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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
転移の巻物その2
23/64

第23話 こいつら全員連れて行く


 古代遺跡みたいな場所。


「この野郎!」

「おらぁ!」

「やったなこの!」

「だったらどうした!」


 ミイラから蘇った美青年達はふとした行き違いから仲間割れを開始。

 殴り合いの激しい乱闘を繰り広げている。


「こりゃ壮絶だな……」


 俺、御剣響夜(みつるぎきょうや)はチラッチラッと争いの様子を見ていた。

 それというのも現実の争い事が嫌いだから。

 んだからチラ見しかできないの。

 事なかれ主義なんだ。


「いやー、響夜様が無事でよかったわ」

「そうだっちゅーの」


 美青年達が乱闘に夢中になってる中。何食わぬ顔で西川(にしかわ)とサーキちゃんが歩み寄る。

 なんという図々しさ。


「てめぇら、よくも俺を見捨てようとしたな」

「それは誤解だっちゅーの」

「そうよそうよ。アタシとサーキちゃんは響夜様ならなんとかできるって信じてたのよ」

「どうにも信用できんな」


 素直に信じられん。

 言い逃れたいがために取り繕ってるとしか思えなかった

 不信感から、2人に疑いの目をにギロリと向ける。


「今までだって響夜様は、絶体絶命のピンチも何度も生き延びてきたじゃないですか」

「確かにそうだけどさ」

「だから信用しきってたんだっちゅーの」

「うーむ……」 


 確かにそうだ。

 正直、信じたいと思う反面、内心ではあきれ果ててる。

 結果、悩む羽目に。


「今回は許す。だが、次やったら容赦せんぞ」 

「わかってるっちゅーに」

「アタシが響夜様を裏切るわけないわよ」 

 

 調子のいいヤツら。

 これだから信用できないんだよな。

 こんなヤツらを許しちゃうなんて俺って甘いな。


 まだ怒りはおさまりきってなかったが。

 今はサーキちゃんと西川に構っとる場合ではない。

 もっと大事な――本題を片づけねばならんのだ。


「さて、こいつらをどうするか……」 


 次なる問題は殴り合いの乱闘をやめぬ美青年達。

 むしろこちらのが差し迫った問題と言っていい。

 さて、どうしようか。


「おーい、やめろよ。そんな不毛な争いしてもなにも得られないぞー」 


 とりあえずダメ元で諭してみる。


「響夜姫、男の勝負に口出しいないでください」

「そうです。これは響夜姫に抱かれる権利がかかった真剣勝負なんですよ!」

「その俺が了承しとらんのだが」

「「「「あっ! そうだった」」」」


 諭すと彼らは即座に思い違いに気づき、乱闘をやめる。

 意外と物分かりがいい。


「響夜姫、改めてこのSR(エスアール)と寝てください」

「抜け駆けするな! 響夜姫、このKK(ケーケー)とお相手を」

「いいや! このオレと」

「いや! わたくしめと」

「またこのパターンかよ……」


 乱闘をやめたのも束の間。また揉めだす。

 まったくもって仲間意識に欠けるやっちゃ。


「そんなに俺が好きなの?」

「「「「はい!」」」」

「即答だな。こう言っちゃ何(なん)だが、俺って幼児体形だよ。胸ぺったんこだよ。そんなのが彼女なんて嫌だろ」

「「「「問題ありません! いずれ時間が解決してくれます」」」」


 気長に成長を待つってか。

 萎(な)えると思ったが、これは不発。

 ならば次の一手だ!


「俺こんな男声だけど、それでも愛せるの?」

「「「「声など問題ではない! 大事なのは容姿! 容姿さえ良ければ人格破綻者でも可愛く見えるもんさ」」」」

「清々しいぐらいクズな発言だな! マジでこいつらどうしよう……」


 これならと思った起死回生の言葉も決定打にはならず。誰一人として引かなかった。


 揃いも揃って問題児ばかりかて。まともに会話してては精神が持たん。

 冗談抜きで扱いに困る。なにかいい案を考えねば。


「そうだ……!」


 ちょいと知恵を絞るといい案を思いつく。


「みんな、聞いて。響夜のお願い聞いてくれた人と結婚してもいいよ」

「姉御、それはホントかっちゅーに!?」

「サーキちゃんは関係ないだろ! 引っ込んでろ」

「そんなぁ。酷いっちゅーの」


 無関係なサーキちゃんが首突っこんできたので突き飛ばし、追っ払う。


「「「「そのお願いとはいったい?」」」」


 美青年達は整列し、真剣な眼差しを向ける。


「アカイ王っていうクズを殺してほしいの」

 

 思いついた案は「かぐや姫作戦」だ。

 この作戦は――かぐや姫が5人の公達に要求した難題をヒントに思いついたもの。

 要するに無理難題をふっかけて諦めさせるのだ。


「響夜のお願い聞いてくれる?」

 

 どうせ断られると高を括ってたので。愛想たっぷりに、男ウケの良いぶりっ子キャラを演じたが。

 男声でぶりっ子すると気色悪いな。


「「「「なーんだ。そんなことですか」」」」

「……え?」

「「「「響夜姫、必ずやアカイ王の首を捧げてみせます」」」」


 なんてこったい。こいつら人殺しに躊躇(ちゅうちょ)がない。

 目的達成にはいかなる犠牲も惜しくないってか!?


「「「「で、そいつは何処に?」」」」


 真剣な眼差しが向けられる。

 まじいな。完全に引けない流れになってしまった。

 

「そいつは別世界に居る」

「「「「では、我々をそやつの所まで案内してください」」」」

「わ、わかったよ」


 迫力に押されて了承してしまった。

 数の重圧に屈するしかできなんだ。

 俺ってメンタル弱えー。


「姉御、そろそろ時間だっちゅーに」

「ああ、そうか。仕方ないこいつら全員連れてくぞ」

「そう思って10万人全員もどしといたっちゅーに」

「なんと素早い」


 あきれた手際の良さ。サーキちゃんはやらんでもいいことはホント手早い。

 

「サーキちゃん、こいつらどうやって連れてく」

「転移の巻物の使用者にくっついてれば一緒に帰還できるっちゅーに」

「そうか。じゃあ、お前ら俺にくっつけ」

「「「「はい、響夜姫様」」」」

「ぎゃああああああ!?」


 美青年達が一気にくっつく。


「いっぺんにくっつくな! いったん離れろ」

「「「「はい、すぐに」」」」


 慌てて離れるよう指示。

 美青年達を下がらせる。


「ハァハァ……!」 

 

 予想外のハプニングで乱れた呼吸を整える。

 

 しかし、大勢でくっつくもんだから熱気と圧迫で死にかけたぞ。

 もしも指示するのがちょっと遅れていたら死んでたかも。

 想像するだけでゾッとするぜ。


 そういや、二ホンミツバチがそのような殺法があったな。

 たしか、スズメバチを大勢のミツバチが取り囲み蜂球(ほうきゅう)とよばれる塊をつくり、飛翔筋を激しく震わせることによって内部の温度を上昇させ、スズメバチを蒸し殺すんだったと思う。

 んだが、それを自分が体験するとは思わなかったよ……。


「作戦変更。列になって俺にくっつけ」

「「「「わかりました」」」」


 今度はムカデ競走の要領でつながることに。

 これなら少なくともさっきと同じ失敗だけはせん。


「では、響夜姫様の後ろは私が」

「ZX(ゼットエックス)、抜け駆けするな」

「そうだ、響夜姫様の後ろにつながるのは、このRY(アールワイ)だ」

「なんでそうなる!」

「またか……」


 また揉めだしたよ。

 こいつらに任せると、決まるまでに日が暮れてしまいそうだ。

 

「俺が決める。TB(ティービー)来い」

「自分はCC(シーシー)であります」

「ごめん、間違えた」


 無作為に選ぶも、名前間違えてしまった。

 昔っから人の顔と名前覚えるの苦手なんだよな。


「……。名前覚えられんから番号で呼んでいいか?」

「「「「どうぞお好きに」」」」


 囚人みたいな扱いして悪いと思ったが。満面の笑みで頷いてくれる。

 気にしてなくてよかった。 

 しかし多少覚えやすくなったものの、10万人の顔を覚えにゃならんから大変なのに変わりはない。

 考えたら頭痛くなってきたわ。


「あっ」

「時間だっちゅーの」


 そうこうしてる間に制限時間である30分が経過。

 俺達は光に包まれ、元の世界に帰還するのであった。


 ◆


「「「「のぎゃああああああああ!」」」」


 俺、御剣響夜。

 

 10万人連れて来たのは良かったが。

 転送場所が魔道具室だってのを忘れてた。

 

 八畳程度の部屋に10万人も収容できるはずもなくぎゅうぎゅう詰め。

 瞬く間に部屋はパンクし、壁と扉をぶち破って廊下に飛び出す。

 東京の満員電車かて! 冗談抜きで圧死するかと思ったぞ。

 布団圧縮機に圧縮されるお布団の気持ちがわかったねぇ。


「帰って早々にひどい目に遭うとは。こいつら連れて来たの失敗だったかな?」


 とか愚痴るものの。俺は10万人の戦力(せんりょく)を手に入れた。

 ケンカするのに頭数ほど頼もしいもんはねえ。

 これならアカイ王や太子(たこ)もしばけるかも。


 そうなればいいな、と密かに期待していた。


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