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シンソウ・ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな
第一部 メレンヘア学園の編入生

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第一部 第27話 ラックアップとラッキースケベ

シャワーの蛇口をひねると、温かいお湯がスピカの髪から身体へと流れ、先ほどの不快な生臭さを綺麗に洗い流してくれる……はずだった。


温かいお湯とともにスピカの胸元へ流れてきたのは――奇妙でヌメリとした生き物だった。


スピカの髪の毛に紛れ込んでいた『ミゾミミズ』がスルリと飛び出し、白い胸元を伝って床へと落ちたのだ。

その気味の悪い触感に、スピカは思わず絶叫した。


「へっ……!? ヒッ……ヒャアァァァーーーッ!!」


スピカの悲鳴に、隣の壁越しにいたカノープスが即座に反応した。


電光石火の速さで薄い壁と天井の狭い隙間を跳び越え、スピカのいる女子シャワー室へと躍り出た!


スピカは胸を手で隠してその場にしゃがみ込み、床のミゾミミズを指差した。


「ミ、ミミズ……!!」

カノープスは素早い手つきでミゾミミズを捕獲すると、洗面台へと放り投げた。


「もう大丈夫ですよ、スピカさ――」


言いかけて、カノープスは己の置かれた状況にようやく気づいた。


二人とも、一糸纏わぬ姿で正面から向かい合っている。


スピカはしゃがみ込んだまま後ろを向き、か細い声でカノープスに呼びかけた。


「あのー……そのー……カノープス君。ミミズの件は、ありがとう……」


「……はい」


「……でも、出て行ってもらえるかなぁ……?」


そんなベタなラブコメ漫画のような状況の中――スピカの悲鳴を聞きつけたハダルが、開錠スキルを使ってシャワー室の鍵を破った!


「スキル――『アンロック(開錠)』!」

ガチャリ!


「スピカさん、大丈夫ですか――!?」


勢いよくドアを開けたハダルの目に飛び込んできたのは、憧れのカノープス先輩とスピカが、全裸で対峙している衝撃の光景だった。


「…………」


その光景を目にしたハダルは、何も言わずに静かにドアを閉め、その場を去っていった。


「「ハダル君!! これは誤解だーーーーーッ!!」」


閉まったドアに向かって必死に叫んだカノープスだったが、全裸のまま追いかけるわけにもいかない。


彼は一旦一部の関節を外し、シャワー室のドア下のわずかな隙間からスルスルと男子シャワー室へと戻った。

◇

その後、二人は無言のまま生臭い魔法生物の臭いを綺麗に洗い流した。


二人がシャワー室から出てくると、外には騒ぎを聞きつけた人だかりができていた。


「カノープス! 悲鳴が聞こえたが、何かあったのか!?」


「……何もありません」


カノープスは力なく答えた。


スピカの方にも、心配した生徒たちが駆け寄る。


「スピカさん! 悲鳴が聞こえたけれど大丈夫!?」


「……大丈夫です……」


スピカも魂の抜けたような声で答えた。


二人は気まずそうにお互いを見つめ合った。


やがてカノープスが切り出した。


「今日はもう遅いですし……報告は明日にして、寮に戻りましょう」


「……はい」


フラフラと歩いていくスピカの後ろ姿は、明らかに深い精神的ダメージを受けていた。


(本来であれば、己の行動の痕跡を消すために表の扉からは出ないのが忍者の鉄則……。しかし、この騒動の注目がスピカさん一人に集中するのを避けるため、あえて私も表の扉から出たのだが……これがかえって仇とならぬことを祈るばかりだ)


ふと腕に巻かれたハダルの御守りを見ると、宝珠の輝きが完全に失われていた。


(……『ラックアップ』の効果が、発動したのか……?)


カノープスは、頭の中で静かに状況を整理してみた。


【スピカとシャワー室に入る】→【ラックアップ発動!】→【ラッキースケベ発生(全裸のスピカと 対面)】


さらにカノープスは、スピカがこの学園に編入してきた『あの日』のことを思い出した。


あの日、スピカたちの監視任務に就く直前、ルスカ副会長に呼び止められたのだ。


――回想――

『ルスカ:編入生についてさほど問題はないと思うが、殿下を狙う刺客かもしれん。用心のため、お前にラックアップを施そう』


そして、あの日の出来事を整理してみると――。


【スピカの監視のため更衣室に忍び込む】→【ラックアップ発動!】→【ラッキースケベ発生(スピカの着替えに遭遇)】


(……ルスカ副会長の『ラックアップ』とは、一体……!?)


ラッキースケベを物理的に強制発動させる呪文――。


そんな恐ろしいものが、この世に存在するのだろうか!?

そ、そんな筈は……。

(全ての元凶は……ルスカ副会長の『ラックアップ』だったのか……!?)


(ルスカ副会長のラックアップとは対象者の尊厳と引き換えに確率論を歪め異性の裸に強制的に体面させる魔の呪文!)

※カノープス君の感想です。


「………」


「ルスカ副会長……素敵な思い出を、ありがとうございます……!」


カノープスは夕暮れの空を見上げ、何がなんだか訳のわからない謎の贈り物に対し、ポロポロと涙を流して感謝を捧げるのだった。

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