第16話 使えねーなら使い道を模索するのみ
俺、御剣 響夜。
怪獣を召喚してからどうなったか簡単に説明しますと――
怪獣はブレーキぶっ壊れた暴走車のごとく大暴れ。
辺り構わずブレス攻撃を放ちまくるもんだから、辺り一面は大火事状態。
「このままでは近くの村々に被害が。サーキちゃん、西川、水魔法使えっか?」
「使えないわ」
「中級のなら使えるっちゅーに」
「ならば、西川は下がってろ。サーキちゃんは一緒に消火するぞ」
「響夜様の背後に隠れてるわ」
「よし! やるぞサーキちゃん」
「わかったっちゅーの」
「「《中級水魔法》!」」
西川を後ろに匿うと。
俺とサーキは被害を食い止めるべく、水魔法で降りかかる炎を消火していく。
◇
「なんとかなったっちゅーに」
「だな」
――数十分後。
俺、御剣響夜とサーキちゃんの努力の甲斐あり、被害は最小限に抑えるのに成功。
道端の雑草がすべて燃え尽きることで、これ以上燃え広がることはなくなった。
ま、俺達は全身煤塗れで真っ黒になったが。
しかし、事態は深刻だ。
それもこれも自分が目先の小銭をケチって招いたもの。
もしも召喚士に協力するに見合う報酬を支払っていたら、こうはならなかったかも。
自分のケチな性分で苦しめられてるわけ。
ちょっとのことで人生を狂わされるなんて。世の中わかんねーよな。
「盾使いのヤツ意外とやりおる」
俺とサーキが消火してる最中、盾使いは勇敢に怪獣と交戦中。
戦い見てみると、戦況は思わぬ方向に。
――盾使いが巻き返してるではないか。
「《リアクティブシールド》!」
「ブギャアアアア!」
盾使いが大盾で怪獣の右足にタックル。
すると大盾が当たった場所が爆発。
怪獣は悲鳴にも似た叫び声を上げ、右足に軽い傷を負う。
意外と奮戦しとる。
当初は怪獣の圧倒的パワーに押されてた。
しかし盾使いの強烈な反撃で押し返してゆく。
怪獣はパワーは凄かった。
けれども動きは遅く、知性も皆無。
そのために攻撃は力任せで単調なもの。
つまりは図体とパワーがでかいだけの愚鈍。
それに気づいた盾使いの行動は素早かった。
ヒット&アウェーの長期戦に持ち込むと、徐々に戦況は盾使いに傾いてく。
このままでは怪獣が倒されてしまう。
「まじいな……」
俺も怪獣の弱点を見抜けたので倒す見込みがあった。
だから怪獣が盾使いを倒した後に、怪獣を倒そうと見越してたのに。
これじゃあ計画倒れだ。
どうしよう。
「そうだ……!」
ちょいと頭を捻ると、いい案がピッピッーンと思いつく。
「サーキちゃん、西川。ちょっと盾使いを足止めしといて」
「それってどういう? まさかアタシ達を見捨てる気!?」
「んなわけねーよ! 詳しい説明は後でしてやる。だから今は俺に従ってくれ」
「なんだかよくわかんねーが。わかったっちゅーに」
「サーキちゃんが従うならアタシも従うわ」
「ありがとう。では、頼む」
いい案が思いついたら実行あるのみ。
サーキちゃんと西川に盾使い戦うように頼む。
西川がちょっと渋るが、サーキちゃんがいくなら自分も、と了承してくれた。
「いくわよおおおおおお!」
「ボコボコにしてやるんだっちゅーの!」
「なにするんだお前ら!」
2人揃っての体当たり攻撃に、盾使い一瞬怯むものの。
攻撃そのものは大盾で防がれてしまう。
隙がねえ。
あわよくば盾使いを倒してくれると嬉しいが。
ムリだろうな。
「おりゃああああ!」
一方、俺は盾使の注意がサーキちゃんと西川に向けられてる隙に怪獣の左足にしがみつく。
「《テレポート》!」
で、怪獣ごとテレポート。
行き先は城門前。
◇
「案外上手くいった」
俺、御剣響夜は怪獣ごと城門前にテレポート成功。
こんなでっかいのと一緒でもテレポートできるとか、ちょっと驚き。
「なんだ、このでかいのは!?」
「龍だ、黒い龍だ!」
こんな怪獣がいきなり現れたもんだから城中大騒ぎ。
みんな慌てふためいてる。
パニック映画のテンプレだね。
「忍法《バッタ跳び》! バッタァ!」
俺はバッタ跳びで2回ジャンプすると、怪獣の頭の上に乗っかる。
「ギュイアアアアアア!」
無論、怪獣はここでも大暴れ。
城壁を殴る蹴るなどの攻撃でドンドン破壊していく。
怪獣が建物をムチャクチャにぶっ壊す光景は迫力満点。
怪獣映画の醍醐味だね。
しかーも! 今、俺は怪獣目線。
怪獣になったみたいな状態。
それは究極の「怪獣ごっこ」と言っても過言ではない。
楽しませてくれる。
「みーつけた♪」
遊びも程々に周りを見渡すと。城のバルコニーにて太子を発見。
プライドの高さから最前線には出てこなかったのか。偉そうにふんぞり返ってた。
「お前は響夜!?」
視線が合い、あちらも俺に気づいた模様。
「ハッピーバースデー太子ちゃん。この怪獣は僕からのプレゼントだよ~」
「なっ!?」
実際に今日が太子の誕生日かは知らんが。
今までの復讐と言わんばかりに、嫌味たっぷりに鬱憤晴してやった。
「全然言うこと聞かないけどかわいがってね。バアアーイ」
「ちょっ!? まっ!」
太子はなんか言ってたが、俺は聞く耳持たず。
もちろん最後まで聞かないで皮肉をこめてバイバイすると。怪獣の頭からシュタッと降りる。
「さてと。細工は流々。ほんじゃあ《テレポート》!」
着地すると直ぐ様テレポート。
田舎道に戻る。
◇
「ただいまー。……って、おわー!?」
「死ぬううううううう!」
「助けて響夜様ああああああー!」
俺、御剣響夜。
戻って早々に大ピンチのサーキちゃんと西川。
2人揃ってボロボロ。
予想してたが、あの2人で盾使いを倒すのはムリだったか。
「手こずらせてくれたが。そいつらはもう戦えないぞ」
俺を見るなり粋がる盾使い。
戦える力を失った2人を見て勝利を確信したらしい。
確かにサーキちゃんと西川にもう戦うのはムリだろう。
それに加え、ステータスもレベルも盾使いのが勝ってる。
俺が勝てる要素は微塵も感じられない。
普通に考えたのならば――
「今度こそ消してやる」
「それはどうかな。あれを見ろ」
「ん? あれは!!」
指差した先を見る盾使い。
その先にあったのは城を破壊していく怪獣の姿であった。
盾使い顔面蒼白――
さっきまでの自信は何処へやら。
明らかに動揺している。
「貴様、なんてことを!」
「あらら~。俺なんか相手してていいの? 早くしないと城にいる王と太子が怪獣に踏みつぶされちゃってるかもよー」
「クッ! 悪党め……!」
「おう! 俺は悪党よ」
煽ると盾使いは歯軋りして悔しがる。
売り言葉に買い言葉。
我ながら悪役してんなー、俺。
「貴様を倒す!」
「なんの!」
カッとなって俺に襲い掛かる盾使いであったが。
その内心は動揺してて、攻撃は雑。
大盾を構えた突進攻撃に過ぎない。
今までの戦略的な攻撃とは程遠く。難無く回避に成功。
「オーレ!」
回避後は闘牛士が牛をいなすかのごとく戦った。
戦闘中、調子に乗って闘牛士になりきっちゃったけど。どうにか互角に渡り合う。
しかし、あくまでも互角。
ちょっとでも気を抜けば倒されるのは明白。
良くて引き分けに持ち込むのが精一杯。
だから煽って煽って、冷静な判断ができんようにせねばならんのだ――
「俺と戦ってたら、ドンドン犠牲者が増えるぞ。さっさと城に助けに行ってやった方がいいんじゃない」
「そんなことはない! 太子様が必ずや何とかしてくれる!」
「どうかな。太子のヤツ「勝てない」とか弱音吐いてたぞ」
「……な、んだって」
無論、真っ赤な嘘だ。あの女が弱音吐いたとこなんて見たことない。
だが、精神的ダメージは絶大。
卑怯な方法ではあったが。冷静沈着タイプの盾使いをどうにかするにはこうするしかなかった。
盾使いを城に向かわせるのが目的なんだから。
「そんなの嘘だ!」
「信じる信じないはお前の勝手だ。だが、そんなこと言ってる間にも1人、また1人と死んでるかもしれないよー」
「卑怯者……!」
「何とでも言え! 仲間を見捨てる勇者さん」
「グッ……!」
この言葉に盾使いの攻撃の手が止まる。
「この借りは必ず返す。覚えていろ! 《テレポート》!」
「やだよ。二度とお前と会いたくないもん」
盾使いは捨て台詞を残してテレポート。
ついに城に向かった。
リベンジ宣言してきたが、拒否ってやった。
「おーい、おめえら。脅威は去ったぞ。歩けるか?」
「何とか」
「モチのロン 。誇り高き松坂牛の亜人はタフなんだっちゅーの」
「ではサーキちゃん、案内頼む」
「わかったっちゅーに」
「よし。では行くぞ皆の衆」
「「はーい」」
で、改めてサーキちゃんの隠れ家に向かう。
こんなこと言うのもなんだが。今の俺は紛れもなく悪党だ。
この時に俺は『自分がダークサイドに堕ちた』と自覚するのだった。
ダークサイド化してしまった響夜くん。
これ以降のお話では場面転換する際、
善玉は ◇
悪玉は ◆
となります。
トランスフォーマーの「エンブレムターン」みたいなもんだと思ってください(笑)




