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不当なる者世界に仇なす  作者: 黄金の右脚
大脱走
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第10話 男って馬鹿よね~


 俺、御剣(みつるぎ) 響夜(きょうや)は起死回生(きしかいせい)の一手として、忍者を召喚するものの。

 忍者は弱っちく。成(な)す術(すべ)もなく返り討ちに遭(あ)う。

 せっかく召喚したのに、まるで役に立たん。

 

 結果として、状況が変わらず。

 それどころか、相手を怒らせて悪化してるぐらいだ。


「突然のジャマが入ったけど。今度こそ、確実に息の根を止めてあげるよ」

「どうしてそんな発言が平然とできる!?」


 忍者を倒すと、太子(たこ)は笑顔で俺に処刑宣言。

 刀を天高く掲げ。うつ伏せに組み伏せられてる俺の首に目掛けて振り下ろそうとする。

 それが蕾(つぼみ)が花開くような、はにかんだ笑顔だから驚きだ。

 こんな残虐非道な発言を笑顔でできるあたり、太子は正真正銘(しょうしんしょうめい)の外道(げどう)。

 つくづく根性がねじ曲がったヤツやで、ホンマ。


「殺されてたまるか! 忍法《縄抜け》!」

 

 だが俺もそれを「はい、そうですか」などと従う素直ちゃんじゃねぇ。

 スキルを使い、縄からスルリと抜け出す。


 諦めの悪さは筋金入り。

 太子に復讐を誓ったその時から、『どんなに見苦しくきたならしくとも、とことん生き残る!』と、決めたんだ。

 そう揺るがなく決めた者の強さを見せつけてやる。

 

 戦い抜くぞ。最後まで……!!


「うおりゃああああ!」

「なっ!?」

 

 手始めに強烈なヒップアタックをぶちかます。

 攻撃は両腕でガードされたものの。想像以上に威力があり。

 踏ん張った太子を後ろに突き飛ばすことに成功。

 我ながら凄い威力。

 俺の尻凄いな。


「やってくれたな!」


 予想外の攻撃に、太子は一瞬怯(いっしゅんひる)むも。

 すぐさま戦闘態勢に。

 気持ちの切り替え早いな。躊躇(ためら)いが微塵(みじん)もない。

 ムカつくぐらい頭が切れてるな。


「クソッ! この後(あと)どうすりゃいいんだ!?」


 奇襲(きしゅう)が防がれ、あっという間に手詰まり。

 この攻撃で何とかなると思ってたが。

 俺の予測が甘かった。

 策士策に溺れるとはこのことか。

 

 焦りから、頭がどうにかなりそうだ。

 マジでどうしよう?

 

「タコ様、ここは我々に任せてもらえませんか」

「そうです。タコ様の手を煩わせるまでもありません」

「我らの力(ちから)をご覧ください」


 事態は思わぬ方向に。

 後ろに構えていた兵士達が有無を言わさないで、前に出てきたのだ。

 最初、手柄欲しさに前に出たのかと思ったが。

 そんな感じはない。

 ヤツらはなにが目的だ?

 

 そうこう考えてる間にも兵士達がジリジリと迫ってくる。

 こりゃあ考えるだけムダか。

 

「ともかくやってやる!」


 だが、ヤツらがしゃしゃり出てくれたお陰で、事態はいい方向に向いた。

 ヤツら数は増えたものの。質は大幅に落ちる。

 目的は不明だったが。これなら何とかなるかも。


「ドアーッ!」

「ギシュ!」


 ヒップアタックを繰り出すと、1人の兵士のボディーに直撃。

 嬉しそうにやらしい顔でぶっ倒れる。


「次はオレだ!」

「いや、オレだ!」

「いいや、オレだ!」


 ぞろぞろと出てくるものの。兵士達は自分達から攻めてこない。

 威勢のいいこと言ったくせに、その動きはモジモジソワソワ。

 こちらの出方を探ってるようにも思えたが。そうではないだろう。

 奴らの表情からは期待と性的欲求を欲してる感じ。

 そう、それは――むっつりスケベのそれだ。


「そうとわかりゃ」


 ヤツらは肌が密着する技を求めているらしい。

 敵の考えが分かれば対処のしようもある。

 攻撃のチャンス到来(とうらい)。

 

「ドアーッ」


 そうと分かれば実践あるのみ。

 大ジャンプ。

 ドロップキックのの要領で、自らの両足で兵士の1人の頭部を挟み込んで、そのままバク宙のような形で回転しつつ、そうして巻き込んだ相手の脳天を地面に叩きつける。


「ンヌッ!?」


 予想外の技に兵士は対処できず。

 されるがままに技を食らう。


「これぞフランケンシュタイナーなり!」


 技は見事に決まり、1人倒すことに成功。

 テレビやマンガで見たプロレス技が役に立った。

 

 あんまりにも上手くいったもんだから、調子乗って決めポーズまで決める。

 見よう見まねでやってみるも、予想以上に上手くいった。

 人生何が役に立つのか分からないものだと、しみじみ。


「今の技はオレが食らう。お前達は下がってろ!」

「なにを言うか! あの技はオレが食らうんだ」

「いいや、オレだ!」


 思った通り。

 ヤツらを突き動かしていたもの。

 ――それはエロ盛りの盛りスケベ根性だ。

 そんなんだから、挟んでやると我先にと、挙(こぞ)って前に出てくる。


 ――何時(いつ)だったか、ラジオ番組でパーソナリティが、『男が命懸(いのちか)けていいのって、恋愛だけだと思わない?』とか言ってた場面が、脳裏(のうり)をよぎる。

独特な言い分に、ゲストは『思わないねえ』とか返され、パーソナリティに『ロマンがないなぁ』と失笑を買う。

 けれどもパーソナリティの思想が、あながち間違ってると言いきれん。

 

 俺も男だが。そうやって考えると、男って単純だねぇ。

 ま、お陰でやり易くなった。

 童貞の純情を踏みにじる行為にちょいと心が痛むけど……。


「ハハハハッ! 脆い、脆すぎるぞー!」


 その後、極力過剰(きょくりょくかじょう)なスキンシップ的な技 (主に肌が密着する系) を使用することで一方的に攻撃ができる。

 まさに独り舞台。

 あまりに一方的に攻撃できるもんだから、無双状態。

 気を良くして、気が付いたら調子に乗って、消耗のい体力の大技を連発してた。


「もういいよ。下がってなさい」

 

 しかし、その無双状態は長くは続かなかった。

 下がってた太子が、再び前に出てきたのだ。


「タコ様、我々は優勢です」

「そうです。このまま攻め続ければ勝てます」

「聞こえなかった? 私は下がってろって言ってるんだよ」

「「「「は、はい……!」」」」

 

 太子のヤツ、表情は落ち着いてたが。内からは凄(すさ)まじい怒りと殺意がだだ漏(も)れ。

 兵士達もそれを察(さっ)したらしく。ピッと敬礼すると、さっさと下がる。

 所詮は欲よりも命が大事。

 理解してるな。


「戦いを長引かせると、ヤツは何をしでかすかわからない。一気に畳みかけますよ! 樹(いつき)くん、手伝ってください」

「はい! タコ様」

「ヤバいことになった……」

 

 事態の深刻さを察したのは俺とて例外ではない。

 我に返るが、時すでに遅し。

 ザコ相手に結構な体力を消耗してしまった。

 もうちょっと省エネで戦っときゃよかったと後悔。


 万全の体調でやり合っても勝てないのに。

 激しく消耗してるとか、体力的ハンデがあると否めない。

 おまけに弓使いも後衛で構えてるとか、袋叩き確定じゃねえか。


 数分前まで、ザコ兵士相手に無双してたのに。

 太子(たこ)が再び出てくると、状況は一変。

 あっという間にひっくり返されてしまう。


 また、弓使いの援護もあり。瞬く間にに追い込まれて手詰まり状態。

 唯一の救いは、剣使いレンが突っ立て静観してるってだけか。

 何がしたいかは分からんが。レンが出てくることはないだろう。

 だってあいつ、腕組しながらムスッとしてるだけだし。


 まあ、それでも極地に立たされていることに変わりなく。

 何度目になるか忘れたが。マジで心が折れそうになる。


「こうなりゃ、ヤケだ……!」

 

 ファイティングポーズをとって、強がってみるものの。

 本当はとっても怖い。逃げ出したいほど怖い。

 

 はたから見たら、今の俺の足は生まれたての小鹿みたいになってるだろう。

 でも、俺は逃げない。


「立ち上がる勇気と折れない心を奮い立たせねば!」


 そう覚悟を決めたその時だ。


「タウラスダイブ!」

「ッ!?」

「なッ!」

「おわッ!?」


 突如、弓使いにフライングヘッドアタックを繰り出す者が。

 不意の攻撃に弓使いは対処できず。まともに背中に食らい、吹き飛ぶ。

 驚いた俺も、釣られて尻餅(しりもち)。


 また、弓使いは後衛に居たこともあり、吹っ飛ばされた際(さい)に前衛の太子も巻き込む。

 結果、2人は転(ころ)げて縺(もつれる)。

 その光景は百合カップルがくんずほぐれつしてるみたい。

 弓使いも太子もかなりの美少女。

 美少女2人の絡みに、ちょっとドキッとした。


 一方、救出者の方は。

 頭から生えた二本角が特徴の少女――可愛らしい外見の牛の亜人。

 赤髪青目。髪の長さは肩に届くくらいで、アホ毛あり。

 牛らしく胸も大きい。すっげーグラマー。

 派手な色合いで、アホ毛が特徴なのだが。なぜか地味な印象。

 なんでだろう。地味系ヒロイン? 

 まあそうだとしても、可愛いのに変わりはないが。


 牛の亜人の正体云々はさておき。

 突然の乱入者の介入。

 ――俺はこの機(き)に戦況をひっくり返すことができるだろうか? 


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