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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
大脱走
12/64

第12話 今後の具体策を考えるべ


 夜。

 時計がないので正確な時刻は不明だが。

 たぶん深夜だろう。

 

 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は最大出力のテレポートで城を脱出して――城下町郊外の田舎道。

 本当はもっと遠くまで行きたいのだが。俺のテレポートの精度は低い。

 なのでどれだけ魔力を注ぎごんでも1回で行ける距離は最大でも4km(キロ)が限界。

 そこで行ける限界の距離で、最も人気(ひとけ)がない場所にテレポートしたわけ。

 

 現在、横たわる顔デカ無能男の忍者を横目に、牛の亜人の少女と突っ立っている。


「姉御(あねご)、これからどうします? ぼくちゃんと子作りしまちゅか?」

「チョッ!? 何言ってんだおめぇ!」


 突如、牛の亜人がトンデモ発言。

 俺は激しく動揺。

 えっちいのは好きだが。ここまで直球なものは望んでない。


 お下劣漫画とかでは童貞が清楚系ビッチ女子に性的に食われるって話は好きだが。

 自分がやられるとなると、あんましいいもんじゃないな。

 やっぱし漫画と現実は違うってことか。

 今後そーゆーお下劣マンガが楽しく読めなくなってしまった。


「照れちゃって可愛いちゅーに。シャイなのね」

「ムリだから! 女同士で子作りとかムリだから!」


 平静を装うものの。ムキになって怒鳴離散らした上、顔真っ赤にさせてた。

 我ながら想定外の事態に弱いんだよなぁ。



「さっきから姉御姉御って言ってるが、お前何歳だよ」

「もうじき12になるっちゅーに」

「……って! お前11歳だったのか!?」

「そうだっちゅーに」

「マジかよ……」


 信じられん。

 外見年齢は16か17歳ぐらいだと思ってたのに。11歳とか発育良過ぎ。

 このまま順調に成長し続けたらどうなることやら。

 ……末恐ろしい。


 しかし、11歳の少女がどうして牢屋(ろうや)にぶち込まれてたのかは謎であるが。

 まあそれは様子を見て、さり気(げ)なく聞いてみるさ。



「姉御の声って、男みたいだから男(おとこ)の娘(こ)かと思って」

「こんな声でも、俺一応は女だよ」


 思ったことは何でも言ってくるなこいつ。

 しかし、なんて洞察力だ。

 痛い所を突かれた。

 

 ズカズカと私心に入り込んでくるけど。

 私情事実を語りたくない。

 理由は「元は男だった」って、教えるとややこしくなりそうだから。

 だから男声の女ってことにしておく。


 けれども牛の亜人はお構いなしにグイグイ迫って来る。

 これはアレだ。気に入った相手には自ら近寄ってくって性分だ。

 はっきりと積極的にアプローチしてくるタイプ。

 草食動物系の亜人のくせに、肉食系女子かこいつは!?

 

「でも、姉御の声って『声優未経験のド素人がアニメのアフレコをやってる』みたいでかわいいッスよ」

「それ褒めてるのか?」

「モチのロン! セリフがこぼれて、噛んでて、間もおかしく、ノイズも入ってるところとか最高さ」

「貶(けな)してるの間違いだろ! とても褒めてるとは思えん」

「小説の作者がアニメ化した時に、直々に主人公の声を演じてるみたいでいいと思うんッスけどねぇ。作品を知り尽くしてるから、どんな声優よりも感情移入できるんだっちゅーの」

「そうかもしれないが。演技力皆無だぞ」

「そこは作品の愛情でカバー」

「それでも難しいと思うけどなあ」


 見てみたい気持ちはあったが。上手くいく可能性は極めて低いだろう。

 っんだが、牛の亜人はテレビのないこの世界で、どうやってアニメなんて知ったのだろう?

 謎である。


「そうっすか。でも姉御って、雰囲気が男の子みたいなんッスよね」

「ドキッ」

 

 こいつ、俺が中身男だと勘付いたのか。

 だとしてら意外と鋭いな。


「そんなこと言ってるけど。お前が男の子なんじゃないの」

「証拠見るかっちゅーに」

「ちょっ!? やめれー!」

 

 強引に話しを切り替えるも。

 牛の亜人は囚人服のズボンに手をかけて脱ごうとする。

 あまりのド変態っぷりにタジタジ。

 ホント、なんちゅう女だ。

 生まれて初めて性嫌悪を感じたぞ。


「同性でも、姉御を性的に食べたいんだっちゅーに」

「ゾゾッ!」


 過去のトラウマから身震い。

 ウサギ種の亜人少年に押し倒され、レイプされそうになったビジョンがフラッシュバック。

 あれは深い心の傷となって 悲しみの記憶として残っている。

 思い出したくないものを思い出してしまった。

 

 どうにも彼女からは得体の知れないものを感じる。

 こいつと一緒にいると、大切なものを失ってしまう気がしてならねえ。

 本能的に危機感を抱(いだ)く。

 

「そんなことよりも。これからどうするか考えない?」

「んー……。まずは姉御と盛大な結婚式挙げて、子供は11人ぐらい」

「人生設計じゃねえよ! ってか、どんだけ子供作ってんだよ!?」

「もっと欲しかった?」

「いらんから!! だいたい名前だって知らない仲なんだぞ」

「ぼくちゃんは姉御好きよ~」


 話を変えようとするも。どうにも脱線させられる。

 全然先に進まん。


「名前? ぼくちゃんの名前はサーキ・サワキ。サーキちゃんって呼んでね」

「……サーキ」

「サーキちゃん! もしくはサワキちゃんでも可!」


 かと思えば、受け答えてくれたりする。

 しかしどうにも一方的。

 自分の名前にこだわりがあるか知らんが。勝手に話を進めてくる自己中心的なやっちゃでホンマ。


「で、姉御の名前は?」

「めくるな! のぞくな!!」


 質問しながら俺のスカートを捲り上げて下着を覗き見てくる。

 見た目可愛いくせに、中身はエロへの興味が異常に強いオープンスケベ。

 外見と中身のギャップが半端ねえ。


「……俺の名前は御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)」

「スキル《計測》! 姉御の身長は140センチ」 

「話し聞いてる!」 

「聞いてる聞いてる。スリーサイズがB(バスト)70 W(ウエスト)51 H(ヒップ)72」 

「聞いとらんな。でも、そのスキル教えてください」 

「いいちゅーに」 

「サンキュー。恩に着るぜ」 

 

 これで街中ですれ違う美女のスリーサイズも知り放題だ。


「適正なかったよ!」 


 せっかく教えてもらったのに、適正がなくって習得できん。

 ぬか喜びかよ。チキショー!


 振り返ってみれば、適正がなかったために習得できなかったスキルがいくつかあったな。

 だから本当は《スティール》のスキルが欲しかったのに、適正がないがために《トレード》で妥協せざるを得なくなっているという。

 世の中上手くいかんなぁ……。


 ◇


「おーい、起きろー」

 

 俺は御剣響夜。

 あれから10分程、今後の行く末を話し合うものの。

 妙案が思いつくわけでもなく。堂々巡(どうどうめぐ)りを繰り返すばかり。

 ちっとも先に進まない。

 

 そんな最中、気絶中の忍者に気づく。

 未だに仰向けでぶっ倒れてて、ぴくりとも動かない。

 死んでるんじゃないかと心配になり脈を調べると。幸い脈はあった。

 

 で、忍者の胴体に正対し馬乗りになって両頬を軽くビンタ。

 

「……うーん」

「ようやく起きたか寝坊助」


 すると忍者は寝起きかと思うように、むっくりと目覚め、


「いやああああああああ! 犯されるーっ!!」

「やらんから!」


 早々にとんでもない勘違い。

 誤解を招く羽目に。


「――落ち着け! これこれこーゆーわけでな……」

「ふーん。そういうわけ」


 パニック状態の忍者を一括し、宥め。

 事の次第を説明し、誤解を解く。

 幸い忍者は切り替えが早く、瞬く間に現状を受け入れる。

 意外とドライだな。


「ってことは、脱走に成功したってことよね。ギャラください」

「はあっ!?」


 助かったと理解するや、忍者は両手を差し出して報酬要求してくる。

 自分では何もしてないばかりか、助けられたくせに図々しいヤツだ。

 サーキといい、忍者といい。揃って性格破綻者ときた。

 まともに相手してたら頭痛くなってきたぞ。

 こいつら置いてって、1人で逃げた方がいいかも。


「ギャラください。ギャラください」

「払うかぁ!」

「うえーん」


 しつこくせがむもんだから、突っぱねると泣く。


「それならギャラはもういいから。パーティーに入れて」

「しがみつくな! 気色悪い」

 

 かと思えば必死でしがみついて懇願してきた。

 俺は必死にしがみついてくる忍者の手を緩めようとする。

 が、その俺の手を忍者が掴んで放さない。

 意外と握力が強い。

 もうこれ以上もう他に生きてく道がないと思った者の凄み――火事場の馬鹿力ってやつか。


「暑苦しいから、そのでっかい顔で近づくな! 俺は誰とも組まん。他のパーティーを当たれ」

「見捨てないでー! どこのパーティーも拾ってくれないのよ! 仲間は多い方がいいでしょ。だから長期契約を交わしてー」


 初対面の時から、生活に行き詰まってるとうすうす感じてたが。

 案の定、どん詰まり状態。

 確かに仲間は多い方が心強い。

 だが、この様なポンコツを仲間にしても役に立たん。

 それどころか足手まといになるビジョンしか浮かばん。


「誰とも組まん」と言った瞬間、サーキの牛耳が一瞬ビクンと反応した気がしたが。今はそれどころではない。

 フープの裏切りという前例もあり、もう仲間には懲り懲り。

 何としてでも断らねば。


「おい、デカ顔! お前も御剣響夜の姉御の子分になりたいのか?」


 忍者と揉める最中。突如、沈黙してたサーキがしゃしゃり出てくる。


「うん! 死活問題だから引き下がれないの」

「ならばぼくちゃんと手を組め。必ずや御剣響夜の姉御のパーティーに入れてやるからさ」

「のった~~っ」

「交渉成立。で、おめえの名前は?」

「西川(にしかわ) 徳川家光(とくがわけひかり)カブレノ豊臣側(とよとみがわ)」 

「年齢は?」

「35」 


 忍者の本名はやたらと長い。貴族かこいつは?

 それに意外と歳いってるのね。


「西川、共闘するんだっちゅーの。姉御をぶっ倒すぞ!」

「がってん承知(しょうち)の助(すけ)!」


 利害が一致するや否や意気投合。

 2人で口元をにやりと歪めると、お互いの右腕をクロスさせる。

 どうやら自分が仲間にしてもらえないと察した模様。


 そして手を組むや否や共闘。

 ムダに戦う羽目になってしまった。


 響夜の声について。

 今回のお話でサーキに指摘たように響夜の声質は悪い。

 作中でも語られた通り、響夜の声は声優経験皆無な素人の声なのです。

 従って、この小説がアニメ化した際(たぶんないと思うが)響夜の声をあてるのは私、黄金の右脚になる訳です。

 万が一アニメ化した際は馬鹿笑いしながら声の違和感を楽しんでください。


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