第11話 乱入者の参戦で何だかよく分からない展開になってきたぞ
さて。
俺、御剣 響夜は未だピンチは脱してなものの。
突然の乱入者――牛の亜人の少女の介入に戦いはかき乱されることとなり、仕切り直し。
挽回のチャンスと思えなくもないが。
太子はべらぼうに強く、底が知れん。
スキル《能力透視》がクールタイム中で、牛の亜人がどれ程の強さなのか確かめれんが。たいした牽制力となり得ないだろう。
……今度こそ戦況を一変をさせることができるだろうか?
「姉御、助けに来ましたよ!」
「?」
乱入者の介入に、脳内処理が追いつかず混乱するも。
牛の亜人は尻餅をついた俺に救いの手を差し伸べる。
こんな状況でそんなことされたせいか、救いの女神に見えたぞ。
彼女は尻餅をついた俺に救いの手を差し伸べる。
少々見惚れるものの。彼女の手を握り、立ち上がる。
俺のこと姉御とか言ってるけど。彼女の方が身長も年齢も上っぽいんだけどなぁ。
――身長165センチぐらい。外見年齢は16か17歳ぐらいだと思う。
実際にどうか分からんけど。
「ありがとう」
「でっへへへぇ」
立ち上がり、にっこり微笑みながら一言お礼を言う。
彼女もまんざらでもないご様子。
締まりがない、だらしのない笑い顔になってた。
「絶体絶命のピンチになるまで待ち構えてた甲斐がありました」
「助けてくれたのは感謝しているが。もうちょっと早く助けてね!」
「それはできん。おいしいところはしっかり持っていくための都合ったのがあってな。……要は演出の都合ね」
「そういうのはいいから!」
牛の亜人の滅茶苦茶な価値観にちょっと怒っちゃったけど。
彼女が囚人服を着ていたので、何者かはすぐに察しがついた。
助けた理由も、脱獄の恩返しなのだろう。
しかし、こんなかわいい女の子なら、俺の性格上しっかり記憶してるはずだが。
脱獄させ記憶は曖昧。
やったような気もするし。やってない気もする。
思い返してみれば、逃がした亜人・獣人は珍しい動物や派手な動物の部位をもつ者が多数派。
その中では牛の亜人など、いわば脇役の存在。
そう考えると、印象が薄いのも納得。
「よくもやってくれましたね!」
「今度こそトドメを刺す!」
――ヤバい。
呑気にやり取りしとると、ダウンしてた弓使いと太子が復活した。
どっちも凄い形相で睨み付けてくる。
ビビって、チビっちまいそう。
「全身全霊をもって相手するウラ!」
「バカが! 焚きつけるヤツがあるかぁ!」
「なんだよもう! 姉御、演出に口出ししないでほしいちゅーの。今、ぼくちゃんが悪党をけちょんけちょんにして、姉御をナデポさせるっていうカッコイイシーンなんだから。ジャマすんなよ!」
「ならんから! 俺はちょろインじゃないから! てか、本人にそれ言っちゃ意味ないだろ」
「そういうもんッスか?」
「そういうもんだから! マジ顔で悩まんで」
ダメだこいつ。
見た目可愛いが、頭残念なタイプだ。
勇気があるのは結構だが。好戦的過ぎんのはいただけん。
こういう輩は早死にするのがテンプレ。
「《ストライクショット》!」
「ヌオッ!?」
つまらないことで口論してると。
弓使いが魔法の矢が放つ。
そして俺の頬を掠る。
「漫才はそのぐらいにしておけ。2人まとめて始末してやる」
「ヤバい! あれは確実に殺すやつだ」
忘れてた。まだピンチを脱してなかったのだ。
太子が魔法波を放とうと、両手の間に作り出した構え。
徐々にエネルギーがチャージされていく。
チャージが完了する前に対処せねば、確実に死ぬ。
――だが、これはチャンスでもある。
なぜならチャージ中は無防備。
至近距離で、リスクを無視した大技による決着を付けようとするとか、操作ミスもいいところ。
素人かて。
悪辣で掴みどころがないけど。
所詮は太子も、戦争とは無縁の平和な世界の出身(だと思う)。
戦いの何たるかなど、分かるわけもない。
まあ結果として、戦い方が分かってないお陰で隙が生まれたのだが。
「売られたケンカは買う。真っ向勝負だっちゅーの!」
「バカ! やめろ! お前の敵う相手じゃない」
今まで太子に勇敢に挑んでも、毎回返り討ち。
このパターンだと、牛の亜人に死亡フラグが立つ。
「逃げるぞ。俺の背中にしがみつけ」
であるからして。戦略的撤退を決断。
それというのも、逃げるいい案を閃いたから。
そうと決まれば、全世界の宝である美少女の死亡フラグを回避すべく作戦開始。
「おんぶ」
「ぬおッ!? 柔らかい」
牛の亜人が背中にしがみつくと、背中に当たる大きな二つの膨らみにビックリ。
背筋に途方もない衝撃が走り。
心臓がバックンバックンした後、全身の筋肉に稲妻走り。尻尾が垂直に立ってた。
ともかく凄かった。
もう凄いのなんのって、巨乳の感触ってこんなんだったんだなぁ。
「おりゃああああああ!」
邪念を振り払い、呼吸を整えると。弓使いに向かって全力ダッシュ。
「太子、俺に魔法波を放てば弓使いも吹っ飛ぶぞ!」
「なッ!」
俺の分析では、太子は他者の目に対しては無駄に気を配っており。他者の前では絶対に自身の本性を明かすような行動は起こさない。
だから、多くの兵士が見てる上、弓使いを巻き込むことはない、と踏んだ。
「チッ」
事実、太子は魔法波を放つのを断念。
舌打ちし、歯軋り。むっちゃ悔しそうな顔。
ざまあみろだ、ゲスヤロー。
これも表の顔を作って紳士的に接する偽善者の性か。
まあ、その腹黒い性格ゆえに作戦が成功したわけなんだけどね。
「《雷神剣》!」
「あぶねっ!」
今まで戦いを静観していた剣使いレンが突然雷を纏った斬撃を放ってくる。
予想外の攻撃に焦るも。咄嗟のバックステップでギリギリ回避成功。
危なかった。
もしも直撃してたら致命傷を負ってただろう。
想像するだけでゾッとするぜ。
しかし、レンが出て来るとは予想外。
ただでさえ戦力的不利だというのに。ドンドン状況が悪化してっぞ。
こんなになるまで何とかなると思って、逃げなかった俺ってバカ……?
「考えたってわからん!」
悔やむだけ時間のムダ。ともかく今は逃げ延びることだけ考えよ。
「うぉりゃああああ!」
城壁に向かって走り出す。
城壁を飛び越えるためだ。
なお、城壁の高さは6メートル以上の高いもの。
普通の人間では飛び越えるのは到底不可能。
棒高跳びしたって、世界最高クラスの選手が辛うじてできるかどうかの領域。
だが、俺には秘策があった。
それは4つある初級忍法――最後の1つ《バッタ跳び》だ。
こいつはバッタのようにジャンプするスキル。
バッタの跳躍力を人間換算すれば9階建てのビル (約28メートル) もひとっ飛び。
従って6メートル程度の城壁飛び越えるなど容易。
この様な逃げるためのいい案が閃けるのも、天才的頭脳の賜物。
天才の閃きだな。
「んッ?」
この時、牛の亜人とだけ逃げることもできたのだが、
「掴まれええええええええっ!」
なぜか気絶してる忍者の右腕を掴む。
――本能的に人助けしてたのだ。
自分でもなんで助けたのか理解できん。
気がついたら助けてたんだ。
太子を倒すために良心は全部捨てたつもりだったが。まだ残ってたのか。
俺って甘ちゃん……?
「考えるッだけムダじゃあ! 忍法《バッタ跳び》!」
スキルを発動。
俺は体験したこともない大ジャンプ。
「すんげぇー!」
「ブラボーなジャンプですぜ姉御!」
バッタの跳躍力は大したもの。
2人分のデッドウェイトもものともせずに6メートル級の城壁も容易く飛び越える。
ジャンプ中は、走高跳でバーを飛び越えたかのようなトリップ状態。
賞賛されて、ちょっとハイになってる。宙を舞うのって気分いいわぁー。
「逃がしませんよ。《フレイムショット》!」
「《ファイアーボール》!」
太子と弓使いは、宙を舞う俺を打ち落とそうと、炎系の魔法攻撃を放つ。
だが、判断が遅かった。攻撃は俺に掠りもしない。
行き場を失った攻撃は城壁に当たり、爆発音が響く。
凄まじい威力だ。厚さ30センチ以上ある城壁が貫通しかかってるぞ。
あんなのが直撃してたらと思うとゾッとするぜ。
「シュタッ! 着地! 脱出成功からの《テレポート》!」
着地と同時に最大出力でテレポートを発動。
辛くも逃げ延びることに成功したのだった。
牛の亜人の少女 サーキ・サワキのプロフィール
・性別:女
・種族:松坂牛の亜人
・血液型:AB型
・年齢:11歳
・誕生日:5月18日だったと思うんちゅーの(本人談)
・一人称 :ぼくちゃん
・身長:165センチ
・体重:65キロ
・スリーサイズ:B95 W58 H90
・毛色:赤髪
・瞳の色:青目
・好きな食べ物:食べ応えのある物
・嫌いな食べ物:食べ応えのない物
・趣味:食べること、寝ること、遊ぶこと
・性格:猪突猛進で行き当たりばったり。目的のためなら手段を択ばないところあり。
・人物:響夜に脱獄させてもらった囚人の1人。派手な色合いに反し容姿は地味め。その昔名を馳せる大魔女う~☆ゲロゲロゴージャスの子孫。かなり血は薄まってるが、大魔女の血を引いてるだけあって、魔法の才能は平均以上の高水準。実年齢は11歳だが、体躯は16~17歳のそれに等しい。発育良好。自分の名前にこだわりがあり、サーキちゃん(もしくはサワキちゃん)と呼ばれないと気がすまない。牛の亜人らしくパワーはピカイチ。同性愛者で、好みのタイプは響夜みたいな儚げな少女。松坂牛の亜人であることに誇りを待っている。これはう~☆ゲロゲロゴージャスの教えで、代々受け継がれている。ただ、彼女の場合は松坂牛を伝説の神獣かなんかと勘違いしてる節がある。大食らいで食う量が半端なく、10人前以上の料理もペロッと平らげる(本人曰く、牛は胃が4つあるから大食い、とのこと)




