二十五話
自分で言うのもなんだが、僕は天才だった
昔から勉強が出来て、運動ができて、顔も良く、人柄もいいと言われ、雑学の知識もあり、お金もなんとなくネットに自分が書いた小説を載せたら出版社からぜひうちで本を出してくれ、と頼まれた物が数十万部も売れた
はっきり言って自分でも異常だと思う
そして、次第に気づいてしまった
いや、最初から気づいていたのに目を背けていたのだろう
人は僕自身ではなく僕の才能しか見てないことに……
しかし、ある兄弟は違った
幼稚園の時に兄の向けてきた敵意を向けてきたあの目は忘れない
僕と兄の見つめていたあの暖かい目は忘れない
あの目は僕をしっかり見ていた。僕の人格を見てくれた。僕の心を見てくれた。
いくら敵意といってもそれはライバルのようなぎらついた目だった
それはいくら周りに人がいても、ひとりぼっちだった僕には嬉しかった
小学校の頃、皆が僕を特別扱いした
そんな時、君達だけが対等に見てくれた
中学の頃、皆は全てが僕に対抗するのを諦めた
そんな時、君だけが僕と競い続けてくれた
何度も勝負をした
一回も負けなかったけど、いつも僅差だから僕も負けないように努力をすることができた
しかし、いつしか君は僕を避けるようになった
だが、口では負けるのが分かっているからとか言いつつも
美咲ちゃんから聞いたのか、僕がやっているゲームにいつも君が来ていた
僕の投稿したインターネット小説に君も投稿していた
頭の悪いと噂の学校行きつつも、そこにある専門科で僕に勝つためにコンピューターについて頑張っていた
正直言って初めは離れて行って失望した
しかし、君は離れてなどいなかった
ずっと僕を一人にしないでくれた
はっきり言おう、僕にとって君は【救世主】だった
君は俺の柄じゃないとか言うんだろうけど、そのPSは誰よりも君が似合っていると思う
本当に君がいてくれて良かったと思う
デスゲーム開始から約4ヶ月が経った
攻略はハンター・スパイダーの後は特に問題もなく進み、死者を出す事もなく二体目、三体目と倒していった
攻略組の中でもトップレベルの人たちはレベルが40代に突入していた
その間に【英雄】のPSを持つ者や、正体不明のソロプレイヤーが現れた
そして、今は四体目のボス戦の最中だ
中心にAKATUKIのPTが、右に“暗黒騎士団”、左にソロプレイヤーや、Vanなど、ボスの後ろには赤の護衛団などの攻略組ギルドだ
そして、AKATUKIのPTの後ろにRed達“聖騎士団”がいた
そのHPも半分を超え、4分の1を過ぎ、レッドゾーンまで来た
「一回下がれ、攻撃を一度見るぞ」
当初の予定通り、Redは指示をしだしながらサポートなどを行っている
しかし、今まで順調に進んでいた為か、左側から下がらずに前に出るものがいた
「あと少しなんだ。ここはこのまま押すべきだろ!」
両手斧のプレイヤーはそのままボスである“劣等竜”に特攻した
周りの静止を無視し、そのまま一撃を加えたが、攻撃後の反動で動けないうちに今まで見せてこなかったブレスをそのプレイヤーに向かって吐き出す
これまでの戦闘でHPが削られていたその斧使いはあっけなくポリゴン片となって消えた
「ヴォルトォォォ!!」
彼のPTだった者だろうか?
悲しみをにじませた叫びを上げる
これがボス攻略での最初の犠牲者だった
彼らのPTは奇声を発しながらボスに突撃していった
その後は乱戦だった
統率もなく、無闇矢鱈にボスを攻撃する
何人ものプレイヤーがレッドゾーンにまでHPを減らしたが、幸いにもこれ以上の被害者は出なかった
そして、ボスがポリゴン片となって消えっていった
それで喜ぶものがいなかった
「テメーがしっかりと指示を出せばヴォルトは死なずに済んだはずなんだ!」
街に戻るとRedは先ほどの斧使いのPTに責められていた
お前がもっとしっかりしとけば、もっと早く動かせば、もっと、もっと……
Redはその罵倒を受け止めた
何も言い返せなかった。いや、言い返す言葉はいくらでもある
彼がHPを全損させたのは、勝手な行動をした斧使いの責任なのだから
しかし、Redはそれを口に出すことができなかった
「仲間を失った君の気持ちはよくわかるが少し落ち着き給え」
「ハーレム作って、ウハウハってやってるテメーなんかに俺の気持ちがわかってたまるか!」
AKATUKIが止めようとするも効果がないばかりか、彼はさらに熱くなってしまった
「ちょっと黙れ、命を失うのはデスゲームなんだから当たり前だろう。俺のギルドにも友人をこの前のMPKの事件で失った奴もいる。ほかにもレベル上げのために死んでいったものだっているし、ほかにも予期せぬ氏を迎えた奴もいる。お前だけが怒って良い訳じゃねぇんだよ」
Youの発したその低く、冷たい声にそのプレイヤーは思わず怒りを忘れ、後ずさった
「俺たちはこんなふうになる人をこれ以上出さないで済むように、このデスゲームを脱出するためにここにいるんだ」
Youはなおも続ける
「いいか、あらかじめ言っておく、これはデスゲームだ。今までも、これからも死んでいく奴らはたくさんいる。それは友人かもしれないし、自分かもしれない。死ぬ覚悟をしろとは言わないが、生半可な気持ちでここにいるんじゃねぇよ。そんなのは邪魔になるだけだ、そう言う奴は先に出てけ」
その言葉に周りが静まり返った
Red自身もどこか死なないかもしれないなどと思っていたのかもしれない、ここに居る殆どのプレイヤーはどこか楽観的に考えていたことを認識させられたのだろう
Youの言葉を受けて全員が苦虫を噛み潰した顔をしており、Youの言ったとおりなのか? 自問自答を繰り広げていた
「っち、明後日だ! 明後日にまた来る。その時までに謝罪の言葉を用意していろ」
その言葉を吐くと同時に街の方に歩き去っていった
そしてRedはYouや他の者たちの励ましなど聞こえず、死者を出してしまったことで自分を責めていた




