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鍵屋玉屋②
食い入るように観ている光が、「花火良いな。ぼくも観に行けたら良いのにな」とテレビに向かって呟いた。
「大丈夫だ。絶対行けるよ」
「ほんと?」小児用の患者医を翻して、濡れたような瞳を踊らせている。
「連れてってくれる?」
「ああ、連れてってやる」
「絶対?」
「ああ、絶対だ」「そのために、早く治そうな」
「うん。約束ね」そう言って、首をぶんぶん振っている。
深いところから発生し、かなり進行した状態でみつかった悪性リンパ腫は、長期にわたって光を苦しめていた。
小児がんの中でも百万人に一人の、非常に稀なケースらしかったが、化学療法一二クールの術後、二年半は再発も無く、安心しきっていた。
一ヶ月前、検査の為におとずれた小児科医で、がんが再発したことを知らされた。
ベッドに臥した光は、あの時より明らかに衰弱している。
何もしてやれない自分が歯痒く、身を焼かれる思いだった。
この子は、母親も失っているんだぞ。
まだ夢を持つ前の子どもに、こんな仕打ちがあるのかと神を呪った。
血が滴り落ちるほど、拳を握り締めていた。
「お前はすぐそばにいて、何をやってんだよ」目の前のベッドに、何度も声を掛けた。




