいった」
俺の案は珍しく大成功。
乗れたなら善は急げ。城に向かってバイコーンを走らせる。
「しっかし重いわぁ」
「西川、あんまし重い重いとか言うな」
「だって、本当に重いんですもの」
「まだ言うか!」
「ぶっちゃけ、アタシよりも響夜様のが体重重いと思うわ」
「んなわけあるかぁ!」
「怒っちゃやーよ」
などと、田舎道を疾走するバイコーンの背中で、しょうもない口論を繰り広げるものの。
バイコーンのスピードは予想以上。
伝説の生物として恥じぬ能力。
これなら城にもあっという間に到着するだろう。
素直に凄いと感じた。
そして、そのバイコーンを完璧に扱う西川の乗馬の腕も。
おまけに西川は俺をお姫様だっこした状態でやってのけてのだから大したもの。
たぶん、俺が乗馬しても西川みたいに上手くは乗りこなせないだろう。
あいつ意外と多芸。だいたいのことはそつなくこなす。
俺やサーキちゃんよりも才能あふれる存在なのでは。
これで発展途上なのだから、才能を開花させたらどれ程強くんなるやら。
もしかしたら、太子を上回るポテンシャルを秘めてるのかも。
……末恐ろしい。
想像たら背筋がぞくぞくしてきた。深く考えるのやめとこ。
でもまあ、西川は俺に従ってくれてる。
それに、こんな芸達者を仲間にできたの考えれば、俺って運がいいのかも。
うん! そう思うとしよう。
「城が見えて来たわよ」
「もうか!?」
俺がどーでもいいこと考えてると、すでに城のすぐ前まで来ていた。
なんと素早い。競馬の日本記録以上の走りをしてくれたよ。
マジですげぇの召喚してくれたのだと再認識したぜ。
「西川、ぶっ壊された城門にそのまま突っ込むぞ!」
「正面突入ですね」
「そうゆうこと。頼んだぞ」
「はい、響夜様!」
勢いそのままに、より城へ突入するのであった。
◆
「突撃いいいいいいいっ!」
「「「「王をぶち殺せええええええっ!」」」」
響夜が城に突入する最中。
複数に分断した美青年達のパーティの1つが謁見の間にて、ついにアカイ王と遭遇した。
正しい道を選択し、様々な困難を乗り越えた運のいいヤツらです。
間違った道を選択した皆さんはご愁傷様。
「騒ぎを起こしてるのはこやつらか」
「そのようでございます」
「王様方はお下がりを」
「ここは我々が」
で、戦闘開始。
さて。謁見の間で偉そうにふんぞり返ってた4人の王と護衛が4人居たが。
護衛が強者であるのは想像に難しくない。
美青年達は次々と倒されてしまう。
「「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」」
けれども美青年達は倒されても倒されても諦めなかった。
「「「「ッ!」」」」
ついには数に物を言させて護衛4人を撃破。
王との直接対決に突入する。
「こいつ、王なのに強い!?」
実は4人中3人の王が武闘派。
3人は激しく抵抗。
また、3人は相当の手練れ。捕らえるのは一筋縄ではなかった。
「「「馬鹿な!?」」」
「ついに王を捕らえたぞ」
けれども、美青年達は戦闘力の差を数に物を言わせた戦法でカバー。
大きな損害を出しながらも、辛うじて王を捕えるのに成功。
いかに強者であろうと処理限界を超える量の敵を相手にすれば捌き切れなくなり撃破されてしまうわけ。
数の暴力ですな。
ただ、損失も尋常ではなく。王の遭遇できたのは498人だが、最終的に生き残ったのは6名。
「んで、どいつが王なんだ?」
「わかんねえ」
しかし、王を捕らえたはいいが。
名前と王様であるのは教えてもらったものの。詳しい容姿までは教えてもらってなかった。
4人共正当なる国王なので格好では判断できない。
その結果、皆さん縄でぐるぐる巻きにした4人の王を見詰めて悩んでおります。
「この中に王が居るのは確実だが。誰が誰を殺す?」
「それでは適当に殺すか?」
「オレ、これね」
「そいつはオレが目を付けてたヤツだぞ」
「うるせえ! 早いもん勝ちだ」
「なんだと、この野郎!」
などと、誰を殺すかで取っ組み合いのケンカをし出す体たらく。
ちょっと前まで協力関係にあったのに、目的達成が目の前になると仲間割れ。
所詮は利害のためにチームを組んだだけで、友情や絆などは存在しないと……。
また、皮肉にも2人が狙っている王はミドリノ王。
つまり、彼らは不毛な争いをしてるわけ。
知ぬが仏ですね。
「なあ、オレに考えがあるんだが」
「そらぁ、なんじゃい?」
「恨みっこなしで、1人が1人殺さねえか?」
「オレ達6人だぞ。2人余るでねえか」
「それはこうするのさ」
「グハッ!?」
1人が提案を出すが。
なんと、美青年の1人が仲間の胸を剣で一刺し。
案とは自分達で殺し合って数を揃えるというとんでもないもの。
仲間意識皆無ではあったが。まさかここまでとは。
私利私欲の塊みたいなヤツですね。
なお、刺されたヤツは即死。ご愁傷様です。
「これで余るのはもう1人。死ねや234号!」
「死んでたまるか!」
今度は234号を標的にするが、「はいそうですか」と、素直に死を受け入れる訳もなく。
持っていた剣を使い激しく抵抗。
「おい、5509号、18号、998号、オレに協力しろ! そうすればお前らに権利が回ってくるぞ」
「「「おおっ! それはいい」」」
「それでは一緒に1234号を殺そう!」
「「「おうっ!」」」
ピンチになった234号でしたが。言葉巧みに他の3人をたぶらかし、味方につけた。
「卑怯者!」
「どっちがだよ」
形勢逆転。
1234号は他の4人に取り囲まれる。
「「「「っ!」」」」
「ごあああああああっ!」
4人は一斉に剣で突く。
哀れ1234号は串刺し。
断末魔を叫んだ後に命を落とした。
それもこれも無慈悲な心が招いたもの。
自分の提案した案で死ぬとは、私利私欲に目がくらんだ男の最後に相応しい。
因果応報ですな。
「これで殺す人数と殺される人数が等しくなった」
「「「だな」」」
「誰が誰を殺すかをどう決めたものか」
「じゃんけんポン!」
「腕相撲!」
「早いもん勝ち!」
数の調整が終わりますと。
4人は殺す相手を選ぶ方法を決めようとしますが――
「じゃんけんだなんて、子供か!」
「何を言う。じゃんけんポンは簡便になんらかの物事を決定する際の定番だぞ!」
「バカかお前。腕相撲とか、技術もへったくれもない力任せの競技じゃねえか」
「お前だって、早いもん勝ちとかアホちゃうか!」
「やんのかこの野郎!」
「やったろうじゃないの、この野郎!」
意見はバラバラ。
結果、揉める。
これでは決まるのに結構な時間がかかりそうです。




