第一部 第17話 激動!メレンヘア学園祭⑤ ――赤髪ジョニーと理不尽な占い
アルタイルが勝ち名乗りを受けた直後、一人の男が不敵な笑みを浮かべて闘技場に飛び込んできた。
「『魔法あり』とは良いことを聞いたぜ! 」
「次は俺だ!」
着崩した制服に、燃えるような赤髪。
ギャラリーの男子生徒たちがザワつく。
「あ、あいつは高等科三年、アークウィザードのジョニー・ルイデン……! 通称『赤髪ジョニー』だ!」
スピカはその粗暴な身なりを見て、密かに思った。
(……なんか柄が悪いわね。あんな人でも一応貴族なのかしら……?)
ジョニーは観客席のベガを見上げ、ニヤリと笑った。
「ベガさん、見ていてくださいよ! そしてコイツに勝ったら……俺とダンスを踊ってください! 」
「『第2部』でね!」
「いいですよね!ベガさん!」
強気なアピールをする赤髪ジョニー。
ベガは挑発的な態度をとる彼を冷ややかに睨みつけると――無言でスッと『○』の札を掲げた。
「「「おーーーっ!!??」」」
会場から大歓声が湧き上がる。
(((えっ……『○』の札も持ってたのーーー!?)))
目を丸くするスピカをよそに、審判のサナダがジョニーに注意を促す。
「防具を着けよ!」
「いらねーよ!」
ジョニーはサナダの忠告を無視して不敵な笑みを浮かべる。
「はじめ!!」
サナダの合図と同時に、ジョニーは呪文を唱え、足元に魔法陣を展開させる。
「『フライ(飛行)』!」
フワリと宙に浮かび上がったジョニーは、上空から高笑いをあげた。
「ははは! 空から呪文で狙い撃ちにしてやるぜ!」
アルタイルは冷静に武器置き場から大弓を取り出し、木製の矢をつがえた。
シュッ――ドスッ!!
「いでっ!?」
「……胴!!」
サナダの声が爽やかに響く。
ボテッ!!
ジョニーは無様に地面に落下し、顔を押さえてサナダに食ってかかった。
「ゆ、弓あり!?」
「あり」
サナダは即答した。
それでもジョニーは諦めきれず、地面に這いつくばったままベガを見上げた。
「ベ、ベガさん……せめて『第1部』で僕と踊ってもらえませんか……!?」
ベガは無慈悲に『✕』の札を掲げた。
――ジョニー・ルイデン、試合終了。
しかし、この一部始終を見た男子生徒たちが一気に色めき立った!
「おい……! アルタイルに勝てば、ベガさんと『第2部』で踊れるってことか!?」
「「「やるぞーーー! おーーー!!」」」
「ええーーっ……!?」
怒涛のチャレンジャーたちの列を見て、アルタイルは空を見上げて絶望の溜め息をついた。
(みんな完全に本気になっちゃってる……。アルタイルさん、大丈夫かしら……?)
スピカがアルタイルを心配していると、闘技場にぬっと巨大な影が現れた。
「次は俺だ」
「サムライと立ち合えると聞いて、わざわざ外部から招待状を取り寄せたのだ」
大男は重厚に名乗りを上げた。
「ソードマスターのジヨン・フィリップだ。サムライ殿、手合わせ願おう!」
「…………」
アルタイルは完全にフリーズした。
(お、大人……!? ソードマスター……!?)
(ちょっと……この先の勝負がすごく気になるけれど……お母様たちとのランチの約束があるわ! 屋外カフェに行かなくちゃ!)
アルタイルの行く末を案じつつも、スピカは後ろ髪を引かれる思いで『サムライ訓練施設』を後にしたのだった。
◇
一方――『忍者屋敷』の店頭では、ハダルが男子生徒に話しかけられていた。
「君、可愛いね! 良かったら『第1部』の舞踏会、僕と踊らない?」
「ごめんなさい、私……約束があるんです」
やんわりとお断りを入れるハダルを見て、横からスティーブが呆れたように口を挟む。
「今日これで何人目だ? ……『約束』なんて無いくせに~!」
「いいのっ! ほっといてください!」
真っ赤になるハダルを見て、スティーブは肩をすくめて呟いた。
「カノープスの奴……罪な男だねぇ」
◇
スピカが叔母との待ち合わせ場所へ向かう途中、『ウィザード(魔術師)訓練施設』の前で足を止めた。
(ここも色々とグッズを売っているのね。『チャーム(魅了)の巻物』って……それ、惚れ薬と同じじゃないかしら……?)
売り物の怪しさに不信感を抱いていると、『占い』と書かれた看板が目に入った。
(占いもやっているのね……『無料』かぁ。まだ少し時間がありそうだから、見て貰おうかしら!)
「すみません、お願いします!」
スピカが声をかけると、深く被ったローブの陰から占い師の少女が静かに口を開いた。
「はい。……一つ、質問に答えてください」
「あ、はい!」
「『誰も傷つけない優しい嘘なら、ついてもいい』……?」
「えっ? あ……はい!」
スピカが戸惑いつつも答えると、占い師は一変して冷たく言い放った。
「嘘つき!」
「えっ!? あ……じゃあ、『いいえ』で!」
スピカが大慌てで言い直すと、占い師はさらに痛烈な言葉を浴びせてきた。
「どっちつかずの優柔不断! 石頭!」
「ちょっと! なんなんですか急にーー!?」
スピカがプンプン怒ると、占い師はポツリと呟いた。
「……今日のあなた、恋愛運絶好調よ。……頑張りなさい」
「あ……あ、ありがとうございます……?」
モヤモヤしたままお礼を言い、スピカはその場を立ち去った。
◇
通りすがりの『剣士訓練施設』からは、熱気あふれるアナウンスが響いていた。
『パンカイニー選手! 怒涛の15人抜き達成です!!』
(あ、剣士訓練施設もめちゃくちゃ盛り上がってるわね……!)
「ベガ様……見ていてくれましたか……!?」
見えない憧れの女性に向かって、爽やかな汗を散らすパンカイニーであった。
ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると励みになります!」
ブックマークも大歓迎!!お願いします。




