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花火  作者: あさひ
第三章 八月六日
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八月六日⑤



 九階建てホテルの非常階段に、Tは居た。腰壁に腕を乗せ、下の通りを覗くようにしている。


 「これを見ろ」近づくと、紙を差し出して来た。

 差し出された一枚のA4紙は神奈川全域の地図で、丸い点が不規則に手書きされている。


「これは、何だ。何のポイントだ」


「交番、派出所、警察署と、警察に関係がある場所だ」

「それが何だ」


 腰壁を背にして「おそらく半径は一キロ程度。幹線道路や主要な駅毎におよそ四キロ間」脈略もなくTは言う。


「……消失ポイントか。警察署だけじゃ無いと言うことか」

「そうだ」首肯しながらTは、話を変えた。


「それと、ファイルを調べて分かった事がある。一つは信者の名簿で、とりたてて不審な点は見つからなかったが、もう一つのファイルが怪しくてな、何かの教育機関の名簿で、在籍していた関係者を辿って行くと、一部情報が抜かれた形跡があった」


「ファイルはあの教主とかいうやつが寄越しただろ。あいつがやったのか?」

「いや、やつはただの傀儡だろう」

「さらに上がいるって事か」

「仕組まれた罠に気付かなかっただけだろうな」

「じゃあファイルは無意味ってことか?」

「そこだけあいつは役に立ったとも言える。ファイルは本物だ」

「てことは、抜かれた奴を探せば良いんだな」

「そういう事だ。十中八九そいつが黒幕だ」


「覚えておいてくれ。で、次だ」

 

 Tはそう言うと、ポケットからおもむろに何かを取り出す。

 おもちゃ? それを二つに割ると、中から同じ柄をした、木製人形が出て来た。

 懐かしい。この入れ子構造、マトリョーシカか。

 

 その内小さい方をまた二つに割って、中身を地図の上に置き「こっちがイワキメグミ」と言った。

 

 もう一つ置き「こっちがミカミハルナ」と言う。


 もう一人の方。高速の上で確認した相手。

「確かに行けない距離では無いな。だがどうする。どっちから行くんだ」

 

 Tは二つのマトリョーシカを元の一つにして、ある地図の一点に置いた。


 HAKONEという地名らしい。日本の土地に明るくないKは、そこまでの移動方法を思い浮かべようとした。


「奴らはここで落ち合う。勘だ」

 

 立ち上がりって下の通りを覗く。


「それならあれで良いじゃねえか」と笑って言った。

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