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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
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19/64

第19話 お風呂事情


「いい湯だな~」


 お昼前。

 俺、御剣響夜(みつるぎきょうや)はサーキちゃんの隠れ家の庭にてドラム缶風呂を満喫してた。

 

 それもこれも『マグマカード』騒動の後、隠れ家の地下1階でドラム缶を発見したからだ。

 どうしてドラム缶なんて物がファンタジー系異世界突っこんだらにあるのか不明だが。

 何でもありなこの世界。突っ込んだら負けな気がするので追究するのはやめとこ。


 サーキちゃんに、ちょうだいとお願いするとすんなり譲ってくれた。

 打算的なサーキちゃんがすんなり譲るなんておかしいと思い。理由を尋ねると。

 彼女曰く、「ガラクタだから処分してもいいっちゅーの」との事。

 理由はともかく。欲しい物の入手に成功。


 ドラム缶が手に入ると庭に運び。ちょこちょこっと改造してドラム缶風呂に。

 そして石で釜を作り。ドラム缶風呂を釜の上に置く。

 次に水魔法で水を張り、火魔法で湯を沸かす。

 最後は真っ裸になり、ドラム缶風呂にドボンとダイブ。

 あとはのんびりとお風呂タイム。

 怪獣のせいで煤塗れになった体を洗う。


「あ~、気持ちいいぜ」


 何を隠そう俺は風呂好き。

 そんな理由があってドラム缶風呂を作ったわけ。

 

 この世界に召喚されてから水浴びぐらいしかできなかったから、とっても気持ちいい。

 ホント、風呂っていいよね。


「ちょっとぬるくなってきたかな?」

「響夜様、自分ばっかりお風呂入ってずるい」

「キャッ」

 

 のほほん入浴してると 西川(にしかわ)が現れる。

 思わず悲鳴を上げてしまった。

 だんだん女みたいになってくな俺。

 内面の女化が進んでるのか?


 まあ、それはともかく。

 日本人は風呂好きと言われてるが。

 日本風の文化だと思われる異世界出身の西川もその口(くち)だろう。


「西川、女の子の入浴をのぞくなよ」

「あ、そうでしたね。すいません」


 咎めると西川は素直に自分の非を認め、ペコリと頭を下げる。

 そして俺を見ないように後ろを向く。

 紳士的だなこいつ。


 あるいはゲイなの?

 ……それとなく探りを入れてみるか。


「のぞいたことはもういい。俺が出たら入っていいから、追い焚きしてくれ」

「はーい」


 そう言うと西川は懐から火吹き竹をつり出すと。勢いよく息を吹き入れる。


「お、上手いな」

「そう? 嬉しいわ」

「こいつ、照れておるわ」

 

 風呂焚きの才能があったのか、いいお湯加減。

 盾使い戦で召喚した怪獣といい、西川は多芸。

 本人は自覚してないけれど。まだ秘められた物凄いパワーがあるのかもしれない。

 

 ただ、現時点では器用貧乏と言わざるを得ないが。


「なあ、西川。お前って男色(なんしょく)か?」

「なによ、藪から棒に!? アタシ、男色なんかじゃないわよ」

「じゃあ、どんなのが好みだ?」

「姥桜(うばざくら)!!」

「ブッ!?」


 予想を斜めいった答え。

 予想外過ぎて吹き出してまった。


「他には熟女も好きだし。老女形(ふけおやま)なんてのもいいわね~! 具体的に説明すると――丸顔で口が小さくて、目がちょっと垂れてて白髪でおでこに皺3本、目尻にカラスの足跡な60歳」

「ムダにハイテンションな説明ありがとう。もういいからね」 

「あら、そう? せっかく盛り上がってきたのに残念だわ」


 すべてを理解した。西川はババア好みだ。

 だから俺やサーキちゃんみたいな美少女に色目向けなかったのか。

 

 理由が分かりスッキリした半面。残念な女の好みに哀れみも感じた。

 過去に強姦されそうになったトラウマから、「いつか犯されるのでは」と考えてた自分が恥ずかしい。

 もうちょっと仲間を信用した方がいいかも。


「そう言えば響夜様も白髪ね。将来いい熟女に仕上がりそうだわ」

「白髪とか言うな! 石灰色に近い白だからね! そこんとこ間違えるな」

「これまた失礼。でも怒っちゃやーよ」


 無神経な発言にカチンときた。

 この毛色のせいで小学生の頃にジジイとかじーさんなんてあだ名をつけられて嫌な思いをした経験から、毛色をおちょくられるのは腹が立つ。

 そんな理由があってムキになってしまった。

 

 やっぱしちょっと距離があるぐらいが丁度いいのかもしれない。


「姉御、何してんッスか?」


 西川と他愛のない話をせていると。サーキちゃんがひょっこりと現れる。


「見てわからんか」

「ジー……」


 サーキちゃんマジマジとドラム缶を見詰める。


「いただきまーす♪」

「チョッ! オメェどう解釈したんだ!?」

「え? スープ作ってたんじゃないの?」

「ダシ取ってんじゃねーから!」


 とんでもない解釈。

 これではコントである。


「これは風呂だ――って、飲むな!」

「ズズーッ」

 

 話してる最中(さなか)、サーキちゃんは何も聞かずにドラム缶風呂に首突っこんで飲みだしたよ。

 それもガブ飲みで。

 

「プハーァ! 美味い」

「美味いんかい!」

「でも、もうちょっと煮詰めて濃くしたら、もっと美味いっちゅーに」

「お前、舌だいじょうぶか?」


 サーキちゃんが味音痴か本当に美味いのか定かでないが。

 豚とか鶏とかならまだしも。ブチハイエナの亜人である俺からダシ取っても美味とは思えん。

 そもそもハイエナって食えるの?


 まあ、それはともかく。

 サーキちゃんが飲んだせいでドラム缶のお湯が半分になってしまった。

 呆れた飲みっぷり。こいつどんだけ飲むねん。

 

「あのなサーキちゃん――って、野菜をドラム缶風呂に入れるな!」

「姉御のダシでスープ作りたいっちゅーの」

「んなもん作らんでいい!」

「じゃあ米入れて粥にしよ」

「そうじゃねーよ! 頼むから食うのから離れて」

「食べたいと思うと何が何でも食べたくなるんだっちゅーの」

「あかん。この人目の前の食欲を満たすことしか考えとらん」


 サーキちゃん、ドラム缶風呂にタマネギやら白菜やらぶち込む。

 悪食な上に食い意地が張ってる。

 

「もう出よ」

 

 何を言ってもムダそうなので風呂から上がる。


「西川、入っていいぞ」

「わーい」


 で、西川と変わろうとするが。


「てめえは入るな! 味が濁る!」


 西川がドラム缶風呂に入ろうとするなり、サーキちゃんは激怒。

 入れさせまいと、仁王立ちになって行く手を阻む。


「アタシだって煤汚れ落としたいのよ。サーキちゃんそこをどきなさい」

「やなこった!」

「ムッ! アタシを怒らせたわね」


 今度は西川が怒り、サーキちゃんの喧嘩を買う。


「いくわよ!」

「やったるっちゅーに!」


 で、喧嘩をおっ始める。


「こりゃあ関わらん方が良さそうだ」

 

 一方、俺は身の危険を感じたので隠れ家に退避。

 体半乾きだったけど、速攻でドレスに着替え。遠目に戦いを見守る。


 ◆


「ま、参りました」


 俺、御剣響夜はサーキちゃんと西川の喧嘩を眺めていたが。

 3分後、勝敗は決した。

 

 勝ったのはサーキちゃん。

 マグマカードでパワーアップしたサーキちゃんの前では西川など完全に子供扱い。まるで歯が立たない。

 結果、西川はベタ負け。ダメージからか横たわってる。

 

 そもそもパワーアップ前ですら総合ステータスに劣ってたのに普通喧嘩挑むとかバカじゃね。

 やる前から勝敗はわかりきってた。

 手向かっても無駄だったのだ。


 勝算もないのに戦うとか、西川って猪突猛進タイプ?

 

「《ヒール》! 西川、負けん気の強いのは悪くないが。引き時も大切だぞ」

「面目ない」


 傷ついた西川が可哀想になり、回復魔法をかけて優しく接してあげる。


「このダシはぼくちゃんのものだああああああああああ! 《ファイアーボール》ッ!」


 一方サーキちゃんは勝利の雄叫びを上げると。トラム缶風呂のダシ (?) にお米をぶち込み、お粥を作り出す。

 豪快な男の料理 (?) だ。


「さあ、食うぞー!」

 

 お粥が出来上がると凄まじい勢いでがっつく。


「ふー! 食った食った」


 あっという間にトラム缶風呂粥を食べ尽くすと、大の字で寝る。

 とんでもない大食(おおぐ)らいに加え、お行儀も良くないとか干物女かて。

 女子力皆無だな。


「お風呂……」

「……また焚きなおそう」


 しょげる西川の背中を擦り、もう一度ドラム缶風呂を用意してやろうとするが。


「西川、汚れ落としたいなら――洗浄魔法を教えてやろうかっちゅーに」

「何それ?」


 サーキちゃんポッコリお腹をさすりながら、何やら提案を出してる。

 まあ、西川はいまいち理解してないらしく、ポカンとしてたが。


「衣服や身体を綺麗にして、清潔を保つ魔法だっちゅーの。これを使えば、洗濯したりお風呂に入ったりしなくてもいいんだっちゅーに」

「そんな便利な魔法あるなら俺にも教えろ」

「なら姉御にも教えるちゅーに」

「サンキュー」


 で、俺と西川は洗浄魔法系のレクチャーを受ける。


「それじゃあ教えるっちゅーに。 《洗浄魔法》!」

「うおっ!」 

「これが洗浄魔法」


 洗浄魔法を発動すると、サーキちゃんの身体と衣服が同時に泡に包まれてしゃわしゃわと洗ってから水で流して乾燥させる。

 あっという間に着ている囚人服は洗濯したの服みたいにキレイに。

 少々荒技であるが。これは優れものだ。


「よし! 習得完了」

「アタシも習得できたわ」


 洗浄魔法に使うスキルポイントは1ポイントと少なく、2人共適正の問題もなく習得できた。

 便利な魔法を習得した。

 これで野宿によるお風呂事情も解決したわけだ。

 

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