第14話 収納魔法
「少しでも距離を稼ぐんだ!」
「姉御、そんなに躍起にならんでも」
「今逃げ切らねば、太子に確実に殺される!」
「なら、ぼくちゃんの隠れ家で身をひそめないかっちゅーの」
「隠れ家? 詳しく聞かせてくれ」
「これこれこんなだっちゅーの」
「それはいいな。すぐに案内してくれ」
「はいな」
俺、御剣 響夜はポンコツパーティー結成後。追っ手から逃れるため、城での騒ぎが大きいうちに遠くまで行こうと思ったが。
突然、サーキが提案。
詳しく聞いてみると。それが案外悪くない。
作戦を逃亡から潜伏に切り替える。
「ねえ、響夜様。宿屋に置いてある荷物を取りに戻りたいんですけど」
「何言ってんだ。今はサーキちゃんの隠れ家まで逃げ延びるのが先決だろ」
サーキの隠れ家を目指し、田舎道を突き進む最中に西川が突然の申し入れ。
彼の言い分はわかる。
けれども俺達は逃亡中の身。取りに戻ってる時間は惜しい。
軽く突っぱねるが。
「やーよ! アタシの全財産置いてくなんて」
「服を引っ張るな! 脱げる」
と、泣きじゃくりながら駄々を捏ねる。
「西川、やめんか。って! サーキもどさくさに紛れて脱がそうとするな!」
「ばれたか」
またしてもムダな時間を費やしそうな予感。
今までの経験上では散々揉めた挙句、俺が折れるパターン。
「わかったよ。2人共、俺にしがみつけ。ただし手短に頼むぞ」
「はい! 響夜様」
「はいだっちゅーの」
であるからして、「労力を費やすだけムダ」という答えに至る。
要するに「バカを相手にするな」ってこと。
「《テレポート》!」
心ならずも、城下町にある宿屋にテレポートする。
◇
俺、御剣響夜はテレポートして――宿屋の一室。
なんとなく予想できたが。西川が泊ってる宿は安宿。
それも倒壊寸前のボロ宿。
部屋にはベッドと机があるだけ。内職道具が散乱してた。
しけたヤツ。貧乏したのね。お気の毒様。
「なんだこの量は!?」
いざ荷物を運ぼうとするが。その量に驚く。
荷物は部屋の隅に置かれてたが。馬鹿でかい風呂敷包みいっぱいに詰め込まれており、背負うと引きずる程。
普通、忍者は戦闘兵でないので装備は必要最低限なのだが。西川の装備は過剰ともいえる重武装。
西川はホントに忍者なのか?
「みんな必要な物よ。持ってくの手伝って」
「これ全部持ってく気?」
「そうよ。任務の遂行に必要な物ばかりよ」
「ちょっと待て。西川、任務の度にこれ全部持っててるの?」
「そうよ」
「マジかよ!? 面倒事引き受けちまったなぁ……」
風呂敷を開いてみると、多種多彩な道具が出でくる出てくる。
手裏剣、くない、水蜘蛛、戦輪、撒菱、兵糧丸、鉤縄などなどなど。
よくもまあこんなに詰め込んだものだ。
――中には鉄のけん玉や短筒火縄銃、足軽用の鎧と笠といった潜入に使わない代物も少なくない。
また、何を思ったのか、紋付袴や簪なんかもあった。
なんに使う気だったのだろうか? 謎である。
道具の選び方はわからなんだが。
西川がヘボ忍者なのがなんとなくわかった気がする。
「どうやって運ぼう」
「ぼくちゃんに言い考えがあるっちゅーに」
「なんだサーキちゃん、藪から棒に」
これほどの大荷物運ぶのは骨が折れると思ったが。
突然サーキが挙手。
「ぼくちゃん、ユニークスキル・収納魔法ての所有してるちゅーの」
「なんだそのスキル?」
「これこれこーゆースキルだっちゅーの」
サーキの説明によると。ユニークスキル――収納魔法という物体を収納する便利なスキルを所有しており。収納容量に限界はあるものの、かなりの量の物体を収納できるとのこと。
なんとも都合がいい。
変なところでサーキは抜かりないんだよな。
「そりゃあいいな。サーキちゃん、俺にもそのスキル教えてくれ」
「教えるのいいッスけど。習得に必要なスキルポイント多いッスよ」
いまさらながら。スキルの習得のために必要なのは適正だけではない。
――スキルポイントなるポイントも必要。
スキルポイントは通常職業に就いた時やレベルアップ時に得られる (経験値やレベルとは別個に換算される)
スキル習得に必要なスキルポイントは一律ではない。例えば雷が苦手な人は雷系のスキルを習得する際、普通の人よりも大量のポイントが必要だったり、最悪、習得自体ができなかったりする。
「構わん。スキルポイントは有り余ってる」
「そりゃあスゲー」
幸いにも俺には大量のスキルポイントを保有してしていた。
ギルド内の冒険者に片っ端から習得可能なスキルを教えてもらっても、しゃくしゃく余裕。10分の1もスキルポイント減ってねえ。
話によると、本人の才能や適正によってあらかじめ多くの「初期ポイント」が用意されている場合があるらしい。
優秀な人は、生まれつき初期スキルポイントが10や20を超えてる事も少なくないとか。
逆に才能も適性も無かったため0ポイントだったかわいそうな人も。
才能の有無で随分と差が出てしまう。
本当に不平等だ。世界ってヤツはな。
なお、俺のスキルポイントは2000と、他者を圧倒的に引き離してた。
俺ってば超優秀じゃん。スキルポイントだけだったら、太子より優れてるんじゃね?
もしかしたら、この桁違いに高いスキルポイントによって勇者と勘違いされたのかも。
だとしたらいい迷惑だ。
「じゃあ、教えるちゅーに」
「サンキュー」
スキル《計測》のときと異なり、今度は習得可。
スキルポイントを20使ったが、その程度痛くもかゆくもない。
「そんじゃあ使ってみるか。《収納魔法》入れ!」
荷物に向けて手をかざすと、早速目の前の荷物目掛けて《収納魔法》を発動。
すると荷物は一瞬のうちに消え、別空間に収納される。
「どうッスか?」
「使えたが、もう収納限界だ。収納できる量ってこんなもんなのか?」
「うそぉ! 少なっ。ぼくちゃんはその3倍以上収納できるちゅーに」
「マジかよ……」
習得はできたのだが、適正は低く。サーキの収納魔法よりも劣る。
どのぐらいの差かというと。サーキの積載量が大型トラック並みなら、俺は軽トラック程度。
随分と差があるものだ。自分が有能なのか無能なのかわからなくなってくる。
……考えるのやめよ。気にしたら負けだ。
「ちょー! アタシの全財産どこにやったの!? 返して!」
「顔近い!」
自分の荷物を消されたと勘違いした西川が急接近。
泣きながら迫ってるが。顔のでかい西川にゼロ距離で迫られると、圧迫面接など比較にならん程の威圧感。
目を血走らせてるてることもあって直視できん。ちょっと恐怖を感じたぞ。
マジで威圧感半端ねぇ。
魔法のある世界に召喚されたにもかかわらず、収納魔法を理解できとらん。
常識に疎いのか?
「西川、落ち着け! 冷静に話し合おう」
「フンヌゥゥゥゥッ!」
一応宥めるも。西川は我を忘れてる。
力任せに俺を持ち上げようとするが……。
「ウ……、重!」
途中で断念。
がっしりした体形の割には非力なやっちゃ。
「おめえ、腕力弱いな。ってか、そんなに重いのか?」
「うん。とっても」
俺の元々の体重は55キロだったが。身長が縮んだので、軽くなってると思う。
元々の身長は165センチ。今の身長が140センチだから。体重は多分30キロよりちょっと重いぐらいか。
それを「とっても」とか言ってるようじゃ非力と言わざるを得ない。
少なくともパワーファイターではないのは確実。
「ともかく。もう一度出すから落ち着け」
「うん。わかったわ」
挫折したからか。西川、落ち着きを取り戻す。
「《収納魔法》出し! ……はて、こんなのあったっけ?」
で、また収納した荷物を出すが。
収納した物を全部出してみると。収納した覚えのない物がいくつか出てきた。
出てきたのはジーパン、ポロシャツ、トランクス。
あれ? 見覚えがあるような。
「……よく見ると、これって俺の服じゃん」
見覚えがあると思ったら。
それは融合した後に行方知れずになってた俺の衣服。
どうやら無自覚で収納魔法が発動してたらしい。
てっきり消滅したもんだと思ってたが。こうして戻ってくるなんて嬉しい誤算。
儲け、儲け。
「着替えたいから2人共出てってくれ」
「わかったわ」
ドレス姿も美しくて好きだが。いかんせん動きにくい。
そこで、動きやポロシャツとジーパンに着替えることに。
「……サーキちゃん。着替えたいから出てってくれない」
「お構いなく」
素直に部屋から出ていく西川と対照的にサーキは俺の目の前に突っ立ち、拒否る。
キリッとした顔だが。ありゃあ、大っぴらにスケベな要求をしてんだろう。
「いいから出てけ!!」
「ちょっとぐらいいいじゃん! 減るのんじゃなし」
「お前を部屋に残しとくと何しでかすか知れたもんではない。『猫に鰹節』なんだよ!」
「女々しいちゅーに! ぼくちゃんを信用するっちゅーの」
「できるか! お前を残すぐらいなら、西川を残した方がまだマシだ」
「なんですとおっ!? ならば強硬手段!!」
「こいつ、実力行使に出やがった!」
咎めても開き直る有り様。
小学生のケンカのような取っ組み合いが始まってしまった。
◇
「これでトドメだ!」
「ウアオワアア~~~~ッ」
俺、御剣響夜は激闘の末、サーキに勝利。
なお、決め技はパワーボム。
サーキのパワーは脅威だが。その攻撃はワンパターン。
大技にさえ気をつけてればあまり強くない。
癖や手の内を知り尽くした相手のため、勝てたと言っていいだろう。
そうやって考えると。俺って分析力と適応力高いのに、真っ向勝負になると毎回敗北を喫するんだよな。
自分のことながら、俺って強いの? 弱いの?
マジでどっちなんだろう。悩む。
「おらぁ! 出ていけ」
「グエッ」
悩むのも程々に、サーキを部屋から放り出す。
「あんたも懲りないわね」
「うるちゃいわね! ほっといてほしいちゅーの」
部屋の外から西川の憐れむ声が聞こえた。
意外と面倒見がいい。
せれに加えて女子の着替えをのぞき見たりせんとか、どうかしてるぜ。
美少女のお着替えであれば、俺絶対にのぞき見してたぞ。
それをせんとか紳士かて。あるいはゲイなの。
……まあ、それはともかく着替えよ。
「うーん……」
ドレスを脱ぎ、下着姿になるが。
パンツをこのままのを使用するか、トランクスに穿き替えるか悩む。
上着は着替えるのは決めてたし。
替えのないブラは消去法でそのまま。
だけどパンツは女だし、女物のがいいと思うが。使い慣れたトランクスも捨てがたい。
で、決めかねてるわけ。
「……やっぱしこのままでいいか」
悩んだ末にそのままにすることに。
やっぱり女の子にトランクスは似合わん。
「やっぱ、緩いな……」
お着替えするも。元々のサイズに合わせた服。
誰の目から見てもブカブカ。
ポロシャツが裾が長い中国服みたいに見えてしまう。
「不格好だな……」
ポロシャツは袖まくりし。ジーパンも裾まくり。
ゆるゆるなウエストはベルトで強引に合わせた。
調節してみるも。どうにも整わん。
多少動きやすくなったけど。ファッションセンスは大幅にダウン。
総合的にマイナスになってんじゃね?
「えぇーい! 見てくれよりも機能性だ」
そう自分に言い聞かせ、納得させた。
「《収納魔法》入れ! 準備できたぞ。2人共、行くぞ!」
「「はーい」」
「《テレポート》!」
西川の大荷物を収納魔法でしまい。西川とサーキをしがみつかせ。
テレポートで田舎道に戻った。
すいません。
書いてたら予想以上に長くなってしまいました。




