第17話 ご先祖様は偉大なお方だったのね
――早朝。
とある山の山頂。
「ここがサーキちゃんの隠れ家か?」
「そうだっちゅーの。先祖代々受け継がれた隠れ家なんだっちゅーの」
俺、御剣 響夜は盾使いから逃げ延び。歩き続けること数時間。
ようやくサーキちゃんの隠れ家にたどり着く。
山と言っても100メートルあるかないかの小さな山。
小牧山よりちょっと高い程度の小山にございます。
「ここが俺達の拠点となる場所……」
サーキちゃんの隠れ家は――第二次世界大戦の防空壕みたいになっており。
ちょっと見では「山賊の根城」といったところ。
少々古くて小汚い感じだったが。秘密基地みたいで悪くない。
むしろ遊び心を刺激されて、個人的にはいい感じ。
「アタシ疲れたわ」
「それには俺も同感だ」
隠れ家の目の前でしゃがみ込む西川。
無理もない。
ぶっ通しで数時間も歩き続けたのだ。疲れるのも当たり前。
西川の言い分ももっともだ。
「それにはお前、何度も転んでたしな」
「響夜様、それは言わないでよ~」
「そうか。すまねぇ」
小高い山とはいえ、西川は5回も転んだ。
それもこれも西川のデカ頭が原因。
バランスが悪いのだ。
もしも険しい山を山登りしてたらどれだけ転んでたことか。
バランス取れぬデカ頭。
本人も気にしてるみたいだし。早々にどうにかせんとな。
その内、改善策を一緒に考えてやろう。
「西川も姉御もそんなとこで休んでないで入れよ」
「そうだな」
「おじゃまします」
サーキちゃんに促されて隠れ家に上がる。
部屋の広さは十畳ぐらい。
居間みたいになっており。
板敷きの床で窓はなく、奥にドアが1つ。
家具は食器戸棚、テーブルとイス4つあるだけ。
片付いてるけどちょっと寂しい。
「好きに休んでていいっちゅーに」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
で、リラックスタイム。
みんなでごろ寝。
思い思いに寛ぐ。
「ってか、西川。寛ぐ時ぐらい頭巾とマスク外したらどうだ」
「それもそうね」
頭巾とマスクを外す西川。
その素顔は――しゃくれ顎と真っ赤な頬紅を塗りたくったような日の丸ほっぺ。
太い眉毛。髪型は茶筅髷だった。
「そういう顔だったのね」
「なんか言いたいことあるの」
「いや。なにも……」
西川の顔を一言で表すならば「一度見たら忘れない顔」だ。
ぶっちゃけ濃い。
リアクションに困り、言葉が詰まってしまった。
「グウ」
「あれま。寝ちゃったよ」
ちょっと目を離したら西川は寝てた。
よっぽど疲れてたのか、眠りは深そう。
なにせ戦い続きで休む暇もなかったから無理もない。
なんやかんやで彼も頑張ってくれたからなあ。
「《収納魔法》出し」
収納魔法で収納してた風呂敷を出すと。掛け布団代わりにそっとかけてあげる。
激戦の労をねぎらってるのだ。
口では恥ずかしくて言えないけれど。これでも感謝してるんだよ。
……俺って『多くを語らず行動で示すタイプ』なのかな?
「んなこと考えたってしょうがねえな。今必要なのは太子に対抗できる力だ」
などとぼやきながら寝そべると。
「姉御、パワーアップしたいんッスか?」
「そりゃあできるもんならパワーアップして、太子をぎゃふんといわせてやりたいが」
サーキちゃんが聞いてきたので、嘘偽りなく答えたった。
どんな贅沢な願望だって、言うだけならタダだからな。
「ぼくちゃんパワーアップ方法知ってるんだっちゅーに」
「マジで!? すぐにでも教えてください!」
あまりに都合がいいもんだから、西川寝てるのに大声上げてしまった。
まあ、爆睡してて起きなかったからよかったが。
しかし、まさかの都合のいい展開。
この世界に召喚せれて以降、まるでついてなかったが。
ようやくつきが回ってきたかも。
「じゃあ教えてあげるっちゅーの。ついて来るっちゅーに」
「ああ、わかった」
で、サーキちゃんは奥のドアを開ける。
俺は言われるがままについて行く。
◆
俺、御剣響夜はサーキちゃんに連れて行かれるが。
ドアの向こう側は階段になっており。地下に続いていた。
地下空間はかなり広く、上の居間よりはるかに広い。
それこそ、日本のどの地下街よりも広いだろう。
おまけにコンクリート造りときた。
建設機械がない世界でどうやってこんな立派なもの作ったのだろうか?
謎である。
「どこまで行くの?」
「もうちょっとだっちゅーに」
「そうか」
現在地下3階。結構下ったが、階段はまだ続く。
いったい地下何階まであるのだろう。
移動時間が思ったよりも長かったもんだから。階段を下って行く間、なにされっか不安になってくる。
けれども、最終的には『パワーアップできる』という好奇心が勝った。
「ここだっちゅーの。入れ」
「わかった」
地下4階。
その一室にて足が止まる。
「こりゃあすごい」
部屋に入ると、広さは八畳ぐらい。
そこには様々な魔道具が所狭しと並んでいた。
差し詰め、魔道具用の物置部屋ってとこか。
「えーと……。どこにしまってあったっけかなー」
入って早々に魔道具を漁り出すサーキちゃん。
どうやらこの中にパワーアップアイテムがあるのだと思われる。
「これから使う魔道具は大魔女の偉大なる魔力によって生み出されたんだっちゅーの」
「そうなのか。でも、それとパワーアップが関係あるの?」
「ある。黙ってたけど、ぼくちゃんのご先祖様は大魔女だったんだっちゅーの」
「そりゃあスゲー。エリートの家系だったのね」
正直、サーキちゃんは十把一絡の亜人に過ぎないと思ってたが。
意外にも優れた血統だった。
学校で「人を見かけで判断してはならぬ」と教わったけど。
それは正しかった。
やっぱしお勉強は大事なんだな。
ちょっとお利口になった気がした。
「その大魔女の名前なんていうの? 何代前の人物なの?」
「名前はう~☆ゲロゲロゴージャス。で、ぼくちゃんは八代目」
「かなり血が薄まってそうだな。てか、大魔女の名前う~☆ゲロゲロゴージャスっていうの!?」
あまりにぶっ飛んだ名前に驚きの声を上げてしまうも。
優秀な遺伝子も結構な月日が流れており、出涸らし状態。
たぶんサーキちゃんに大魔女に匹敵する素質はないだろう。
「まっ、その素性がばれて牢屋にぶち込まれたんッスけどね」
「あー、それで」
11歳の少女が投獄とうごくされるなんて、なにやらかしたんだと思ってたが。
そういった事情であったか。
「あらあら、お気の毒。ご先祖様のせいで苦労したのね」
先祖の犯した罪。時を越えて受け継がれた悲しみの記憶。
サーキちゃんにそんな悲しい秘密があったとは。ちょっと意外だった。
彼女を見る目が変わったよ。
「別に先祖を憎んではいないっちゅーに。憎むべきは王族! 倒すべきはアカイ王!」
「素晴らしい考えじゃねえか。アカイ王なんてクソ食らえだ!」
俺もアカイ王に散々な目に遭ったので、サーキちゃんの気持ちが痛いほどわかる。
気がついたら、同調してアカイ王を罵ってたよ。
「それでこそぼくちゃんが見込んだ女。共にアカイの一族を根絶やしにしねーかっちゅーの?」
「ヌオオオ~~ッ、のった~~~~っ!」
利害の一致に、柄にもなく野獣みたいな叫び声を上げちまった。
それだけ感情が高ぶってしまったのだ。
これもブチハイエナの亜人になった弊害か?
「ここにアカイ王討伐連合結成決定!」
感情が高ぶったのはサーキちゃんも同じらしい。
探し物ほっぽり出して意気投合。
気がついたらお互いの右腕をクロスさせてたよ。
「――みーつけた」
暫しの意気投合の後、探し物を再開。
なんやかんやで探し物を発見。
「これが我が家の家宝“マグマカード”だっちゅーの」
出されたそれはトランプカードサイズのカード。
金色の魔獣が描かれており、かっこいい。
「ちょっと貸して」
「あいよ」
「――――ッ!?」
カードを手に取ると、全身の毛が逆立つ。
一瞬何が起こったのかわからなかったが。理解するのに時間はかからなかった。
それは、カードに秘められた力を直感的に感じたのだと。
恐ろしくて体が震えたのだ。
――邪悪で底知れぬ力に。
「こりゃあ期待が持てそうだ。今度こそ太子に勝てる」
勝利を確信して、うすら笑い。
悪役してんなー俺。
「それじゃあ使うっちゅーの」
「気分つくりたいから ちょっと待って」
「姉御、震えてますぜ。ビビりッスね」
「ちがわい! これは武者震いだ」
嘘である。
足がガタガタしてる。
それもこれも未知なる強大な力に恐怖し、躊躇ったのだ。
やっぱし初めてのことは怖い。
それを見抜くとは。サーキちゃんの勘は鋭いな。
一応は取り繕うものの。たぶん悟られただろう。
「つべこべ言ってないで、やれっちゅーの」
「ともかく。俺は外の空気を吸ってくる!」
「ちょっ、姉御ー」
制止を振りきり、俺は部屋を飛び出すと。ダッシュで階段を駆け上る。
取りあえず先延ばし。
外に出て心を落ち着かせるのであった。
マグマカードについて
・パワーアップ用アイテムの一種。
・元々は大魔女う~☆ゲロゲロゴージャスの偉大なる魔力によって生み出されたモンスターだったが。過去の勇者に倒されて8つの破片となり飛び散ったものが結晶化し、カードとなったのがこのマグマカード。
・呪文《大魔女の祈りよ、死せる肉体に更なる力を 》を唱える事で死者をパワーアップして生き返らせる。
・使用したい対象が生きてる場合は使用不可。死んでなければ使用できない。
・死せる者の肉体を分子レベルで再構成し、更に強力な能力を加えて、より攻撃的にして生き返らせる。
・大きさはトランプカードサイズ。
・絵柄は金色の禍々しい魔獣が描かれている。




