第24話 童貞パワー全開!!
響夜達が古代遺跡みたいな場所から帰還して明くる日。
お昼前。
城下町。
「「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」」
「突撃いいいいいいいっ!」
「王の首を打ち取れええええええっ!」
叫び声を上げながらぞろぞろと突っ走る集団。
彼らは皆、紫のジャージを着た――ビジュアル系美青年。
そう、古代遺跡みたいな場所から蘇らせて連れ帰ったミイラ達です。
その数10万人。大名行列もビックリの人数ですな。
彼らの目的はただ一つ。
アカイ王の首を打ち取ること。
暴徒と化した彼らは城を目指して突き進む。
「何なんだあいつら!?」
「わからないけど、なんか殺気立ってる」
何も知らない城下町の住人は、ただ慌てふためくばかり。
「この2号、必ずや王の首を捧げ、響夜姫様と添い遂げてみせます!」
「お前なんかに渡すか! 響夜姫様を抱くのは、この9万9202号だぞ」
城に向かう最中。彼らは自分の名前を囚人みたいに番号で言っておりますが。
これは響夜が名前を覚えられないから番号で人の顔と名前覚えるの苦手で番号で呼んだのが原因。
普通なら嫌がるでしょうが。響夜にベタ惚れしてる彼らは、何を言われても「はい、はい」と大体の言葉に無批判に賛成しちゃってるのです。
揃いも揃って恋する者は盲目。イエスマンになるのも納得。
惚れた男の弱み。はたから見ると情けないですな。
その一方で目的は同じものの、彼らに仲間意識はない。
自分以外は全員ライバルなのだ。
互いを押し退けながら彼らは突き進む。
◆
「いやはやヤツらのやる気は凄まじいものだ」
「ですね、響夜様」
城下町からほど近い小高い丘。
俺、御剣響夜は、美青年軍団の活躍をスキル《千里眼》にて眺めていた。
隣で西川も様子を見ている。
なお、西川はスキル《千里眼》を持たないので、自分の膨大な物品の中にあった遠眼鏡を使用。
「しっかし響夜様はあいつらのやる気にさせて凄いですわ。さすがアタシの主君」
「まあな。それもこのドレスのお陰さ」
着ているドレスのスカートを両手で左右に広げるようにたくしあげる俺。
姫っぽいのが好きとか言ってたから、ドレス姿見せりゃやる気になると思ってドレスに着替えたら、狂喜して予想以上にやる気になってくれたよ。
中には興奮して鼻血ブーする者も。
少々キモかったが、限界以上の力を発揮してくれたから良しとしよう。
「響夜様、先頭集団が城門前で門番と戦ってますよ」
「そのようだな」
西川と他愛のない話してる間に、先行してる美青年達は城門前まで来ていた。
彼らは6人の門番をあっという間に蹴散らすと、城門を開けようとする。
だが、城門は分厚くて大きい。
数人が一斉にで体当たりしてもびくともしないだろう。
事実、突破できずに侵攻は滞る。
すると美青年達はどうしたものかと相談し出す。
「響夜様、先頭集団の中にサーキちゃんがおります」
「なに!?」
「ほら、あそこ」
「ホントだ。あんにゃろう、いつの間に介入した」
西川の指差す先に目を向けると、そこには確かにサーキちゃんの姿が。
おまけに美青年達に何か助言しとるし。
姿が見えないからおかしいと思ったが。あいつも俺が好きだからどさくさ紛れて権利を勝ち取る気だ。
それも美青年らの恋心を利用して。
サーキちゃんは狡猾なヤツだと再認識したよ。
「響夜様、美青年達が何か共同作業をやり出したわ」
「そのようだな」
サーキちゃんが何を助言したかは不明だが。彼らは門番の装備してた刀を奪うと、それを斧の要領で近くにあった街路樹の1本を切り倒す。
木を切り倒すと枝を掃った。
すると街路樹はあっという間に丸太状の棒に。
「あれは簡単な破城槌ではないか」
破城槌が完成するとヤツらは鐘をつく要領で使用。
一糸乱れぬチームワーク。とても即席チームとは思えぬ。
認めたくないがサーキちゃんが統率力が高いのかも。
だとすればパーティーリーダーとしての俺の地位が危ない。
まあ本人がそれを振りかざすつもりがないのが幸いか。
「どれ、スキル《読唇術》!」
気になったので、俺はスキルを使ってすると彼らの会話の内容を確認してみる。
スキル《読唇術》は、相手の口元を見るだけで、おおよその会話の内容が読み取れる。
『『『『壊せ! 壊せ!』』』』
破城槌を作ると、それを一糸乱れぬチームワークで使用。
サーキちゃんが仕切り、寺院の鐘でも鳴らすかのごとく、力一杯ピストン運動。
その光景は壮絶なもの。
なんていうか、意気込みが違うな。
『『『『破壊完了!』』』』
瞬く間に城門をぶち破ると、彼らは城に一気に突入した。
『あーれー!』
その際、城門が破れれば用済みと言わんばかりにサーキちゃんは押し退けられてしまう。
その光景は満員電車で揉みくちゃにされるかのごとくである。
しかし、美青年達の行動力は見事なもの。
やる気になった童貞の底力はすんごい。
「でも、アカイ王をぶっ殺したヤツに抱かれるんだよな……」
憎いヤツがひどい目にあうのはいい。
だが、問題はその後だ。
俺、身体は女だけど心は男だから男を性的には見れない。
好きでもない上に男に抱かれると思うと気持ち悪くなってくる。
だから目的を成し遂げてほしいと思う反面、失敗してほしいとも思っている。
つまりは心が揺れてるわけなの。
人の期待って裏切りづらいからなぁ。
「響夜様、連中が白の中に入って見えなくなっちゃいましたが、どうしましょう?」
「少ししたら俺達も行くぞ」
「合戦してる中に行くなんて危ないわよ」
「安心せい。程々に消耗した頃合いに行く予定だから、そんなに危険ではない」
「なるほど。さすが響夜様、頭いい」
「だろ。俺は賢いのだ」
俺は自慢げに胸張った。
落ち着かないから虚勢を張っただけなんだけどね。
「さて、待ってる間にお昼ごはんにするか」
「そうしましょう。腹が減っては戦はできぬ、ですもんね」
「そういうこと。《収納魔法》出し! それじゃあお昼といこう」
「はーい」
収納魔法で収納してある弁当と茣蓙を出す。
そして憂鬱な気持ちを発散させるべく、茣蓙を広げて俺と西川はピクニック気分で弁当のおむすびとお茶を味わうのであった。
◆
城に突入した美青年達ではあったが。城の中には普通ではあり得ない数の騎士団や兵士達が待ち構えていた。
それもそのはず。今日はこの世界に存在する4つの国の王が「世界会議」のために集まってたのだ。
そのために各国の王は護衛は大人数の精鋭揃い。
おまけにアカイ王の所有する守備隊も結構なもの。
結果として現在城にいる守備隊の総数は1万5000人。
響夜の行き当たりばったりな行動は裏目に出てしまった。
早い話が最悪のタイミングでアカイ王の殺害計画を実行しちゃったわけ。
運がないねぇ。
「こやつらを迎え撃て!」
「「「「はい! 騎士団長」」」」
「「「「グフッ」」」」
城門を破り、突入しようとする美青年達でしたが。
城門を破った途端にいきなり美青年の何人かがやられた。
無理もない。殆どの者が丸腰の美青年達に対し、守備隊の装備は充実。
鎧で身を固めてる者、剣や槍を装備する者。
それに加え戦闘技術を学んでる。
戦闘経験皆無な美青年達が普通に1対1で勝負したなら勝ち目は100%ないだろう。
「「「「ヤロー、やりやがったな」」」」
美青年達、仲間を殺されて怒りをあらわに向かってく。
友愛や義理はほぼ皆無なくせに仲間意識や連帯感はあるから訳が分からん。
どういう神経してるのやら……。
「「「「かかれ!」」」」
「「「「やってやるぞ!」」」」
そうこう説明してる間に戦闘開始。
敵味方が入り乱れる。
「グハッ!」
美青年達は実力の差に一方的に虐殺される……ということはなく、むしろ美青年らのが優位に戦ってる。
単純な強さでは大きく劣る彼らがなぜに優位に戦っているのか?
数の差?
それもある。
だが、最大の差は――双方の意気込みの違い。
美青年らは「アカイ王の首を打ち取れば響夜を抱ける」と信じて疑わない。
彼ら頭にあるのは自らとベッドインする響夜の姿。
それを現実のものとすつため、正に命懸けで戦う。
基本、自分さえ目的を果たせればいいので何人犠牲になろうが知ったこっちゃない。
おまけに倒した敵の武器を奪って使用するので、ドンドン強化していく。
結果として彼らは実力以上の力を発揮していた。
逆に守備隊は美青年達をなめていた。
だが実際はそうはいかなかった。
死を恐れぬ彼らはひたすら前を進む。
その気迫に、戦闘力で勝る守備隊も押され気味。
浮足立った守備隊は次々と倒されていった。
「これが目に入らぬか」
守備隊の中には人質を取って、自分の盾にして手出しできないようにする者も。
なんてヤツだ! 騎士の風上にも置けない卑怯者である。
「知ったことか!」
「「グハッ!」」
だが、そんなものなど何の役にも立たなかった。
人質が取られれば、美青年らは人質ごと剣で首ちょんぱ。
個々が利己的な目的で行動する彼らにとって、ライバルごと潰すチャンスでしかない。
命よりも童貞卒業のが大事な彼らに人質など何の役にも立たない。
このように、モチベーションもボルテージも美青年らのが勝っていた。
熾烈をきわめる戦い。
お互いに破滅的な打撃を受けた。王国が破滅しかねないほどの打撃を。
戦況は泥沼の消耗戦となっていた……。




