第13話 なんて連携だ
「クソッ! なんでこうなるんだ」
俺、御剣 響夜。
ちょっと前まで事態の善後策を考えてたってのに。
ふとした行き違いから、忍者 西川と牛の亜人サーキと戦う羽目になってしまう。
ぶっちゃけ不毛の争いだ。
現在田舎道の脇にて戦闘中。
道脇は雑草がボーボーに生い茂っていて、動きにくい地形だ。
はっきり言って動きが鈍って戦い辛い。
「スキル《能力透視》! ……なるほど。サーキはパワータイプで、西川はバランスタイプか」
戦闘開始と同時に《能力透視》を発動。
2人がどの程度の強さを確認。
すると、サーキはパワーに優れてるものの。それ以外のステータスは低め。
パワーでは敵わないが。パワー以外のステータスは俺のが上。
真っ向からぶつかり合わなければ何とかなる相手。
西川に至っては、バランスが取れてるだけのザコ。
全ステータス、融合前の弱かった頃の俺のステータスをも下回る。
同レベルの冒険者と比べても、平均水準にも達しておらず。
実力は極めて低く。脅威とはなり得ない。
それに加え、2人のステータスを合計しても俺のがステータスは上。
こりゃあ勝ったも同然と高を括るが――
「クソッ! 防御だけで精一杯だ」
いざ戦ってみれば大苦戦。
即席タッグとは思えぬ連係プレーで完全に遊ばれてしまう。
特にサーキの胸を突かれるなどのセクハラに翻弄されっぱなし。
2対1ではあったが。戦闘力に劣る者に防戦一方とか、予想外すぎだろ。
どうしてこうなった?
「西川、後ろから取り押さえるんだっちゅーの!」
「わかったわ」
「しまった!」
俺は西川に羽交い絞めにされる。
信じられん。《能力透視》で確認した時点では、俺の方が2人よりも総合ステータスに勝っていて、圧勝かと思ってたのに。
けれども実際に戦ってみれば予想は大きく裏切られる。
ステータスアドバンテージを完全に覆された。
なんてこった! 格下相手に翻弄されるなんて。
「なんて連携だ。事前に打ち合わせたとしか思えん」
あっという間に追い詰められた。
自分より弱く、能力に劣る者に後れを取るとか、なんと忌まわしいことか。
特にポンコツだと思ってた西川に追い込まれるとか、屈辱以外のなにものでもない。
ムカつく。
それもこれも自らの実力を過信し、軽率な行動をしてしまったから。
城で兵士相手に圧倒して、俺は天狗になっていた。
これじゃあ『柳の下のどじょう』だよなー。
――結果として2人の予想を上回るチームワークに一蹴される。
自らのおごり高ぶりが招いたこととはいえ。超あっさり負けて、過去最高に情けない。
己の甘さと慢心を悔やむ。
「さて。これから――スキル・スティールで姉御の持ち物をはぎ取っていきま~す」
「貴様、使えるのか!?」
《スティール》
それは相手の身に着けているものを何か一つ奪い取るスキル。
奪い取れる物や確率はステータスの幸運値に依存する。
また、レベル・ステータスが大きく上回る相手、もしくは強運の持ち主に発動しても、何も奪えないなんてのがザラ。
それでも互いの持ち物を強制交換する《トレード》のほぼ上位互換の性能を誇る。
俺の欲しかったスキルだ。
「使えるとも。姉御の衣類を1枚ずつ脱ぎ脱ぎさせるっちゅーの♪ それ《スティール》! 《スティール》! 《スティール》ッッ!」
「あんた鬼か!」
間髪を容れずに連続発動。
俺の服がサーキの足元にドンドン積まれてゆく。
あっという間に持ち物を全て奪われ、すっぽんぽんのぽんぽん。
まさか欲しかったスキルが自らに牙を剥くとは夢にも思わなんだ。
まさに皮肉極まりないものである。
しかしすっぽんぽんにされて、横っ腹の傷跡をまじかに見ることができた。
傷跡は予想以上に大きく。凄まじい惨劇を物語る。
触って確認したものの。目で見ることで、その痛々しさを再確認。
俺との融合前に少女はどのような仕打ちを受けたのだろうか。
想像するだけでもおっかねえ。
「キャー! 恥ずかしい」
「お前が言うな! なんでお前が恥ずかしがる」
西川は俺を羽交い絞めにしたまま、恥ずかしがって顔を横にして目を瞑る。
こいつシャイか。
それならポンコツらしく天然ボケをかまして、ロックを解除してくれてよ。
こういう場合、ポンコツキャラはテンパって行動と言動がガタガタになるのがテンプレなのに。
無能なくせに、こんなときだけ有能なやっちゃ。
強いのか弱いのかさっぱりわからん。
「かー! 無様だ」
ツッコミを入れるも。真っ裸を晒すのは非常に恥ずかしい。
それは男のボディでも、女のボディでも変わらないな。
人格同様に羞恥心もそのまんまなのを再確認。
「いひひひひひひひひ」
西川とは対照的に、サーキはやらしい目で裸体となった俺の胸をガン見。
ニタニタと緩み切ったスケベな顔で、気持ち悪い笑い声あげやがる。
その目を血走しっており、躊躇いが微塵も感じられない。
感じられるもの。それは――スケベ盛りの思春期男子のそれ。
クラスの男子からは感じたことあったけど。女で感じたのは初めてのことだった。
とても異質な存在。
こいつ本当に11歳の少女か? 「俺と同じで中身男なのではないか?」、と疑問をいだく。
……いつか探りを入れてみよ。
「これが姉御のパンツ。……ゴクリ! くんかくんか」
「臭い嗅ぐな! 貴様はとっとこハ〇太郎か! やめれー」
「こんなのは序の口だっちゅーの! まだまだいくよー」
「ゾゾッ!」
その挙句、鼻息荒く俺のパンツを顔に埋め、臭いをかいでくる。
このままヤツをのさばらせておくと付け上がるのは明白。
それどころか、どの様な変態プレイをしでかすか知れたもんではない。
――太子とは異なる気味悪さがあるな。
得体の知れない恐怖から身が竦む。
「だはぁ……無条件降伏しますぅ」
性的被害を被るなんてまっぴらごめん。
これ以上意地を張るのは得策ではないと悟った俺は、心ならずも敗北を認め。条件を飲むことに。
……完敗や。
「バンザーイ! パーティーに入れてもらえるぞ。超嬉ピー」
条件が飲まれると西川はロックを解除。
喜びからかバンザイ体操を踊り出す。
軽い男だ。
「今だ!」
一方、俺は解放されると身の危険を感じてたので、奪われた服を速攻で着直す。
いろんな意味で身の危険を感じてからだ。
であるからして。気休めかもしれんが、身に着けてるものがあれば何となく安心な気がする。
「チェッ! これから黄門様にご対面するところだったのに」
素直に喜ぶ西川はともかく。
サーキは俺の肛門になにする気だったんだ!?
身の毛もよだつとはこのことか。早めに降伏しといてマジで良かったかも。
――で、降伏するなり2人は超強引に俺のパーティーに入り込んできた。
結果、ポンコツパーティー結成。
ああ、先が思いやられる。
「黄門様とのご対面はまたにするとして。パーティーメンバーとして、これからよろしくだっちゅーの」
「よろしくおねげえしますだ」
「あ、ああ……」
一応、上辺では受け入れるものの。
こんなヤツら仲間にしたくない。内心では嫌でたまらん。
顔デカ無能忍者西川と変態牛亜人サーキ――
これから問題児2人の世話をするのかと思うと、将来に多くの困難が予想される。
正直言って1人で行動した方がよっぽど楽だろう。
太子だけでもいっぱいいっぱいだってのに。頭痛の種が増えてしまった。
あぁ、頭が痛い……。
「加入記念に一発ちょうだい」
「チョッ!? 俺女の子だから、ムリだよ」
パーティーに加入するやいなや、サーキがまたしてもとんでもない要求をしてくる。
「だいじょうぶだっちゅーに。響夜の姉御はブチハイエナの亜人だしょ」
「そうだが。それがどうした?」
「ブチハイエナの雌の個体は陰核が陰茎状に肥大しているんだっちゅーの。だから勃起も可能だっちゅーに」
「その通りだが」
どこで覚えたのかは知らんが。サーキの言ってることは正しい。
ブチハイエナは両性具有の神話があり。永らく両性具有と信じられてきたのだ。
俺はそれを知ってたから、瞬時に理解できた。
手前味噌であるが。俺は動物に関する膨大な知識を持ちあわせており。他の同世代よりもよっぽど詳しい。
理科の生物という限定的分野であれば学年トップの成績を誇る (まあ、他の科目の成績はイマイチだが……)
それもこれも小さい頃から図鑑をよく読んでたから。
だからそういった知恵は自ずと身についた。
そんなんだからサーキの考えを理解できたが、
「生えてないからね」
獣度合いが強い人種である獣人ならともかく。
俺は動物の部位をもつ人種ではあるが。獣度合いが低い亜人。
ブチハイエナの部分も耳と尻尾のみ。
であるからして。股にソレが生えてなく、ツルンツルン。
「またまたぁ。謙遜しちゃって」
「謙遜とかじゃないからね! ってか、謙遜の使い方おかしくぞ」
「冗談はいいからさ。はよー見せてっちゅーの」
「だから生えとらんちゅーとろうが! そもそも俺達は今、追われてる身なんだぞ」
「発情期なんだっちゅーの! だからはよー」
「あかん。この人状況が全く把握できとらん」
全裸の時に胸ばかり見てて、下半身を見てなかったらしく。聞く耳を持たず。
こりゃあ言いくるめるの骨が折れそう。
暗礁に乗り上げるとはこのことか。
「ねえねえ。ねーったら!」
「《ストーム》! いいかげんにせんかい!」
「ぶふぅッ!」
俺はサーキの無神経なしつこさと聞かん坊っぷりに、ついにブチ切れた。
竜巻の魔法で上空にサーキを吹き飛ばし。
空中で逆さの体勢になったサーキの腕・足・頭を側面からロックして脳天から地面に叩きつける――
技は見事に決まり。サーキは失神。
1対1なら楽勝だったのか。
結束力による加算率ハンパねぇな。
しかし、不本意ながら女の子に全力のプロレス技をぶちかましてしまった。
心の中で反省はしてるが。どんどん堕ちてくな、俺。
「行くぞ」
「は、はい……! 響夜様」
失神したサーキを担ぐと。びくつく西川と共にその場を後にした。




